途中下車
~新緑に誘われて~
今日は、ローカル線に乗って、あの渓流の源である、山に登ろうと思っている。あまりにも空の美しい、澄んだ青空の五月。。私の乗っていた、急行列車から臨時駅に到着するアナウンスが流れた。
「尾ヶ原渓流入口」
今日から8月までの間しか列車が止まらない駅。新緑のトンネルを抜けて、列車は乗客が利用しないだろう駅に止まった。「降ります!」
なぜか、俺は目的地を忘れてリュックをあわてて持ち上げて列車を降りてしまった。突然の途中下車。これも旅の楽しみかもしれない。すがすがしい新緑、凛とした空気にディーゼルのにおいがなぜか溶け込んでいる。俺はホームを降り、渓流へと向かう木道に向かった。
渓流が流れる音、木立がまだ冷たい風に揺れて、目に鮮やかな生まれたての緑の葉がすれ合う音。冬から解放されて草や木が一気に芽吹くはじけるような香り。その空気を大きく吸い込み、また歩き出した。
清流は澄んだ太陽の光を浴びて、水面をきらきらと反射させている。おや、一人の先客が清流の写真を撮っているようだ。美しい女性だ。
声をかけてみようか。。
おいおい、自分の気持ちまで新しい季節の訪れにウキウキしているようだ。今日の途中下車はついているようだ。さあ、風に吹かれて、あてもなく進んでみよう!
Title:「途中手下車~新緑に誘われて~」
Number: 10
Sep 2015 - Dec 2015
--- NOTE ---
日本の新緑を駆け抜けるディーゼルを一度作りたかった。極小のレイアウトで表現できるか実験的に制作しました。木立の中を抜けて来る列車を楕円にした。長い部分で表現してみました。また、これまで水の表現がほとんどなかったので水面に光が反射する表現がしたくて光栄堂のモデリングウォータを使って渓流を表現しています。はじめての表現だったので完璧とまではいきませんが、とりあえずは満足しています。また木は日本の素材ではなかなか自分の考える新緑を表現する色がなくてNOCH社のパウダーを多用しています。この作品も幅10cmの「ちっちゃなジオラマ」です。