「俳句とともに」

「俳句と共に」

 みなさん、俳句に触れたことはありますか?

 俳句は、季節を表す季語を入れて、 5・7・5で作る、世界で一番短い小説です。

 「楽しいこともつらいことも全てが俳句の種になる」 俳人の夏生いつき先生のお言葉があります。

 私は、網膜色素変性症という視野が狭くなる病気を患っています。中心視野は残っていますが、周辺は真っ暗です。中心にも見えない部分があるため、目の前の方に気付かないことが度々あります。以前の職場では、目の前の物を片付けることが出来ず、同僚にも迷惑をかけていました。

 どんなに注意しても全部片付けられない。情けない気持ちになりながら、ヒヤリハットを何枚も書きました。

 それより前からではありますが、視界に違和感がありました。下の方が見えていない気がしたのです。晴れた日の日光の眩しさに耐えられなくなったこともあり、眼科を受診する事にしました。

 診断名は、網膜色素変性症でした。ドクターには「この書類を持って、市役所へ行き、難病手帳の手続きをしてください。」と、言われました。

 下が見えない、日光が眩しい、そして目の前の物が片付けられない理由は病気の症状だったのです。

 理由が分かったのは嬉しかったのですが、このまま視野が狭くなったら、子どもの顔も見えなくなるのか。そう思うと涙が出ました。

 変顔をして笑わせてくれる小学校低学年の娘が、私の生き甲斐だったのです。ですが、いつまでも、泣いてばかりもいられません。障がいがあるけど、障がいに負けている姿を、娘に見せられません。今出来る事をしよう!と、盲学校への入学を決心しました。

 45歳を過ぎた私には勉強の仕方も分からず、聞き慣れないカタカナに苦労しました。

 そして、4月の終わりに、校内の弁論大会がありました。

 「どう行列 心がおどる おまつりだ」

 小学部6年生の児童さんが詠んだ俳句です。

 5・7・5の短い小説ですが、どう行列の楽しい太鼓の音、その周りで賑やかにされている人々が脳裏に浮かびました。

 実際には見えてない景色でも、見えているのです。

 とても感動し、嬉しくなりました。

 俳句の楽しさを教えてくれてありがとう。盲学校に入らなければ味わえない体験だったかも知れません。

 今、2年になりました。

 「啄木の顔して帰る盆休み」

  立川志らくさんの俳句です。

 盲学校へ入学し、少し自信がついて実家に帰る私の顔は、かしこげな啄木っぼい顔をしてるかもしれません。

 そんな顔を思春期に入った子どもにも見せながらこの先も自分の夢に向かって前進して行きたいと思います。