科学の進歩、技術革新により、我々は生活の物質的豊かさを享受していますが、科学の進歩が負の遺産を残すこともしばしばあります。
西洋近代化の過程と帝国主義・植民地主義。近代的戦争と技術革新、総力戦とガス等化学兵器の問題、そして核兵器と原子力開発など、科学技術の発展には倫理観がとわれるような問題が多くあります。飛行機開発や「化学」分野等科学技術発展の時代では一方で世界大戦という多くの人々が死にいたる悲劇があったことをわすれてはなりません。美しい海、南国の楽園も核開発の実験場となっていた事実があります。もっと卑近な例でいえば、美しい海を満喫できる「オキナワ」は第二次大戦の末期、日本の捨て石となって、20万人以上の人々がこの地で亡くなり、現在も基地問題で苦悩しています。
この講座では、科学技術の進歩やそれに伴う戦争の被害の問題、現在の基地問題と商業主義的開発による観光地化が抱える構造的矛盾を理解し、科学技術の進歩と経済進展という光の部分とその弊害という負の部分について、批判的な考察力と現実の諸現象にたいする探究心を高めることを意図しています。
*1学期:
科学の進歩、技術革新がもたらしたプラス・マイナス両側面について多岐に渡って考察する。近代化と植民地主義・技術開発と戦争・原子力開発とヒロシマ、ナガサキの悲劇・生活のイノベーションとライフスタイル・楽園の観光地化の功罪・科学者と倫理観など。
近代化がもたらした生活の豊かさと逆に蓄積される負の遺産の実態も推察する。 メディアで報道される観光地、楽園のイメージ戦略が行われているか分析する。 また沖縄戦における資料館、資料がどのようなメッセージを投げかけているか考察する。
*2学期:
ある特定の地域をターゲットに考察を深める。具体的には、沖縄やグアムなど「楽園」のイメージが強い観光地を検討している。「パラダイス」・「楽園」といわれる観光地がかかえた殖民地化の問題点、技術革新と人々の生活・習俗の変容についても考察する。
観光地化する営みによってどのような問題が生じたかを考える。企業の取り組みや経済社会と現地の人々の暮らしについても把握し、現地調査の分析の手がかりをつかむ。
*3学期:
まとめ―「楽園」の美しさを演出する観光産業、広告イメージについての分析とその背後にある現地での苦悩について考察する。さんご礁の白化やマイクロプラスティック、土地開発による環境破壊の現状についても把握する。最終的には、高校レベルでの修学旅行でのような行程表と学習を行うプランをねるなど教育的視点にたっての旅行プレゼンテーションもしくはCM広告を製作してもらいたいと考えている。