3年生へのメッセージ
どこの所属?
前田研究室は東京大学工学部電気電子工学科(EEIC)・東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻(EEIS)に所属しています.
EEICの学生は卒論配属を志望することができます.大学院からは他大学からも受験が可能です(受験前に相談してください).
どんな研究をするの?
私の研究グループでは,ワイドバンドギャップ半導体(窒化ガリウムGaNや炭化ケイ素SiC,酸化ガリウムGa2O3,窒化アルミニウムAlNなど)の電子物性解明やデバイス試作に関する研究を行っております.ワイドギャップ半導体を用いれば,シリコンSiの限界を大きく超える非常に高耐圧で低損失なパワーデバイスを作製することができます.SiCデバイスはすでに電気自動車や鉄道に,GaNデバイスはPC用ACアダプタなどに実用化もされています.今後,持続可能な社会の実現に向けて省エネルギー化や電力利用効率の向上への要求は益々強まるばかりであり,ワイドギャップ半導体パワーデバイスの更なる性能向上が求められています.また,パワーデバイスのみならず,5G通信基地局などに使用される高出力な高周波増幅デバイスや宇宙探索応用を目指した超高温デバイスの研究開発も進められています.
GaNやSiCのパワーデバイスは,既に実用化が始まっているとはいえ材料の潜在能力を十分に引き出せている状況ではなく,物性評価やプロセス技術開発などの基礎研究に基づく更なる性能向上が必要です.また,デバイス構造の革新や新規材料との融合による新機能化・新規応用開拓も重要です.私の研究室では,下記のような項目が重要であると考え,興味・関心を持って研究に取り組みます.
・ワイドギャップ半導体の物性解明:材料特有の高電界物性や高電界キャリア輸送特性の精密評価
・根本的に新しいデバイス構造概念の提案と実証:デバイスの高性能化や新機能発現
・強誘電体や超伝導体などの機能性材料と半導体の融合:これまでにない革新的デバイスの試作
どの項目も,半導体工学や固体物理(量子力学や統計力学),材料科学,電子工学などの広い学問分野に根ざした学際的研究であり「応用物理」です.
もしやりたいことがあれば,ゼロからテーマを立ち上げることも可能です.
研究って何するの?
研究は,ある課題(あるいは興味や好奇心がある問い)に対して,それを解決するための実験や計算・シミュレーションをデザイン・実行し,
得られた結果を解析・考察・解釈・議論し,学会や論文で他の研究者に発表する極めてクリエイティブな活動だと考えます.
具体的には,私や共同研究者と議論したり学会や論文で情報収集することで,何が解くべき問いか(研究テーマ)を考え,
実験(デバイス作製や測定など)を行い,データを解析・解釈し,責任を持って研究結果を世界へ発信します.
4年生で配属されても卒業論文の結果を国内外の学会や国際論文誌で発表することを目指していただきます!
研究は受け身ではなく自立した活動です,これまでの授業とは異なり,主体性と自己研鑽の意識を持って取り組んでくれることを期待します.
もちろん研究テーマや方向性は提示しますし,実験やデータの解釈,プレゼンや作文技術について,情熱と優しさを持って妥協なく教育・指導します!
どんな研究室?
私は2022年4月に着任したばかりで,研究室メンバーも0期生(助教時代の指導学生)と1期生がいるのみです.
少数ですが精鋭と言える活気に溢れたメンバーで,日々楽しく研究に取り組んでいます.
ワイワイ楽しい研究室ですが,研究には極めて真剣です.多くの学生がB4やM1で学会発表・受賞を経験しています.
居室は3号館1F129室を使用しています.
コンビニや食堂が近くて生活的に便利ですし,武田先端知や9号館/10号館などの実験部屋にも近いため,研究の面でも非常に便利です.比較的新しく綺麗な環境です.
研究環境: 前田研内で基本的な半導体物性・デバイス特性の評価ができる環境が整いつつあります.
現在は分子線エピタキシー(MBE)という研究室の軸となる結晶成長装置の立ち上げにも取り組んでいます.
また,東京大学には豊富な共用装置があり,非常に恵まれた環境と言えます.
特に,武田先端知ビルのスーパークリーンルームを活用することで,大学でも(研究レベルでは)最先端デバイスを試作することができます.
クリーンルームだけでなく測定装置も充実しており,環境に制限されることなく研究に取り組むことができます.
東京大学内や国内外の大学・企業と積極的に共同研究を行なっている点も特筆すべき点と思います.研究室内に縛られず,広い視点で研究活動を行っています.
どんな学生が向いている?
・物理・数学が好きな学生(半導体物理・デバイス物理は非常に奥が深いです!)
・半導体工学(物性やデバイス)の研究に興味がある学生
・自分で手を動かしてものづくりをしてみたい学生(結晶成長からデバイス作製まで行えます!)
・博士進学したい学生(博士進学を志す先輩が多く,色々参考になると思います)
就職先は?
学部卒の場合,専門に関係なく様々な大学院や企業に進学・就職可能だと思います.
修士卒の場合,国内のメーカーが中心的な就職先になると考えられます.
企業との共同研究や学会で実際に企業研究開発のお話を聞くことができるため,就職の参考になると思います.
ワイドギャップ半導体は国内メーカーが国際的にも高い競争力を有しており,人材の需要も大きいと考えられます.
博士卒の場合,上記のような国内研究職だけでなく,
海外大学・研究機関での博士研究員や企業就職も視野に入ると思います.
私は2年間アメリカで研究員をしていましたので,海外経験をお伝えすることができます.
電子工学のPhDがあれば(かつ英語が話せてグローバルで見ても優秀であればですが)
博士卒業後すぐにIntel, IBM, TSMCなどの半導体関連企業やGoogleやApple, Amazonなどで高収入を得ることも可能です(アメリカでは全く珍しくありません).
博士課程はネガティブなイメージを持たれがちですが,
半導体分野の博士号は研究者・技術者として世界的に活躍するためのプラチナチケットです!
博士だから就職先に困るなんてことは絶対ないと保証できます.
東京大学での進学はもちろん,海外大学院への進学も強く推奨・応援します.
その他 Q&A
Q. 研究室って忙しいですか?
A. 研究に費やす時間は多いと思いますが,時間はかなり自由です.
Q. コアタイムありますか?
A. ありません.学生の自由を尊重します(怠惰はダメです).週一程度のミーティングには出席していただきます.
Q. 研究室はどんな雰囲気ですか?
A. 現在私と学生3名(+共同指導学生3名)の小グループですが非常に活発に頑張っています.
2025年度は前田研配属2名を指導させていただきます.
Q. 研究室の待遇はどんな感じですか?
A. 博士進学を志す大学院生は給料を貰いながら研究することができます(アメリカでは当たり前です).
東京大学や日本学生支援機構,日本学術振興会の制度(学振DC, 月20万円 + 研究費100万円/年)を活用することで,
金銭的に困窮することなく研究に打ち込めるようにサポートするようにします.
また,MERIT-WINGSプログラムやヒロセ研究者育成プログラムなどの支援も充実しています.
実際に研究室メンバーで修士1年生のうちからフェローシップに採択される学生も珍しくないです(参考: Members).
Q. 半導体の将来って明るいですか?やばい?
A. 分野として非常に重要かつ国際的な競争力が求められると断言できます.
国内の半導体・電機メーカーが厳しい状況にありますが,世界的にはずっと成長産業で今後も変わらないと考えます.
電子機器がなくならない限り,あらゆるモノに半導体デバイスが必須です.その進化は止まらないでしょう.
特に,化合物半導体分野は国内企業・大学が強い競争力を有しております(今後は皆さんにかかっています).
Q. 半導体の良い教科書ってありますか?
A. 「半導体デバイスの基礎(特に上・中), B.L. アンダーソン 著, 樺沢宇紀 訳, 丸善出版」「半導体の物理, 御子柴宣夫, 著, 培風館」
洋書であれば「S. M. Sze, Physics of Semiconductor Devices」「D. K. Schroder, Semiconductor Material and Device Characterization」
他にも基本的な教科書は研究室に揃っています.より専門的な内容は英語の教科書や学術論文を読んで学習・情報収集します.
Q. 研究する上で何が必要ですか?
A. 私の出身の研究室(京大木本研)では「4つのK」を教わりました.
これは「好奇心」「向上心」「協調性」「完遂力(気合い)」を意味します.
自然現象に興味関心を抱き,自己研鑽の意識を持ち,周囲の研究者と良いコミュニケーションをし,
重要と考えた研究課題 / 仕事をやり抜く情熱や誇りを身につけることを目指してください.能力は後から付いてきます.
Q. 前田先生ってどんな人ですか?
A. 見学いつでも大歓迎ですので気軽に連絡をください -> tmaeda"at"g.ecc.u-tokyo.ac.jp