このプロジェクトでは、2023年1月に日本全国にお住まいの25歳から44歳の方を対象として、生活時間に関するオンライン調査を実施いたします。
詳細は、「生活時間に関するオンライン調査」に関する紹介ページ をご覧ください。
このプロジェクトでは、「マルチタスク(multitasking)」と呼ばれる人々の行動について研究しています。
日常的には「ながら作業」と呼ばれるようなもので、2つ以上の作業を同時におこなったり、短時間のうちに複数の作業を切り替えながら進めたりすることを指します。
ITやデジタルメディアの普及にともなって、技術的にはさまざまな社会的、経済的活動が場所や時間を問わずにできるようになりました。マルチタスク状況がひとびとの働き方や生活に与える影響については、認知科学や心理学などを中心に研究が蓄積されています。また、いかにして時間を効率的に使う・過ごすかに関するビジネス書、自己啓発本の類も数多く存在し、時間についての関心は社会的にも弱くはないと思われます。
一方、社会調査のなかで、どれくらいの人々が、どのようなマルチタスクを経験しているのかを把握しようとすると、考えるべき課題がいくつか残っています。そもそも「マルチタスク」が何であるか(あるいは、ひとびとがそれを何であると考えているか)、それが定義できたとしてどのように測定できるのかは容易な問題ではありません。一方、日本の生活時間調査として最も大規模で信頼性も高いといえる「社会生活基本調査」(総務省統計局)では、「調査票B」という調査で一定の時間帯で主に従事している行動(主行動)と同時に従事しているもの(同時行動)を把握しています。しかし、「社会調」を含めて生活時間に関する測定のほとんどは対象者の回顧的回答にもとづいています。回顧的回答は個人の記憶への依存度が大きく、同時行動を詳細に把握する方法として適切であるのかについては検討の余地が残っています。
そこで、本研究プロジェクトでは、生活時間のリアルタイム調査の実施を試みます。それにより、マルチタスクの概念と測定のギャップを埋めるとともに、マルチタスク状況の社会的背景と健康や生活意識などへの影響を検討します。また、調査方法論の研究として、現実の社会調査でこのような方法を採用した場合の実務的、技術的課題を明らかにすることも、本プロジェクトの目的の一つです。
【研究代表者】
石田賢示(東京大学社会科学研究所)