Social Issues

社会問題

Analysis of Food Desert Issue in Fukuoka City

福岡市におけるフードデザート問題の分析

近年,郊外地域のみならず都心部においても満足に買い物に行けず,日々の生鮮食料品を確保することに苦労している買い物弱者が増えています.この問題をフードデザート(食の砂漠)問題 と呼びます.

本研究では,福岡市を対象として,高齢者の居住地から生鮮食料品店までの道路距離によってフードデザート地域を定めます.このとき,フードデザート地域と判断する距離に明確な基準が定められていないことから,基準距離の設定によってどの程度結果が変わるのかという感度分析も行います.そして,フードデザート問題をこれ以上悪化させないようにするために必要となる生鮮食料品店の最小店舗数ならびにその立地を,集合被覆問題に帰着させることで求めます.さらに,フードデザート問題に着目した際の生鮮食料品店の評価方法を提案します.

先行研究では,フードデザート問題の解決策を提案しているものが多いのに対し,本研究では現状よりも悪化させないことを念頭に置いていることが特徴です.本研究の成果は市政にとって役に立つと考えています.

本研究は日本都市計画学会より年間優秀論文賞(2014年)を受賞しました.

図1.フードデザートマップ

Stranded People Using Railway in Tokyo Metropolitan Area at The Great East Japan Earthquake

東日本大震災による首都圏鉄道利用者の帰宅困難問題

2011年3月11日14時45分頃に発生した東北地方太平洋沖を震源としたM9の大地震により,震度5強の揺れを観測した首都圏のほとんどの鉄道は一時運転を見合わせました.地震発生が平日の日中であったことから,都心部のオフィスや学校には多くの通勤・通学者が滞留しており,鉄道の運転見合わせは人々の帰宅の足を奪うことになりました.

鉄道事業者は大規模地震が発生すると,走行中の電車を速やかに停止させ,車掌や駅員は状況を把握し輸送指令本部に連絡します.その後,

    1. 乗客の避難誘導
    2. 施設の点検及び復旧
    3. 計画策定及び乗務員の手配
    4. 関係機関との連絡調整

を行い,運転を再開します.今回の地震は,作業員の徒歩による安全確認が必要なほどの揺れであったため(多くの鉄道事業者は,地震の震度や揺れの最大加速度に基づいて,速度規制,運転見合わせ,安全点検方法などを定めています),鉄道施設に被害がなかったとしても運転再開までに時間を要することが地震発生直後から予想されていました.

首都圏で日常的に鉄道を利用している通勤・通学者はおよそ800万人にのぼります.その半数以上の通勤・通学時間は1時間以上であり,「鉄道路線の途絶=帰宅困難」と言えます.鉄道は高速大量輸送機関であり,これに代わる輸送機関はありません.道路に被害がないと仮定しても,バス,タクシーではとても輸送力が足りません.

今回の震災により,首都圏の鉄道網は一時完全にストップし,多くの帰宅困難者を発生させました.今後発生が懸念される首都直下地震に備えて,今回の帰宅困難者問題を振り返って,今後の防災計画に役立てることが急務であると考えられます.

鉄道事業者が検討すべき対策として,「運転再開に関する事業者間の連携」があります.首都圏の鉄道はネットワークとして機能しており,一部区間だけが運行するという状態になると,乗客が集中することで機能不全に陥る可能性があります.実際,最初に運行を再開した銀座線に乗客が殺到し,混雑のために再び運転を見合わせ,さらなる混乱を招きました.実は同様の事象が過去にも存在しています.2006年2月1日に発生した千葉県北西部を震源とする地震によって,JR東日本の東海道線,横須賀線,京浜東北・根岸線などが最大4時間ほど運転を見合わせた際に,ほぼ並走している京急線が早期に運転を再開したために乗客が集中し,ホームは大変危険な状況となったことがあります.今回の地震では,京急は当日中の運転再開を見送っていますが,これは,JR東日本が早々に当日中の運転再開を見送ったこととも関連していると考えられます.

日常的な通勤・通学者の移動パターン(出発駅,目的駅,経路,出発時刻等)は,国土交通省が5年おきに実施している大都市交通センサスの鉄道定期券・普通券利用者調査を用いることで把握することができます.これと首都圏の鉄道網を表すネットワークモデルを組み合わせた上で,路線の途絶状況を設定し,帰宅行動をシミュレーションすることで,各路線の需要,言い換えると混雑状況を短時間で予測することができます.その結果に基づいて,運転再開路線および運転再開時刻を鉄道事業者間で調整することが望ましいと考えられます.

図2.震災当日に運転を再開した路線

卒業研究テーマの例

  • 国家公務員宿舎の跡地を利用した保育園建設
  • 長野県佐久市における介護サービス施設の配置に関する検討
  • 東京23区における診療所の診療時間と診療科目の分析
  • 震災時における帰宅支援道路の必要性とその課題
  • 東京都練馬区を対象とした災害時給水拠点の評価