Maritime Transport

船舶

Analysis for Schedule of Container Ships Using Sea Lane Network

海上航路ネットワークを用いたコンテナ船の運航パターン分析

本研究は,コンテナ船による物流に関して,時間の概念を取り入れた海上輸送と陸上輸送とを統合した輸送ネットワークによるシミュレーションを行い,統合ネットワークの数理的分析および,全体輸送効率から見た海上輸送システムの改善を行うことを目的としています.

まず,海上輸送を表すために,Lloyd's社が提供しているコンテナ貨物船の船舶動静データ(2007年)の地点データおよび,書籍の航路図とデジタル世界地図をもとに,約1700の地点を結ぶデジタル航路ネットワークを作成します.

そして,船舶動静データから得られたODデータを上述のデジタル航路ネットワーク上の最短航路に配分することで,コンテナ貨物船による現状の物流をデジタル地図上に表現します.このとき,出港日と着港日を考慮することで,任意の時点における船舶の位置と船速を推計し,船舶の時空間的解析を可能にしました.

次に,各コンテナ船の地域別航海距離を算出し,コンテナ船をクラスターにまとめました.その結果,アジア内航路や欧州内航路では積載能力の小さいコンテナ船が短距離航海を高頻度に繰り返していること,太平洋航路や欧州-アジア航路ではその逆の傾向が見られることが定量的に明らかになりました.

さらに,ネットワークの数理的分析として,船舶ごとに主要な寄港パターンを抽出し,寄港順序と航海距離との関係を分析しました.クラスターごとに見ると,アジア内航路や欧州内航路では短距離の寄港パターンを数多く周回しているのに対し,太平洋航路や欧州-アジア航路では長距離の寄港パターンとなっていることが明らかになりました.加えて,寄港地の巡回セールスマン問題を解くことで,寄港パターンが航海距離からみて効率的であるか分析したところ,アジア内航路や欧州内航路では,多くのコンテナ船の寄港パターンは最短寄港順であるものの,そうではないコンテナ船では,寄港パターンの迂回率は高く,航海距離からみると非効率的であるという知見が得られました.

最後に,地球温暖化の影響により将来実用化が見込まれる北極海航路に関して,その影響を開発したシミュレータを用いて推計しました.その結果,現状の航海日数を維持した上で,航海距離が短縮された分だけ船速を落とすことができれば,燃料消費量を約40%~50%削減できる可能性があることを示しました.

開発したシミュレータは,航路ネットワークのリンクを削除・追加することで,社会情勢,地球環境等が変化した際のコンテナ船航路への影響を評価することができ,非常に有用であると考えています.

本研究は,2011年に日本オペレーションズ・リサーチ学会より第31回事例研究賞を受賞しました.

図1.デジタル航路ネットワーク

2016年5月6日にYOMIURI ONLINEの「深読みチャンネル」に寄稿した記事をご覧ください.