FAQ

私の研究室に所属を希望する学生の方向けのFAQのコーナーです。今後随時アップデートする予定です。
Last update: 2024/04/16

研究室での研究関連

Q1. 大学院生の指導方針を教えて下さい。

Q1. まず、研究テーマの設定に関してですが、これまで理論神経科学の分野における研究経験がない方が、いきなり適切な研究テーマを独力で設定するのは難しいと思います。従いまして、基本的に修士1年の方のテーマ設定は、多くの部分を私がサポートすることになると思います。ただし、私が一方的にテーマを割り振るというようなことはしません。あくまで本人の研究したいこと、得意としていることなどを考慮して、研究テーマの議論を重ね、双方納得した上で決定します。修士の段階の大きな目標は、一つの研究テーマに関して、研究テーマの設定、研究の遂行、学会発表、論文執筆まで、一通りを経験することと考えています。これを経験することによって、博士課程に進学する方は、博士以降の研究を行う基礎力が身につくと思いますし、修士課程で卒業する方に関しても卒業後に様々な分野で役立つ基礎的な力が身につくと考えています。

一方、博士課程の目標は、必ずしも指導教員の助けを得ずに、(ほぼ)独力で研究テーマを設定し、そのテーマに関して論文執筆まで成し遂げることだと考えています。もちろん、どれくらい私が研究テーマ設定に関して関わるか、ケースバイケースではありますが、自分が設定した研究を行うことの楽しさ・難しさを経験して博士号を取得してほしいと考えています。

修士であっても博士であっても、週1回ないし、少なくとも2週に1回は研究のミーティングを行い、研究の議論及び研究の各段階において適切と思われるメンタリングを行っていきます。あまり他の方と定量的に比較したことはないのですが、丁寧な研究指導をする方だと思います(自分で言うのもなんですが…)。

Q2. 意識以外の対象を研究テーマとすることは可能でしょうか?

A2. 可能です。私自身、意識を必ずしも対象としない研究もしています。主として意識を対象としていたとしても、意識以外の対象にとっても有用と思われる数理を研究していることが多いです。

Q3. 研究室に入るまで勉強しておいた方が良いことを教えて下さい。

A3. まずは研究の全ての基礎となるのは数学力ですので、「微積分」「線形代数」の基礎をしっかりと身に着けることが最重要です。また、物理学の中では全ての基本となる「力学」と、理論神経科学の中でも良く使われ、様々な分野で汎用性の高い「統計力学」の基礎をしっかりと学ぶことをお勧めします。上記に加えて、私の研究室で研究する上で(理論神経科学全般をやる上でも)必須レベルの知識として、「情報理論」「機械学習」の基礎を学ぶことをお勧めします。具体的には、以下の教科書がお勧めです。両者とも私が大学院生の時から名著として知られておりますが、現代でも色あせていないと思います。web上でフリーで入手できます。

・David Mackay: Information Theory, Inference, and Learning Algorithms,
http://www.inference.org.uk/mackay/itila/book.html
・Christopher Bishop: Pattern Recognition and Machine Learning
https://www.microsoft.com/en-us/research/people/cmbishop/prml-book/

以上が私が特に優先度が高いと思うものになります。神経科学及び理論神経科学の基礎的な知識もあるに越したことはないと思いますが、大学院に入ってから身に着けるでも全く遅くないと思います。学部生の時は、理論研究をやるにあたっての基礎体力を身に着けることに多くの時間を費やした方が良いと私は思います。
ちなみに、私自身のことを述べますと、私は学部の時は物理学科にいて、理論神経科学の分野に入ったのは大学院生からです。学部生の時は情報理論も機械学習も全く知らなかったですし(機械学習が今よりも遥かに一般的ではなかったという時代背景もあります)、神経科学及び理論神経科学の知識も皆無でした。また、物理学科にいたにも関わらず、上述の数学や物理学の基礎も全然身についていなかったです…。なので、自分のことはさておき、あくまで理想論を書いているという点だけご注意下さい。

研究室での生活関連

Q1. コアタイム(研究室にいなければならない時間帯)はありますか?

A1. ありません。コアタイムに限らず、私が何かをしなければならないということはありません。当然ではありますが、全て個々人の自主性によって研究する形です。
ただし、私は自身の経験上及び研究室という機能を最大限に活かすという観点から、研究室にコンスタントに来て研究することを強く推奨しています。極端な表現で言えば、「研究室に来る人は研究が進むが、来ない人は進まない」と考えています(もちろん例外はありますが、十分に良い近似だと思っています)。最低何時間いなければならないとか、何時〜何時までいなければならないということではなく、[1]コンスタントに来るすなわち習慣化すること、[2] 短い時間であっても集中すること、[3] 他の人と交流することが極めて重要と考えています。
研究というのは一人でできるものではなく、人と議論したりすることによって初めて可能になるものです。そのための効果的な組織が研究室であって、その機能を活かすためには、一人一人が研究室に来ること、そして交流・議論を生む土壌を作ることを極めて重要なことと考え、構成員の皆さんにもその方針は常々伝えているところです。近年はオンラインの会議ツール(zoom, slackなど)も発展して、リモートでの作業はやりやすくなっていますが、現場に来ることの重要性を代替するものにはなっていないと考えています。こうした便利なツールはもちろん最大限に活かしつつも、現場でしか得られない交流も重要して、研究室を運営しています。

Q2. 研究室の雰囲気を教えてください。

A2. A1とも関連するところではありますが、私が目指している研究室の雰囲気は次のようなものです。個人の自由や事情を尊重することは大前提です。
[1] 研究室にコンスタントに人がいること。[2] 研究室メンバーと気軽に研究に関して相談・議論ができること。[3] 研究以外、日常的な交流も大事にすること(飲み会やイベントなど)。このような雰囲気がどの程度、実現できているのかはラボメンバーに聞いていただくほうが正確かと思いますが、ある程度は実現できているように思います。研究室の立ち上げ直後にコロナ禍があり、研究室内で十分な交流を生むことに苦慮しましたが、今後もこのような研究室の雰囲気作りができれば良いと考えています。

院試関連

まず、院試に関係する質問全般に関して最初に注意です。公平性の観点から院試の詳細に関して、募集要項など公開されている情報以上のことを私からお伝えすることは一切できませんのでご了承ください。それを踏まえて、頻繁に質問を受ける項目に関して以下にお答えします。

Q1. 研究計画書に関して助言をしていただくことは可能でしょうか?

A1. 私が助言することはできません。

その他

Q1. 修士・博士課程の学生に対する経済的な支援制度に関して教えて下さい。

A1. 私が所属する総合文化研究科の学生は、以下のフェローシップに応募することが可能です。

先進基礎科学推進国際卓越大学院教育プログラム (WINGS-ABC)
http://wings-abc.c.u-tokyo.ac.jp/
知能社会国際卓越大学院プログラム (IIW)
https://www.iiw.i.u-tokyo.ac.jp/about/

私の研究室の学生でもWINGS-ABCに採択されている人がおります。採択されると、月額15万円の奨励給付金が支給されます。博士課程の学生に関しては、日本学術振興会の特別研究員制度に応募し、採択されると月額20万円の給与が支給されます。

日本学術振興会特別研究員
https://www.jsps.go.jp/j-pd/

もちろん申請書を作成するのは学生自身ですが、私も申請書に対するアドバイスを行い、採択されるよう手厚いサポートを行っています。

以上は公的なフェローシップの情報ですが、私の研究室の学生に対しては研究室の予算から給料を出すということも行っています。特に、博士課程の学生でかつ当研究室の研究プロジェクトに貢献できる学生に対しては、仮に日本学術振興会の特別研究員に採択されなかったとしても(研究能力が優れた人でもあり得ます)、同程度の額の給料を支給したいと考えています。この方針は、研究室の予算状況によりますが、現在(2021年)の予算状況では実現可能です。私自身、学生の皆さんの経済的負担を軽減し、研究に集中できる環境を作りたいと考えており、そのための施策は今後も可能な限り続けていきたいと思っています。