大泉研究室では現在、以下のプロジェクトのいずれかに関連して、特任研究員を1名募集しています。
学術変革領域研究A「クオリア構造学:主観的意識体験を科学的客観性へと橋渡しする超分野融合領域の創成」ホームページ
ムーンショット型研究開発事業「身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放 」Internet of Brains
研究テーマの自由度は高く、各人の希望を最大限に尊重したテーマ設定が可能です。
少しでも関連した研究テーマに関心がある方は、ぜひご応募検討下されば幸いです。
また、今回の募集では特に、学生の研究指導を積極的に担当できる方を望んでおります。
現在、私の研究室では博士学生10名、修士学生4名、学部学生3名が在籍して、日々熱意をもってそれぞれの研究に取り組んでいます。
しかしながらこれだけの人数がいますと、私一人では全ての学生に対して細かな研究指導を行うことが困難な状況になっておりますので、共同して研究指導も行っていただける方、研究指導にも意欲をお持ちの方を優先的に希望しております。
もちろん、ご自身の研究に割く時間が十分に確保できていることが大前提で、かつご自身の研究の興味関心にマッチした研究テーマに関する指導をお願いすることになります。
応募の前に一度相談などさせていただくことも歓迎です。お気軽にご一報下さい。
応募は大泉までメールでご連絡下さい(c-oizumi atmark g.ecc.u-tokyo.ac.jp)。
最終更新:2025/04/01
1. 学術変革領域研究A「クオリア構造学:主観的意識体験を科学的客観性へと橋渡しする超分野融合領域の創成」
募集人員:特任研究員1名
このプロジェクトは2023年4月から開始した科研費 学術変革領域研究Aに採択された課題になります。
学術変革Aのホームページはこちらをご覧下さい。
また、プロジェクト全体の概要や目標は、領域代表のモナシュ大学の土谷尚嗣さんが作成された以下の動画をぜひご覧下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=T4DDsWfk3Wg
このプロジェクトは学術変革領域研究B「クオリア構造と脳活動から得られる情報構造の関係性理解」で得られた成果を元に、大幅にメンバーや研究スコープを拡充したグループ構成になっています。
前身の学術変革Bのプロジェクトに関してはこちらをご参照下さい。
私は領域目標の「クオリア構造と情報構造の間の関係性の明確化」に対して、以下の2つの目標に取り組みます。
目標1) 大規模心理物理実験によって取得する主観報告データから抽出したクオリア構造と、脳活動データから抽出する情報構造とを対応付け、クオリアと脳活動とがどのように対応するかを明らかにする。
目標2) 知覚クオリア及び感情クオリアに対応する脳活動の情報構造が、どのような学習メカニズムによって生じるかを明らかにする。
【目標1】に関しては、学術変革Bから共同で行ってきた、土谷班が取得した主観報告の行動データから抽出したクオリア構造と、山田班が記録した脳活動データから抽出する情報構造とを、構造の観点から対応を取るという研究の継続になります。
クオリア構造とは、様々な主観的な体験(クオリア)同士の関係性の構造のこと、情報構造とは、様々な神経活動同士の関係性の構造のことを意味します。
クオリア構造と情報構造の対応という目標設定に関しては、こちらの文章をご参照下さい。
・大泉匡史 (2022) 意識の数理的な理論はどのように実験的に検証されるべきか?生体の科学,73(1), 1-5. pdf
これまでは特に色クオリアの構造に対する研究に取り組んできました。以下の論文をご参照下さい。
・Kawakita G, Zeleznikow-Johnston A, Tsuchiya N, Oizumi M (2025) Is my "red" your "red"?: Evaluating structural correspondences between color similarity judgments using unsupervised alignment. iScience, in press.
・Kawakita G, Zeleznikow-Johnston A, Tsuchiya N, Oizumi M (2024) Gromov–Wasserstein unsupervised alignment reveals structural correspondences between the color similarity structures of humans and large language models. Scientific Reports 14 (1), 15917.
今後は上記の論文で提案するパラダイムをより一般の知覚及び感情のクオリアに対して拡張して適用し、クオリア構造パラダイムの確立を目指します。
【目標2】に関しては、認知発達ロボティクスの専門家である大阪大学の堀井隆斗さんとの密な共同研究によって行います。
学術変革Bでは、成人のクオリアを想定した研究でしたが、学術変革 Aでは認知発達の過程にも着目し、クオリア構造がどのような学習過程で形成されていくかに関して明らかにすることを目指します。
この目標のためには、主観報告の行動データと脳活動のデータを解析するだけでなく、行動データや脳活動データを説明する人工ニューラルネットワークモデルを作成することで、構成論的にクオリア構造の発達・学習過程を理解することを目指します。
発達過程にある幼児の主観報告データは、森口班が取得する予定で、私の班は森口班と共同でデータの解析を行います。
本研究計画は幅広い研究テーマや専門性を含んでいるため、特定のテーマというより以下の内容のいずれかに該当すると思われる方の応募を幅広く歓迎しております。
・クオリア構造に興味がある。主観報告データの解析あるいはクオリア構造の数理など。
・クオリア構造と実際の神経活動との対応関係に興味がある。
・クオリア構造をニューラルネットワークモデルで構成することに興味がある。
・クオリア構造の発達・学習過程に興味がある。
・感情に興味があり、データ駆動の感情構造の理解や、ニューラルネットワークモデルによる構成に興味がある。
・意識研究そのものには必ずしも関心がなくても、本研究に関連する数理に強みと関心がある方
特に、現在のチームに必要な人材として、深層学習、表現学習に関して実績と経験がある方、または高次元の神経データの解析に関して実績と経験がある方の参画を希望しています。
プロジェクトの主題はクオリアですが、意識研究そのものには必ずしも興味や前提知識がなくても構わず、本研究に関連する数理に強みと関心がある方も大いに歓迎しています。
実は、私も意識研究に取り組み始めた当初は、意識という対象に強い関心があったわけではなく、統合情報理論に対する数理的な関心があったことがきっかけでした。
ここには記述していない、プロジェクトの詳細に関して、さらに詳しくお話することももちろん可能ですので、関心がおありの方はぜひお問い合わせくだされば幸いです。
2.ムーンショット型研究開発事業「身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放 」Internet of Brains
募集人員:特任研究員1名
このプロジェクト全体の概要に関してはホームページをご参照下さい。
株式会社アラヤCEOの金井良太氏をプロジェクトマネージャーとし、総勢10名以上のPIが参画する大規模なプロジェクトです。
大泉はこのプロジェクトにおいて、ミドルウェアグループに属しており、
・脳活動から感覚や思考の情報を抽出できる新たな人工知能の開発
・抽出された情報の共有を実現する数理理論の構築
・脳活動計測実験による技術検証
といった共通の目標に向かって、グループメンバーと連携して研究に取り組んでいきます。
大泉グループは特に、以下の2つの課題に取り組んでいます。
(1) 脳活動のダイナミクスからタスクのパフォーマンスに関連する脳の状態(精神的疲労など)を推定
(2) 脳と脳の間で直接的コミュニケーション(Think Communication)の実現に向けた数理技術の開発
(1)に関して、より具体的には制御理論あるいは情報熱力学的観点から、脳状態遷移における遷移コスト、遷移効率を定量化する数理的枠組みを構築し、脳状態(精神的疲労度など)の推定及び、ある特定の状態遷移を実現するための効率的な制御入力の推定に取り組んでいきます。これまでの取り組みとして以下の論文をご参照下さい。
・Kawakita G, Kamiya S, Sasai S, Kitazono J, Oizumi M (2022) Quantifying brain state transition cost via Schrödinger's bridge. Network Neuroscience, 6 (1), 118–134.
・Kamiya S, Kawakita G, Sasai S, Kitazono J, Oizumi M (2023) Optimal Control Costs of Brain State Transitions in Linear Stochastic Systems. Journal of Neuroscience, 43 (2), 270-281.
・Sekizawa D, Ito S, Oizumi M (2024) Decomposing thermodynamic dissipation of linear Langevin systems via oscillatory modes and its application to neural dynamics. Physical Review X 14 (4), 041003.
(2)に関して、脳と脳の間の直接的コミュニケーションの実現には、機械学習の技術を用いて、異なる脳の情報表現の対応付け(「翻訳」)を行う必要があると考えます(参考論文, 参考資料)。
教師なしアラインメントの手法を駆使して、脳と脳の間の表現空間の翻訳あるいは、脳モデルの間の表現空間の翻訳を行う数理技術の開発を行っていきます。
現在は教師なしアラインメントの一つの方法として、Gromov-Wassestein 最適輸送法を用いて、脳活動同士の翻訳(アラインメント)に取り組んでおります。
・ Takeda K, Abe K, Kitazono J, Oizumi M (2024) Unsupervised alignment reveals structural commonalities and differences in neural representations of natural scenes across individuals and brain areas. In ICLR 2024 Workshop on Representational Alignment.
・Takahashi S, Sasaki M, Takeda K, Oizumi M (2024) Self-supervised learning facilitates neural representation structures that can be unsupervisedly aligned to human behaviors.
In ICLR 2024 Workshop on Representational Alignment.
・Sasaki M*, Takeda K*, Abe K, Oizumi M (2023) Toolbox for Gromov-Wasserstein optimal transport: Application to unsupervised alignment in neuroscience.
今回の募集では特に(2)の内容にご関心のある方にご応募いただけることを期待しております(もちろん、(1)の内容に関心がある方も等しく歓迎です)。
深層学習、表現学習などに関して研究経験・実績がある方、新規のBMI(Brain Machine Interface)技術開発にご関心のある方の参画を歓迎しています。
採用される方は、このプロジェクトに関連して、理論・モデル研究及び脳活動データを用いた検証・実証研究を行っていただきます。脳活動データの解析に関しては、同じプロジェクトメンバーである栁澤 琢史教授(大阪大学)が記録するヒトECoGデータや、他にもプロジェクト内の研究者が記録するデータ、オープンデータも活用しながら研究に取り組んでいきます。
1.研究室の紹介
大泉研究室は2019年4月1日より発足した研究室です。
神経科学の理論的研究、特に意識の理論的研究に取り組む研究室になります。
研究内容の簡単な紹介はこちらをご参照下さい。
現在(2025年4月)、ポスドク研究員3名、博士学生9名、修士学生5名、学部生2名が在籍しています。
熱意のある研究員・学生が集まった活気のある研究室だと思います。
特任研究員あるいは学術専門職員(リサーチアシスタント)として着任される方は、私との共同研究だけでなく、場合によっては他の研究室メンバーとも共同研究を行っていただく可能性があります。
研究室では週に1回の定期セミナーと、二週間に一度、研究テーマが近い人が集まってのグループミーティングにおける各自の進捗報告、及び個別のミーティングを行っています。
研究室メンバーとの議論の時間を重視しており、議論によって研究を進めていくスタイルです。
2.特任研究員(ポスドク)の方との共同研究の方針
基本的には、当該のプロジェクトに関連する研究テーマを、大泉と共同で行っていただくことになります。
ただし、研究テーマが既に固まっているというよりは、研究員の方との議論によって適切なものを作り上げていく形になります。
各個人で研究の興味・好み、得意・不得意があると思いますので、それらを全て考慮した上で、お互いに納得がいく研究テーマを設定します。
私が現在考えていないような独自の視点からの提案も歓迎します。
大まかなテーマ設定は存在しますが、面白いサイエンスをすること、本人が最も熱意を持って取り組める研究テーマにすることを第一に考えておりますので、その意味で研究の自由度は高いと言えると思います。
また、私自身現在のテニュア職に至るまでポスドクを8年以上経験しておりますので、ポスドクの方のキャリアパスに関して配慮します。
具体的には、次の職が得られるように、以下のようなサポートを行うことができます。
・在職期間中に論文を出版することができるような適切なテーマ設定と時間管理
・科研費などの競争的資金への応募の推奨と申請書作成のアドバイス
・公募書類の作成、面接での対応などに対するアドバイス
東京大学大学院総合文化研究科 特任研究員(特定有期雇用教職員)公募要項
[1] 職名及び人数: 特任研究員 1名
[2] 契約期間: 2025年6月1日以降(応相談) ~ 2026年3月31日まで
雇用開始日は採用決定日に依存しますが、早くすることも遅くすることも可能です。お気軽にご相談下さい。
[3] 更新の有無: 更新することが有る。更新は、予算の状況、従事している業務の進捗状況、契約期間満了時の業務量、勤務成績、勤務態度、健康状況等を考慮のうえ判断する。2028年3月31日までは現状の予算状況で更新可能で、それ以降も予算状況次第で更新可能。
[4] 試用期間: 採用された日から6月間
[5] 就業場所: 大学院総合文化研究科(東京都目黒区駒場3-8-1)
[6] 所属: 大学院総合文化研究科
[7] 業務内容:
下記のプロジェクトのいずれかに関連した研究を遂行すること。
・学術変革領域研究A「クオリア構造学:主観的意識体験を科学的客観性へと橋渡しする超分野融合領域の創成」
・ムーンショット型研究開発事業「身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放 」
また、これらのプロジェクトに関連した、研究室の学生の研究に関して研究指導を行うこと。
[8] 就業時間: 専門業務型裁量労働制により、1日7時間45分勤務したものとみなされる。
[9] 休日: 土・日、祝日、年末年始(12月29日~1月3日)
[10] 休暇: 年次有給休暇、特別休暇 等
[11] 賃金等: 年俸制を適用し、業績・成果手当を含め月額36万円~60万円程度(資格、能力、経験等に応じて決定する)、通勤手当(支給要件を満たした場合に支給)
[12] 加入保険: 文部科学省共済組合、雇用保険に加入
[13] 応募資格
・博士号取得者もしくは採用日までに学位取得見込みの方。
・研究室の学生の研究指導に意欲をもって取り組むことができる方
・神経科学における理論的研究を行うのに必要な数理的素養(統計,情報理論,機械学習,統計物理等)とプログラミング能力を有すること。
・特に以下の項目に実績と経験がある方を優遇しますが、必須ではありません。
(1) fMRI, 脳波(EEG,ECoG), Caイメージング, Neuropixelsなどの脳活動データの解析
(2) 深層学習の理論と実装,自己教師あり学習,継続学習
(3) 力学系に対するデータ駆動解析(クープマン作用素、動的モード分解など)と制御理論
[14] 提出書類:
・履歴書(様式は任意。researchmapなどでも可。)
・業績リスト(様式は任意。researchmapなどでも可。)
・主要論文(3編以内)のpdf。
[15] 提出方法: 上記書類を大泉までメールにてご提出ください。
[16] 応募締切: 2025年5月31日まで。書類選考の上、合格者に対し随時面接を実施する。採用者がいない場合は募集を延長する予定。採用に関する最新の状況は大泉研究室のホームページ参照のこと。
[17] 問い合わせ先〒153-8902 東京都目黒区駒場3-8-1
大学院総合文化研究科広域科学専攻 准教授 大泉匡史
e-mail:c-oizumi atmark g.ecc.u-tokyo.ac.jp
atmarkを@に置き換え下さい。
[18] 募集者名称: 国立大学法人東京大学
[19] その他: 取得した個人情報は、本人事選考以外の目的には利用しません。「東京大学男女共同参画加速のための宣言(2009.3.3)」に基づき、女性の積極的な応募を歓迎します。