意識の理論

従来の神経科学では、外界の刺激s(例えばリンゴという視覚刺激)に対して、どのような脳活動rが生じるかという関係性を研究してきました。この関係性を関数fを用いてr=f(s)と書くとすると、関数fを明らかにすることが、従来の神経科学が主にやってきた研究であると言えます。上図の青い点線で囲った部分です。こうした研究によって、外界の刺激という情報を脳がどのように処理しているかという、情報処理のメカニズムに関して、多くのことが明らかになってきています。一方で我々の脳は、単に外界の情報を処理するだけでなく、「リンゴが見えた」という主観的な体験も生み出しています。自分自身がリンゴを見たときに主観的に感じる「赤」と他人が感じている「赤」が果たして同じなのだろうか?このようなことを一度は考えたことがある人が多いのではないかと思います。

本研究室は、脳から生み出される主観的な体験、すなわち「意識」という問題を理論的に明らかにすることを目標としています。我々が考える意識の理論とは、脳活動rから生み出される意識をCとした時に、脳活動rと意識Cとをつなぐ関数gを明らかにするものです(C=g(r))。上図のオレンジの実線で囲った部分です。我々はこの脳と意識との関係性を解く鍵が「情報」にあると考えており、情報の観点から数学的な変換gを解き明かそうと試みています。