研究の概要

 

研究における私の基本的な立ち位置は、「生き物の種多様性のすごさ、すばらしさ、奥深さ」を、昆虫という生き物通じて社会や人々に伝えていくことです。些細な生き物、とくに私の研究しているような微小で人目につかない昆虫の存在は、ときに軽く見られてしまうことがあります。生態系を多くの生物種が支える積み木の山に例えると、多くの昆虫のような種は、ごく小さな積み木の1つに過ぎないかもしれません。しかし、小さな積み木が歯抜けのようになってしまうと、いずれは大きな山も崩れてしまいます。このような危機がいま私たちの目の前に迫っています。いや、すでにある部分では取り返しのつかないことになっているのかもしれません。生き物には、とにかくたくさんのものがいる。誰も想像のつかない奥深い多様性がある。そういうことを私もより深く理解し、より多くの人々へ伝えられればと思っています。

またこのような研究を行っていると、一般的な現象として面白い発見も多数あります。研究というのは、当然、上に述べたような責任のもとだけで行っているわけではなく、好きだからこそ、楽しいからこそ続けているという側面があります。そこには科学とは何か、進化生物学云々といった標語は不要です。最初は「ヒゲブトハネカクシの分類」という課題を始めたのですが、そこから枝葉が広がり、今ではさまざまな研究を行う機会に恵まれました。現在は以下の4つを主な課題としています。

 

研究1:社会性昆虫と共生する昆虫の種多様性と進化

 

研究2:ケアリ属における分類学的再検討と社会寄生・生態・形態の進化

 

研究3:ヒゲブトハネカクシ亜科の高次系統と族分類

 

研究4:ヒメサスライアリの種多様性と系統進化

研究5:ツノゼミの分類と系統進化

 

いずれも興味深い課題が多く残されており、学生さんにテーマを持ってもらうことも可能です。

私と一緒に研究をしたい方は、九州大学農学部の昆虫学教室に所属してもらうことになります。