研究4

 

ヒメサスライアリの種多様性と系統進化

 

ヒメサスライアリAenictusは旧熱帯(アジアとアフリカの熱帯域)に分布する軍隊アリの仲間です。好蟻性昆虫の重要な寄主ですが、分類が非常に混乱しており、それが好蟻性昆虫の研究の足枷になっているところがあります。これが本研究のきっかけです。

その混乱とは、まず学名の問題です。ヒメサスライアリには2つの分類体系があります。1つは職アリによる分類体系で、アジアから約50種が知られています。もう1つは雄アリによる分類体系で、アジアからは50(亜)種が記載されています。ところが、職アリと雄アリの対応がついているのは、わずかに4種です。近年職アリで記載された種がすでに雄アリで記載されている可能性がありますし、新種とされているものもすでに雄アリで記載されている可能性があります。ヒメサスライアリの正確な種名の決定のみならず、今後の分類学的研究の推進にあたっても、今後職アリと雄アリの対応をつけ、学名を整理していく必要があります。最近、雄アリを効率的に採集する方法を見出し、DNAを調べて職アリと雄アリの対応をつけることに成功しました。

同時に、採集法の確立に基づき、ヒメサスライアリの雄を指標として地域の生物種多様性を計るという研究も行っています。

また、ヒメサスライアリは、アリを専門に食べるアリですが、選好するアリが種ごとに異なっていたり、また形態的にも多様で、系統樹をもとにした進化の考察に好適な材料です。さらにメスが飛ばず、巣分かれによって増殖することから、地理的に分化が進んでいる可能性が高く、系統地理の研究材料としても面白いものです。職アリと雄アリの対応をつける延長で、そのような研究も始めています。

 

   4-1. ヒメサスライアリの分類における革命

   4-2. ヒメサスライアリの雄による種多様性の把握(伊藤文紀氏との共著)

   4-3. ヒメサスライアリの分子系統(杉本嵩臣氏との共著)

 

写真はヒメサスライアリAenictus laevigatusの雄。