研究3

 

ヒゲブトハネカクシ亜科の高次系統と族分類

ヒゲブトハネカクシ亜科は甲虫のなかで最も多様性解明の遅れた分類群のひとつで、その背景には族や亜族といった高次分類体系の混乱があります。ヒゲブトハネカクシは形態的・生態的に極めて多様な分類群ですが、系統関係を調べるのに必要な形態情報に乏しく、総合的で緻密な研究が必要とされています。実は好蟻性昆虫の大半はヒゲブトハネカクシ亜科の甲虫であり、好蟻性昆虫の種多様性解明にはヒゲブトハネカクシ亜科の高次系統に基づく分類学的研究が欠かせません。 ヒゲブトハネカクシは、極地地方を含む全世界、潮間帯から高山地帯、社会性昆虫の巣、哺乳類の巣、洞窟、キノコ、樹上などなど、実にさまざまな環境に生息し、この課題による系統進化の実態解明は、一つの分類群における著しい多様性創出の例として、きわめて重要なものとなるでしょう。これは非常に壮大な研究ですが、地道に標本と情報を蓄積しつつ研究を進めたいと思っています。 関連して、日本産潮間帯性ハネカクシの各種の体系学的位置に関する検討と分類学的研究を進めています。一部の族ではすでに系統仮説が出されており、それに基づき体系付けられていますが、まだ見直す必要があると考えており、本研究の一つの焦点となっています。また、日本の自然海岸が失われつつあり、海岸環境が激変している今、多くの種が人知れず減少していると考えており、早急な分類学的研究を必要としており、これも副業として行っています。

 

   3-1. ヒゲブトハネカクシ亜科の分子系統、族の再編成

   3-2. 日本産潮間帯性ハネカクシの分類学的研究(林成多氏との共著) *標本募集

 

写真はタイ産アリノスハネカクシの一種Rhynchodonia sp.。