秋の宮温泉郷/秋ノ宮(役内)エリア
地質に由来する温泉と清らかな水が豊富な場所です。川原の湯っこでは、川原にある橙色や濃緑色を帯びた温泉噴出口を利用して自作の足湯を作ることができます。荒湯では、温泉の影響で鮞状珪石が産出しました。湯の又大滝は、断層により生まれた滝で、近くの湯の又沢散策路ではリバーウォークできます。温泉のもととなる熱源は約23万年前に噴火したとされる高松岳の残存エネルギーです。
川原の湯っこでは温泉と川が混ざり合うことで温度勾配が生まれ、それに応じて橙や緑色の温泉藻が発生します。
Thermoleptolyngbya属 (400倍)
左:Chloroflexus・Roseiflexus属、右:Thermosynechococcus 属 (400倍)
鮞状珪石は噴泉塔 (チムニーのような形状の構造物) から産出したとされる石で、ハタハタの卵に似ていることから、ブリコ石とも呼ばれています。温泉微生物の鉱物形成作用 (バイオミネラリゼーション) などにより形成される微小な球状のシリカをまとうことでゆっくりと成長し、できたオパールです。
ちなみに、海外では珪華 (珪酸に由来する湯の華;sinter) の一種、卵状のGeyserite (あるいはSiliceous oolite) と呼ばれていて、珪華は荒湯にある木の葉石露頭でも見ることができます。鮞状珪石はジオスタ☆ゆざわに展示されています。
鮞状珪石(ジオスタ☆ゆざわの展示物)
木の葉石露頭 (温泉沈殿物)
荒湯で産出する鉄明礬石 (ジャロサイト) もスルフォロブス (Sulfolobus sp.) という微生物の働きが関与してつくられた岩石と考えられています。
また、オパール内にはシアニディオコックス (岩石内生物 endolithic) が見られます。
鉄明礬石 (ジャロサイト)
オパーリンシリカ内の微生物 (Cyanidiococcus yangmingshanensis)
この地域は湯量豊富な一方で、水害に悩まされた歴史があり、千代世神社の朴の木の巨樹、稲住温泉の源泉、旧川井橋(ドイツ橋)では洪水に関する記録が残されています。さらに古い時代を見てみると秋ノ宮一帯が堰き止め湖でした。
かつての災害を学ぶことで現在の防災にいかすことのできる地域です。