高松(三途川・川原毛)/高松エリア

~いにしえの 火山の恵み あつき雪 いかして築く 歴史と暮らし~※写真は泥湯温泉の眺め

三途川層と呼ばれる湖底堆積岩がこの地域で広がっています。これは、かつて巨大なカルデラ湖 (北西―南東に10km×20km) があったおかげで形成されました。

三途川層。写真は皆瀬サイト群の市野つり橋からの景色で、バームクーヘンのような縞模様をしています。

三途川渓谷では、高松川により削られた三途川層を見ることができます。層と層の間には動植物の化石が含まれています。約700万年~200万年前のものと推定されていますが、場所によっては現代の生物に近い、2万年くらい前の化石も見つかっています。


三途川渓谷
三途川層の化石ジオスタ☆ゆざわ

川原毛地獄や木地山湖沼群はかつての火山活動によりできた場所です。

川原毛地獄

川原毛大湯滝

川原毛地獄では白い山肌を見ることができます。硫酸や塩酸、硫化水素を含む熱水・火山性ガスによって珪酸以外の岩石成分が溶け出たため、大地が白くなりました。周辺土壌には好酸性細菌などの極限環境微生物が生息し、周辺の鉄柵で腐食も見られます。

また、川原毛大湯滝は川原毛地獄の近くにある酸性温泉の滝です。川原毛大湯滝の源泉はpH1.35の強酸性で、ガルディエリア (Galdieria sulphuraria) といった温泉藻が生息しています。この生物は廃液中の貴金属を回収できるほか、下水で培養して (水熱液化処理を通して(※)) 燃料を産出できることから有用とされています。

火山性ガスや温泉のもととなる熱源は約23万年前に噴火したとされる高松岳の残存エネルギーです。

水熱液化処理で用いるエネルギーを少なくするよう対象生物の細胞の硬さを遺伝子組換えで操作する技術があります。

廣澤寺の乳神大イチョウ

女人禁制の山だった川原毛地獄は、「羽州の通融嶮」と呼ばれてきましたが、これは血盆経 (血の池地獄) 信仰の発祥の地とされる古代中国 (羽林国) の都、追陽懸が関係しているという考えがあります。川原毛地獄の荒涼とした景色が人々に対し畏怖の念を与え、血盆経への信仰心が掻き立てられたようです。

かつてこの場所に霊通山前湯寺がありましたが、寺号改め、場所を移転し、嶺通山廣澤寺 (稲庭町字小沢) となっています。廣澤寺には乳神大 (ちちがみおお) イチョウがあり、母と子の成長を祈る、願掛けの対象となりました。イチョウの巨木には気根と呼ばれる組織があり、昔の人はこれを見て乳房を連想したようです。

蓬莱高松鉱山とチャツボミゴケ

川原毛大湯滝や蓬莱高松鉱山に生息する代表的な生物がチャツボミゴケ (Jungermannia vulcanicola) です。チャツボミゴケの仮根の根本には赤褐色の水酸化鉄が沈着して硬化しています。これは根本から漏れ出た光合成由来の酸素と二価の鉄イオンが出会うことで形成される「鉄プラーク」と考えられており(※)、電子顕微鏡で見るとボール状の鉄鉱物が根を中心に放射状に分布していることがわかっています。かつて蓬莱高松鉱山で採掘された褐鉄鉱の成因としてチャツボミゴケの生息が関わっていたようです。

※その他の説としては、苔の表面が光合成の影響でややアルカリとなり、その影響でFeが沈殿するという説もあります。二酸化炭素の溶けた水は次の化学式で示すような化学平衡を保っています。「CO2+H2O ⇔ H2CO3 ⇔ HCO3-+H+ ⇔ CO32-+2H+ 」 苔の光合成が行われるとCO2が減少し、平衡状態を保つために、HCO3-ないしH+ の低くなる左方向への反応が進みます。

水のイオン積Kwは[H+]×[OH]=10-14(一定)で示されます。H+が低くなることはOHが高くなること (アルカリ性になること) を意味し、鉄イオンとこのOHとが出会って水酸化鉄の沈殿物ができるようです。

ユビオナシカワゲラ (Protonemura sp.) 
三途川隧道

川原毛大湯滝 (強酸性の温泉) が入り込む湯尻沢、蓬莱高松鉱山に由来する重金属が入り込む渋留沢、そしてそれらの川が合わさった山葵沢があります。山葵沢合流後の高松川は農業用水などに利用できないため、合流前の上流に堰と隧道 (トンネル) を作り水を確保しました。

酢川 (須川) と呼ばれる高松川下流に魚は生息しませんが、ユビオナシカワゲラなどの昆虫をみることができます。

苔沼 (木地山湖沼群の一つ)

苔沼や桁倉沼、惣兵衛谷地は、地すべりや山体崩壊により生じた凹地に水が溜まってできました。苔沼の浮島の上に生息するイボミズゴケやジュンサイの上で産卵するエゾイトトンボ、ギンブナなど多様な動植物を観察できます。一方でヒブナ (Carassius auratus、在来種と外来種の交雑種) がたくさんおり、本来クローン繁殖 (雌性発生) を行うギンブナと人の手により放流されたキンギョとが稀に交雑して生まれたようです。

沼底に沈んだ植物残渣(泥炭)が、メタン菌の働きにより浮かび上がるなどして「浮島」ができたと考えられています。植物残渣が完全に分解されずに泥炭となるのは、気温が低いことやユスリカが少ないことなどが関係していると考えられています。ユスリカは沼底の植物残渣を摂食することで成長し、羽化とともに沼の外へ移出します。いわばユスリカは沼底の植物残渣を分解するだけでなく、沼底から沼の外への物質の流れも引き起こしています。しかし、苔沼に高密度に生息するアカハライモリなどが、ユスリカ幼虫を捕食することで、先の物質の流れを低く保っているようです。

ルリシジミ

惣兵衛谷地ではツルコケモモ (Vaccinium oxycoccos) が咲き乱れ、それらの蜜を吸うために無数のルリシジミ (Celastrina argiolus) が飛び交います。幻想的な景色を楽しむことができます。

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