JaSPCAN
2024 高知
主題
神奈川県と大和市における児童虐待対応の連携協働モデル事業経過
-市が児相を毎週 2 日間レンタルしてみた-
企画趣旨
本モデル事業は令和 5 年 7 月から本格開始した。事業目的は 2 つ。
①通告を受けた虐待事案について、市と児相が共同でアセスメントし、その場で適正な役割分担を行うとともに、早期に必要とされる支援に繋ぐ。
②市における虐待対応の専門性向上と人材育成の強化を図る。
実施体制は、毎週2日間、児相の担当 SV が大和市に出張するもの。①について。児相と市の一方に通告があれば、一定条件の事例は Skype を活用してオンラインの県市合同受理会議を開催する。事例によって会議で送致が決り、その場で担当機関が交代することができる。この送致は、試行期間を経て令和 5 年度 10 月から開始した。 令和 6 年に入り、児相から市への通告件数は増加している。市から児相への送致が年間 15 件。児相から市への送致が年間 40 件程度を見込んでいる。②について。ここまでの本事業の評価について、機関連携と保護者支援の 2 つの視点から、この事業の間に取り組んだ実践事例の報告として相談員から紹介する。
○「神奈川県と大和市における児童虐待対応の連携協働モデル事業の実施経過報告」
本モデル事業は令和 5 年度 7 月から開始した。毎週 2 日間、児相の担当 SV が大和市で終業時間まで勤務する。主な業務 2 つある。
1 つ。児相と市の一方に通告があれば、一定条件の事例は即時県市合同受理会議を開催し、どちらが担当するかを決める。会議はオンライン開催。令和 5 年度は 73 件の会議を行い、市が送致を望んだのは 7 件、児相が望んだのは 4 件で、全てその場で送致が決った。即日閉止することができるし、協同して対応したものもある。
もう 1 つ。職員の育成を支援すること。大和市では要保護児童と要支援児童をあわせて年間四百数十件の事例が発生する。毎日の受理会議、月2回のケース検討会議、各事例は 3 か月に 1 回の点検で進行管理していたが、モデル事業の中で管理体制を修正した。
その中で、令和4年度の要支援児童のケース終結件数が 128 件だったのに対し、令和 5年度は 199 件と増加し、保護者支援の目的や方針が適切に整理されるとともに、職員のスキルアップが図られた。
○「児相と市間で効率的に送致する取組みの報告」
これまで児相と市間の送致は十分な協議を要した。具体的には、例えば児相が「あのマンションの方から、尋常ではない子の泣き声がする。」と通告を受ければ、住基、関係機関の情報を収集してから市と事前協議する。また市が学校から「保護者に叩かれたと言っていて、うっすらアザの様なものがある。」の通告を受ければ、学校を訪問して調査し、子の痣を確認してから児相と事前協議する。これら調査と検討にかかる時間と、送致後に送致を受けた機関から再度調査される機関の負担を軽減することは、業務の簡素化と職員の負担軽減にとって重要であり、さらに重度虐待と軽度虐待の得意分野を担当することで職員にも家族にもメリットがある。令和 6 年度、児相から市への送致件数は 4 月1 か月間で 5 年度の件数を上回った。市への送致は月の上限件数を設け、市に無理のない範囲で連携する。モデル事業の送致について紹介したい。
○「家族にも機関にも見通しが持てると優しくなれる」
モデル事業で児相の SV がいる週 2 日間は、いつでも私に合う方針を探せた。事業期間における相談員としての活動について機関連携を中心に報告する。
私は相談員になった当初、「整理して。」が理解できなかった。モデル事業で最初に習ったのは整理だった。相談を『心配』と『安心』に分けて聞き取ると、自分の防ぎたいことが見えてきた。分けて聞くことは調査やケース会議でも役立った。
他にも習った。面接で保護者から、「相談してもどうせ何も変わらない!」と言われたら、『私、子育てに困っています』と翻訳できるようになった。保護者からの「貴方だったらどうしますか?」、今までうまく答えられなかったけど、「私のやり方が○○さんに合うかわからないので、○○さんの家庭に合う方法を一緒に考えましょう。」と答えられた。難しかった機関連携にも光が見えた。学校から通告を受けたら、すぐに学校を訪問した。保護者と対立しない言葉「(子から)『お母さんと喧嘩した』って聞いたけど、怪我とかは大丈夫でしたか?」を学校と共有すると、保護者は不安なく私とつながった。
ケース会議は、他の機関から「心配だ」「今後虐待が起こる可能性がある」と言われると反論できず終結できなかったけど、反論せず共通の目標を探すと言い合いが意見交換になった。役割を先延ばしする機関への催促は期限を設けると調整に変わった。組織間の不安や不満は共感しつつ事前に聞取り、不満を解消できる準備をして会議を開いた。発表してほしいことは事前に依頼した。それで、ある日、今までも経験したことがないくらいにあっけなく、みんなが賛成して事例が終結する会議ができた。
○「怒鳴る保護者に伝わる会話」
大和市では、現在一人の相談員が 30〜60 件の事例を担当する。その中で相談関係が難しく「どこも役に立たない!」「言ってできない子なら殴るしかない!」「悪いのは子だ!」と怒鳴られることがある。私の仕事は怒鳴る保護者も支えること。でも、どうにもできそうもない保護者は児相レベルではないのか。難しい保護者なら送致できないだろうか。そう考えたくなることがあった。でも、最近は、何かを見落とさなければ話せるかもしれない。その何かを考えることもある。
モデル事業では、保護者の言葉の背景を考えた。そこから見える保護者は、例えば言葉とは裏腹に約束を守り、一生懸命で、子を思う気持ちが空回りする不器用な保護者だった。保護者の人となりが見えてきても、私の話が回りくどければ保護者は怒った。そのため家庭訪問の会話を想定し、相手が怒る前に子育ての良い点を探した。私に会うたびに大声を上げた保護者が、子を叩きそうになると電話をかけてくれるようになった。家庭訪問では、「ちゃんと約束は守っているから」と暴力せず、「親だから」と自分を押さえてトラブルの多い子を 養育していた。誤解されても仕方がないような保護者、その背景についてうまく説明できると、関係機関が保護者を支えてくれた。
保護者も機関も課内も、私の伝えたいことが伝わるためには、私の整理が必要だった。
2023 滋賀
主題
保護者に寄り添って解決する支援の取組み ~はじめての面接を支える~
企画趣旨
本県でボトムアップ的に始まった市町村職員等を対象とした研修:要対協サポート講座は、6年目を迎え、県域すべての児童相談所が実態に合わせて開催する広がりを見せている。研修の特徴として、基本となる11講座の教材を県域全児童相談所共通のネットワークで共有し、管理・更新していること。講師は共通の教材を使い、スライドノートの、講師の『おすすめコメント』や『根拠法』などをガイドに講義できる。異なる講師が同じ教材で講義するため、経験の少ない講師は事前に他児童相談所の研修を見学できるほか、各所の判断で、児童相談所にアシスタント講師を配置してインターネットを利用したビデオ通話システムで他児童相談所の講義を中継し、ワークはアシスタント講師が丁寧にフォローするなど、柔軟に実施できる。
研修内容と結果について報告するとともに、昨年度新任として育成された職員から、受講者から見た習得の過程を虐待対応の実践事例を通して報告する。
会場との意見交換を通して今後の職員育成や研修の在り方について考察したい。
○新任職員による保護者との面接の実践報告1:DReam〜子の面前での暴力となった事例を通して〜
毎年、新規採用や転任による職員(以下、新任職員と略す)が虐待相談の担当となり、なんとかひとりで面接できると、翌年春には後輩を育成する立場となる。
2021年に開設した大和綾瀬地域児童相談所は、年間900件程の通告があり、私の班は内600件程を担当する。班員は2021年度5人(内3人新任)。翌2022年度7人(内3人新任)。今年度7人(SV、3年目2人、2年目3人、新規採用1人)である。
人材育成目標は、万能でなくても、保護者や関係機関に感謝され、虐待を解決できる職員に育つこと。
4~5月期:準備したセリフを1つ2つ質問できる。
5~6月期:準備したセリフを2つ3つ質問できる。
7~8月期:虐待について保護者の理解を得られる。
9~11月期:準備した10程度の質問で、面接や調査を完結できる。
その後は、準備と実践を重ね、4月には先輩として新任育成に関わる。
育成中の職員による面接について報告する。
[事例A]
面接で、母は、私の質問に抑揚のない早口で答えた。母は面接の中盤まで視線を合わせず、暗かった。母に理想の家族像を聞いた時、ポロポロと涙を流し、「夫のことが信じられない」と語った。その数分後、理想への最初の小さな変化の質問をきっかけに、母は自分がどう振る舞えば家庭が安定するかを語り出した。数か月後の面接で、母は「夫婦の会話が増え、互いが理解できてうまくいっている」と、リラックスした笑顔で語った。
1年目の上半期。私は、集中力が持たず、面接中に眠くて何も考えられなくなった。眠気を克服すると、今度は保護者が私の質問に応じてくれるか不安になった。不安を払拭し、面接をやり遂げられたのは、面接中の保護者を信じられたことと、そう実践する先輩たちの存在だった。
保護者が自分で解決策を考える切欠となった質問や、事前の準備などについて報告する。
○新任職員による保護者との面接の実践報告2:DReam〜長くなりがちな面接を適切に整える工夫について〜
今年2月。次年度に向けて面接を完成する時期、私のある面接は迷走し、2時間以上かかった。保護者の表情は冴えず、自分も保護者も疲弊した。1時間以内に保護者は自分のすべきことを理解し、互いに笑顔で終える面接もできたのに、何が違ったのか。
1年目の上半期、私は、保護者の話題で気になったこと、心配になったことを質問したので、面接はいつも長時間だった。それで、事前に準備した質問に集中し、気になったことの質問は2問までと制限した。すると、論点が絞れて、保護者は考える時間ができて、すべきことに気づく保護者が増えた。しかし2月の迷走した面接は、父の不満や生活の苦労話に共感し続けた結果、保護者は沢山話し、疲れ、自分のすべきことを考える前に力尽きた。なすすべのなかった私は、面接後すぐに、次の同じような面接を乗り越えるためのフレーズを先輩と探した。「そんな中でも…。」「そんなお父さんが…。」次は大丈夫だと思う。
保護者は子育ての体力と気力を温存しつつ支援プランを効率的に探す面接への工夫、長くなりそうな話を切り替えるフレーズなど、面接の改善に役立つポイントについて、エピソードを交えて報告する。
○市町村研修の教科書・教材開発と柔軟な実施方法の工夫について:要対協サポート講座
平成29年、1つの児童相談所(以下、児相と略す)、数人の参加者で始まった要対協サポート講座は、現在では神奈川県域全児相で開催される。
特徴のひとつは、教材を県域児相共通のネットワークで管理、更新するなどの講師への配慮である。各講師は、スライドなど最新の共通教材で、スライドのノート機能のコメントなどをガイドに講義する。異なる講師が同じ教材で講義するため、事前に他児相の研修を見学したり、他児相の講義を中継してグループワークを主宰したりなど、柔軟に実施している。
当児相では、令和4年度は年10回実施した。年度途中からインターネットを利用したビデオ通話システムとのハイブリット開催となり、管轄内外から年間延べ200名を超える参加があった。反面、ビデオ通話システムのグループワークでは細やかな配慮などが課題となった。今年度は11回開催予定で、参加者は増加している。
11の研修内容は『調整技術』『調査技術』『面接技術』の3つに分類される。『調整技術』は要保護児童対策地域協議会(以下、要対協と略す)の概要やケース会議、進行管理と支援方針策定などに関することなど。『調査技術』は、通告の聞き取り、アセスメント、初期調査に関することなど。『面接技術』は、解決に向けた保護者との面接に関することなどである。法律、通知などの根拠を示しつつ、参加者が業務で活用する際のセリフを例示し、体験するなど、学びやすさと即実践できる即効性に配慮した。
また、今年度から復習として研修後に講義毎の問題集(A5.30~50頁)を配布し学びを持続する取組みを開始した。
研修に参加できない人へは、教材を無料の電子書籍として公開し、研修で使用した主要な動画もインターネット上に公開するなど、いつでも学べるように配慮したことで、『面接に備えて、もう一度確認したい』職員は、出勤途中で動画を見直すなど、活用している。
2021 神奈川
主題
市町村が望む 児童相談所からの支援
ー個別ケース検討会議等の改善に取り組む県市合同報告ー
企画概要
市町村支援をする児童相談所の取組と、県市それぞれから現在の活動状況を報告する中で市町村支援の効果の確認を試みる。
大和市は児童虐待が発生した際などに使用するマニュアルやアセスメントシートなどを、教育委員会、要対協支援拠点、児童相談所が協力して見直し、学校の教員の目線で表記を統一して作成した。ちょっとした違いが現場では大きな違いとなる。そこに配慮することの大事さを発見した取組について報告する。
児童相談所は個別ケース検討会議の進行方法を支援する際の方法や内容について、ポイントを解説するとともに、動画などを用いた実演を通して報告する。より効果的な支援について会場と意見交換したい。
茅ヶ崎市は個別ケース検討会議や、ケース家族に対する「練習を主とした子育て講座」「当事者参加型のケース会議」の取組について報告する。
【目的】
「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」で市町村支援担当が配置され、市町村と児童相談所の連携について強化が図られた。
児童相談所がこれまで行ってきた市町村支援のうち、研修、事例対応支援、関係機関への啓発については本学会の第23回から第26回で報告した通りであるが、今回は成果が出るのに一定の期間を要した個別ケース検討会議の司会支援と、管内市の活躍の現状について報告する。市の活動への市町村支援の影響など、県市それぞれから現在の活動状況を報告する中で市町村支援の効果の確認を試みる。
【方法】
児童相談所と市双方の視点から、その取組と成果について報告する。
【結果】
市が希望する支援として、個別ケース検討会議を例にとれば、児童相談所の希望は3種類に分けられる。①「私が、押し付け合わない会議の進行方法を知りたい。」②「各機関が、自分で役割を担わなければならないと理解する方法を知りたい。」③「困っていないので支援は望まない。」①と②の違いは自分が変わりたいか、他機関を変えたいかである。また、③には2つの状態がある。③-1「司会手順が高度に整理され、司会するスキルがあり、目的に適した役割分担で各機関と合意できるため困っていない。」③-2「参加者が顔見知りであるなどで会議はもめずに終わるため困っていない(「司会が市町村以外」「各機関が負担感を分け合うように役割が決まる」「意見交換中心」「結論は見守りが多い」などの特徴がある)」
希望①、②、③-1、③-2で支援は異なった。③は、時間が必要なので市町村が望むまで支援は控えた。その間、一緒に動く時間を作り、困る場面が共有できたら、③-1困る場面について整理を手伝った。③-2は困っても現状を変える不安が高いなら、助言せず共感し、その市町村の事情、資源、大切にしていることなどを理解しつつ、支援を望むまで待った。②は児童相談所が市町村支援を目的に司会し、押し付けない会議を実演し、体験する機会を作った。児童相談所がうまく司会できれば、大抵は「その司会方法を教えてほしい」と望み、①と同じ状態になった。①は、事前に会議の想定問答などを確認し、司会を練習した。また、うまくいかない機関との業務調整に同席して関係調整に協力した。個別ケース検討会議で使用する効果的な資料、例えば「要保護児童対策地域協議会の目的や守秘義務を説明するリーフレット」「地域の実態に合わせたアセスメントシート」「啓発を目的としたガイドブック」などの作成を支援し、機関調整の環境を整えた。
【考察】
私たちが関わった市の状態が最初は③であることは、少なくない。理由のひとつは「できている」と感じているからである。「支援してくれるというのなら児童相談所に担ってほしい役割がある」と、児童相談所がもっと機能することを希望することもあった。一方児童相談所は、市町村は「できていない」から「支援が必要」と思い、「もっと役割を担ってほしい」と思っていた。
お互いが相手に期待しているだけでは、市町村支援の成果を期待するのは難しい。
反面、担当者間の①から③は時期や事例で流動的であり、市職員の業務習得度で変化する面がある。よって、担当者個人の方がニードが生まれやすい。ただ、個人が組織の板挟みにならないためには、県と市が互いに理解し合う情報と時間が必要である。この時間は数ヶ月のこともあれば、数年のこともある。焦らず必要な時間を積極的に作ることが結果的に効果的な支援につながった。
上記【考察】の一部を以下に報告する。
●「学校、市、児童相談所の気持ちをひとつにするために共通の言葉を探した大和市の取組と成果について」
令和2年度、学校、市、児童相談所の適切な連携を図れるよう、学校現場における既存のマニュアルの見直しを行った。関係機関相互の役割理解のためには、共通認識および共通言語が欠かせないと考え、国の「一時保護決定に向けてのアセスメントシート」(子ども虐待対応の手引き)と「児童等(特定妊婦を含む)の情報提供に係る保健・医療・教育等の連携の一層の推進について(別表1〜3)」を現場の教員にわかりやすい言葉を用いた大和市版アセスメントシートを作成し、見直したマニュアルとともに市内で使い始めたため、その様子について報告する。
●「個別ケース検討会議を気持ちよく成功させる秘策『プレケース会議』の紹介」
要対協がよりスムーズな個別ケース検討会議を行うため、会議の司会役との事前協議(以下、『プレケース会議』)を実施することで要対協を支援している。『プレケース会議』は、要対協の担当職員と、児童相談所の担当児童福祉司、教育委員会の担当者を交えて行う。各自が調査した内容をもとに、個別ケース検討会議当日の流れに沿って関係機関からの意見を想定しながら会議を実際に行う。『プレケース会議』中は、会議を途中で止めてホワイトボードの書き方や司会のセリフの修正など、参加者と情報を共有しやすいよう調整していく。『プレケース会議』を実施することで、司会者は予め情報を把握することができ、余裕を持った対応から当日の参加者に安心感を与えられる効果が見られた。また、人材育成の観点からも各機関への理解が深まる。『プレケース会議』を再現し、実際の様子を紹介したい。
●「市町村における児童虐待予防の取組について考える」
茅ヶ崎市は積極的な家庭支援と年間100回を超える個別ケース検討会議を行い、特に「基準の共有」「練習を主とした子育て講座」「当事者参加型のケース会議」に力を入れてきた。平成30年度に要支援児童の件数が要保護児童の件数を上回り、要対協の活動が虐待対応から虐待予防へシフトした状態が続いている。これまでの具体的な活動とそこから見えてきた課題ついて報告し、市町村ができる児童虐待予防のこれからについて考えたい。
2020 石川
主題
「それなら、私が!」保護者支援に手を挙げる学校が次々誕生した。
ー地域からの実践報告ー
企画概要
児童虐待相談の通告経路は様々あるが、近年その比率に大きな変化なない。市町村と児童相談所別に、経路の多い順に機関を比較すると、市町村への通告件数が最も多い機関は「児童相談所」であり、児童相談所への通告件数が最も多い機関は「警察」である。続いて件数の多い機関は、児童相談所、市町村ともに共通して「学校等」であり、毎年、通告経路の1〜2割を占める。
これまで我々は、学校等と望ましい形で連携できることもあれば、そうならないこともあった。そうならなかったときは、我々も学校等も、お互いに相手が役割を担っていないと感じ「今後こそ役割を担わせよう」または「もう二度と顔を見たくない」など、同じように子の幸せを願うのに、敵対関係となる。ところが、気持ちを同じくして保護者を支援したときは、お互いの存在を力強く感じ、気持ちが楽になり、仲間になる。
「今から訪問する学校は、仲間か敵か」
この不毛なストレスを軽減したい。そう考えた市町村、児童相談所それぞれの取り組みを報告する。
ひとつは、学校から通告があった場面である。
厚労省の通知等では訪問調査が基本とされているが、以前の我々に調査では、電話調査の比率が高く、訪問調査の比率は、なるべく訪問を心がけていて5割台。低いところで1割程度だった。まず学校等への訪問調査の頻度を高めることで、早期発見・早期通告に加えて、学校等の虐待対応力の向上を図った。
これまでの私たちの経験では、学校が虐待を発見した場合は市町村か児童相談所に通告し、「あとは対応してください」「一時保護してください」時には「連絡しただけなので何もしないでください」ということもあった。
どの意向も適切性が不明だ。理由はアセスメントする前に結論を出しているからである。学校等に所属する児童に虐待が発生する確率は1%未満程度であり、年間数百件受理する我々に比べて1校あたり年間ひと桁の発生数にとどまる。そのため我々が通告受理後に学校を訪問し、先生方とアセスメントすると、たいていは学校等が当初思ってもいなかった結論に落ち着いた。
我々の取り組みの中である地域では、通告時には親と戦うことを考えていた学校は、アセスメントを通して保護者の肯定的な側面に触れた結果、4割の学校等が、まず学校自ら保護者に寄り添って面接し、虐待を解決することを選んだ。
またひとつは、学校で保護者も参加するケース会議を開催した。
会議は保護者の応援ミーティングとなり、学校は保護者に寄り添って虐待を改善していった。
毎年人事異動のある我々が、地域に保護者を支援できる機関を増やすには、研修や関係づくり以上の速さで拡散する啓発技術が求められる。少なくとも年度の前半に「学校等」が我々の支援を受けて保護や支援に成功すること、訪問調査1回で我々が「学校等」のハートを掴む方法が、この答えのひとつとして期待できる。
2019 兵庫
主題
市町村支援の実践報告
ー私たちは保護者と共通の目標を持って子育てを支援するー
企画概要
法改正による児童相談所職員の配置人数の見直しに伴い、現場では経験年数の少ない職員が急増している。その状況で児童相談所による市町村支援が開始された。
厚木児童相談所からは、比較的軽微な虐待通告への対応を担う支援担当班(H30年度年間対応件数889/1450件)が、同様の事例に対応する市町村を支援するために向けて取り組む支援の総合コンサルティング「YO・RI・SO・I」について紹介する。
「YO・RI・SO・I」は、3つの部門で構成される。
1つ目は、プランニング部門「とりあえずどうでしょう」。児童相談所が関わっていない事例で、要対協支援拠点(事務局)や所属機関が対応に苦慮している場合、希望に応じて援助方針づくりを支援する。
2つ目は、マネジメント部門「よりそい」。要対協の事例を主担当を市町村に置いたまま児童相談所が受理し、同行訪問、同席面接で保護者に寄り添ったケースワークの実演、OJTを行う。
3つ目は、職員の成熟度に合わせて2つの年間コースを選択して受講する研修部門である。管内外問わず要対協構成機関からの参加を募っている。要対協サポート講座の教科書1stSIDE、2ndSIDEを作成したことで、今年度から、中央児童相談所管内でも同教材を使用して一部の講座を開講した。
1つ目、2つ目については、SFA、SFBT、SofSなどの技術を虐待対応に特化して整理した、シンプルで効果的な面接プロトコルDreamを活用している。また3つ目ではDReam
なお、Dreamとは、
調査を受ける保護者や関係機関が、調査に必要な記憶を思い返しやすいような質問のセリフモデル
発生した虐待症状の重篤度を、保護者や関係機関とアセスメントして共有しやすい解説方法
保護者や関係機関の希望を実現可能なレベルで具体化しやすい質問の構成とセリフの精査。
これにより、保護者や関係機関が自らの役割を認識しやすい機会の提供
によって構成される、神奈川県児童相談所の有志によって日々実践されるプロトコルである。
中央児童相談所からは、職員を1年間で育成する人材育成について報告する。管内人口90万人程度の児童相談所で、虐待を含む相談を担当する児童福祉司は、3つの班に分けている。在宅指導から施設入所を担当する1グループ、2グループ、夫婦喧嘩などの比較的軽微な事例を担当する3グループである。その中の1グループから取り組みを発表する。この班では、48万人程度の地域を担当する。臨任主事1名の他、東京都内の自治体から児童相談所設置のための人材育成を目的に2名を受け入れている、県域児童相談所の中でも最大人数の班である。
この班では、昨年JaSPCANで紹介した、新任から保護者と効果的に会話できるプロトコルDreamを、SFA、SFBT、SofSなどの技術から整理した、よりシンプルで効果的な面接プロトコルを日々実践している。
昨年紹介した、新任から保護者と効果的に会話できるプロトコルDreamを、ホワイトボードを使うことで、新任の会話力の乏しさや、会話の間合いの使い方からの影響を抑えて、伝わりやすい面接を実現している。新任職員が虐待通告受付後の初回面接でホワイトボードの使用を含むDReam面接を1年間実践を通して学び、翌年はコーチとして新たに赴任した新任職員の育成を担う仕組みを、実演を交えて紹介する。
2018 岡山
主題
保護者・機関が喜ぶ面接の実践報告-解決志向とコーチングで組み立てた簡単で万能な面接プロトコル-
企画概要
神奈川県児童相談所の現場では、子の利益を優先しつつ、考えられる限り保護者や機関に寄り添う面接プロトコルがある。保護者との対立0件。約40%の保護者や機関は喜び、担当児童福祉司は感動する。すでに実施1000件を超えたこのプロトコルについて実践報告する。
【目的】
これまで児童相談所は通告受理後、虐待の重篤度によらず機関と連携するか直接機関や家庭を訪問して子の症状を目視し、その事実の改善を保護者に求めてきた。この方法が、時に機関、保護者、時に子から激しく反発・拒絶されても、また一時保護率や重度以上の虐待発生率が実質2割程度であっても、私たちはこの対応を徹底してきた面がある。
『市町村子ども家庭支援指針(H29.3.31)』は、市町村が担う中軽度虐待の対応には保護者に寄り添う支援が重要と示した。
現在、児童相談所の対応事例は保護者の行為で評価すると実質7割以上は中軽度虐待である。是非、児童相談所と市町村、介入型と寄り添い型の区別的対応(以下DR)を機能させたい。療養休暇や離職者が後を絶たない児童相談所の状況も改善したい。
神奈川県は児童相談所内にDRの受け皿である支援担当を設置し、セリフで構成される寄り添い型の面接プロトコル『DReam』を開発した。『DReam』は4場面で構成される。①現状の問題と長所の確認②虐待のわかりやすい解説③主訴を解消できる方法がすでにあると気づく会話④気づいた内容の実行提案である。
【方法】
厚木児童相談所の支援担当班が対応する新規事例は年間700件程度。1人の職員は年間150件から250件を担当。複数対応のため実質一人年間300件以上稼働する。その中で初期調査時の所属訪問調査率は90%以上。保護者との訪問・面接は2回を基本。それで業務に余裕があり、士気は高い。
面接は、2回とも保護者が主訴解消できると気づくようプロトコルに沿って質問する。保護者は気づいて改善する。助言・注意喚起は不要。プロトコル『DReam』の実践について、事例報告する。
また、機関向けのプロトコルとして、例えば通告を迷う学校を訪問し、ホワイトボードで情報整理するコンサルテーション『とりあえずどうでしょう』を報告する。要支援児童の対応方法、要対協に対する理解促進、学校のできることの再発見等、学校の発言をもとに整理する。法律等のガイダンスはするが、意見、助言はしない。結果、当面学校の対応となっても、保護者が喜ぶセリフを手にした学校の士気は高く、学校による保護者支援『DReam』が開始され、支援の輪が広がる。
中央児童相談所からは、最重度・重度事例での『DReam』の実践を報告する。『DReam』の標準化された会話は経験を補える長所だが同時に短所でもある。会話が困難な場合『DReam』を開始できない。例えば相手は前回のやりとりで怒っていて話せない場合や、保護者や機関と対立している事例を転勤で引き継いだ場合などである。このような場合は、『DReam』にひと手間、コーチングを加えると、会話が回復する。コーチングの実践についても併せて報告する。
【結果】
顧客満足度の測定に加え、家族に、直接こんな質問をした。
「面接はこれで終了です。今回、通告という形で突然一方的に面接を開始しました。お父さんには不本意だったかと思います。今日までお付き合いいただき、とても感謝しています。私たちの勉強のために教えていただきたいのですが、そんな中でも、私たちの面接がいくらかでもお役に立てたことは、あったでしょうか」
保護者の答えは、予想できないほど素敵だった。
「こうやって自分のことを振り返り、じっくり考えるって、家ではできないから、考えられてよかったよ。さっきのあのアイデアだって気づけたわけだし。こちらこそありがとうございました」(小学生への身体的虐待)
「グレていた頃、公園でよその親子が仲良く遊ぶのを見て『あんな親だったらよかった。私はあんな親になりたい』って思ったこと、この面接で思い出せてよかった。児相の方と話せてよかったです。勇気が出ました」(面前夫婦喧嘩による幼児への心理的虐待)
【考察】
多くの児童福祉司は、面接後に保護者が晴れやかな顔になり笑顔でお辞儀する姿を見る経験は、年間1件あるかどうか。プロトコル『DReam』に沿った職員は、年間数十から100件を超える晴れやかな顔を見る。すると「そうならなかった保護者に申し訳なくて、出来るようになりたい(支援担当1年目)」と思う。厚木児童相談所は昨年度からプロトコルの活用等について年間17回の研修を開催し、市町村からも評価を得ている。これらのプロトコルは他の児童相談所や市町村で十分に活用可能と考える。
2017 千葉
主題
神奈川版DRへのチャレンジ-保護者に寄り添う職員育成と県市町村のWin-Win役割分担モデル
企画概要
虐待発生件数の増加や困難事例の対処で、児童相談所は、介入型の支援など、より専門性を必要とする事例への対応力が求められている。一方、法改正に伴い、市町村は保護者に寄り添う支援がより強く求められ、県、市町村が担う役割は明確になった。
虐待対応の現場で、市町村が児童相談所に助言を求めることが多い。このとき、介入型への意識が強い児童相談所は、寄り添い型の支援をするはずの市町村に、介入型の助言をしていないだろうか。その結果、市町村はミニ児相になってはいないだろうか。
神奈川県は、平成27年度に県域全児童相談所に支援担当児童福祉司(以下支援担当)を設置した。支援担当は、市町村と同じ寄り添い型の支援を専門とする。市町村とWin-Winの連携や役割分担をし、実践を通して蓄積した寄り添い型の支援スキルを、市町村へフィードバックすることが可能である。
今回は、市町村とのWin-Winの連携モデルについて、鎌倉三浦地域児童相談所の『鎌三チャレンジ』と厚木児童相談所の『取りあえずどうでしょう』から報告する。また、管内市町村を対象に毎月開催する継続的な現任研修モデルを小田原児童相談所と厚木児童相談所から報告する。
2016 大阪
主題
保護者と解決を目指すケースワークスキルー職員育成ー
企画
虐待対応の現場では、児童虐待対応件数の増加に対し、職員を増員して対応することがあるが、その職員の育成は追いついているのだろうか。係を新設することがあるが、業務効果は上がるのだろうか。県が市町村の児童家庭相談担当を対象に行うOFF-JT研修は年間数日だが、それで十分なのだろうか。運よく先輩のいる係に配置された新任職員のOJTは、それで安心なのだろうか。
現場をみれば、答えがわかる。
職員育成には、OFF-JTだけでなく、日常的なOJTが欠かせない。ところがOJTは教える先輩によってばらつきがある。新任職員は、異なる指示をされたら迷って動けない。そもそも、私たちが育成すべきは、どんな職員なのか。私たちは、どんな職員になればいいのか。関係機関の育成も必要だ。
平成27年度、厚木児童相談所では虐待対応を専門とする職員(以下支援担当)を配置した。業務は、通告受付から数ヶ月間にかけての在宅支援に特化したものである。その多くが数ヶ月以内に閉止された事実は、市町村が対応する虐待事例と似ていた。
OJTは支援担当内で行われた。結果、相談業務未経験の職員と、経験年数15年の職員は、どちらも年間それぞれ約150件の虐待事例を担当し、初期対応で家庭訪問や面接をした保護者のうち、対立した事例は0件だった。
初回の訪問や面接を終えるとき、6割の保護者は、和やかにこう言った。
「大変ですね」「ご苦労様です」「そちらの立場も分かります」「役所が気にかけてくれていることがわかり、かえって安心です」
同じく初回の訪問や面接で、残りの4割の保護者は、スッキリした表情で、こう言った。
「家庭訪問なんて嫌だった。最初は、こんな自分の恥を話すつもりはなかったけど、うまく質問され、結局話してしまい、それで、今、良かったと思います。ありがとうございました」「(両手を胸に当て)今、この辺がすっきりしています。だから、大丈夫だと思います」「今、気が付きました。そうすればいいんですね。今までもできたことがあった(ことを思い出した)ので、(虐待以外の適切な行為を)できると思います」「妻は、(面接に)来るのを嫌がりました。それで、私が来ました。もし、可能なら、今日と同じような面接を、妻にもしていただけないでしょうか。話が出来て、本当によかった。妻も、そう思うと思うんです」
関係機関に対して、平成27年度は、子が保育所や学校に所属する事例のうちのべ70件の所属を訪問調査した。ほとんどの所属は、虐待症状や行為、要対協について誤解していた。これは、調査の留意点として、『子ども虐待対応の手引き』には原則として『直接出向く情報収集』とされているが、現実は『電話による情報収集』が中心となっていたことは、広報・啓発を停滞させていた一因である。『直接出向く情報収集』の場で、情報が整理されると、その所属の半数が、自ら直接保護者支援を担った。
今、虐待対応の現場で、何ができる職員を育成するのが効果的なのか、どんなことができたのか。手探りで始めた私たちの取り組みを紹介し、より効果的な職員育成について、意見交換したい。併せて、現在作成中の月間配信型OFF-JTについて、デモ版をご紹介したい。
2015 新潟
主題
個別ケース検討会議の進め方 司会者の覚醒
企画概要
現在、要保護児童対策地域協議会(以下要対協)事務局が児童虐待の通告を受けると、必要に応じて子や保護者に関わる機関が集まり、個別ケース検討会議が開催されます。最近では、児童相談所が通告を受けた事例も、要対協事務局へ個別ケース会議の開催を依頼することが増えました。
要対協事務局は、発生した児童虐待は、再発防止することで家庭内の虐待状態を解決し、また、虐待が発生しそうな家庭を把握すれば、未然防止することで子が虐待されない地域づくりを目指しています。その最前線でチームとなって家族を支援する会議が、個別ケース検討会議といえるでしょう。
大きな自治体では、年間100件、200件と開催されているこの個別ケース検討会議は、要対協事務局が主催し、司会を務めることが多くなりました。
各自治体の要対協はそれぞれスムーズな会議進行を心がけています。基本的には次のような手順です。
① 守秘義務の確認
② 情報の共有
③ 課題の整理
④ 役割分担
⑤ 今後の支援の確認
会議を開催すると、参加機関から肯定的に評価されることがあります。
「家族のことが見えてきた」
「他の機関が何をしているのかがわかった」
司会にとっては、手順を意識すると、会議の進行が楽になります。
反面、否定的な評価もあります。
「お互い報告し合うだけで、何も決まらない」
「何度会議をしても、何も変わらない」
「司会に一方的に役割を決められ、納得できない」
「あまり意味が無い」
手順は同じはずなのに、何が違うのでしょうか。もし、運が悪いわけでも、参加者が悪いわけでもなかったとしたら、司会はどうしたらいいのでしょうか。
今回、我々は個別ケース検討会議の内容を再評価しました。
関係機関から否定的な評価となった事例は、①守秘義務の確認、②情報の共有と進み、③課題の整理をなんとかクリアしたあとの④役割分担で、司会はスムーズに進んでいないこと感じています。要支援児童の扱いも、混乱しやすいようでした。
スムーズな司会の主なポイントは、④役割分担の前までにありました。
発表1
伊勢原市子ども家庭相談室 高木尋子 吉川まり子
神奈川県厚木児童相談所 矢後芳明
本演題では、効果的な個別ケース検討会議はどのように成立するかを考察し、初めて司会をする新任職員ができる工夫から、既に基本的な進行をマスターした中堅職員が更に効果的な会議進行ができることまで、会場の皆さんに実感していただけるよう、個別ケース検討会議を再現しながら、より効果的な進行のあり方について報告、提言します。
発表2
神奈川県厚木児童相談所 矢後芳明
中堅職員が更に効果を高められることのひとつに、参加者に合わせた言葉の選び方があります。相手の性格に合わせたコーチングといえるかも知れません。
①参加者の外見上の特徴によって、各参加者の性格をおおよそ理解します。
②相手の性格に合わせた言葉を使いながら司会進行します。
このことは、情報やゴールの共有に大きな効果があります。
より効果的な個別ケース検討会議の参加者からの感想です。
「やることは増えたけど、自分は何が心配だったのかがわかってすっきりした」(保健師)
「この状況で、この家庭への対応は『もう自分の役割ではなく、市や児相の役割だ』と思っていましたが、会議中に『自分の役割だ』と思いました。ここまで整理してもらったので、あとは自分がやるべきだと思いますし、できると思います」(小学校学級担任)
「私は赴任したばかりで、初めての参加でした。以前はとても大変な事例だったのに、今日のどの報告も虐待の改善を示していたし、何より、これだけの参加者(10人以上)の表情が明るく、笑顔まで出る会議に、初めて参加させてもらいました。今まで報告会のような会議しか知らず『こんなにうまくいくものか?』という気持ちで会議経過を聞いていましたが、最後に、気持ちがひとつになっている皆さんを見て『これなら大丈夫だ』と思いました。良い体験をさせてもらいました」(学校長)
2014 愛知
主題
要保護児童対策地域協議会のメンテナンス
概要(抄録が残っていなかったため、発表資料を事後にまとめたもの)
各市町村は要対協を設置し、日々適切に運営しようとしている。実際には自治体が異なれば成熟度は異なる。また、それぞれの機関で職員の異動があれば成熟度はすぐに変化する。要対協を維持するための取り組みを報告する。
神奈川県厚木児童相談所 矢後
児童相談所は、要対協の実態に合わせてそれぞれ違う支援を適宜届ける必要がある。児童相談所から見て市町村に不十分なことがあると思うことはある。ただ、不十分と思ったものを支援するのではなく、市町村が受け取りたいと思ったものを支援しないと、市町村は受け取れない。成熟度の判別をフローチャートを示しながら、実際に受け取りたいと思うタイミングで市町村に行った支援内容を紹介する。
伊勢原市子育て支援課 髙木尋子 吉川まり子
市は、関係機関の理解が不十分で困ることがある。でも、関係機関それぞれには事情も本業もあるので、大きな会議で伝えるだけでは必要としている可能性のある現場の職員にまで伝わらない。そこで、受け取ってもらいたい情報を盛り込んだ紙芝居を作り、学校、保育所、児童デイサービスなど、職員会議の短い時間をもらうなどしてこれまでに68カ所を訪問し、啓発を図った「出前講座」について紹介する。
2013 長野
虐待予防の取り組みとして、高校を訪問して体育館で高校生へ実施した予防プログラムについて伊勢原市と発表
2012 高知
主題
「県市町村のパートナーシップ強化による児童虐待防止事業」を通して見えてきた県・市町村・要対協の課題
企画趣旨
神奈川県では、『県市町村のパートナーシップ強化による児童虐待防止事業』(以下『パートナーシップ事業』)として平成21年度から市町村における児童虐待への対応の強化を図るための取り組みを始めた。取り組みの構成は、21年度、22年度のモデル市町村への『職員派遣期』と、22年度以降の県域全市町村への『フィードバック期』に分けられる。この分科会では県の取り組みを紹介するとともに、取り組み内容を市の視点から評価することを試みる。県と市町村間にあった明らかな誤解、気づき、協働の過程など、実際のエピソードを再現しながら、児相の基本的機能である市町村援助機能及び県による市町村支援のあり方について考える。
発表
1.「『パートナーシップ事業』の概要と現在の活動について」神奈川県中央児童相談所 稲葉史恵
市町村における児童虐待への対応の強化を図るため、4つのモデル市町村に固定した県職員を週1日、1年間派遣し、個別事例に対する助言・指導、機関連携や要対協の運営への助言、研修会などによるノウハウの普及など、市町村の実情に即した具体的な支援を行った。各モデル市へは、職員派遣の翌一年間、アフターフォローとして6回程度職員を派遣し、派遣の効果を確認した。また、年間を通して県域29市町村を訪問している継続的な聞き取り調査の概要を報告する。
2.「『パートナーシップ事業』を活用した課内体制強化について」小田原市青少年課 上田泰弘
小田原市では、『パートナーシップ事業』に応募する前に、虐待に対応するための相談体制や要対協の整備を進めてきた。整備が進む反面、緊急受理会議など進行管理体制の一部の業務は、必要性を認識しつつも日常の業務で実施しきれないことがあった。改善には業務に優先順位を付けるなら、そのためには課内の意向をひとつにしなければならない。オーバーワーク気味の現状で更に体制強化か、既存業務の安定か。そんな中で、『パートナーシップ事業』を導入。なるべく負荷は少なく、効果は大きく、体制作りは静かに再開した。
3.「モデル市になってわかったこと、知ってしまったこと」伊勢原市子育て支援課 吉川まり子
市が児童虐待に対応する際、助言は児童相談所に求めてきた。要対協立ち上げの頃から現在まで、市の知識や力量の変化によって、児童相談所の助言に求める内容も変化した。もし、その変化にお互いが気づかなかったとしたら、児童相談所と市がボタンを掛け違ってしまうのも、当たり前のことだったのかもしれない。
『パートナーシップ事業』の長所は、リアルタイムで相談できること、市の技量に応じた助言が得られること、助言を実践する(できない場合は模擬体験)まで支援を受けたこと。以前は、市では闇雲に虐待対応していた面があったが、『パートナーシップ事業』で問題点の整理を一つ一つ行った。重たい事例でも整理して先を見通せると、精神的に楽になれると感じた。それを他機関にも還元しようと思えた。また、今まで実はやれていなかったのに「やれている」と思ってしまっていたことにも気づかされ、本当に必要な基礎の力がついた支援だった。
ただし、この事業、決してスムーズに受け入れられたわけではなかった。特に、前半の半年間は週1回職員派遣されることが『苦しみ』だった。それが、後半の半年間では、前向きに『元気』になれた。不思議なようで不思議ではない『パートナーシップ事業』とその効果について、エピソードを交えて市の立場からわかりやすく紹介します。
4.「『フィードバック期』におけるWebサービスと県域要対協の現状について」神奈川県厚木児童相談所 矢後芳明
神奈川県がインターネット上に展開している市町村の支援システム『児童虐待初期対応プログラム』について紹介する。プログラム開発の目的は、転勤等で新任職員が虐待通告の対応を開始しなければならない環境でも、初期調査を開始して関係機関から情報を集められること。また、専門チームが県域29の全市町村を訪問して得た情報を基に、各市町村で特徴の異なる要対協の分類を試み、それぞれの長所と今後の課題を考える。また、見えてきた児童相談所の課題について報告する。
5.「要対協間の交流、『児童相談担当者会議』の開催について」茅ヶ崎市こども育成相談課 伊藤徳馬
神奈川県域では要対協間の交流が始まっています。
県域では、人口数千人の自治体から40万人を超える自治体まで29の市町村があります。その中で、人口10万以上の規模の9自治体が集まって、お互いの体制、ケースの支援方法、予算などについて、同規模の自治体による定期的な意見交換会を行っています。自治体が始めた自主的な取り組みについて、紹介します。
※表記は学会への提出資料と異なる部分もあります。