緑内障

緑内障は無虹彩症の人の約75%に発症します

概要

緑内障は、視神経に損傷を与える眼の中の圧力の上昇です。緑内障は、無虹彩症の人のどの年齢でも起こり得ますが、最も一般的には小児期または成人初期に始まります。無虹彩症患者の約50%が8歳までに緑内障を発症します。緑内障のリスクは年齢とともに増加します。

通常、眼は房水と呼ばれる液体で満たされています。この液体のおかげで丸い形が形作られ、常に産生と排出がなされ、目の内部の圧力のバランスを保っています

緑内障は、液体が流入するほど容易に流出しない場合に発生します。眼内に過剰な液体が蓄積すると、 眼圧(IOP)が上昇します。IOPが長時間にわたり高すぎる状態になると、眼の内壁に圧力がかかり、最終的に視神経に損傷を与えます。視神経は、網膜から脳に視覚信号を伝達する役割を果たします。この神経が損傷されると、視力喪失や不可逆的な失明につながる可能性があります。

無虹彩症の人は、房水の排出を妨げる可能性あるような眼の異常のために、緑内障を発症するリスクが高くなります。

無虹彩症の患者の緑内障の治療は複雑で困難な場合がありますが、ほとんどの患者はうまく治療できます。 知識経験が豊富な専門家への紹介が重要です。

緑内障の早期発見と適切な治療は、無虹彩症の患者の視力を維持するのに役立ちます。医学的および外科的治療における最近の発展は有望で

診断

緑内障の評価と診断には、以下の検査の一部またはすべてがが含まれます:

  • 眼圧計(Tonometry)用いた眼圧(IOP)の測定

  • 隅角鏡検査(Gonioscopy)を用いて、房水の排出路の角度を検査する

  • 眼底鏡検査による視神経の検査

  • 視野検査による周辺(側面)視野の評価

  • 視神経スキャンによる視神経の写真またはコンピューターによる測定

  • 超音波またはOptic Coherence Tomography(OCT)による角膜の厚さの測定

眼圧計(Tonometry)

トノメトリ-は、目の眼圧つまりIOPを測定し ます。医師は麻酔点眼薬を使用して眼の表面を麻痺させ、角膜に直接特別な器具を置きます。「圧平眼圧測定」、「Tonopen」および「リバウンド眼圧計」は、眼圧を測定するための一般的なデバイスです。これらのデバイスは、通常のスクリーニングに使用される「空気圧による眼圧計」よりも正確に測定できます圧平眼圧測定法が最も正確な方法ですが、特に子どもには、トノペンリバウンド眼圧計も使用できます。

注: 眼圧の正常範囲は12〜22 mmHgです。ただし、眼振や角膜の厚さが増しているなどの無虹彩眼のよくある特徴により、眼圧の正確な測定が困難になる場合があります。一定期間に複数回測定を行うと、1回の測定よりも役立つでしょう。

隅角鏡検査

隅角鏡検査は、細隙灯と呼ばれる特殊な顕微鏡とゴニオレンズと呼ばれるプリズムを使用して、目 の前部の前房角を調べる目の検査です。「角」とは、角膜と虹彩がまじわる場所であり、房水が排出される場所です。無虹彩症の人では、この角が異常であるか、正しく機能しない場合があります。

眼底鏡検査

眼底鏡は、目の内部、特に視神経と視神経乳頭を検査するために使用されます。暗い部屋で、医師は眼底(拡大鏡と小さなライトを備えた器具)で目を見るでしょう 。この器具を使用すると、医師は視神経のサイズ形状、色、目の後にある他の構造を確認できます。

治療

無虹彩症患者の緑内障は、通常、投薬または手術、あるいはその両方で治療されます。点眼薬は、目によって産生される房水の量を減らすか、房水をより効果的に排出するのを助けるように働きます。手術もまた、目からの房水の排出を改善するでしょう

投薬
緑内障の治療のための点眼薬には、さまざまな種類、強、組み合わせがあります。

医師は、副作用が最も少なく、緑内障をコントロールする可能性が最も高い最小量の薬を処方することから始めます。緑内障治療薬は、目の圧力をコントロールするために定期的に毎日使用する必要があります。

ほとんどの緑内障治療薬にはいくつかの副作用がありますが、これらの副作用は数週間後に軽減していくでしょう。薬/投与量が緑内障をコントロールしていないように思われる場合、または許容できない副作用がある場合は、別の薬または薬の組み合わせを試すことができます。

緑内障の治療に使用される薬剤の詳細と包括的なリストが、作用機序と副作用とともに得られます
こちら:緑内障の薬(英語のサイトです)

投薬によって緑内障がコントロールされない場合や効果がなくなった場合は、手術が必要になることがあります。緑内障手術の種類は次のとおりです

  • Goniotomyは、繊維柱体網の繊維を切断して、房水がよりよくに流れるようにします。通常、無虹彩症の患者には役立ちませんが、無虹彩症の乳児で緑内障がある場では考慮される場合があります

  • Trabeculotomy(線維柱帯切開術) は、目の外側から繊維柱体網を切開ます

  • Trabeculectomy (線維柱帯切除術)は、線維柱帯の一部を取り除きます

  • マイトマイシンCによる線維柱帯切除術は、線維柱帯の一部を取り除き、瘢痕形成の抑制に役立つ可能性のある薬剤を注入します。

  • トラベクロトミーとトラベクレクトミーの組み合わせ
    線維柱帯網を切開するのと、その一部を切除する方法の組み合わせ

  • 緑内障ドレナージチューブの埋め込み は、シリコンポーチが取り付けられた柔軟なプラスチックチューブを埋め込みます。多くの場合、薬物治療や他の外科的治療に反応しない無虹彩症患者の緑内障で使用されます。例としては、Baerveldt、Ahmed、およびMoltenoチューブシャントがあります。

  • 他の施術 レーザーおよびシクロデストラクティブ手技は、無虹彩症では有効ではありません。これらの手技は、重度の炎症反応、水晶体亜脱臼、および初老期白内障の進行に関連しています

  • 最近の進歩「低侵襲緑内障手術」(MIGS)。無虹彩症の緑内障の治療におけるMIGSの初期の報告は有望です

特別に考慮すべきこと:子ども

幼児の眼圧の測定は、検査に協力できないため、しばしば困難です。眼圧を測定するときに子供が泣いている、測定値が人為的に上昇する可能性があり、正確な評価にはなりません。

一部の医師は、抱水クロラールなどの穏やかな鎮静剤を使用することを提案しています。これにより、子ども診察室で診察を受けることができます。ただし、子どもの鎮静剤は予測できない影響を与える場合があり、適切なタイミングで検査が可能なように十分な鎮静剤が得られない場合もあります。

どもの正確な眼圧測定値を得るための別の選択肢は、 麻酔をかけて検査をする つまりEUAです。EUAは、患者が全身麻酔下にあるときに行われる検査です。外科的処置とは異なり、EUAは短時間の非常に少量の麻酔を必要とします。麻酔下で子どもの目を検査することの重要な利点は、医師が目のより徹底的な検査を行うことができることです。

このページは、International WAGR Syndrome Association(IWSA)の許可を得て、IWSAのweb siteの記事を翻訳・転載したものです
Translated by Madoka Hasegawa, October 2020