Kelly Trout, BSN, RN
Director, Research and Medical Advocacy, International WAGR Syndrome Association
Trevor Valentine, MD
Director of Pediatric Developmental Services, Medstar Georgetown University Hospital
「すべての行動はコミュニケーション」
~Paul Watzlawick, American-Austrian psychologist
WAGR症候群の子どもたちや大人たちの多くが行動障害を持っています。そのような行動のせいで、本人や家族の毎日の生活は難しいものになりえますし、家族関係や学校、仕事、地域社会への参加を困難にすることもあるでしょう。
よくある問題行動の例には次のようなことが挙げられます;度重なるかんしゃく、とある光景や音、状況への過剰反応、頭を打ち付けたりかみついたりするような自害、パニック、周りの人への攻撃
これらの行動は非常にストレスフルだし、親たちはしばしば困惑、後ろめたさ、失望、そして無力感を感じます。あなたのせいではないし、問題があって好ましくない行動を見せるのはあなたの子どもだけではないと知っておくことは大事なことです。このような行動はWAGR症候群に関係のあることの結果として生じていることが多いです。朗報は、助けになり、あなたとあなたのお子さん両方にとって生活がもっと容易く楽しめるものになる方法があるということです。
1.学ぶ
あなたはすでに第一歩を踏み出しています:WAGR症候群の人の行動障害にはたくさんの考えうる原因があります:
・発達障害
・言語発達の遅れとコミュニケーション障害
・感覚統合障害
・脳の構造異常
・知的障害
・自閉症スペクトラム障害
・中枢性聴覚情報処理障害
・強迫性障害
・注意欠陥多動障害(ADD/ADHD)
行動障害について知るほど、あなたが子どもの支援をするのが容易になるでしょう。もっと学ぶにはこの記事の最後にある資料を確認してください
2.観察する
行動記録ノートをつけはじめてください。毎日子どもの行動を記録します。そのうちにその記録は、あなたが見ている行動が一般的なものかそうでないのかを、あなたやお子さんの担当医が判断する助けになるでしょうし、原因や解決となりうることを特定するのにも役立つでしょう。
記録に書くことは:
・行動が始まった時間
・行動を記録する(叫ぶ、泣く、たたく、床上でじたばたする)
・どこでその行動がおこったか(家で、車で、お店で)
・その行動が始まる直前の状況を書く(あなたや配偶者の方が仕事からちょうど帰ったところ、あなたがお子さんに「ダメ」といったとき、お子さんがきょうだいと言い争いをしたとき)
・その行動に対してあなたがどんな反応をしたかを書く(話した、抱きしめた、子どもが欲しいものをあげた、タイムアウト、無視、お子さんが好きな音楽やお気に入りのおもちゃをあげた)
・その行動はどれくらいの時間つづいたか
・デイケアや学校に行くときも、スタッフや先生たちにそのノートを書いてもらう
(courtesy of autismspeaks.org)
お子さんの行動を詳細に記録したものは、きわめて価値のあるツールになり得ます。お子さんの担当医が、あなたが何を心配しているのか理解するのに役立つでしょうし、明らかに前にはなかった行動のパターンを特定するのにも役立つでしょう。
3.助けを得る
お子さんの行動について担当医と話し合いましょう。お子さんの行動記録を担当医に見せてください。専門家への紹介が必要かどうか尋ねてください。臨床心理医や行動療法士、早期療育やスクールアセスメントチームによる総括的な評価は、診断と治療の役にたつでしょう。あなたはこのプロセスの重要なパートナーであり、あなたの行動記録ノートは、専門家たちがお子さんのことやお子さんが何を必要としているかを理解する助けになります。
4.計画を立てる
注意深い観察と評価の後は、あなたや担当医、その他のチームは助けになるだろうことを試す話し合いをします。行動のタイプによって、子どもの環境を整えたり、ケアをする人がお子さんの行動にどう反応するかを変えること、お子さんに新しい対処方法を教えること、薬物治療、またはこれら全ての組み合わせなどが考えられます。
行動障害を改善させるのは通常、時間と決意が必要です。いくつかの方法や薬物治療が他よりも効果があるかもしれません。行動記録ノートに記録を続けてください。あなたや担当医がある方法や薬が効果的かどうかを把握するのに役立ちでしょうし、あなたやお子さんがよりうまくいかせられるよう助けてくれるでしょう。
診断
WAGR症候群のように、複雑な慢性疾患を抱えている思春期の子どもたちは、徐々に、あるいは突然、ある状況への行動や反応が変わることがあります。WAGR症候群によくある不本意な状況や命にかかわり得る状況のために、頻回に病院受診や入院が必要となることがあります。そしてそのために、十代の子ども達の活動が制限され、友人や家族たちと同じようには活動に参加できないということがあります。
このような問題への反応としてよくある行動には、パニック、仲間たちとうまく関われない、社会的な孤立、自己評価が低い、教育の場での評価がさがる などがあります。
このような行動障害のリスクを増す要因にはたくさんのことがあるでしょう;例えば次のような要因などです
・対処能力が低い
・病気のコントロールがうまくいかない
・ひどい症状
・課外活動の選択肢が限定される
・仲間の拒絶
・治療の副作用
・病気の脳機能への影響
思春期に行動が変化する場合には、次に述べるような精神状態が進行していることを意味することがあるということを知っておくのは重要です
・不安
・うつ状態
・情緒障害
・注意欠陥多動障害
・反抗挑戦性障害
・素行障害
・重篤気分調節症
これらのような特定の疾患に加えて、以下のようなことも慢性疾患を持つ全ての子ども達によくあります
・消極的
・理屈っぽい
・薬の用法を守らない
・自己評価の問題
・セルフイメージの困難
・社会的孤立
病気の状態や、感覚統合障害や知的障害の程度は、WAGR症候群の人々の中で非常に個人差があります。この多様性のせいで、思春期に生じる行動の問題の根底にある要因を特定することがとても難しいのです。ですから、新しい、あるいはだんだんと困難になる行動がでたらすぐに、親は支援の方法を探すことをお勧めします。
治療
必要に応じて、思春期の子ども、親、主にケアをする支援者、専門家、教育者、心理士、教育の場における支援者などからなるチームが協力してアプローチすることが望ましいです。
WAGR症候群の思春期の子ども達について考えると、定評のあるスクリーニング方法を使って、先ほど述べたような一般的な精神状態についてのサーベイランスやスクリーニングを行い、患者さんを必要に応じて精神科的/心理的に評価するということが、主に患者さんのケアをしている人(親など)には推奨されます。
親が観察した事柄は、支援チームにとって非常に役立ちます。先ほど薦めたような行動の記録を詳細につけると、時期を逸せずに診断をし、効果的な治療を行うために、判断の根拠として役立つでしょう。
参考資料
以下の参考資料は、行動障害についてもっと学び、どうやって・何を観察すればよいかを知り、どこで支援を得られるかや、お子さんの支援プランを作るときに非常に役立つアイディアと知恵を与えてくれるでしょう。
Challenging Behaviors Toolkit
The Challenging Behaviors Toolkitは、素晴らしいリソースですが、WAGR症候群の患者さんでは自閉症に似た行動がよく見られる一方で、その多くの場合は、自閉症の診断基準には当てはまらないということに注意しておくべきです。さらに、WAGR症候群の患者さんの90%にある程度の聴覚情報処理障害があり、他の病気や障害と同様に行動に影響を与えるでしょう。正しい診断と適切な介入を得るには、注意深く評価することが必要です。
https://www.autismspeaks.org/tool-kit/challenging-behaviors-tool-kit
Behavioral Issues in Children with Visual Impairments and Blindness: A Guide for Parents
http://www.familyconnect.org/info/browse-by-age/preschoolers/growth-anddevelopment-preschoolers/behavioral-issues-in-children-with-visual-impairments-andblindness-a-guide-forparents/1234?fbclid=IwAR3qbI7qTmMPRtLDxZn9mS9AUoBb6cieUdXrMwxD_JQSXL_RkC0ZgNg41k
What is a Meltdown?
https://www.autism.org.uk/about/behaviour/meltdowns.aspx
the Difference Between Tantrums and Sensory Meltdowns
https://www.understood.org/en/learning-attention-issues/child-learningdisabilities/sensory-processing-issues/the-difference-between-tantrums-and-sensorymeltdowns
Is it Behavior? Or is it Sensory?
https://www.growinghandsonkids.com/behavior-sensory-subscriberprintable.html?fbclid=IwAR1rweG30LA2z5FvajAiI2aLqR9FhYOqRzR1jnzfminGn2orgGeMMiiVDk
How Anxiety Leads to Disruptive Behavior
https://childmind.org/article/how-anxiety-leads-to-disruptivebehavior/?fbclid=IwAR2CQMG4E9WUtL0CoKMEyiaz4ruDab1mALczrZuBzaKn8oNzPJ aTy6rL8Qo#.Vq1BPzcUQ4R.facebook
“Should My Child Take Medicine for Challenging Behavior?”
A Decision Aid for Parents https://www.autismspeaks.org/sites/default/files/201808/Medication%20Decision%20Aid.pdf
このページの内容は、International WAGR Syndrome Association(IWSA)からいただいた記事を日本語に訳したものです。
Translated by Madoka Hasegawa, January 2020