2017年11月12日投稿
本稿は、2017年11月12日にユー・アスに投稿された事故情報と、その後の経過を、投稿者と協議しながらまとめ、ユー・アスの責任において公開するものである。
投稿者は、最終結論としてアンプに問題があったとしている。ユー・アスは、直接の原因はアンプとモータの不適合、間接的には機体の設計(組み立て)に問題があったとした。
事故は、2017年秋の昼間に、手動・自動切り替えで操縦をしているときに起き、機体を軽く破損した。
機種は、回転翼機で、2016年後期に購入し、定期的にメンテナンスを行い、100回以上、20時間以上の実績を有する。
操縦者は、100回以上、30時間以上、10年近くの実績を有する。
事故の状況は、次のとおりである。
地上最大風速が4m/s弱で、自動航行中、設定高度から10m強ほど急降下する現象が多発した。そのため、手動操縦に切り替え、帰還させようと徐々に高度を下げて20m程度まで下りてきたとき、ここでも急降下する現象が発生し、上昇側にスティックを入れたが、そのまま一定スピードで地面に接地し、その衝撃でスキッドが折れて横に飛び跳ね、さらにもうひとつのスキッドが折れて横倒しになった。
事故機は、購入から20フライトを境に、徐々にFCのPID値がズレる現象が起きていた。また、まれに異常な動作を感じられたため、ログなどをメーカに提供して解明を依頼していたが、原因はつかめず、改善はされていなかった。
事故の発生に伴い、ログファイルを確認すると、右後方のモータにアンプが最大値まで電流を供給していた。そのためアンプとモータを交換したが改善はされず、FCも交換した。すると正常に動作するようになった。
以上から事故の原因は、FCの故障と判断したが、事故後にも同様の症状が現れる。その経過は、次のとおりである。
事故後、保守管理を別の会社に移管する。その際、配線の組み替えやFCの交換など、かなりの保守が行われた。しかしながら、高度が徐々に3m程度低下し、ウェイポイントにくると設定高度に戻るという症状が現れた。ただ、この症状は測量に影響がないようだったため機体を受領したが、その後のフライトで高度が10m程度まで急上昇し、ウェイポイントで設定高度に戻る症状が確認された。ログファイルを確認すると、右前方のモータへアンプが電流を最大で供給していた。
これを受けて保守管理会社で動作確認のために高度30mでホバリングさせると、勝手に上昇しだした。しばらく様子を見たが、上昇は続いたので80mに達した時点で下降の指示をだす。次に、ウェイポイントに自動航行させると、上昇を伴って移動し、到着時に設定高度に下降する症状が現れた。
そのためモータを全部交換してみたが、改善されなかった。また、アンプや信号の接続関係を入れ替えてもみたが、改善されなかった。
翌日、右前方と左後方のアンプを交換して飛行させた。午前中は順調であったが、午後の2回目で、交換した左後方のアンプが最大電流をモータに供給していたことを確認する。次のフライトは上昇、さらに次のフライトは下降の症状が現れた。どうも交換した左後方アンプの異常が短い時間で収まると、他のアンプが出力を上げて機体を上昇させる、異常が長い時間に渡って続くと、最大値で電流を供給し続けることになって出力が低下し、推力を失い、下降するものと思われた。
これらを受け、アンプを新品に変えるのではなく、別の製品に交換することとした。その結果、異常が出なくなるだけでなく、レスポンスもよくなり、フライトも非常に安定するようになった。
しばらく様子を見る必要があるが、見かけ上は解決したように思われる。
異常が発生していた際のアンプは、高価な製品であったが、使用していたモータに対して出力が高すぎ、過剰な負荷をモータに掛けていたようである。あるいは、アンプに対するモータの性能が不足していたのかもしれない。
以上のように発生した事故に対しては、当初はFCに問題があると判断した。その後、調整や交換を行い、事故時の状態のままだったとはいいがたいが、事故前から出ていた症状は、製品の違うアンプを取り替えることで改善した。これは、ある一面ではアンプに問題があったといえるが、大局的にはUAV全体が調和して動作するように部品不適合、さらには設計が行われていなかったともいえるのではないか。
無人航空機は何かあれば落下するという特性を有するため、制御ソフトも含め、機器に詳しく経験豊富な技術者が設計、組み立てを行うことが重要であると伺える。
以上