2017年11月27日
2018年4月8日質問16を追加
本Web記事は、UAVに関する法的な相談に対し、森・濱田松本法律事務所の戸嶋浩二弁護士と林浩美弁護士に回答して頂いています。
ご質問のある方は、本Web記事を一覧の上、本HPの「質問コーナー」よりご連絡下さい。
目次
回答:
他人の物を壊した場合と他人を傷つけた場合との分けて考えることができます。
まず、他人の物を壊した場合には、器物損壊罪(刑法261条・3年以下の懲役又は30万円以下の罰金又は科料)が問題となります。しかし、器物損壊罪は、故意に(罪を犯す意思をもって)他人の物を壊した場合にのみ適用されます。よって、故意ではなく過失により他人の物を壊しても、刑事上の責任は問われません。
他方、過失で他人を傷つけた場合は、過失傷害罪(刑法209条)にあたり、30万円以下の罰金又は科料の責任を負います。過失で他人を死亡させてしまった場合は、過失致死罪(刑法210条)として、50万円以下の罰金の責任を負います。
さらに、業務上、UAVを飛行させていて、過失により人を死傷させた場合や、重過失により人を死傷させた場合は、業務上過失致死傷罪(刑法211条)として、5年以下の懲役・禁錮又は100万円以下の罰金に処せられます。
回答:
UAV飛行に関しては、航空法の許可承認を得れば良いというものではなく、許可承認の申請をした際に提出した申請書や飛行マニュアルを遵守することも重要です。機体の管理・点検、操縦者の教育、運航手順の確認といった、飛行マニュアルの記載を遵守していない場合、事故があったときに、一般には、操縦者の過失が認められ、責任が認められやすくなります。会社や監督者としても、マニュアルを適切に整備するだけではなく、従業員がマニュアルに従った飛行を行っているか、確認・チェック体制を設けることも重要です。
また、航空法の申請と全く異なる日時・場所で飛行させたような場合は、許可承認を得ずに飛行をしたものとして、刑事上の責任を問われる可能性もあります。
もし、法律に触れてしまったと思われるときには、まずは迅速な報告、情報収集・分析を行うことが必要です。自分・自社では対応に迷う場合には、弁護士に相談することも必要になります。
回答:
国土交通省の許可・承認を得ていても、刑事上・民事上の責任を問われないわけではありません。
暴走について過失があれば、刑事上の責任としては、過失傷害罪又は業務上過失致傷罪の責任を問われます。民事上の責任としては、不法行為に基づく損害賠償責任を問われます。
回答:
運用マニュアルに不備があったことによって、暴走について過失が認められて責任が問われやすくなると思われます。
また、その不備が重大なものであった場合(例えば、無人航空機の定期的点検を、飛行時間100時間毎にしか実施されないようなマニュアルだった場合)には、過失の程度が重いと判断される可能性もあります。過失の程度は、刑事上の責任の量刑の重さ(懲役の長さや罰金の金額)や、民事上の損害賠償責任の額に影響する可能性があります。
回答:
製造者(メーカ)から直接UAVを購入したわけではない場合も、製造者の製造したUAVについて引渡時に「欠陥」があり、これにより「他人の生命、身体又は財産を侵害したとき」は、製造者は、製造物責任法に基づき、これによって生じた損害を賠償する責任があります。
製造物責任法上の「欠陥」とは、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいいます。この欠陥には、①設計上の欠陥、②指示・警告上の欠陥(表示上の欠陥)、③製造上の欠陥、という3種類の欠陥があるといわれています。
事故を起こした要因がマニュアルに書いていなかったことが、不備であり、「②指示・警告上の欠陥(表示上の欠陥)」にあたる場合には、製造者に対して、製造物責任法に基づく損害賠償を請求することができます。
回答:
製造者(メーカ)から直接UAVを購入したわけではない場合でも、製造者の製造したUAVについて引渡時に「欠陥」があり、これにより「他人の生命、身体又は財産を侵害したとき」は、製造者は、製造物責任法に基づき、これによって生じた損害を賠償する責任があります。
製造物責任法上の「欠陥」とは、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいいます。
UAVの特性にもよりますが、コードが容易に抜ける構造、電子機器が異常な動作を生じさせるような熱の排出機能の不十分性や、外付けのセンサ(ドローンの付属品として販売されていたと想定)からの電磁波による電波干渉は、この「欠陥」にあたる可能性があります。また、これらのことについてマニュアル等で注意喚起がなされていなければ、指示・警告上の欠陥(表示上の欠陥)がある可能性もあります。
「欠陥」がある場合、製造者に対して、製造物責任法に基づく損害賠償を請求することができます。
他方、製造物責任法に基づき責任を負う者は、その製品の製造業者、輸入業者、製造物に氏名などを表示した事業者に限られ、輸入業者ではない単なる販売業者は原則として対象になりません。
もっとも、販売業者がUAVのリスクについて顧客に対して説明をすべきような場面であった場合は、販売業者も説明義務を尽くさなかった責任を負う可能性はあります。
回答:
UAVの暴走が、操縦者の過失によって生じた場合(例:会社が用意したマニュアルやドローン購入時に添付されていた取扱説明書において禁止されている操縦方法であるにもかかわらず、不注意で気づかず操縦してしまったような場合や、周辺の安全管理を怠ったような場合)には、民事上の損害賠償責任や、刑事上の(業務上)過失傷害の責任が問われる可能性があります。
回答:
操縦者が会社の従業員であり、当該従業員が「その事業の執行について」第三者に損害を加えた場合、会社は、使用者として、損害を賠償する責任を負うのが原則です(民法715条・使用者責任)。
使用者である会社は、被用者(従業員)の「選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったとき」には、その責任を免れますが(民法715条1項但書)、判例上、当該要件を充足するのは非常に例外的な場合に限られています。
また、責任者(主任技師)については、使用者責任のような特別な規定はありませんが、もし暴走の原因が責任者(主任技師)によるドローンの機体の整備不良にあるような場合には、過失が認められ、不法行為責任を負うことがあります。
回答:
発注者に責任が認められるかどうかは、暴走が生じたことについて、発注者に責められるべき事情があるかどうかによります。
単に飛行を発注をしただけであれば、発注者に責められるべき事情がないことが多いです。しかし、たとえば、飛行当日が悪天候であったため、操縦者側が発注者に対して、飛行は延期したほうがよいと申し出たにもかかわらず、発注者が当日の飛行を命じた結果、悪天候によってドローンの操縦が不能になって暴走したような場合には、発注者も、操縦者側とともに不法行為責任を問われる可能性があります。
回答:
発注者に責任が認められるかどうかは、暴走が生じたことについて、発注者に責められるべき事情があるかどうかによります。
発注者が、UAVの暴走が生じるかもしれないと分かったはずなのにもかかわらず、無理な行程を指示・命令したために、暴走が生じたといえる場合には、発注者も損害賠償の責任を問われることがあります。
ただし、発注者が責任を負う場合であっても、操縦者が責任を免れるわけではありません。操縦者も、無理な行程で飛行をさせたことにより暴走を生じさせたのであれば、発注者とともに責任を負います。
回答:
操縦者の過失によって落下させ、怪我をさせたのであれば、刑事上の責任としては、過失傷害罪又は業務上過失致傷罪の責任を、民事上の責任としては、不法行為に基づく損害賠償責任を問われます。
そこで、操縦者に過失があったか否かが責任を問われるかどうかのポイントとなりますが、操縦者として突風を全く予想できなかったという場合には、突風で落下したことについては、過失がないと判断されるでしょう。ただ、飛行目的や機体によっては、突風があった場合に備えて、通行人が通るような場所を飛行させるべきでなかったということも考えられますので、安全管理には十分注意する必要があります。
回答:
製造者(メーカ)から直接UAVを購入したわけではない場合でも、製造者の製造したUAVについて引渡時に「欠陥」があり、これにより「他人の生命、身体又は財産を侵害したとき」は、製造者は、製造物責任法に基づき、これによって生じた損害を賠償する責任があります。
製造物責任法上の「欠陥」とは、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいいます。
たとえば、障害物を回避できる機能がついている製品で、当該機能を信頼して自動帰還機能を用いていたにもかかわらず、障害物回避機能が上手く作動しなかったために電線を切ってしまったような場合は、UAVに欠陥があるといえる場合もあると思われます。
もっとも、障害物回避機能がついている製品であったとしても、その機能はもともと完全ではないことも十分考えられます。また、UAVの自動帰還機能といっても、様々な種類があり、飛行場所・飛行経路によっては、UAV購入時のデフォルト設定のままの自動帰還機能を利用するのは適切ではない場合もあります。そのような場合、製造者としては、機能が完全でないことや適切な種類を選択する必要があることを十分に注意喚起しておくことが必要であり、そのような説明がなければ指示・警告上の欠陥(表示上の欠陥)があったとされることになるでしょう。
なお、製造物責任法に基づいて損害賠償責任を負う者は,その製品の製造業者,輸入業者,製造物に氏名などを表示した事業者であり,単なる販売業者は原則として対象になりません。
回答:
故意で通行人にけがをさせた場合、操縦者は、刑事上の責任として、傷害罪(刑法204条)に問われます。刑罰は15年以上の懲役又は50万円以下の罰金です。また、民事上の責任として、不法行為による損害賠償責任を負います。
操縦者の雇用主である会社は、刑事上の責任は問われません。民事上の責任として、使用者責任、すなわち、従業員が「その事業の執行について」第三者に損害を加えた場合、使用者として、損害を賠償する責任を負うのが原則です(民法715条・使用者責任)。
もっとも、従業員が「その事業の執行について」第三者に損害を加えたのか否かは、従業員の職務とUAVを落下させたときの状況によります。そもそも従業員がUAVの操縦と関係ない者であったのに、会社のUAVを勝手に持ち出して落下させたような場合は、使用者である会社は使用者責任を負いません。
また、使用者である会社は、被用者(従業員)の「選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったとき」には、使用者責任を免れますが(民法715条1項但書)、判例上、当該要件を充足するのは非常に例外的な場合に限られています。
回答:
地権者の同意が得られない場合に、その所有する土地の上空を飛行できるか否かは、土地の所有権がどこまで及ぶかという問題になります。もし、土地の所有権が及ぶ上空でUAVを飛行させた場合、UAVの飛行は土地所有権の侵害であるとされ、損害賠償請求を受けたり、妨害排除・予防請求(飛ばすなという請求)を受けます。
土地の所有権は、土地の表面だけではなく、その上下に及ぶと定められています(民法207条)。しかし、土地上空のどの高さまで及ぶかについて具体的な定めはありません。飛行機が土地上空を飛行することを所有権の侵害という人はいませんが、その根拠や限界は必ずしも明らかではないというのが現状です。
120メートル上空まで土地の所有権者の権利が及んでいるかどうかは、場合によって異なるでしょう。例えば、都市部では、100メートルを超えるビルも多く存在しますが、こうした場所では、土地所有権者の権利は120メートル上空にも及んでいると思われます。これに対して、通常の住宅地では、120メートル上空を利用する場面はあまり想定されていないことも多いでしょう。
なお、UAVの飛行が土地所有権を侵害しているとしても、原則として刑事上の責任は問われません。住居侵入罪(刑法130条)は、人が侵入して初めて成立するものであり、UAVが侵入しても適用がないからです。官邸にドローンを侵入させた事件でも、犯人は住居侵入罪に問われたわけではなく、威力業務妨害罪(刑法234条)に問われています。
他方、地権者の土地に住居などがある場合は、その上空を飛行できるかは航空法の観点からも検討が必要です。航空法の許可・承認を得ていたとしても、第三者の上空を飛行することまでは認められていないことが一般的だからです。第三者の上空を飛行しないことについては、申請に際して提出した飛行マニュアルに記載してあることが多いので、よく確認しましょう。
回答:
ドローンに関する保険には、機体が壊れたときに保障してくれる動産総合保険や、事故で他人に損害を与えたときに保障してくれる賠償保険などがあります。一概に「保険に入っている」といっても、どのような保険に入っているか、しっかり確認してください。
また、保険には賠償金額の上限である保険金額が定めてあることが通常です。さらに保険には一般に免責事由(保険会社が保険を支払わなくてよい事由)があり、ドローンの事故・飛行に起因して生じた損害のすべてが補償されるわけではないことには注意する必要があります。
また、他人に怪我をさせれば、(業務上)過失致傷罪が適用されることもありますので、保険に入っていても安全に十分注意して飛行させる必要があることは、当然です。
回答:
通常、会社は使用者として監督責任を負います。
具体的には、操縦者である従業員が「その事業の執行について」第三者に損害を加えた場合、会社は、従業員の「選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったとき」を除き、損害賠償責任を負います。そして、判例上、この例外の要件を充たすのは、非常に例外的な場合に限られています。
また、会社が監督責任だけでなく直接不法行為責任を負うという場合もあります。たとえば、操縦者がマニュアルに従っていないことを知りながら放置していた場合であるとか、UAVが飛行している周辺で監視を行い、他人が入らないようにしなければならなかったのに、そのような措置を講じていなかった場合は、会社が不法行為に基づく損害賠償責任が直接負うこともあります。
質問8をあわせてごらんください。
(ユー・アス補足)
回答は法的に正確な記述が行われていますが、一般には次のように理解できます。
普通は、会社が責任を問われると考えて構いません。ただし、従業員が業務と関係なく私的な利用で事故を起こしたような場合までは、会社は責任を負いません。