No.769遺跡

「多摩ニュータウン 旧石器時代にも"大団地"」
東京新聞 昭和57(1982)年7月18日付

所在地: 多摩市豊ヶ丘一丁目

調査期間: 昭和56年6月29日~昭和57年12月24日

時代: 旧石器時代、縄文時代、奈良時代、平安時代、中世、近世

発掘調査報告書:
東京都埋蔵文化財センター 1983 『多摩ニュータウン遺跡 昭和57年度』 東京都埋蔵文化財センター調査報告 第4集(第5分冊)

旧石器時代の礫群発見

旧石器時代の遺跡で、キャンプした後のように焼けた石が集まる事例がいくつも見つかることは、今となっては珍しいことではない。

しかし大規模調査が少なかった当時、この発見は多くの研究者の注目を集めた。

この遺跡では炭や石器の集中した箇所も発見され、人々の活動を示す痕跡は76箇所にも及んだ。

多くの人に〝大団地〟をも連想させるこの成果は、学問的にも「少人数で放浪」していただけという旧石器時代の強いイメージに一石を投じた。

今では、この周辺にも多くの旧石器時代遺跡の存在が明らかとなっている。

遺跡の場所

遺跡は、当センターに併設する遺跡庭園「縄文の村」(No.57遺跡)から東の谷を挟んだ対岸に位置する。

調査後の跡地には、現在豊ヶ丘団地の一号棟が建てられている。

Google Earthより(一部改変)

No.769遺跡を遺した人々の活動

この遺跡では、遺物の出土層位と石器のまとまりごとの内容(組成)により、5つの時期(文化層)にわたって連綿と人々の活動が行われていたことがわかった。

特に注目を浴びた8箇所の礫群は、本遺跡で最も古い第5文化層で検出された。

この痕跡は、一度に残されたものなのか複数回にわたる結果であるのか。

あるいは一つの集団がのこしたのか複数の集団の存在もありうるのか。

痕跡が遺される過程と集団行動についての問題は、周辺調査事例を巻き込み、旧石器時代研究の大きな課題の一つとして今も議論されている。

No.769遺跡出土台石と磨石

「台石」は、縄文時代の石皿のような使われ方をした可能性がある旧石器時代の石器。「磨石」は石皿や台石の上でものを磨る道具。

礫群と磨石+台石の出土地点

周辺の旧石器時代検出遺跡(東京都遺跡地図情報インターネット提供サービスと国土地理院地図を重ねて作成)