14:00~14:15 [講演05]

日本生態学会東北地区会一般講演

「岩手県内におけるマスティング周期のパターン(予報)―ミズナラの林分間比較および数種の樹種間比較―」

本間 千夏(秋田県大・院・生物資源)・野口 麻穂子(森林総研東北)・正木 隆・八木橋 勉・柴田 銃江(森林総研)・星崎 和彦(秋田県大・生物資源)


樹木のマスティングに関わる研究はブナ科に着目したものが多く存在している。最近、岩手県北上山地の中居村調査地では、ミズナラの豊作年の周期が短縮傾向にあることが報告されており、その周期の変化を駆動しているのは気温であることが示唆されている(Shibata et al. 2020)。気温によって周期が変わるのであれば、気温の異なる場所では全く異なるパターンを示すと考えられる。従って、本研究では、同じ岩手県内で気候条件が異なる北上山地北部の中居村調査地と県南奥羽山系のカヌマ沢渓畔林試験地の2つの林分を対象として、林分間のミズナラのマスティング周期を比較し、また、カヌマ沢におけるマスティング周期の変化の種間比較を行うことを目的とした。

本研究では、両試験地における1990~2017年までの健全種子のデータを使用した。中居村はミズナラ林、カヌマ沢は多種混交林であり、両試験地においてミズナラを、カヌマ沢では種間比較のためにブナ、トチノキなどの主要樹種を対象とした。

ミズナラは、カヌマ沢では1990年代は2年周期だったが、2000年代には周期性は見られなくなった。一方、中居村では1990年代は周期性がみられなかったが、2000年代は2年周期が検出された。樹種間比較では、ミズナラのように周期性が失われる種がいた一方で、サワグルミでは対象期間全体で3年周期が継続していた。また、トチノキは、1990年代においてはマスティングの特徴を示さなかったが、2000年以降では周期性が認められるようになった。以上より、マスティング周期の変化は、同じ県内でも気候条件の異なる場所ではパターンが異なり、また、同じ林分内でも種によって異なるパターンを示すことが示唆された。