腐朽した倒木は森林内の生物多様性に大きく貢献しており、そのひとつに樹木の更新場所としての役割がある。倒木は菌類の分解力に応じて異なる腐朽型を示す。腐朽型は白色腐朽、褐色腐朽などがあり、各々の物理化学性や微生物群集の違いが、倒木上の実生定着に影響を与えるとされている。また、樹木が共生する菌根タイプによって定着する倒木の腐朽型選好性が異なるという報告がある。以上を考慮し、腐朽型の異なる倒木を基質としたポット試験を通して、腐朽型が樹木実生の成長に及ぼす影響を明らかにすることを目的として研究を行った。ポット試験の基質は白色腐朽、褐色腐朽、土の3処理でそれぞれ滅菌・非滅菌の処理区を設けた。樹種はアーバスキュラー菌根菌(AM)が共生するスギ、ヒノキ、外生菌根菌(ECM)が共生するダケカンバ、シラビソの計4種を用いた。基質のイオン組成・pH 、実生の成長量を測定し、基質や処理間の成長速度の差を比較した。さらに成長速度が受ける影響についてモデル選択を用いて解析した。
スギ、ヒノキ、ダケカンバの3種の成長速度では基質・処理間に有意な差がみられた。この3樹種において、モデル選択を行った結果、スギ、ヒノキの成長速度は主に養分で説明でき、ダケカンバでは養分、基質の種類、滅菌の有無から説明できることがわかった。このことからAMのスギ、ヒノキでは腐朽型による化学的組成の違い、ECMのダケカンバでは腐朽型による化学的組成と菌類群集の違いが腐朽型選好性に影響している可能性が示唆された。