TKC143-TKC164
第七段 生き続けるローマの思想
StageⅦ The Enduring Legacy of Roman Thought
StageⅦ The Enduring Legacy of Roman Thought
種別:フォリス/青銅貨
発行者:都市コンスタンティノープル記念シリーズ
発行年:紀元330-354年
発行場所:アンティオキア造幣所
重量:2.91 g
サイズ:16 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:Very Fine
文献番号:RIC VII Antioch 92
表銘文
CONSTANTINOPOLIS「コンスタンティノープル」
図像(表)
兜をかぶりマントをまとった都市コンスタンティノープルの擬人化胸像、左向き。肩上に笏。→ 都市そのものを人格化するローマ的伝統を継承し、新都が“第二のローマ”として正統な帝国中心であることを宣言する図像。
裏銘文
(無銘)エクサーグ:SMANI
図像(裏)
勝利の女神ウィクトリアが左向きに立ち、右足を船首に置き、右手に笏、左手に盾を持つ。→ 海上支配と軍事的勝利を象徴し、新都の繁栄と帝国の継続を表す。船首は地中海支配の象徴。
歴史的背景
AD 330年、Constantine I がビザンティオンを再建し、新都コンスタンティノープルを創設した。本貨はその創建を記念するシリーズの一つであり、ローマ帝国の重心が東方へ移動する歴史的転換点を示す。ローマという理念は消滅せず、都市の名を変えて継承された。本貨はその「理念の移動」を象徴する重要資料である。
TKC143の歴史を読む
種別:デカヌンミウム / 青銅貨
皇帝:ユスティニアヌス1世(Justinian I,在位AD527-565)
発行年:紀元550-551年
発行場所:テウポリス 造幣所
重量:6.43 g
サイズ:24 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:Nearly Very Fine
文献番号:Sear Byzantine Coins 237 / DOC I(Justinian I 章)/MIB I(関連)
表銘文
D N IVSTINI-ANVS P P AVG「我らが主ユスティニアヌス、敬虔にして幸福なるアウグストゥス」
図像(表)
兜を着け鎧をまとった皇帝正面像。右手にグロブス・クルキゲル(十字付き宝珠)、左腕に盾を持つ。右側に十字。→ 皇帝がキリスト教世界の守護者であることを示す典型的ビザンツ皇帝像。十字付き宝珠は世界支配が神の意志によって与えられたことを象徴する。
裏銘文
ANNO XXIIII THЧP
図像(裏)
中央に大きな「I」(10ヌンミ=デカヌンミウム)。左右に治世年表示「ANNO」と「XXIIII」。上部に十字。「I」は額面10ヌンミを示す。「ANNO XXIIII」は皇帝治世24年を意味し、西暦550/551年頃の鋳造を示す。エクサーグの「THЧP」はテウポリス(アンティオキア)の造幣所略号。
歴史的背景
ユスティニアヌス1世は東ローマ帝国の最盛期を築いた皇帝であり、ローマ法大全(Corpus Juris Civilis)の編纂、ハギア・ソフィア大聖堂の建設、西地中海への領土回復などで知られる。本貨が鋳造された6世紀半ばは、帝国が再び地中海世界の覇権回復を目指していた時代であり、皇帝の軍事的・宗教的権威が貨幣の図像にも強く表現されている。
TKC144の歴史を読む
種別:フォリス/青銅貨
皇帝:ユスティヌス2世 (Justin II ,在位AD565-578)
発行年:紀元574-575年
発行場所:ニコメディア造幣所
重量:10.43 g
サイズ:28 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:Good Very Fine
文献番号:Sear Byzantine Coins 369 / DOC I(Justin II 章)/ MIB I(関連タイプ)
表銘文
D N IVSTINVS P P AVG「我らが主ユスティヌス、敬虔にして幸福なるアウグストゥス」
図像(表)
皇帝ユスティヌス2世と皇后ソフィアが正面を向き、二人掛けの玉座に並んで座る。ユスティヌスはグロブス・クルキゲル(十字付き宝珠)を持ち、ソフィアは十字形の笏を持つ。両者の頭上には光背(ニンブス)。二人の頭上中央に十字。→ 皇帝と皇后の並坐像はビザンツ帝国の王朝的統治を象徴する図像。光背は皇帝権力が神の加護を受けていることを示す。宝珠と十字笏は世界統治とキリスト教帝国の理念を象徴する。
裏銘文
ANNO X NIKO
図像(裏)
中央に大きな「M」(40ヌンミ)。左右に「ANNO」と「X」。上部に十字、下部に「A」。
→ 「M」はフォリス(40ヌンミ)の額面表示。「ANNO X」は皇帝治世10年を示し、西暦574/575年頃の鋳造。下部の「A」は第1オフィキナ。エクサーグの「NIKO」はニコメディア造幣所の略号。
歴史的背景
ユスティヌス2世はユスティニアヌス1世の後継者として即位した皇帝であり、彼の治世はビザンツ帝国が再び軍事的・財政的困難に直面した時代にあたる。本貨のようなフォリスは帝国内で広く流通した銅貨であり、皇帝と皇后の並坐像は王朝の安定と統治の正統性を視覚的に示す重要なプロパガンダ図像であった。
TKC145の歴史を読む
種別:フォリス/青銅貨
皇帝:ヘラクレイオス(Heraclius ,在位AD610–641)
発行年:紀元610-641年頃
発行場所:コンスタンティノープル造幣所
重量:12.02 g
サイズ:32 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:Nearly Very Fine
文献番号:Sear, Byzantine Coins and Their Values / DOC II(Dumbarton Oaks Catalogue, Heraclius )/ MIB(Moneta Imperii Byzantini)
表銘文
(摩耗により判読困難)
図像(表)
中央にヘラクレイオス、左に皇后マルティナ、右にヘラクレイオス・コンスタンティヌスの立像。三名とも王冠とクラミスを着用し、グロブス・クルキゲル(十字付き宝珠)を保持。
→ 王朝的正統性と神授王権を強調する三皇帝構図。危機の時代に継承体制を視覚化した図像である。
裏銘文
ANNO CON (右側治世年は摩耗により判読困難)
図像(裏)
中央に大きな「M」(40ヌンミ=フォリスの価値表示)。上部に十字架。M内部に「E」。→ 額面表示と十字架の組み合わせは、貨幣制度とキリスト教帝国理念の融合を示す。「ANNO」は治世年表示の導入語。右側の年号は摩耗で読めない。「CON」はコンスタンティノープル造幣所を示す。M内部の「E」はオフィキナ(工房記号)で、第5工房を意味する。
歴史的背景
ヘラクレイオス治世は、東ローマ帝国が「ローマ帝国の後期形態」から、ギリシア的・キリスト教的な中世帝国へと決定的に移行した時代にあたる。本貨のような大型フォリスは、日常経済を支える実用貨である一方、十字架・宝珠・家族統治像などの図像により、帝国の秩序が信仰と王朝の正統性によって支えられることを明確に示している。
TKC146の歴史を読む
種別:デナロ / ビロン貨
皇帝:フリードリヒ2世 (Frederick II, 在位AD1220-1250〔神聖ローマ皇帝〕)
発行年:紀元1296-1337年頃
発行場所:メッシーナまたはブリンディジ
重量:0.87 g
サイズ:17 mm
ダイ軸(Die Axis):2 h
状態:Very Fine
文献番号:-
表銘文
+FRIDERICVS(判読不完全)「フリードリヒ」
図像(表)
中央にモノグラム(王名略字)、周囲に銘文。→ 統治者の権威を簡略化して示す中世的表現。
裏銘文
+SICILIA(判読不完全)「シチリア」
図像(裏)
円内に十字。→ キリスト教世界と王権の結びつきを象徴。
歴史的背景
フリードリヒ2世は神聖ローマ皇帝でありながらシチリア王として地中海世界に強い影響力を持った人物である。本コインは南イタリアにおける彼の統治を示すもので、古代ローマ的な肖像ではなく、象徴的なモノグラムと十字によって権威を表現している点が特徴である。ローマ帝国の理念が中世ヨーロッパへと継承され、キリスト教的世界観と融合していく過程を示す重要な資料である。
TKC151の歴史を読む
種別:アクチェ / 銀貨
皇帝:メフメト2世 (Mehmed II, 在位1451-1481)
発行年:紀元1451-1481年頃
発行場所:メッシーナまたはブリンディジ
重量:1.0 g
サイズ:12 mm
ダイ軸(Die Axis):-
状態:Very Fine
文献番号:-
表銘文
(アラビア文字銘文・判読不完全)「メフメト・ビン・ムラト(ムラトの子メフメト)」
図像(表)
アラビア文字による銘文配置。→ イスラム世界における書記的権威の表現。
裏銘文
(アラビア文字銘文・判読不完全)「常に勝利せし者(または鋳造地・称号)」
図像(裏)
装飾的なアラビア文字による構成。→ 宗教的・政治的正統性を文字で示す。
歴史的背景
メフメト2世は1453年にコンスタンティノープルを征服し、東ローマ帝国を滅ぼしたことで知られるオスマン帝国のスルタンである。本コインはイスラム圏特有の文字中心のデザインで、古代ローマ以来の肖像表現とは対照的に、支配者の権威を文字と称号によって示している。ローマ帝国の終焉と、その後を継ぐ新たな地中海世界の秩序を象徴する一枚である。
TKC154の歴史を読む
種別:20ソルディ / 銀貨
皇帝:ヴェネツィア共和国(ドージェ政) (Republic of Venice, AD1572)
発行年:紀元1572年頃
発行場所:ヴェネツィア
重量:4.11 g
サイズ:26.8 mm
ダイ軸(Die Axis):4 h
状態:Very Fine
文献番号:-
表銘文
(判読不完全)「ドージェ名+SAN MARCO」
図像(表)
聖マルコが福音書を持ち、跪くドージェに旗を授ける。→ 神から統治権を授かるヴェネツィアの政治理念を象徴。
裏銘文
(判読不完全)「キリスト称号(VIC(TOR)など)」
図像(裏)
マンドルラ内に立つキリスト像。→ 神の加護と正統性を示す宗教的図像。
歴史的背景
ヴェネツィア共和国は中世から近世にかけて地中海交易を支配した海洋国家である。本コインは、聖マルコからドージェへと権力が授けられる構図により、国家の統治が神の意思に基づくことを示している。ローマ帝国の伝統は直接的な皇帝像ではなく、キリスト教と都市国家の制度の中に受け継がれており、ここに「ローマの思想」の新たな形を見ることができる。
TKC153の歴史を読む
種別:メダル / 銀製
皇帝:ナポレオン1世 (Napoleon I, 在位1804-1814, 1815)
発行年:紀元1805年
発行場所:ミラノ
重量:44.00 g
サイズ:41.00 mm
ダイ軸(Die Axis):-
状態:AU50(Scratch & Edge bumpあり)
文献番号:Bramsen 420
表銘文
NAPOLEO GALLORVM IMPERATOR ITALIAE REX「ナポレオン、フランス人の皇帝にしてイタリア王」
図像(表)
月桂冠を戴いたナポレオンの左向き胸像。→ 古代ローマ皇帝を模した権威表現。
裏銘文
VLTRA D. XXIII MAII A. MDCCCV L. M.「さらに彼方へ(標語)1805年5月23日」
図像(裏)
左に女神(勝利またはフランスの寓意)がリースを掲げ、中央の祭壇に誓約文書を置き、右に人物(ナポレオンまたは国家)がそれに手を差し出す。→ 皇帝戴冠と国家的誓約、正統性の象徴。
歴史的背景
1805年5月23日、ナポレオンはミラノにおいてロンバルディアの鉄王冠を受け、「イタリア王」として戴冠した。本メダルはその記念として制作され、銘文にある「GALLORVM IMPERATOR」「ITALIAE REX」は彼がフランス皇帝であると同時にイタリア王であることを明確に示している。また「VLTRA(さらに彼方へ)」という標語は、彼の拡張的な政治理念と帝国構想を象徴する。古代ローマの称号や意匠を意識的に取り入れることで、ナポレオンは自らをローマ帝国の後継者として位置づけた。
TKC161の歴史を読む
種別:2フラン / 銀貨
皇帝:フランス共和国 (French Republic, AD1917)
発行年:紀元1917年
発行場所:フランス
重量:10.00 g
サイズ:27.00 mm
ダイ軸(Die Axis):-
状態:XF DETAILS(クリーニング)
文献番号:-
表銘文
REPUBLIQUE FRANÇAISE「フランス共和国」
図像(表)
マリアンヌ(種を蒔く人)が前進しながら種を撒く姿。→ 自由と共和国の理念を象徴する女性像。
裏銘文
LIBERTE EGALITE FRATERNITE / 2 FRANCS「自由・平等・博愛 / 2フラン」
図像(裏)
オリーブの枝と額面表示。→ 平和と国家理念の調和を象徴。
歴史的背景
このコインはフランス共和国の理念を象徴する代表的なデザインであり、「種を蒔く人(セムーズ)」として知られるマリアンヌ像が描かれている。フランス革命によって生まれた「自由・平等・博愛」の思想は、古代ローマの共和政理念とも通じるものであり、本コインはその近代的継承を示す一枚である。ローマに始まる市民と国家の関係は、時代を超えてフランス革命、そして近代国家へと受け継がれていく。
TKC162の歴史を読む
種別:2ユーロ / バイメタル貨
発行国:イタリア共和国(Italian Republic)
発行年:紀元2007年
発行場所:イタリア
重量:8.5 g
サイズ:25.75 mm
ダイ軸(Die Axis):-
状態:UNC
文献番号:-
表銘文
REPUBBLICA ITALIANA「イタリア共和国」外周(共通意匠)(12個の星)※欧州連合を象徴
50° ANNIVERSARIO DEI TRATTATI DI ROMA EUROPA 2007 R「ローマ条約50周年」「ヨーロッパ」
図像(表)
中央に開かれた書物(ローマ条約文書)。背景にはカピトリーノ広場(ミケランジェロ設計)の舗装模様。→ 条約調印の場と理念を象徴。
裏銘文
2 EURO
図像(裏)
ヨーロッパ地図と額面表示。→ 欧州統合通貨としての象徴。
歴史的背景
1957年3月25日、ローマにおいて西ドイツ・フランス・イタリア・ベルギー・オランダ・ルクセンブルクの6カ国がローマ条約に署名し、ヨーロッパ経済共同体(EEC)が成立した。ローマ条約は欧州経済共同体(EEC)の成立を定め、後の欧州連合(EU)へと発展する決定的な一歩となり、単一市場・共通通貨ユーロの基礎、現代ヨーロッパ統合の出発点となった。本コインはその50周年を記念し、ユーロ圏各国が共通デザインで発行したもので、各国ごとに国名のみが異なる。古代ローマ帝国が地中海世界を統合したように、現代においても「ローマ」の名は統合の象徴として機能している。本コインは、ローマ帝国の遺産である「統一された法と秩序」という理念が、現代ヨーロッパにおいて新たな形で再構築されたことを示す一枚である。
TKC163の歴史を読む