TKC046-TKC068
第三段 三世紀の危機と軍人皇帝
StageⅢ The Crisis of the Third Century and the Soldier Emperors
StageⅢ The Crisis of the Third Century and the Soldier Emperors
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:カラカラ (Caracalla,在位AD198-217)
発行年:紀元212-213年頃
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.71 g
サイズ:20 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:VF
文献番号:RIC 302 / BMCRE 146 / RSC 125
表銘文
ANTONINVS PIVS AVG GERM「アントニヌス・ピウス・アウグストゥス、ゲルマニクス」→ 正式名「アントニヌス」を使用し、ゲルマニア遠征での勝利を誇示。
図像(表)
月桂冠を戴いたカラカラの頭部、右向き。
裏銘文
LIBERAL AVG VIIII「アウグストゥスの気前の良さ、第9回」
図像(裏)
リベラリタス(寛大さの女神)が左を向いて立ち、右手にアバカス(施しの記録盤)、左手に豊穣角を持つ。→ 皇帝が民衆に分配(ドナティウム)を行ったことを記念。
歴史的背景
カラカラはセプティミウス・セウェルスの子で、父の死後単独皇帝として即位。軍事的にはゲルマニア遠征を行い、また212年には帝国全自由民に市民権を与える「カラカラ勅令(アントニヌス勅令)」を発布した。このコインは「リベラリタス第9回」を記念し、皇帝が市民や兵士に施しを行った事実を強調するプロパガンダ貨幣。分配(liberalitas)を繰り返すことで、帝国の忠誠と安定を維持する意図があった。
種別:デナリウス/銀貨
皇帝:ゲタ(Geta,在位AD209-211)
発行年:紀元198-211年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.17 g
サイズ:18.48 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:GVF
文献番号:RIC IV 18
表銘文
P SEPT GETA CAES PONT「プブリウス・セプティミウス・ゲタ、カエサル、神官」→ ゲタがまだ皇帝(アウグストゥス)ではなく、皇太子(カエサル)としての地位にあったことを示す。
図像(表)
ゲタの胸像、右向き。素頭、軍装(胸甲)と衣をまとった姿。皇太子としての威厳と、将来の軍事的役割を強調する。
裏銘文
PRINC IVVENTVTIS「若者たちの第一人者(皇太子)」→ カエサル(後継者)に付与される称号で、国家の将来を担う人物であることを示す。
図像(裏)
軍装姿のゲタが左向きに立ち、右手にオリーブ枝(平和)、左手に槍を持つ。背後には戦利品のトロフィー。→ 若き後継者としての軍事的役割と、帝国の安定を担う存在を象徴。
歴史的背景
ゲタはセプティミウス・セウェルスの次男で、兄カラカラとともに後継者に指名された。しかし211年に父が没すると、兄カラカラとの確執が激化し、同年にカラカラの命令により母ユリア・ドムナの面前で殺害された。このコインはまだカエサル(副皇帝)としての若きゲタを描いており、セウェルス朝の後継を物語る。
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種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:マクリヌス(Macrinus,在位AD217–218)
発行年:紀元217-218年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.0 g
サイズ:18.53 mm
ダイ軸(Die Axis):8 h
状態:GVF
文献番号:RIC 84 / RSC 114
表銘文
IMP C M OPEL SEV MACRINVS AVG「インペラトル、ガイウス・マルクス・オペッリウス・セウェルス・マクリヌス、アウグストゥス」
図像(表)
月桂冠を戴き胸甲をまとったマクリヌスの胸像、右向き。短い軍人風の髭を蓄えて描かれる。→ 典型的な軍人皇帝の姿を強調。
裏銘文
SALVS PVBLICA「公衆の安寧」
図像(裏)
女神サルスが左に座り、笏を持ち、祭壇から立ち上がる蛇に供物を与えている。→ 皇帝が帝国全体の健康と安寧を守る存在であることを象徴。
歴史的背景
マクリヌスは近衛長官(プラエトリアン・プレフェクト)から即位した初の皇帝で、カラカラ暗殺後に権力を握った。しかし軍人や元老院との支持基盤は脆弱で、対パルティア戦争で不利に立たされ、わずか1年余りで敗北・処刑された。このデナリウスは、彼の短い治世の間に発行されたもので、サルス像を通じて「帝国の平和と健康を取り戻す皇帝」としての正統性を訴えている。
種別:
皇帝:
発行年:
発行場所:
重量:
サイズ:
ダイ軸(Die Axis):
状態:
文献番号:
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:エラガバルス(Elagabalus,在位AD218-222)
発行年:紀元221年
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.17 g
サイズ:18 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:GVF
文献番号:RIC IV.2 62(variant with TR P IIII)/ BMCRE 214 / RSC 62
表銘文
IMP ANTONINVS PIVS AVG「インペラトル・アントニヌス・ピウス・アウグストゥス」
図像(表)
月桂冠を戴いたエラガバルスの胸像、右向き。→ 若くして帝位に就いた皇帝の威厳ある肖像。
裏銘文
P M TR P IIII COS III P P「最高神祇官、護民官職4回目、執政官3回目、国家の父」
図像(裏)
軍神ソル(または皇帝を神格化した姿)が左に進み、右手に枝(または鞭)、左手に軍旗を持つ。背後に星のシンボル。→ 太陽神ソルの加護と軍事的勝利を示唆するデザイン。
歴史的背景
エラガバルスは14歳で皇帝となり、シリアの太陽神エラガバル信仰をローマにもたらしたことで知られる。彼の治世は伝統的な宗教秩序との摩擦や、奇抜な宮廷生活で評判を呼んだ。本貨幣の裏面は、皇帝の神聖な力を太陽神と結びつけて表現しており、動揺する治世を支えるためのプロパガンダ的性格を強く持つ。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:セウェルス・アレクサンデル(Severus Alexander,在位AD222–235)
発行年:紀元222年
発行場所:アンティオキア造幣所
重量:2.41 g
サイズ:18.37 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:Near EF
文献番号:RIC IV.2 302d / BMCRE 1020 / RSC 561
表銘文
IMP SEV ALEXAND AVG「インペラトル、セウェルス・アレクサンデル、アウグストゥス」
図像(表)
月桂冠を戴き、胸甲とマントをまとったセウェルス・アレクサンデルの胸像、右向き。→ 若年で即位した皇帝の威厳を強調する公式肖像。
裏銘文
VICTORIA AVG「アウグストゥスの勝利」
図像(裏)
勝利の女神ウィクトリアが右に進み、右手に勝利の花冠、左手にヤシの枝を持つ。→ 皇帝の治世における軍事的勝利とローマの繁栄を象徴。
歴史的背景
セウェルス・アレクサンデルは、わずか13歳で皇帝に即位したローマ帝国最後のセウェルス朝皇帝。母ユリア・ママエアの強い影響下に統治を行い、初期は安定を保ったが、やがて軍事指導力の欠如が批判され、ゴート族・サーサーン朝との戦いに苦しんだ。このデナリウスは即位直後の発行で、勝利の女神を掲げることで若き皇帝の権威を正当化し、帝国に安定と勝利を約束する意図を示している。
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種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:マクシミヌス・トラクス(Maximinus Thrax,在位AD235–238)
発行年:紀元235-238年
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.93 g
サイズ:20.25 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:GVF
文献番号:RIC IV.2 16 / BMCRE 25
表銘文
IMP MAXIMINVS PIVS AVG「インペラトル、マクシミヌス、敬虔なるアウグストゥス」
図像(表)
月桂冠を戴き、胸甲とマントをまとったマクシミヌスの胸像、右向き。→ 巨躯の軍人皇帝としての風貌を強調。
裏銘文
VICTORIA AVG「アウグストゥスの勝利」
図像(裏)
勝利の女神ウィクトリアが右へ進み、右手に勝利の花冠、左手にヤシの枝を持つ。→ 皇帝の軍事的勝利とローマ帝国の繁栄を象徴。
歴史的背景
マクシミヌス・トラクス(「大男マクシミヌス」)は、兵士から皇帝にのし上がった初の純粋な「軍人皇帝」。その巨体と怪力で知られ、近衛兵や兵士から強い支持を得て即位した。彼の即位は、元老院貴族ではない軍人出身者が皇帝に就く「軍人皇帝時代」の幕開けを象徴する。このデナリウスは、即位直後に発行され、軍事的勝利と帝国の安定を保証する皇帝像を強調している。
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種別:
皇帝:
発行年:
発行場所:
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ダイ軸(Die Axis):
状態:
文献番号:
種別:
皇帝:
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サイズ:
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種別:
皇帝:
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皇帝:
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重量:
サイズ:
ダイ軸(Die Axis):
状態:
文献番号:
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ゴルディアヌス3世(Gordian III,在位AD238–244)
発行年:紀元241-242年
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.69 g
サイズ:20.31 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:aEF
文献番号:RIC IV.3, 127 / RSC 69 / RCV 8673
表銘文
IMP GORDIANVS PIVS FEL AVG「インペラトル、敬虔にして幸福なるアウグストゥス、ゴルディアヌス」
図像(表)
月桂冠を戴き、胸甲とマントをまとったゴルディアヌス3世の胸像、右向き、背面からの視点。→ 若き皇帝の清新さと威厳を兼ね備えた肖像。
裏銘文
DIANA LVCIFERA「光をもたらす女神ディアナ」
図像(裏)
女神ディアナ・ルキフェラが右を向いて立ち、長い点火された松明を両手で持つ。→ 夜明けを導く光の女神として、希望と再生を象徴。
歴史的背景
ゴルディアヌス3世はわずか13歳で即位し、ローマ史上もっとも若い正規の皇帝の一人とされる。彼の治世は短かったが、東方でのサーサーン朝との戦いに挑んだ。このデナリウスは治世中期に発行されたもので、ディアナ・ルキフェラ像は「若き皇帝が帝国に新たな光をもたらす存在」であることを示す強いメッセージを込めている。
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種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ゴルディアヌス3世(Gordian III,在位 AD238–244)
発行年:紀元240年
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.85 g
サイズ:20.34 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:VF
文献番号:RIC IV.3 81 / Cohen 234
表銘文
IMP GORDIANVS PIVS FEL AVG「インペラトル、敬虔にして幸福なるアウグストゥス、ゴルディアヌス」
図像(表)
月桂冠を戴き、胸甲とマントをまとったゴルディアヌス3世の胸像、右向き。
裏銘文
PM TRP III COS PP「最高神祇官、三度目の護民官職権、執政官、祖国の父」
図像(裏)
皇帝ゴルディアヌス3世が馬に騎乗し、左へ進む姿。右手に長い笏を持つ。→ 皇帝が「軍を率いる統帥者」として強調される希少な図像。
歴史的背景
ゴルディアヌス3世は13歳で即位した少年皇帝で、軍の支持に依存して政権を維持した。このデナリウスは即位3年目頃の発行で、皇帝自身を「軍を率いる姿」で描いた数少ない例。一般的なゴルディアヌスのデナリウスが女神や抽象概念を描くのに対し、この「騎馬像リバース」は 軍事的正統性を特別に訴えるプロパガンダ発行 とされる。このリバースは RIC IV.3 81 に収録される限定的なタイプで、市場でも「Scarce(稀少)」と評価される。
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種別:アントニニアヌス / ビロン貨
皇帝:フィリップス1世(Philip I “the Arab”,在位AD244–249)
発行年:紀元244-247年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.24 g
サイズ:21.12 mm
ダイ軸(Die Axis):1 h
状態:GVF
文献番号:RIC 26b
表銘文
IMP M IVL PHILIPPVS AVG「インペラトル、マルクス・ユリウス・フィリップス、アウグストゥス」
図像(表)
月桂冠を戴き、胸甲とマントをまとったフィリップス1世の胸像、右向き。
裏銘文
ADVENTVS AVG「アウグストゥスの入城」
図像(裏)
皇帝フィリップス1世が馬に騎乗し、左へ進む姿。右手を挙げて兵士や市民に挨拶し、左手に槍を持つ。→ 皇帝の凱旋・入城(アドヴェントゥス)を描き、支配の正統性と軍事的権威を強調。
歴史的背景
フィリップス1世(通称「アラブ人フィリップス」)は、ゴルディアヌス3世の死後に即位した。彼の治世はサーサーン朝ペルシャとの戦争や帝国各地の不安定な状況の中で始まったが、入城儀礼(アドヴェントゥス)は新皇帝の権威を帝国民に示す重要なプロパガンダであった。このアントニニアヌスは、その即位初期に発行され、軍と民衆の前に姿を現す皇帝像を強調している。「ADVENTVS AVG」リバースは皇帝の権力移行時に特有のモチーフであり、各皇帝の治世初期にしか発行されないことが多いため収集価値が高い。
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種別:アントニニアヌス / ビロン貨
皇帝:フィリップス2世(Philip II,在位AD247–249)
発行年:紀元247-249年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.31 g
サイズ:22.15 mm
ダイ軸(Die Axis):7 h
状態:aGVF
文献番号:RIC 230 / RSC 17
表銘文
IMP PHILIPPVS AVG「インペラトル、フィリップス、アウグストゥス」
図像(表)
放射冠を戴き、胸甲とマントをまとったフィリップス2世の胸像、右向き。
裏銘文
LIBERALITAS AVGG III「両皇帝の第3回の寛大な施し」
図像(裏)
フィリップス1世とフィリップス2世が並んでキュリュルス椅子に座し、互いに右手を差し伸べる。フィリップス1世は短い笏を持つ。→ 皇帝父子が一体となり、市民に施しを行う「リベラリタス(分配・恩恵)」を象徴。
歴史的背景
フィリップス2世は「アラブ人フィリップス」の子で、AD 247年にカエサルからアウグストゥスに昇格した。わずか10歳ほどで共同皇帝とされ、父と並んで統治した特異な存在である。このコインは、父子が並んで描かれた稀少なリバースで、両皇帝の結束と民衆への寛大さを示すプロパガンダとして発行された。実際には父の権威に依存していたが、貨幣を通じて「帝国を二人で支える理想像」が示されている。
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種別:アントニニアヌス / ビロン貨
皇帝:トラヤヌス・デキウス(Trajan Decius,在位AD249–251)
発行年:紀元249-250年
発行場所:ローマ造幣所
重量:4.49 g
サイズ:20.56 mm
ダイ軸(Die Axis):1 h
状態:GVF
文献番号:RIC 21b / RSC 86
表銘文
IMP C M Q TRAIANVS DECIVS AVG「インペラトル、カエサル、マルクス・クィンクティウス・トラヤヌス・デキウス、アウグストゥス」
図像(表)
放射冠を戴き、胸甲とマントをまとったデキウス帝の胸像、右向き、背後から見える姿。
裏銘文
PANNONIAE「パノニア地方の擬人像たち」
図像(裏)
二人の女性像(パノニア・インフェリオルとパノニア・スペリオルの擬人像)が前を向き、互いに反対方向を見て立つ。両者はそれぞれ軍旗(スタンダード)を手に持つ。→ 属州パンノニアがローマの旗の下に忠誠を誓っている姿を象徴。
歴史的背景
パンノニアはドナウ川流域の軍事的要地で、ローマ軍団が集中して駐屯した地域であった。トラヤヌス・デキウスはこの地の軍団に推戴され、AD 249年に現皇帝フィリップス・アラブスを討ち破って皇帝に即位した。このコインの「PANNONIAE」は、自らの出身基盤であるパンノニア属州への感謝と軍事的正統性の強調を示すプロパガンダである。しかし彼の治世は短く、AD 251年のアブリトゥスの戦いにおいてゴート族との戦闘中に戦死した。デキウスはローマ皇帝として初めて異民族との戦いで戦死した人物であり、パンノニアに始まりパンノニア的な軍事帝国の象徴として終焉を迎えた皇帝でもあった。
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種別:アントニニアヌス / ビロン貨
皇帝:ヘレニウス・エトルスクス(Herennius Etruscus,在位AD249-251)
発行年:紀元250-251年
発行場所:ローマ造幣所
重量:4.38 g
サイズ:22 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:EF
文献番号:RIC IV.3 147c
表銘文
Q HER ETR MES DECIVS NOB C「クィントゥス・ヘレニウス・エトルスクス・メッサ・デキウス、尊貴なるカエサル」
図像(表)
放射冠を戴き、マントをまとった胸像、右向き。→ 若き皇太子としての気品と威厳を備え、父デキウスの共同統治者にふさわしい理想像として描かれている。
裏銘文
PRINCIPI IVVENTVTIS「青年たちの第一人者に」
図像(裏)
ヘレニウス・エトルスクスが左向きに立ち、右手に指揮杖(baton)、左手に槍を持つ。→ 皇帝の後継者であり軍の若き指導者としての地位を象徴する。この題号「Princeps Iuventutis(若者の首位)」は、古代ローマで国家の未来を担う若き元首候補を称える伝統的称号。
歴史的背景
ヘレニウス・エトルスクスは、皇帝トラヤヌス・デキウスの長子として帝位を継ぐべく育成された。父子は共同で統治にあたったが、251年のアブリットゥスの戦いでゴート族との戦闘中に共に戦死。その短い生涯は「若き希望が潰えたローマの悲劇」として記録される。このコインは、彼が正式にアウグストゥスに昇格する直前に鋳造されたもので、“ローマの未来への約束”を象徴する、極めて象徴的な発行とされる。
TKC061の歴史を読む
種別:アントニニアヌス / ビロン貨
皇帝:ホスティリアヌス (Hostilianus ,在位AD251)
発行年:紀元250-251年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.88 g
サイズ:23.05 mm
ダイ軸(Die Axis):11 h
状態:GVF
文献番号:RIC IV 181d / Cohen 34 / Hunter 5
表銘文
C VALENS HOSTIL MES QVINTVS N C「カエサル・ガイウス・ウァレンス・ホスティリアヌス・メッシウス・クィントゥス」
図像(表)
ホスティリアヌスの放射冠・ドレープ姿胸像、右向き(背面から見える)。→ 若くして皇帝家に加えられた、端正で繊細な少年像を示す。
裏銘文
PRINCIPI IVVENTVTIS「青年たちの第一人者(若者の模範)」
図像(裏)
軍装のホスティリアヌスが正面に立ち、左を向く。右手に軍旗(シグナ)、左手に長い笏を持つ。→ 元服を迎えたカエサルとして、ローマ軍団と国家の希望を担う若き後継者像を示す。この「PRINCIPI IVVENTVTIS(若者の第一人者)」は、皇帝後継者(プリンケプス・ユウェントゥティス)としての称号を象徴する。
歴史的背景
ホスティリアヌスは、皇帝デキウスの子として生まれた。父と兄ヘレンニウス・エトルスクスがゴート戦争で戦死したのち、共同皇帝トレボニアヌス・ガッルスによって名目的に帝位を継承したが、間もなくローマで疫病により急死(AD 251)。このコインは、彼がまだカエサルとして期待を受けていた短い時期に発行されたものであり、“ローマ帝国最後の希望を担った少年皇子” の儚い記録である。
TKC062の歴史を読む
種別:アントニニアヌス / 銀化ビロン貨
皇帝:トレボニアヌス・ガッルス(Trebonianus Gallus,在位AD251–253)
発行年:紀元252-253年
発行場所:ローマ造幣所
重量:4.17 g
サイズ:21.28 mm
ダイ軸(Die Axis):7 h
状態:EF
文献番号:RIC IV.3 50 / RSC 68
表銘文
IMP C C VIB TREB GALLVS AVG「インペラトル、カエサル、ガイウス・ウィビウス・トレボニアヌス・ガッルス、アウグストゥス」
図像(表)
放射冠を戴き、胸甲とマントをまとったガッルス帝の胸像、右向き。
裏銘文
LIBERTAS PVBLICA「公共の自由」
図像(裏)
自由の女神リベルタスが正面に立ち、右手に解放奴隷の象徴であるピレウス(帽子)、左手に横笏を持つ。→ 皇帝が「市民の自由と伝統を守護する」存在であることを示すプロパガンダ。
歴史的背景
トレボニアヌス・ガッルスは、ゴート族との戦いで戦死したデキウス帝に代わり、軍の推挙で即位した。彼はサポル1世(サーサーン朝ペルシア)やゴート族への防衛に追われる一方で、ローマ帝国内部では疫病の大流行と経済的混乱に直面した。ガッルスは安定を求める市民に「自由」と「秩序」の継続をアピールしたが、政策は十分な成果を上げられず不人気となる。ついには将軍アエミリアヌスに反旗を翻され、味方兵士に見捨てられて暗殺された。このコインは、短命に終わった治世の中で皇帝が掲げた理想像と現実の乖離を象徴する一枚といえる。
TKC063の歴史を読む
種別:アントニニアヌス / ビロン貨
皇帝:ウォルシアヌス(Volusianus ,在位AD251-253)
発行年:紀元251-253年
発行場所:ローマ造幣所
重量:4.19 g
サイズ:22 mm
ダイ軸(Die Axis):7 h
状態:aVF
文献番号:RIC IV 182
表銘文
IMP CAE C VIB VOLVSIANO AVG「インペラトル(最高司令官)・カエサル・ガイウス・ウィビウス・ウォルシアヌス・アウグストゥス」
図像(表)
放射冠を戴き、胸甲とマントを纏ったウォルシアヌス帝の右向き胸像。→ 放射冠は太陽神ソルの加護を意味し、神格化された皇帝像を強調している。
裏銘文
PIETAS AVGG「皇帝たち(複数形)の敬虔」
図像(裏)
ヴェールをかぶった女神ピエタス(Pietas)が左を向き、両手を掲げて祈りの姿勢。
左には祭壇(アルタル)。→ 皇帝とその一族が神々に対して敬虔であることを象徴する図像。この「AVGG」は父トレボニアヌス・ガッルスとの共同統治を示す。
歴史的背景
ウォルシアヌスは、父トレボニアヌス・ガッルスの共同皇帝(アウグストゥス)として在位した。帝国は当時、ゴート族やペストの脅威にさらされており、このコインの「PIETAS AVGG」は、不安定な時代における神への忠誠と国家の安寧祈願を表す。251〜253年という短い治世の中で、ウォルシアヌスは父と共に帝国を守ろうとしたが、最終的にアエミリアヌスに敗北し、両者ともに命を落とした。
TKC064の歴史を読む
種別:
皇帝:
発行年:
発行場所:
重量:
サイズ:
ダイ軸(Die Axis):
状態:
文献番号:
種別:アントニニアヌス / ビロン貨
皇帝:ウァレリアヌス (Valerianus ,在位AD253-260)
発行年:紀元254年
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.57 g
サイズ:22.5 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:GVF
文献番号:RIC V 136
表銘文
IMP C P LIC VALERIANVS AVG「インペラトル・カエサル・プーブリウス・リキニウス・ウァレリアヌス・アウグストゥス」
図像(表)
放射冠を戴き、胸甲を纏ったウァレリアヌス1世の右向き胸像。→ 放射冠は太陽神ソルを象徴し、皇帝の神聖な威光を表す。
裏銘文
VIRTVS AVGG「皇帝たち(複数形)の勇気」
図像(裏)
軍装の女神ウィルトゥス(Virtus)が正面を向いて立ち、両手に軍旗(エンサイン)を掲げる。→ 武勇・軍の規律・皇帝の威厳を象徴する図像。複数形「AVGG」は、息子ガッリエヌスとの共同統治を反映している。
歴史的背景
ウァレリアヌス1世は、ペルシア王シャープール1世との戦いで不運な最期を遂げた皇帝として知られる。AD 260年、エデッサの戦いで捕虜となり、ローマ皇帝として唯一、敵国に屈辱的に囚われた。その後、息子ガッリエヌスが単独統治に移行し、帝国の分裂期が深まる。このコインは、彼がまだ帝位を保ち、軍の統率を誇示していた時期のもの。「VIRTVS AVGG」の銘文は、父子の皇帝がともに戦う姿勢を強調している。
TKC066の歴史を読む
種別:アントニニアヌス / ビロン貨
皇帝:ガッリエヌス(Gallienus ,在位AD253-268)
発行年:紀元266-268年
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.99 g
サイズ:19.43 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:GVF
文献番号:RIC V-1 181 (S) var. (mintmark) / Goebl 0716b / Sear 10200
表銘文
GALLIENVS AVG「ガッリエヌス・アウグストゥス」→ 皇帝としての称号。
図像(表)
右向き、放射冠を戴くガッリエヌスの肖像。髭をたくわえた成熟した姿で表現されている。
裏銘文
DIANAE CONS AVG「皇帝の守護者ディアナ(女神)」→ 狩猟と月の女神ディアナを称える献辞。
図像(裏)
アンテロープ(Antelope)が左に歩む姿。下に造幣所記号「Γ」。この動物はディアナ(狩猟の女神)に関連づけられ、皇帝の守護と帝国の神聖な加護を象徴する。
歴史的背景
ガッリエヌスの治世(253–268年)は「軍人皇帝時代」の混乱期で、内乱や外敵の侵攻が続いた。しかし、彼は軍制改革を進め、騎兵部隊を強化するなど帝国防衛に尽力した。このコインは「動物シリーズ(Zoo series)」として知られる一群のうちの一つで、女神と動物を結びつけることで、皇帝が神々の加護を受けていることを強調している。
TKC067の歴史を読む
種別:アントニニアヌス / ビロン貨
皇帝:ガッリエヌス (Gallienus,在位AD253–268 )
発行年:紀元260年頃
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.63 g
サイズ:21 mm
ダイ軸(Die Axis):11 h
状態:VF
文献番号:RIC V Gallienus 53
表銘文
GALLIENVS AVG→ 皇帝名 ガッリエヌス アウグストゥス
図像(表)
放射冠を戴くガッリエヌス帝の右向き胸像。→ 放射冠は太陽神ソルの象徴であり、皇帝の神聖性と永続的権威を示す。
裏銘文
VIRTVS AVG→ 皇帝の武勇・軍事的徳
図像(裏)
中央に戦利品(トロフィー)が立ち、その両側に捕虜(敵兵)が縛られた姿で座す。皇帝の軍事的勝利と勇気を象徴する図像。トロフィーは倒した敵軍の武具を組み上げたもので、捕虜は屈服した蛮族を表す。帝国の威信と支配力を誇示する典型的デザイン。
歴史的背景
この時代、ローマ帝国は北方のゲルマン人侵入や東方サーサーン朝の攻勢に直面していた。ガッリエヌスは西方防衛に尽力し、ライン方面での戦果を強調するため、ケルン造幣所でこの「捕虜と戦利品」型コインを発行した。彼の治世は混乱の中にあっても、軍事的カリスマと改革者としての一面を示している。
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種別:アントニニアヌス / ビロン貨
皇帝:サロニヌス(Saloninus,在位AD258
-260)
発行年:紀元258-260年
発行場所:サモサタ造幣所
重量:3.5 g
サイズ:21.3 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:GVF
文献番号:RIC V.1 36 / MIR 1696d
表銘文
SALON VALERIANVS CAES「カエサル(副帝)サロニヌス・ウァレリアヌス」
図像(表)
放射冠を戴き、胸甲とマントをまとった右向き胸像。
裏銘文
SPES PVBLICA「国家の希望」
図像(裏)
サロニヌスが笏を持ち、女神スペス(希望)が花と衣の裾を掲げて立ち、二人が向かい合う。
歴史的背景
サロニヌスはウァレリアヌス帝の孫、ガリエヌスの息子としてカエサルに叙せられた。しかしAD 260年、ガリア方面でポストゥムスの反乱が起きると軍の支持を失い、幽閉され殺害された。このコインは、短命の皇子を「ローマの未来を担う希望」として描いた稀少な遺品であり、三世紀の危機を象徴する一枚である。
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TKC Coin Collection