TKC116-TKC142
第六段 地中海世界の国々
StageⅥ The Nations of the Mediterranean World
StageⅥ The Nations of the Mediterranean World
種別:テトラドラクマ / 銀貨
発行者:都市アテネ(Athena)
発行年:紀元前353–294年頃(古典後期)
発行場所:アテナイ、アッティカ
重量:16.6 g
サイズ:25 mm
ダイ軸(Die Axis):7 h
状態:VF
文献番号:Kroll, Athenian Coins / HGC 4, 1597 / SNG Copenhagen 31
表銘文
(無銘文)
図像(表)
女神アテナの頭部、右向き。 アッティカ式兜をかぶり、兜にはオリーブの葉と花飾り。 → 都市国家アテネの守護神であり、知恵と戦略の象徴。
裏銘文
ΑΘΕ「Athens の略(アテナイを示す銘)」
図像(裏)
フクロウ(Athena noctua)が正面を向きつつ右に立つ。 左にオリーブの枝と三日月。 → フクロウは知恵と夜の視力の象徴で、アテナの聖鳥。オリーブと月は、アテネの豊穣と神聖を強調する。
歴史的背景
この「フクロウコイン」は古代ギリシャで最も有名な貨幣で、アテネ帝国の象徴。紀元前5世紀、ペルシア戦争勝利後のアテネは、デロス同盟を主導し、エーゲ海世界で圧倒的な海上覇権を築いた。テトラドラクマはその財政基盤であり、地中海交易で最も流通した国際通貨といえる。ローマ共和政期のデナリウスよりも早く、古典期における「国際貨幣経済」を象徴。フクロウとアテナは後世の貨幣や紋章にも強い影響を与え、現在でもギリシャのユーロ硬貨(1ユーロ)に受け継がれている。
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種別:テトラドラクマ / 銀貨
発行者:都市アテナ(Athena)
発行年:紀元前355–294年頃
発行場所:アテナイ、アッティカ
重量:16.75 g
サイズ:24 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:GF
文献番号:Kroll, Athenian Coins / HGC 4, 1597 / SNG Copenhagen 31
表銘文
(無銘文)
図像(表)
女神アテナの頭部、右向き。 アッティカ式兜をかぶり、兜にはオリーブの葉と花飾り。 → 都市国家アテネの守護神であり、知恵と戦略の象徴。
裏銘文
ΑΘΕ「Athens の略(アテナイを示す銘)」
図像(裏)
フクロウ(Athena noctua)が正面を向きつつ右に立つ。 左にオリーブの枝と三日月。 → フクロウは知恵と夜の視力の象徴で、アテナの聖鳥。オリーブと月は、アテネの豊穣と神聖を強調する。
歴史的背景
アテナイの「フクロウ」テトラドラクマは古代ギリシャで最も広く流通した銀貨であり、紀元前5世紀のアテナイ帝国からヘレニズム時代まで続いた。この時期(紀元前4世紀後半)はペロポネソス戦争後の衰退期にあたり、貨幣もやや粗放なスタイルになるが、それでも国際的な信頼性は高く、エーゲ海からエジプト、さらにペルシア帝国領域にまで流通した。
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種別: /
発行者:
発行年:
発行場所:
重量: g
サイズ: mm
ダイ軸(Die Axis): h
状態:
文献番号:
種別:スターテル / 銀貨
発行者:都市コリントス (Corinth)
発行年:紀元前345–307年頃
発行場所:コリントス地方コリントス
重量: 8.25 g
サイズ:21 mm
ダイ軸(Die Axis):3 h
状態:VF
文献番号:Pegasi 430 / HGC 4, 1848 / BCD Corinth 103
表銘文
(無銘文)
図像(表)
ペガソスが左へ飛翔、その下にコッパ(Ϙ)記号。→ ペガソスはコリントスを象徴する伝統的図像。コッパは古代コリントスの頭文字。
裏銘文
(無銘文)
図像(裏)
アテナ女神の頭部、左向き。月桂冠を飾ったコリント式兜をかぶる。首元の両側に「A–P」の銘字。右には豊穣角(コルヌコピア)が描かれ、中に二本の麦穂。→ 軍神アテナと豊穣の象徴を結びつけ、都市の繁栄を強調。
歴史的背景
コリントスは古代ギリシャ有数の海洋都市国家で、交易・工芸の中心地として繁栄。伝統的にペガソスとアテナが貨幣の主題となり、紀元前4世紀にはそのスタイルが広域に流通した。このタイプは通常のペガソス・スターテルに加え、豊穣角(cornucopia)を配することで豊かさと都市の繁栄を誇示した特別な図像。コリントスの硬貨はペロポネソスやマケドニアでも広く通用し、国際的な貨幣流通の中心を担った。
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種別:ディドラクマ / 銀貨
発行者:都市ロードス(Rhodes)
発行年:紀元前340–316年頃
発行場所:カリア地方ロドス
重量:6.35 g
サイズ:19 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:F
文献番号:Ashton 98 / HN Online 813 / HGC 6, 1433
表銘文
(無銘文)
図像(表)
放射冠を戴く太陽神ヘリオスの頭部、やや右向き。→ ロードスの守護神であり、都市の象徴。顔は正面をわずかに向き、まぶしい光と神性の輝きを表現する。後の世界七不思議「ロードス島の巨像(コロッソス)」のモデルともされた。
裏銘文
POΔION(Rhodesの住民)
図像(裏)
バラの花(ローズ)と右に伸びる蕾。左側に葡萄房と“E”の文字を配し、方形の窪み(インクルース)内に収められている。→ 「ローズ(rose)」はRhodes(ロードス)と語呂が同じであり、都市の象徴かつ貨幣図像の語呂合わせとして機能した。
歴史的背景
紀元前4世紀、ロードス島はエーゲ海の交易の要衝として繁栄し、ギリシア世界有数の海洋都市国家となった。このディドラクマ銀貨は、ヘリオス信仰と都市アイデンティティを融合した代表的なコインであり、裏面のバラは「Rhodos=Rose」を示す言葉遊び(カンタナシア)として有名。ロードスは後に、マケドニア王国やローマと巧みに同盟を結びながら独立性と商業的中立を維持した。その洗練された貨幣美術はヘレニズム時代を通じて高く評価された。
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種別:トリオボル / 銀貨
発行者:都市メタポントゥム(Metapontum)
発行年:紀元前470–440年頃
発行場所:ルカニア地方メタポントゥム
重量:1.03 g
サイズ:13 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:VF
文献番号:HN Italy 1487 / HGC 1, 1071
表銘文
ΜΕΤΑ / ΠΟ「メタポントゥムの(貨幣)」。表面の大麦の穂の左右に分割して刻まれた都市名の省略形で、ΜΕΤΑ(META) と ΠΟ(PO) を合わせてΜΕΤΑΠΟ(Metapo–)= Μεταπόντου(メタポントゥムの) を意味する。
図像(表)
中央に大きな大麦の穂(Ear of Barley)。→ メタポントゥムは南イタリア屈指の肥沃な穀倉地帯であり、この「穂」は都市そのものの象徴。地中海世界に穀物を供給した「黄金の麦の都市」として知られた。
裏銘文
(無銘文)
図像(裏)
牛の頭骨(ブクラニオン, bucranium)が陰刻(incuse)で刻まれる。→ 古代ギリシア植民都市で特に南イタリア(マグナ・グラエキア)に特徴的な「表陽刻・裏陰刻」技法による、初期ギリシア貨幣様式の典型例。牛頭は豊穣と犠牲、そして大地の神聖性を象徴している。
歴史的背景
メタポントゥムは、紀元前7世紀にアカイア人が建設した植民都市。南イタリアの穀物輸出拠点として繁栄し、貨幣には一貫して「穀物の穂」が描かれた。この時期のトリオボルは、アテナイやコリントなどの主要都市と交易する際の標準的な交換単位として機能していた。また、ブクラニオンは後にローマ時代の宗教美術にも受け継がれる意匠である。
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種別: /
発行者:
発行年:
発行場所:
重量: g
サイズ: mm
ダイ軸(Die Axis): h
状態:
文献番号:
種別:ブロンズ / 青銅貨
発行者:エペイロス王ピュロス(Pyrrhus I of Epirus)
発行年:紀元前278–276年
発行場所:シュラクサイ(シチリア)
重量:11.90 g
サイズ:24 mm
ダイ軸(Die Axis):10 h
状態:Very Fine(軽いピッティングあり)
文献番号:CNS II 177 / HGC 2, 1450 / SNG ANS 845 / SNG Copenhagen 812
表銘文
(無銘文)
図像(表)
獅子皮を被ったヘラクレスの頭部、左向き。右側に棍棒(クラブ)。→ ヘラクレスはピュロスが自らを重ねた英雄的存在であり、アレクサンドロス大王の後継者たる「戦う王」としての正統性を象徴する。獅子皮と棍棒は超人的武勇と王権の正当性を視覚的に示す。
裏銘文
ΣΥΡΑΚΟΣΙΩΝ→ 「シュラクサイ市民のもの」を意味する都市銘。王名を出さないことで、本貨が王名貨ではなくピュロス支配下における都市鋳造貨であることを示す。
図像(裏)
前進するアテナ・プロマコス(Athena Promachos)。右手に雷霆、左手に盾。左側に花冠。→ アテナ・プロマコスは都市防衛と戦争勝利の象徴であり、ピュロスがシュラクサイの軍事的守護者として振る舞ったことを示す。雷霆は神的承認を伴う攻撃性、花冠は勝利と栄誉を表す。
歴史的背景
前278年、ピュロス1世はシュラクサイに迎え入れられ、シチリアにおいてローマおよびカルタゴと対峙した。本貨はその滞在期に鋳造された都市貨であり、ピュロスの王権とギリシア都市国家の結びつきを示す。現代では「勝てば勝つほど消耗し、最終的に敗北に近づく勝利」すなわち Pyrrhic victory(ピュロスの勝利) の語源となった人物である。
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種別:ブロンズ / 青銅貨
発行者:マケドニア王フィリッポス2世(Philip II of Macedon)
発行年:紀元前359–336年
発行場所:マケドニア王国
重量:6.06 g
サイズ:15 mm
ダイ軸(Die Axis):7 h
状態:VF
文献番号:
表銘文
(無銘文)
図像(表)
若きアポロン(Apollo)の右向き頭像。髪を月桂冠で束ね、神々しい理知の輝きをたたえる。→ アポロンは芸術と調和、そして神的秩序を象徴し、フィリッポス王の統治下での文化的繁栄を示唆している。後のアレクサンドロス大王肖像の原型とも言える様式。
裏銘文
ΦΙΛΙΠΠΟΥ(断片的)→ 「フィリッポス(王)のもの」を意味する王名銘文。マケドニア王権の直接的な主張を示す。
図像(裏)
騎馬のフィリッポス王が右へ疾駆する姿。→ 王自身が若き頃より卓越した騎手であり、騎兵戦術を磨いてギリシャ統一を果たした功績を物語る。
歴史的背景
フィリッポス2世はマケドニア王国の基礎を築き、後のアレクサンドロス大王による東方遠征の土台を築いた人物である。彼はギリシャ諸国をコリント同盟の下にまとめ、軍制改革と外交によって「ヘレニズムの扉」を開いた。この青銅貨に刻まれた馬上の王は、彼の軍略と統率力、そしてギリシャ統一の象徴的勝利を映し出している。また、息子アレクサンドロスの「ブケパロス騎馬像」にも通じるマケドニア王家の伝統的な英雄的イメージの源泉となった。
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種別:テトラドラクマ / 銀貨
発行者:アレクサンドロス3世(Alexander III “the Great”,在位BC336–323)
発行年:紀元前325–323/2年頃
発行場所:アンフィポリス造幣所
重量:17.18 g
サイズ:26.79 mm
ダイ軸(Die Axis):1 h
状態:EF
文献番号:Price 79 (Amphipolis型) Numismatic references confirm this coin type as classic posthumous or very late lifetime issues.
表銘文
(無銘文)
図像(表)
右向きにライオンの頭皮を被った英雄ヘラクレスの頭像。→ アレクサンドロス自身がヘラクレスの化身として描かれ、王の神格化・征服者としての威光を示している。
裏銘文
ΑΛΕΞΑΝΔΡΟΥ「アレクサンドロスの」
図像(裏)
左向きに座るゼウス、左手に長い笏、右手に翼を閉じた鷲。左フィールドに鶏(rooster)が左向きに立つ。→ 鷲は王権とゼウスの象徴、鶏は夜明け/警戒の象徴であり、征服と勝利の確保を暗示する。
歴史的背景
アレクサンドロス大王はマケドニア王としてペルシア帝国を打倒し、地中海からインド西部に至る広大な帝国を短期間で構築した。この銀貨は、彼の治世末期から死後間もなく、アムフィポリスで発行された一枚とされ、「征服王の象徴」として広く流通した。特に「ヘラクレス/ゼウス」の意匠は、アレクサンドロス自身の神格化と王権正統性を伝えるものとなった。
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種別:ドラクマ / 銀貨
発行者:アンティゴノス1世(Antigonos I)
発行年:紀元前318–315年頃
発行場所:サルディス造幣所
重量:4.17 g
サイズ:17 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:EF
文献番号:Price 2687 var.(monogram beneath throne)/ADM Series XX, 404 corr. / SNG Alpha Bank 647–648
表銘文
(無銘文)
図像(表)
獅子皮を被ったヘラクレスの右向き頭像。→ ヘラクレスはアレクサンドロス大王の理想的英雄像であり、王の神的血統・超人的武勇・正統性を象徴する。この図像はアレクサンドロス存命中から用いられ、ディアドコイ時代においても「正統な継承者」を名乗るために踏襲された。
裏銘文
ΑΛΕΞΑΝΔΡΟΥ「アレクサンドロスの」
図像(裏)
ゼウスが左向きに背もたれのない玉座に座し、左手に長い笏を持ち、右手に翼を閉じた鷲を乗せている。左の空間にMIのモノグラム、玉座下にHAのモノグラム。→ 大王の守護神ゼウスによる統治権の授与を示す。このデザインは、アレクサンドロス死後の後継者たち(ディアドコイ)が彼の権威を継承するために継続使用した典型的な意匠である。
歴史的背景
このコインは、アレクサンドロス大王の死後、部将アンティゴノス1世・モノフトルモス(独眼将軍)によって鋳造されたものである。発行名義こそアレクサンドロスのままだが、これは“帝国の正統な後継者”としての正当性を主張する政治的宣言でもあった。この時期、各地のディアドコイ(後継者将軍)が大王の名のもとに貨幣を発行し、覇権を競った。サルディス造幣所のこの発行は、アレクサンドロスの支配理念「ヘラクレスの血を引く王による世界統一」を象徴的に継承した一枚である。
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種別:テトラドラクマ / 銀貨
発行者:リュシマコス(Lysimachus)
発行年:前305–281年頃
発行場所:トラキアまたはマケドニア
重量:16.21 g
サイズ:28 mm
ダイ軸(Die Axis):5 h
状態:GVF
文献番号:HGC 3.2, 1750
表銘文
(無銘文)
図像(表)
神格化されたアレクサンドロス大王の右向き頭像。→ ディアデムを戴き、アンモンの角を持つ姿で表される。これはアレクサンドロスをゼウス=アンモンと結びつけ、神的存在として顕彰する図像であり、後継者であるリュシマコスがその正統な継承者であることを示す政治的表現でもある。
裏銘文
ΒΑΣΙΛΕΩΣ ΛΥΣΙΜΑΧΟΥ「王リュシマコスの(貨幣)」
図像(裏)
玉座に左向きに座る女神アテナ。右手にニケ(勝利の女神)、左手に肩越しの槍を持つ。→ アテナは戦略・知恵・正統な戦争の象徴であり、ニケは勝利の保証を意味する。リュシマコスが軍事的成功と王権の正当性を兼ね備えた支配者であることを強調する構図。内側左にΓ、下部にAの管理記号を伴う。
歴史的背景
リュシマコスはアレクサンドロス大王のディアドコイ(後継者)の一人であり、トラキアを基盤に王国を築いた。本貨は、彼が単なる将軍ではなく「王」としての地位を確立した後に発行されたもので、神格化されたアレクサンドロス像を用いることで、自身の支配が大王の遺産に直結することを視覚的に訴えている。ディアドコイ諸国に共通する「アレクサンドロスの継承競争」を最も明確に示す貨幣型式の一つである。
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種別:テトラドラクマ / 銀貨
発行者:デメトリオス1世ソーテール(Demetrios I Soter,在位BC162–150)
発行年:紀元前162–150年頃
発行場所:セレウコス朝シリア、アンティオキア造幣所
重量:15.76 g
サイズ:32 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:VF
文献番号:SC 1646 / HGC 9, 795(類例)
表銘文
(無銘文)
図像(表)
月桂冠を戴いた王デメトリオス1世の右向き肖像。写実的に表現された顔立ちは、知性と王者の威厳を感じさせる。→ 彼の肖像はセレウコス朝の中でも完成度が高く、ヘレニズム肖像芸術の頂点と評される。
裏銘文
ΒΑΣΙΛΕΩΣ ΔΗΜΗΤΡΙΟΥ ΣΩΤΗΡΟΣ「王デメトリオス・救世主」
図像(裏)
女神テュケ(Tyche)が玉座に座し、右手に舵を、左手に豊穣の角(コルヌコピア)を持つ。王名の下にモノグラム。→ テュケは都市アンティオキアの守護女神であり、この図像は都市と王の密接な結びつき、そして安定した支配を象徴する。
歴史的背景
デメトリオス1世は、セレウコス朝の再興を目指した有能な君主で、内乱とローマの干渉に揺れるシリアを統一へと導いた。「ソーテール(救世主)」の尊号は、彼が反乱を鎮め、国を救った功績に由来する。しかし、彼の強権的な統治は貴族層の反発を招き、最終的にはアレクサンドリアで暗殺された。このテトラドラクマは、セレウコス朝後期の王権と都市信仰が融合した象徴的な作品である。
TKC127の歴史を読む
種別:テトラドラクマ / 銀貨
発行者:プトレマイオス2世フィラデルフォス(Ptolemy II Philadelphos,在位BC285–246)
発行年:紀元前285–246年頃
発行場所:プトレマイオス朝エジプト王国
重量:13.70 g
サイズ:28 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:Near VF
文献番号:Svoronos 567 / SNG Copenhagen 601 / Noeske 100(類例)
表銘文
(無銘文)
図像(表)
ゼウスの象徴を纏うように、アレクサンドロス大王に似た強い横顔で刻まれた王の肖像。ディアデム(王冠)を戴き、やや理想化された表情を見せる。→ この肖像は、父プトレマイオス1世ソーテールの神格化と、その継承者としての王権の正統性を示すために制作されたと考えられる。
裏銘文
ΠTOΛEMAIOY BAΣIΛEΩΣ「王プトレマイオスの」
図像(裏)
ワシ(鷲)が左を向いて立ち、翼を閉じ、雷霆(ゼウスの稲妻)の上にとまる。その右側に単一の記号または文字が配される。→ この鷲はプトレマイオス朝の象徴であり、ゼウスの力(雷霆)を継承する王権の威光を表す。
歴史的背景
プトレマイオス2世フィラデルフォス(兄妹を愛する者)は、父プトレマイオス1世の後を継ぎ、アレクサンドリアを地中海世界の学問と交易の中心へと発展させた。彼は妹アルシノエ2世との婚姻で知られ、この王朝特有の神聖王制を確立した。この時期のテトラドラクマは、エジプト本土だけでなく、キプロス・フェニキア・シリアの各地で発行され、プトレマイオス朝の広大な勢力圏と経済的影響を物語る。
TKC128の歴史を読む
種別:ビリオン・ステーター / 銀質銅貨
発行者:コリオソリテス族
発行年:紀元前100–50年頃
発行場所:北東ガリア
重量:6.13 g
サイズ:20 mm
ダイ軸(Die Axis):2 h
状態:GFV
文献番号:Depeyrot, NC VIII, 186 / DT 2341
表銘文
(無銘文)
図像(表)
様式化された右向きの頭部。髪は大きな渦巻き状のカールに描かれ、「S」字形の耳をもつ。周囲には真珠状の装飾線(pearl strings)が流れるように配置される。→ 古典的なリアリズムから離れ、ケルト特有の抽象化と象徴性を極めたデザイン。この「スパイラル髪型」は生命の循環や太陽の運行を象徴するとされる。
裏銘文
(無銘文)
図像(裏)
様式化された戦車(ビガ)が右に疾走し、戦車上には戦士が立つ。下方には右向きの猪(boar)、上部には真珠状の文様。→ 猪は勇気・戦の象徴であり、ケルト戦士の獰猛さと誇りを表す。このデザインはガリアの英雄神話的世界観を映し出しており、ローマ化以前の独自の文化的自負を伝える。
歴史的背景
コリオソリテス族は、ガリア半島北西部(現在のブルターニュ地方)に居住したケルト民族で、彼らの貨幣はガリア戦争期(カエサル遠征前後)における部族連合の力を象徴する。このコインは、ガリアの部族がギリシャ・マケドニアの貨幣様式(特にフィリッポス2世のスタテル)を独自に変形・再構築して作った典型例であり、「自由な造形による芸術的独立宣言」ともいえる。
TKC129の歴史を読む
種別:シェケル/青銅貨
発行者:カルタゴ(Carthage)
発行年:前264–241年頃(第一次ポエニ戦争期)
発行場所:サルディニア島造幣
重量:7.20 g
サイズ:23 mm
ダイ軸(Die Axis):3 h
状態:GVF
文献番号:CNP 33ab / Piras 130 / MAA 59g / SNG Copenhagen (Africa) 209
表銘文
(無銘文)
図像(表)
月桂冠を戴く女神タニトの左向き頭像。→ タニトはカルタゴの守護女神であり、豊穣・生命・都市の繁栄を象徴する存在。ギリシア的様式を取り入れた写実的な横顔は、地中海世界におけるカルタゴ文化の国際性を示す。
裏銘文
プニキア文字1字(都市または造幣管理を示す記号)
図像(裏)
右向きに立つ馬。下にフェニキア文字。→ 馬はカルタゴ貨幣を代表する象徴で、軍事力・機動力・国家の活力を意味する。サルディニア鋳造品では特に簡潔で力強い表現が好まれた。
歴史的背景
本貨は第一次ポエニ戦争(前264–241年)の最中、カルタゴが地中海西部の制海権と補給線を維持するために支配していたサルディニア島で鋳造された。タニトと馬という伝統的図像を用いることで、ローマとの消耗戦という不安定な情勢下においても、カルタゴ国家の神聖性・軍事力・継続性を強く訴える意図があったと考えられる。
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種別:単位不詳 / 青銅貨
発行者:マシニッサまたはミキプサ(Massinissa or Micipsa)
発行年:紀元前203–148年頃
発行場所:ヌミディア王国
重量:14.38 g
サイズ:27 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:GVF
文献番号:
表銘文
(無銘文)
図像(表)
右向きの王の肖像。短く巻いた髪と口ひげを持ち、王冠またはディアデムを戴く写実的な横顔が描かれる。→ これは伝統的にヌミディア王マシニッサ(Massinissa)あるいはその子ミキプサ(Micipsa)と考えられている。
裏銘文
(無銘文)
図像(裏)
馬に乗る騎士像または馬立像が描かれることが多く、王の軍事的威光とヌミディアの騎兵国家としての伝統を象徴する。→ 本貨の時期、ヌミディアは「最強の軽騎兵」を擁し、ローマ軍の同盟者として第二次ポエニ戦争で大きな役割を果たした。
歴史的背景
マシニッサ(在位:前202–148)は、ローマの同盟者としてスキピオ・アフリカヌスと共にザマの戦いでハンニバルを破った名将。その後、北アフリカにヌミディア王国を築き、農業改革を行い、「遊牧から定住への転換」を成し遂げた文明化王とされる。ミキプサ(在位:前148–118)はマシニッサの子で、平和と学問を愛した賢王として知られる。この時代の銅貨は、ローマとカルタゴの狭間で独自の文化を保ったヌミディアの象徴である。
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種別:ドラクマ / 銀貨
発行者:アレタス4世(Aretas IV,在位BC 9–AD40)
発行年:紀元前9年–紀元40年頃
発行場所:ナバテア王国、ペトラ造幣所
重量:3.84 g
サイズ:14 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:GF
文献番号:Meshorer 108 / HGC 10, 674 / CN Nabataea 29(類例)
表銘文
ΑΡΕΤΑC ΦΙΛΟΠΑΤΡΙC「祖国を愛するアレタス王」
図像(表)
月桂冠を戴いたアレタス4世の右向き肖像。やや粗い造りながらも、写実的な表現で王の権威を強調している。→ アレタス4世はナバテア王国の最盛期を築いた統治者であり、ナバテアの商業都市ペトラを中東随一の交易拠点へと発展させた。
裏銘文
シャキラト(ΣΑΚΕΙΛΑΤまたは変形表記)の名を含むギリシア語銘文
図像(裏)
アレタス4世と王妃シャキラトの並立胸像(正面向きまたは対面)。→ 王と王妃の共同統治を象徴する図像で、ナバテア独自の王権観を反映している。ギリシア的肖像様式と東方的な正面観が融合しており、この時代特有の地域的文化シンクレティズムを示す。
歴史的背景
アレタス4世は「フィロパトリス(祖国愛の王)」と称された名君で、ローマ帝国との微妙な外交関係を保ちながら、紅海からダマスコスへ至る香料貿易を掌握した。彼の治世下、ナバテア王国は文化・経済ともに絶頂期を迎え、ペトラの壮麗な岩窟建築群もこの時代に整備された。この銀貨は、ローマと東方の狭間で独自の繁栄を築いたナバテア王国の王権と文化の成熟を伝える貴重な証である。
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種別:ブロンズ / 青銅貨
発行者:ミトリダテス6世・エウパトル(Mithridates VI Eupator)
発行年:前120–63年
発行場所:アミソス
重量:12.60 g
サイズ:24 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:Very Fine
文献番号:
表銘文
(無銘文)
図像(表)
ヘレニズム的様式による右向き人物頭像。王権的・英雄的性格を帯びた理想化された肖像であり、ミトリダテス6世が自らをギリシア世界の正統な王として演出していたことを示す。→ ミトリダテス6世はアレクサンドロス大王の後継者を自認し、ギリシア文化と王権イデオロギーを積極的に用いたことで知られる。
裏銘文
ΑΜΙΣΟΥ(略記)/都市銘→ アミソス市を示す都市銘。本貨が王名貨ではなく、王の支配下で鋳造された都市貨であることを示す。
図像(裏)
鹿(または牡鹿)が描かれる。→ 鹿はアミソスの都市的象徴であり、この貨幣が王名を前面に出さない地方都市貨であることを示す。一方で、王の支配下にある都市が鋳造した貨幣であり、ミトリダテス6世の実効支配を物語る。
歴史的背景
ミトリダテス6世は、共和政末期ローマに三度にわたり挑んだ最大級の「反ローマ君主」である。ポンティケ戦争においてスッラ、ルクルス、ポンペイウスと対峙し、東方世界におけるローマ支配に深刻な動揺を与えた。この青銅貨は、そうした大規模な対ローマ戦争の時代に、地方都市アミソスで流通した日常的通貨であり、反ローマ闘争が現実の都市社会にまで浸透していたことを示す証拠といえる。
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種別:テトラドラクマ / 銀貨
発行者:ティグラネス2世(Tigranes II,在位BC95–56)
発行年:紀元前95–56年頃
発行場所:アンティオキア
重量:14.77 g
サイズ:26 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:GF
文献番号:
表銘文
(無銘文)
図像(表)
星と二羽の鷲で装飾されたティアラを戴くティグラネス2世の右向き胸像。→ 王冠の星と鷲は、王権・勝利・天空的支配を象徴し、彼が「東方の覇者」として君臨したことを示す。
裏銘文
ΒΑΣΙΛΕΩΣ ΤΙΓΡΑΝΟΥ「王ティグラネスの」
図像(裏)
アンティオキアの守護女神テュケが岩に座り、月桂枝を持つ。下方には河神オロンテスが泳ぐ姿。→ アンティオキア支配の正当性と都市支配の象徴。この図像は、ティグラネス2世がシリアを制圧し、アンティオキアを事実上の帝国首都都市として掌握したことを明確に示す。
歴史的背景
このテトラドラクマは、アルメニア王ティグラネス2世が最大版図を築いた時代の象徴的貨幣。ティグラネス2世は、アルメニア王国を地中海東岸まで拡大し、一時は「東方最大の帝国」を築いた征服王である。本貨は、彼がシリアを支配し、アンティオキアを王国の重要拠点としていた時期に鋳造された。急速な拡張によって栄華を極めたが、ローマ(ルクルス・ポンペイウス)の介入により帝国は縮小した。
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種別:ドラクマ / 銀貨
発行者:ミトラダテス2世(Mithradates II,在位BC121–91)
発行年:紀元前78–68年頃
発行場所:ラガイ
重量:4.13 g
サイズ:21 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:aEF
文献番号:Sellwood 30.16 / Shore 133–135
表銘文
(無銘文)
図像(表)
王冠をかぶり、衣をまとったミトラダテス2世の胸像、左向き。→ 王の権威と「王の中の王」としての地位を示す堂々たる肖像。パルティア貨幣で左向き肖像は比較的少数派であり、特異性がある。
裏銘文
ΒΑΣΙΛΕΩΣ ΒΑΣΙΛΕΩΝ ΑΡΣΑΚΟΥ ΕΥΕΡΓΕΤΟΥ ΔΙΚΑΙΟΥ ΕΠΙΦΑΝΟΥΣ ΦΙΛΕΛΛΗΝΟΣ「諸王の王アルサケス、恩恵深く、正義にして、輝ける、ギリシャを愛する者」
図像(裏)
アルサケス1世像 — 弓を持ち玉座に右向きで腰かける弓兵(王権の象徴)。→ これはアルサケス朝の始祖アルサケス1世を象徴する伝統的な図像で、歴代パルティア王が自らを王統の正統な継承者として示すために繰り返し用いた。
歴史的背景
ミトラダテス2世は「偉大王(Megas Basileus)」、さらには「王の中の王(Shahanshah)」と称されたパルティアの代表的支配者。彼は東方では遊牧民サカ人を制圧し、西方ではアルメニアやシリアへも勢力を拡大し、ローマとの外交関係も初めて樹立した。本コインはその晩年期の発行で、王の威厳ある肖像と始祖アルサケスの伝統を融合させることで、内外に権威を誇示している。
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種別:ドラクマ / 銀貨
発行者:オロデス2世(Orodes II,在位BC57-38)
発行年:紀元前57–38年頃
発行場所:ラガイ
重量:3.06 g
サイズ:19.3 mm
ダイ軸(Die Axis):1 h
状態:VF
文献番号:
表銘文
(無銘文)
図像(表)
左向きの王の胸像。ディアデマを着け、中程度の髭を蓄え、首元には海馬(シーホース)が描かれる。左に星、右に三日月と星。→ ディアデマは王権の正統性、星と三日月は天体的加護を象徴。首元の海馬は王の超自然的威厳や守護的性格を示す装飾的要素と考えられる。
裏銘文
ΒΑΣΙΛΕΩΣ ΒΑΣΙΛΕΩΝ ΑΡΣΑΚΟΥ ΕΥΕΡΓΕΤΟΥ ΔΙΚΑΙΟΥ ΕΠΙΦΑΝΟΥΣ ΦΙΛΕΛΛΗΝΟΣ「諸王の王アルサケス、恩恵深く、正義にして、輝ける、ギリシャを愛する者」
図像(裏)
玉座に座す弓を持つ射手像(アルサケス1世)。左に錨、弓の下にモノグラム。→ 射手はパルティア王朝の始祖アルサケスを表し、現王が正統な継承者であることを示す。錨は安定・支配の確立を象徴する補助記号。
歴史的背景
オロデス2世は、前53年のカルラエの戦いでローマの将軍クラッススを破ったことで知られるパルティア王である。彼の治世下の貨幣は、ギリシア的要素とイラン的王権表現が融合した典型例であり、ローマ世界に対抗する東方大国パルティアの自信と安定を物語っている。
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種別:テトラドラクマ / 銀貨
発行者:フラアテス4世(Phraates IV,在位BC38–2)
発行年:紀元前26年頃
発行場所:セレウキア
重量:14.25 g
サイズ:27 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:VF
文献番号:Sellwood 51.25–31
表銘文
(無銘文)
図像(表)
王の左向き胸像。フラアテス4世は細かく編み込まれた髭と髪を持ち、高い冠(ティアラ)を被っている。冠には星や月などの天体文様が刻まれる。→ この複雑な冠飾りは、パルティア王が「神聖な王権」を帯びる存在であることを象徴。肖像の写実性はセレウキア造幣所特有の繊細なスタイルを示す。
裏銘文
ΒΑΣΙΛΕΩΣ ΒΑΣΙΛΕΩΝ ΑΡΣΑΚΟΥ ΕΥΕΡΓΕΤΟΥ ΔΙΚΑΙΟΥ ΕΠΙΦΑΝΟΥΣ ΦΙΛΕΛΛΗΝΟΣ「善行者・正義の・輝ける・ギリシアの友たる諸王の王アルサケス」「アルサケス」はパルティア王朝の王名号であり、フラアテスもその系譜を継ぐ王として自らを神聖化している。
図像(裏)
玉座に座す王。右手にニケ(勝利の女神)、左手に王笏。→ 王が神的勝利を掌中に収める構図。軍事的成功と王権の正当性を視覚的に宣言する。
歴史的背景
フラアテス4世(在位:紀元前38–2年)は、パルティア帝国の中興を担った強力な君主。内乱ののちローマのアントニウス軍を撃退し、東方世界の覇権を維持した。彼はローマとの外交関係を巧みに操り、アウグストゥスとの間で捕虜返還条約を締結したことでも知られる。このテトラドラクマは、セレウキア造幣所で発行された後期ヘレニズム様式の代表的作品で、ギリシア語銘文の伝統を保ちつつも、王の肖像と姿勢にペルシア的威厳を取り戻した点が特徴的。ローマ帝国と東方の均衡が成立した、歴史の節目を象徴する貨幣である。
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種別:プルタ / 銅貨
発行者:アレクサンドロス・ヤンナイ(Yehonatan/Alexander Jannaeus)
発行年:紀元前103–76年
発行場所:エルサレム造幣所
重量:1.88 g
サイズ:14 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:VF
文献番号:Hendin 6186 / Meshorer Group S / HGC 10, 641
表銘文
古ヘブライ文字(Yehonatan the High Priest and the Council of the Jews) 「ヨナタン大祭司とユダヤ人の議会」
図像(表)
古ヘブライ文字の銘文が花冠(wreath)内に刻まれる。→ 「祭司王」ヨナタン=アレクサンドロス・ヤンナイの宗教的・政治的正統性を示す。ヘブライ語を用いた点が特徴で、民族的独立意識と信仰の結びつきを象徴する。
裏銘文
(無銘文)
図像(裏)
広がった二本のコルヌコピア(豊穣の角)が左右対称に描かれ、その中央にザクロ(pomegranate)が配置される。→ コルヌコピアは豊穣と祝福、ザクロは生命と祭儀の象徴。この組み合わせは、神の恵みと王国の繁栄を祈る宗教的意匠を示す。
歴史的背景
アレクサンドロス・ヤンナイ(ヘブライ名:ヨナタン)は、ハスモン朝の祭司王であり、ユダヤ民族が独立を保持した最後の時代の君主の一人(在位:前103–76)。宗教的権威と王権を併せ持つ「大祭司王」としての姿勢は、後の「神の代理者たる王」という思想の原型をなす。このプルタは、ユダヤ民族が異国の支配下に入る前の自主発行貨幣であり、パレスチナ地域における宗教的・政治的自立の証。また、ユダヤ貨幣史の中で最も多く出土する「民族アイデンティティの象徴貨幣」でもある。
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種別:8プルタ / 青銅貨
発行者:ヘロデ1世(Herod I “the Great”,在位BC40–4)
発行年:紀元前40–4年頃
発行場所:ユダヤ、サマリア地方
重量:10.16 g
サイズ:26 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:F
文献番号:Hendin 1178(類例)/ Meshorer 46 / RPC I 4918(cf.)
表銘文
(無銘文)
図像(表)
王冠、または花輪状の図案が中央に浮かび上がる。本例では著しい風化により細部が失われているが、原型ではヘロデ王の権威を象徴する冠、もしくはロゼット文様が刻まれている。
裏銘文
ΒΑΣΙΛΕΩΣ ΗΡΩΔΟΥ「王ヘロデの(貨幣)」
図像(裏)
三本脚の祭壇または柱状のモニュメント(可能性として三脚台または香炉)を中心に、ギリシア文字銘が周囲を囲む。→ これは神殿奉納を象徴する意匠であり、ヘロデの宗教的威信とギリシア文化の融合を示す。
歴史的背景
ヘロデ大王はローマの支援を受けてユダヤ王国を統治した人物であり、エルサレム神殿の大改修で知られる。彼の貨幣には人物像や偶像が描かれず、ユダヤの宗教的禁忌を尊重しつつも、ギリシア語銘文や建築的モチーフを用いてヘレニズム的権威を表現している。この8プルタ貨は彼の大型青銅貨の一種で、当時のユダヤ経済の基盤を支えた通貨でもある。
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種別:プルタ / 青銅貨
発行者:総督ポンティウス・ピラトゥス(Pontius Pilatus)
発行年:紀元26-36年頃
発行場所:エルサレム(Jerusalem)
重量:2.03 g
サイズ:14 mm
ダイ軸(Die Axis):12 h
状態:VF
文献番号:
表銘文
ギリシア文字銘文(断片)→ 皇帝名に由来する属州銘文で、ローマ皇帝支配下にある属州貨であることを示す。
図像(表)
リトゥアス(lituus:祭司杖)→ リトゥアスはローマ宗教における占兆官(アウグル)の象徴。ローマ的宗教権威を示す図像であり、偶像表現を忌避するユダヤ教徒にとって極めて異質で、宗教的緊張を高めたとされる。
裏銘文
ΤΙΒΕΡΙΟΥ(Tiberiou)→ 「ティベリウス(皇帝)のもの」を意味し、皇帝への忠誠と統治の正統性を明示する。
図像(裏)
花冠(リース)に囲まれた祭具(パテラ/シンプルム系意匠)→ ローマ宗教儀礼を象徴する穏健な図像で、直接的な神像を避けつつも、属州にローマ的秩序を浸透させようとする妥協的表現。
歴史的背景
ポンティウス・ピラトゥスは、イエス・キリストの裁判と処刑に関わったことで後世に最も知られるローマ総督である。聖書では、「私はこの男に何の罪も見いだせない。」「見よこの男だ。」などと言ってキリストの磔刑を阻止しようとしたとされる。彼の統治(AD 26–36)は、宗教的反感と政治的不安のはざまで続き、ユダヤ人社会におけるローマ支配の緊張を象徴する時期となった。このプルタ銅貨は、彼が在任中に発行したわずかなローマ属州貨のひとつであり、ローマとユダヤの価値観が衝突した「歴史の接点」を物語る遺品である。
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種別:プルタ / 青銅貨
発行者:ユダヤ人
発行年:紀元67–68年
発行場所:ユダヤ、エルサレム造幣所
重量:2.30 g
サイズ:17.5 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:GF
文献番号:Hendin 6610(旧分類)/ Hendin 1344(新版)相当
表銘文
ヘブライ文字(Herut Zion)「シオンの自由」
図像(表)
枝に付いたブドウの葉と蔓。→ 約束の地の豊穣と、ユダヤ民族の再生を象徴。ブドウは神殿の装飾にも多用され、信仰と独立の象徴とされた。
裏銘文
ヘブライ文字(Year Two)「独立戦争勃発(紀元66年)からの第2年(67/68年)を示す年号。
図像(裏)
広口で二つの取手をもつアンフォラ(壺)。→ 神殿での儀式用ワインを入れる聖なる容器であり、神への奉納と信仰の純潔を象徴している。
歴史的背景
この貨幣は、ローマ帝国に対するユダヤ人の第一次独立戦争(66–70 CE)の際、エルサレムで鋳造されたユダヤ人の自主貨幣。「自由のための貨幣(for the Freedom of Zion)」と銘打たれ、ローマ支配からの脱却と、神殿を中心とする民族独立の理念を宣言する。この第2年銘のプルタ貨は、まだエルサレムが陥落前の時期に造られ、民族の希望と信仰の象徴として“戦時通貨”の性格を持っている。その後、第4年(69–70年)にはローマ軍により神殿が破壊され、この貨幣の「自由」は永遠の祈りとなった。
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種別:ドラフム / 銀貨
発行者:ペーローズ1世(Peroz I,在位AD457–483)
発行年:紀元457-483年頃
発行場所:AY 造幣所(イラン東部地方)
重量:4.12 g
サイズ:27.5 mm
ダイ軸(Die Axis):3 h
状態:aEF
文献番号:SNS III type IIIb/1e / Göbl III/1
表銘文
(無銘文)
図像(表)
ペーローズ1世の胸像、右向き。翼をあしらった冠を戴き、前面に三日月、頭頂にコリュンボス(神聖な宝珠)をのせる。→ 翼冠は神々の加護と王権の正当性を象徴し、三日月と宝珠はゾロアスター教における光と秩序の勝利を意味する。
裏銘文
(無銘文)
図像(裏)
中央に聖火壇(fire altar)が描かれ、両側に侍従が控える。火炎の両脇には星と三日月のシンボル。→ サーサーン朝の宗教的中心であるゾロアスター教の火の崇拝を表現。王権と信仰が一体であることを示す典型的な意匠で、王の支配が「神聖なる火」によって正当化されていることを強調する。
歴史的背景
ペーローズ1世はサーサーン朝中期の君主で、東方のエフタル族(白フン)との長期戦争で知られる。当初は勝利を収めたものの、後に捕虜となり、解放後も再び出兵して戦死。その死はペルシア帝国の軍事的衰退を象徴した。しかし彼の治世には、宗教儀礼の整備と貨幣制度の安定化が進められ、この時期の銀貨は芸術的完成度が高く、信仰と権威の融合が顕著に見られる。
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