TKC023-TKC045
第二段目 十二皇帝と五賢帝そして二世紀末
Stage Ⅱ The Twelve Caesars, the Five Good Emperors, and the End of the 2nd Century
Stage Ⅱ The Twelve Caesars, the Five Good Emperors, and the End of the 2nd Century
種別:デナリウス / 銀貨
発行者:ガイウス・ユリウス・カエサル(Gaius Julius Caesar)
発行年:紀元前44年2月〜3月(暗殺直前)
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.53 g
サイズ:18mm
ダイ軸(Die Axis):7h
状態:GVF
文献番号:Crawford 480/10 / RSC 38(Julia)
表銘文
DICT·PERPETVO CAESAR「永久独裁官カエサル」
図像(表)
カエサルの右向き肖像。月桂冠とヴェールをかぶる。→ 月桂冠は勝利と栄光、ヴェールは宗教的儀礼に臨む「最高神祇官(Pontifex Maximus)」としての姿を示す。彼が「神聖な支配者」としてローマ国家の頂点に立とうとしていたことを象徴する。
裏銘文
P·SEPULLIVS MACER「プブリウス・セプッリウス・マケル」→貨幣監督官 プブリウス・セプッリウス・マケル(P. Sepullius Macer)による発行。
図像(裏)
ウェヌス女神が立ち、槍と勝利の象徴であるヴィクトリア像を手に持つ。→ ウェヌスはカエサル家の祖神であり、彼の神聖な血統(ウェヌス・ゲネトリクスの子孫)を示す。この図像は、カエサルの政治的権威が人間的統治を超え「神的存在」へ昇華しつつあったことを暗示する。
歴史的背景
紀元前44年、カエサルは元老院によって「ディクタトル・ペルペトゥオ(終身独裁官)」に任命された。これは従来の非常時的独裁官制度を根本的に変える決定であり、共和政の原則に反すると多くの貴族たちが警戒した。このデナリウスは、ローマ史上初めて「存命中の人物の肖像」が刻まれた貨幣として知られる。肖像の神格化的表現と「DICT·PERPETVO」の銘文は、まさに彼が王政を志向したことを物語る歴史的証拠であり、そのわずか数週間後に起きた「三月のイドゥス(Ides of March)」の悲劇の伏線ともなった。
種別:デナリウス/銀貨
皇帝:アウグストゥス(Augustus, 在位 BC27–AD14)
発行年:紀元前2–紀元12年
発行場所:ルグドゥヌム造幣所
重量:3.77 g
サイズ:19 mm
ダイ軸(Die Axis):9h
状態:GVF
文献番号:RIC I² 207 / BMCRE 519 / RSC 43
表銘文
CAESAR AVGVSTVS DIVI F PATER PATRIAE「神君(カエサル)の子アウグストゥス、国家の父」
図像(表)
月桂冠を戴くアウグストゥス帝の右向き頭像。→ 月桂冠は勝利と正統性の象徴であり、内戦を終結させローマに秩序をもたらした支配者としての地位を示す。「PATER PATRIAE(国家の父)」の称号は、元首としての道徳的・政治的権威を強調する。
裏銘文
AVGVSTI F COS DESIG PRINC IVVENT C L CAESARES「アウグストゥスの子、執政官指名・青年団の首長、ガイウスとルキウス・カエサル」
図像(裏)
ガイウス・カエサルとルキウス・カエサルが向かい合って立ち、それぞれ盾に手を置く。背後に槍。左上にシンプルム、右上にリトゥアス。→ 二人はアウグストゥスの後継者として公的に位置づけられた養子であり、盾と槍は将来の軍事的役割を象徴する。シンプルムとリトゥアスは宗教的職能を示し、軍事と宗教の両面でローマ国家を担う存在として期待されていたことを表す。
歴史的背景
本貨は、アウグストゥスが自身の後継体制を明確に示した「皇帝継承プロパガンダ貨」の代表例である。ガイウスとルキウスは若くして将来の皇帝と目されたが、両名ともアウグストゥス存命中に早世し、この構想は実現しなかった。そのため本貨は、完成目前で断たれた初期帝政の継承計画を物語る、極めて象徴的なデナリウスである。
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種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:アウグストゥス (Augustus,在位BC27-AD14)
発行年:紀元前2年以降
発行場所:ルグドゥヌム(リヨン)造幣所
重量:3.70g
サイズ:18mm
ダイ軸(Die Axis):8h
状態:GVF
文献番号:RIC I² 207 / BMCRE 519 / RSC 43
表銘文
CAESAR AVGVSTVS DIVI F PATER PATRIAE「カエサル・アウグストゥス、神格化された父の子、祖国の父」→ 神格化された養父ユリウス・カエサルの後継者であり、ローマ国家の守護者であることを強調。
図像(表)
月桂冠を戴いたアウグストゥスの頭部、右向き。→ 勝利者としての正統性と威厳を示す。
裏銘文
C·L·CAESARES AVGVSTI·F COS·DESIG PRINC·IVVENT「カイウスとルキウス・カエサル、アウグストゥスの子、執政官指名者、青年の第一人者」
図像(裏)
カイウスとルキウス・カエサルが正面を向いて立つ。二人の間に 盾と笏、上方に祭具 simpulum(杯)と lituus(杖)。→ 祭祀と軍事の権威を兼ね備える後継者たちを示す。
歴史的背景
カイウス(Gaius Caesar, 前20–4年)とルキウス(Lucius Caesar, 前17–2年)は、アウグストゥスの養子で後継者に指名された人物。両者とも若くして病死したため、アウグストゥスの後継は最終的にティベリウスに移った。このコインは、アウグストゥスが ユリウス家の継承を宣伝し、後継体制を整えていた重要なプロパガンダ貨幣。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ティベリウス(Tiberius,在位AD14-37)
発行年:紀元14–37年
発行場所:ルグドゥヌム(リヨン)造幣所
重量:3.68g
サイズ:20mm
ダイ軸(Die Axis):3h
状態:GVF
文献番号:RIC I² Tiberius 28
表銘文
TI CAESAR DIVI AVG F AVGVSTVS「神君アウグストゥスの子、皇帝ティベリウス」
図像(表)
月桂冠を戴くティベリウス帝の右向き頭像。→ 月桂冠は勝利と正統性の象徴。アウグストゥスの後継者としての地位を強調し、新王朝(ユリウス=クラウディウス朝)の安定を視覚的に示す。
裏銘文
PONTIF MAXIM「最高神祇官」
図像(裏)
玉座に座す女性像。右手にオリーブの枝、左手に逆さにした槍を持つ。→ この女性像は、皇后リウィアを平和の女神パクス(Pax)として神格化した姿と解釈される。逆さの槍は戦争の終結、オリーブの枝は平和を象徴する。
歴史的背景
このデナリウスは、いわゆる「トリビュート・ペニー(Tribute Penny)」型として知られ、新約聖書における「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返せ」の場面で言及された可能性が高い貨幣である。図像と銘文は一貫して正統性・平和・宗教的権威を強調しており、内戦を終結させたアウグストゥス体制を静かに継承するティベリウスの政治姿勢をよく表している。ティベリウスはアウグストゥスの継子であり、軍事的才能と行政能力を備えた皇帝だったが、後半生は失政や粛清が多く、従来は「陰鬱な皇帝」と評されてきた。しかし近年では、財政規律を保ち、帝国の基盤を安定させた点から 再評価 される傾向にある。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ティベリウス(Tiberius,在位AD14-37)
発行年:紀元14–37年
発行場所:ルグドゥヌム(リヨン)造幣所
重量:3.65g
サイズ:17mm
ダイ軸(Die Axis):4h
状態:EF-
文献番号:RIC² 28 / RSC 16 / BMCRE 48
表銘文
TI CAESAR DIVI AVG F AVGVSTVS「ティベリウス・カエサル、神格化されたアウグストゥスの子、アウグストゥス」
図像(表)
月桂冠を戴くティベリウス帝の右向き頭像。→ 月桂冠は勝利と正統性の象徴。アウグストゥスの後継者としての地位を強調し、新王朝(ユリウス=クラウディウス朝)の安定を視覚的に示す。
裏銘文
PONTIF MAXIM「最高神祇官」
図像(裏)
玉座に座す女性像。右手にオリーブの枝、左手に逆さにした槍を持つ。→ この女性像は、皇后リウィアを平和の女神パクス(Pax)として神格化した姿と解釈される。逆さの槍は戦争の終結、オリーブの枝は平和を象徴する。
歴史的背景
このコインは通称 「トリビュート・ペニー(Tribute Penny)」 として知られる。新約聖書『マルコによる福音書』12章で、イエスが「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返せ」と語った場面のコインとされる。当時ユダヤ属州でも流通しており、キリスト教史と結びついた最も有名なローマ硬貨の一つ。ティベリウスはアウグストゥスの継子であり、軍事的才能と行政能力を備えた皇帝だったが、後半生は失政や粛清が多く、従来は「陰鬱な皇帝」と評されてきた。しかし近年では、財政規律を保ち、帝国の基盤を安定させた点から 再評価 される傾向にある。
種別:アス貨 / 青銅貨
皇帝:カリグラ(Caligula,在位AD37-41)
発行年:紀元37–41年
発行場所:ローマ造幣所
重量:10.60 g
サイズ:28 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:VF
文献番号:RIC I² Caligula 38
表銘文
C CAESAR DIVI AVG PRON AVG P M TR P IIII P P「神君アウグストゥスの孫、カエサル、アウグストゥス、最高神祇官、護民官権4回、祖国の父」
図像(表)
カリグラの頭像、右向き。→ 若き皇帝としての正統な後継者像を示す。
裏銘文
VESTA / S C「ウェスタ神に捧ぐ/元老院決議により発行」
図像(裏)
女神ウェスタが左向きに座し、右手にパテラ、左手に笏を持つ。→ ローマ国家の永続と神聖性を象徴。
歴史的背景
カリグラはユリウス=クラウディウス朝の第三代皇帝であり、アウグストゥスの血統を継ぐ正統な後継者として即位した。本コインは国家宗教の中心であるウェスタを描くことで、皇帝の統治が神々に守られていることを示すプロパガンダ的意図を持つ。後世には暴君として知られるが、即位初期には民衆や元老院から支持を受けており、その正統性を強調する意匠が採用されている。
種別:アス貨 / 青銅貨
皇帝:カリグラ(Caligula,在位AD37-41)
発行年:紀元37–41年
発行場所:ローマ造幣所
重量:10.35 g
サイズ:27 mm
ダイ軸(Die Axis):6h
状態:F
文献番号:RIC I² Caligula 38
表銘文
C CAESAR AVG GERMANICVS PON M TR POT「ガイウス・カエサル、アウグストゥス、ゲルマニクスの子、最高神祇官、護民官権を持つ者」
図像(表)
月桂冠を戴いたカリグラの左向き胸像。軍装姿またはトガ姿(年次によって差異あり)→「GERMANICVS」は、彼の父ゲルマニクスへの敬意を示し、父の名誉を継承する象徴。若くして皇帝となったカリグラは、祖父アウグストゥス、曾祖父アグリッパ、父ゲルマニクスの正統な血統を強調することで、自らの地位を神聖視された家系の延長に位置づけようとした。
裏銘文
VESTA / S C「ウェスタ神に捧ぐ/元老院決議により発行」
図像(裏)
ウェスタ女神が玉座に座り、右手に供物皿(パテラ)、左手に槍またはコルヌコピアを持つ。→ ウェスタはローマ国家と家庭の守護神であり、彼女の穏やかな姿は「秩序と伝統の維持」を象徴する。しかし実際のカリグラ治世は専制的で、神聖な秩序を乱す行為が多かったことから、この図像は理想と現実の対比を浮かび上がらせる。
歴史的背景
カリグラはティベリウスの死後に帝位を継ぎ、当初は民衆と元老院に歓迎されたが、後に暴政と狂気で知られるようになった。彼の初期貨幣には、家族の徳とローマ宗教の象徴が多く用いられ、治世初期の「理想的な統治者像」を反映している。ウェスタ像は、国家的安寧と宗教的純潔を強調することで、新体制への信頼を訴える目的があったと考えられる。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:クラウディウス(Claudius,在位AD41-54)
発行年:紀元41-50年
発行場所:ローマ造幣所
重量:10.89 g
サイズ:30 mm
ダイ軸(Die Axis):6h
状態:GVF
文献番号:RIC I 116 (Claudius, Rome)
表銘文
TI CLAVDIVS CAESAR AVG P M TR P IMP P P「ティベリウス・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス、最高神祇官、護民官権、インペラトル、祖国の父」
図像(表)
クラウディウスの頭部、左向き(無冠)。→ 元老院に承認された皇帝としての伝統的肖像。
裏銘文
S C「元老院決議」
図像(裏)
ミネルウァが右へ進み、槍と盾を持つ。→ 知恵と戦略、そして国家防衛を象徴。
歴史的背景
クラウディウスはカリグラ暗殺後、近衛兵によって擁立された皇帝である。本コインのミネルウァは、軍事的勝利だけでなく理性的な統治と国家運営を象徴する存在であり、彼の治世における安定と行政能力を示している。ブリタニア征服など領土拡大を進めつつも、官僚制度の整備を行い帝国統治の基盤を強化した皇帝である。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:クラウディウス(Claudius,在位AD41-54)
発行年:紀元41-50年
発行場所:ローマ造幣所
重量:10.64 g
サイズ:28.9 mm
ダイ軸(Die Axis):6h
状態:GVF
文献番号:RIC I² 113 / BMCRE 204 / Cohen 47 / Sear 1860
表銘文
TI CLAVDIVS CAESAR AVG P M TR P IMP P P「ティベリウス・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス、最高神祇官、護民官職、インペラトル、父祖たる元老院議員」→ 皇帝としての全称号と権威を列挙している。
図像(表)
左向きのクラウディウス帝の素顔の肖像。月桂冠はなく、写実的かつやや硬い表情で表現されている。
裏銘文
LIBERTAS AVGVSTA / S–C「アウグストゥスの自由」→ 皇帝クラウディウスの治世における市民の自由を象徴する。
図像(裏)
リベルタス(Libertas:自由の女神)が正面向きで立ち、右手に解放を意味するピレウス帽(pileus)を持ち、左手を差し伸べる姿。両側に「S–C」の文字が入り、元老院の承認を経て鋳造されたことを示す。
歴史的背景
クラウディウスはカリグラ暗殺後に即位した予期せぬ皇帝であったが、ローマ帝国の安定と統治体制を維持した。裏面の「リベルタス」は、クラウディウスの治世を「解放」と「寛容さ」と結びつけるプロパガンダ的意図が込められている。市民にとって自由が皇帝の庇護下に保障されるというメッセージを象徴する。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ネロ (Nero,在位AD54-68)
発行年:紀元64年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.11 g
サイズ:17 mm
ダイ軸(Die Axis):7h
状態:Fair
文献番号:RIC² 53 (Nero, Rome)/ BMCRE 60 / RSC 118
表銘文
NERO CAESAR AVGVSTVS「ネロ・カエサル・アウグストゥス」
図像(表)
月桂冠を戴いたネロ皇帝の頭部、右向き。→ 皇帝としての権威を示す伝統的肖像。
裏銘文
IVPPITER CVSTOS「守護者ユピテル」
図像(裏)
玉座に座るユピテルが左を向き、右手に雷霆、左手に笏を持つ。→ 皇帝の守護者としてのユピテルを強調。
歴史的背景
ネロはユリウス=クラウディウス朝最後の皇帝。初期は母アグリッピナの後見や、師セネカの助言を得て善政を行ったが、やがて独裁色を強めた。在位中には大規模な建築事業や芸術活動を推進し、また紀元64年の「ローマ大火」で悪名を残す。このコインは、混乱の中でユピテルを「守護神」として掲げ、自らの統治に神的正統性を付与しようとしたプロパガンダ貨幣である。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ガルバ(Galba,在位AD68-69)
発行年:紀元68-69年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.24 g
サイズ:19 mm
ダイ軸(Die Axis):7h
状態:F
文献番号:RIC² 186
表銘文
IMP SER GALBA CAESAR AVG「インペラトル・セルウィウス・ガルバ・カエサル・アウグストゥス」
図像(表)
月桂冠を戴くガルバの頭部、右向き。→ 厳格で老齢の表情が特徴的で、軍人としての威厳と決意を表す。彼は皇帝ネロの失脚後に軍により推戴された最初の“帝位簒奪者”であった。
裏銘文
DIVA AVGVSTA「女神となったアウグスタ(リウィア)」
図像(裏)
アウグストゥスの妻リウィア(Diva Augusta)が左を向いて立ち、右手にパテラ(祭器)、左手に笏(セプトルム)を持つ。→ 帝政の起源たるアウグストゥス家の権威への帰依を象徴。ガルバは政権の正統性を示すため、意図的に「アウグストゥスの系譜」を貨幣に採用した。
歴史的背景
ガルバは、ネロの暴政を倒した後、AD 68年に軍に擁立されて皇帝に即位。しかしその統治はわずか7か月で、オトーのクーデターにより殺害された。このコインは短命の皇帝が「ローマの伝統と正統性」を強調しようとした証であり、裏面のリウィア像は、帝国初代の“母”を通じてアウグストゥスの遺産を継ぐ意志を示している。ガルバの治世は「四皇帝の年(Year of the Four Emperors)」の始まりを告げ、ローマ帝国史上最初の大混乱の時代への序章となった。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:オトー(Otho,在位AD69)
発行年:紀元69年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.22 g
サイズ:18 mm
ダイ軸(Die Axis):6h
状態:F(表面はVFに近いが、裏面に強い摩耗あり)
文献番号:RIC² 10
表銘文
IMP OTHO CAESAR AVG TR P「インペラトル・オトー・カエサル・アウグストゥス・護民官権を持つ者」
図像(表)
オトーの裸頭像、右向き。→ 彼はガルバ暗殺後に即位したが、その在位はわずか三か月。洗練された肖像は、彼がネロ風の髪型を意図的に模したことでも知られる。これは民衆人気の高かったネロへの迎合とみなされている。
裏銘文
SECVRITAS PR「国家の安定(Securitas Publica)」
図像(裏)
セクーリタス女神が左向きに立ち、右手に花冠、左手に笏を持つ。→ 新皇帝による秩序の回復と治世の安定を願う象徴。しかしその願いとは裏腹に、オトーの政権はヴィテリウス軍との内戦で崩壊した。
歴史的背景
オトーはガルバの暗殺後、支持する近衛兵によって皇帝に擁立された。彼は民衆と軍の信頼を得ようと努めたが、ヴィテリウスとのベドリアクムの戦い(AD 69年4月)で敗北。内戦によるさらなる流血を避けるため、彼は自ら命を絶った。このデナリウスに刻まれた「Securitas(安定)」の銘は、彼の短命な統治と実現しなかった平和の理想を物語っている。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ウィテリウス (Vitellius,在位AD69)
発行年:紀元69年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.24 g
サイズ:18 mm
ダイ軸(Die Axis):5h
状態:VF
文献番号:RIC² 107 / BMCRE 32 / RSC 72
表銘文
A VITELLIVS GERM IMP AVG TR P「アウルス・ウィテリウス、ゲルマニクス、インペラトル、アウグストゥス、護民官職権保持者」
図像(表)
月桂冠を戴いたウィテリウスの頭部、右向き。
裏銘文
PONT MAXIM「最高神祇官」
図像(裏)
女神ウェスタが右を向いて玉座に座り、右手にパテラ、左手に笏を持つ。→ 国家と家庭の炉の女神ウェスタは、伝統的な宗教権威を象徴。
歴史的背景
ウィテリウスは、ローマ帝国史の混乱期「四皇帝の年」(69年)に即位した皇帝。ゲルマニア軍団の支持により帝位に就いたが、同年末にウェスパシアヌスに敗北し、処刑された。彼の治世は短命であったため、貨幣の発行量は限られている。本コインは、ウェスタ女神を描くことで、動乱の時代に宗教的伝統と正統性を訴えたものと解釈される。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ウェスパシアヌス( Vespasianus,在位AD69-79)
発行年:紀元75年
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.84 g
サイズ:19.5 mm
ダイ軸(Die Axis):6h
状態:EF
文献番号:RIC II.1 774 / Sear 2307
表銘文
IMP CAESAR VESPASIANVS AVG「インペラトル・カエサル・ウェスパシアヌス・アウグストゥス」→ 皇帝としての全称号を表す。
図像(表)
右向き、月桂冠をかぶったウェスパシアヌス帝の肖像。年齢を重ねた現実的な顔立ちで表現される。
裏銘文
PON MAX TR P COS VI「最高神祇官、護民官職、執政官6回目」→ 宗教的権威と政治的職務を強調する称号群。
図像(裏)
セクーリタス(Securitas:安心・安定の女神)が左向きに座り、片肘を椅子の背に、頬杖をつく姿。この姿勢はローマ帝国の安定と秩序の回復を象徴するもので、内乱の時代を終わらせたウェスパシアヌスの治世を称えるもの。
歴史的背景
この銀貨は、ローマ内戦(四皇帝の年)後の平和と安定の確立を強調するために発行されたシリーズの一つ。セクーリタスは、皇帝により保障される「国家の持続的安定」を象徴し、ウェスパシアヌスがフラウィウス朝の基盤を築いたことへの政治的メッセージが込められている。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ティトゥス(Titus,在位AD79-81)
発行年:紀元79-81年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.48 g
サイズ:19 mm
ダイ軸(Die Axis):6h
状態:GVF+
文献番号:RIC II.1 30 / BMC 15
表銘文
IMP TITVS CAES VESPASIAN AVG P M「インペラトル・ティトゥス・カエサル・ウェスパシアヌス・アウグストゥス、ポンティフェクス・マクシムス」
図像(表)
月桂冠を戴くティトゥスの頭部、右向き。→ 新帝としての権威と父ウェスパシアヌスの後継を強調。
裏銘文
TR P VIIII IMP XIIII COS VII P P「護民官権9回、インペラトル14回、コンスル7回、父祖の称号」
図像(裏)
トロフィーの下で、囚われの男性(ユダヤ人捕虜)が右に跪く姿。→ 「ユダヤ戦争勝利(Judaea Capta)」を記念する意匠。ローマの軍事的栄光と属州支配の正当化を表す。
歴史的背景
ユダヤ戦争(66–73年)は、ウェスパシアヌスとその子ティトゥスが鎮圧し、エルサレム陥落(70年)で終結した。この勝利はフラウィウス朝の権力基盤を固め、ティトゥスの名声を大いに高めた。「Judaea Capta」シリーズはローマの威光を内外に示す重要なプロパガンダ貨幣であり、帝国支配の象徴的なコインとされる。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ティトゥス (Titus,在位AD79-81)
発行年:紀元80年頃
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.11 g
サイズ:18 mm
ダイ軸(Die Axis):6h
状態:VF
文献番号:RIC² 128 (Titus, Rome) / BMCRE 57 / RSC 309
表銘文
IMP TITVS CAES VESPASIAN AVG P M「インペラトル・ティトゥス・カエサル・ウェスパシアヌス・アウグストゥス、最高神祇官」
図像(表)
月桂冠を戴いたティトゥスの頭部、右向き。→ フラウィウス朝皇帝としての権威を示す。
裏銘文
TR P IX IMP XV COS VIII P P「護民官権限9回、インペラトル15回、執政官8回、祖国の父」
図像(裏)
三脚祭壇(トリポッド)の上に右向きのイルカンが載る。→ アポロ神に関連する祭祀的シンボル。イルカンは海を象徴し、祭壇と共に宗教的権威と神の保護を暗示する。
歴史的背景
ティトゥスはウェスパシアヌスの子で、フラウィウス朝第2代皇帝。ユダヤ戦争でエルサレムを攻略し、凱旋式で大きな名声を得た。在位中にはヴェスヴィオ火山の噴火(79年)、ローマ大火(80年)、ペストなど災害が相次いだが、慈悲深い性格で民衆に愛され、「人類の愛し子(deliciae generis humani)」と称された。このコインは、アポロ的モチーフを用いて、皇帝の治世が宗教的加護と調和の下にあることを示した。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ドミティアヌス(Domitianus,在位AD81-96)
発行年:紀元93-94年頃
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.22 g
サイズ:18.4 mm
ダイ軸(Die Axis):6h
状態:VF
文献番号:RIC² 677(Rome Mint, AD 89)/ Sear 2739
表銘文
IMP CAES DOMIT AVG GERM P M TR P VIII「インペラトル・カエサル・ドミティアヌス・アウグストゥス・ゲルマニクス、最高神祇官、護民官職8回目」→ ドミティアヌスの全称号と治世の時点を示す。
図像(表)
右向きの月桂冠をかぶったドミティアヌスの肖像。
裏銘文
IMP XXI COS XIIII CENS P P P「インペラトル21回目、執政官14回目、検閲官永久、国家の父」→ 軍事的勝利、政治的地位、宗教的・道徳的権威をすべて網羅した称号。
図像(裏)
女神ミネルウァ(Minerva)が左向きに立ち、槍を持つ姿。彼の守護神とされ、ドミティアヌス期の銀貨の大多数で繰り返し使われた図像の一つ。
歴史的背景
ドミティアヌスは自らをミネルウァの加護を受けた支配者と位置付けており、在位中に発行された多数のデナリウスには、ミネルウァの様々な姿(立像、歩像、戦闘姿など)が描かれた。このコインはその中でも最も代表的な立像型であり、帝政後期における宗教的プロパガンダの好例とされる。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ネルヴァ(Nerva,在位AD96-98)
発行年:紀元97-98年
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.50 g
サイズ:17.8 mm
ダイ軸(Die Axis):6h
状態:GVF
文献番号:RIC II 9 (Nerva, Rome)
表銘文
IMP NERVA CAES AVG P M TR P COS II P P「皇帝ネルウァ・カエサル・アウグストゥス、最高神祇官、護民官権、執政官2回、祖国の父」
図像(表)
月桂冠を戴いたネルウァの頭部、右向き。→ 新皇帝としての正統性と安定を示す伝統的肖像。
裏銘文
SALVS PVBLICA「公共の安全(国家の安寧)」
図像(裏)
女神サルスが玉座に座り、穀物の穂を持つ。→ 国家の安定と民衆の繁栄を象徴。
歴史的背景
ネルウァはドミティアヌス暗殺後に即位した皇帝であり、専制からの転換と元老院との協調を重視した。本コインの「SALVS PVBLICA」は、動揺した帝国に対して秩序と安定を回復する意思を示すものである。またネルウァはトラヤヌスを後継者に指名し、「養子皇帝時代」の基礎を築いたことで知られる。五賢帝時代の出発点として重要な位置を占める皇帝である。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ネルヴァ(Nerva,在位AD96-98)
発行年:紀元97-98年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.36 g
サイズ:18.37 mm
ダイ軸(Die Axis):7h
状態:Nice VF
文献番号:RIC II 16 / BMCRE 37 / RSC 66
表銘文
IMP NERVA CAES AVG P M TR P COS III P P「インペラトル・ネルヴァ・カエサル・アウグストゥス、最高神祇官、護民官職、三度目の執政官、父祖たる元老院議員」→ 皇帝としての正式な称号を列挙。短期間の治世ながら、元老院との協調姿勢を強調している。
図像(表)
右向き、月桂冠を戴くネルウァ帝の肖像。高齢でしわが目立つ現実的な描写で、短い治世の中でも誠実で元老院寄りの政治姿勢を示す。
裏銘文
FORTVNA AVGVST「アウグストゥスのフォルトゥーナ(運命の女神)」→ 皇帝と国家の幸福と安定を象徴。
図像(裏)
フォルトゥーナ(Fortuna:運命・繁栄の女神)が左を向いて立ち、右手に舵(rudder)、左手に豊穣の角(cornucopiae)を持つ。舵は皇帝の統治が国家の方向性を導くことを、豊穣角は繁栄と富を意味する。
歴史的背景
ネルヴァはドミティアヌス暗殺後に元老院の支持を受けて即位した皇帝で、治世はわずか1年余りと短い。彼は帝政を元老院との協調体制に戻し、後継者としてトラヤヌスを養子に迎えることで「五賢帝時代」の礎を築いた。このコインは、彼の治世が「国家の運命を正しく導く」ことを象徴する。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:トラヤヌス(Trajanus,在位AD98-117)
発行年:紀元113-114年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.22 g
サイズ:19.5 mm
ダイ軸(Die Axis):6h
状態:aEF
文献番号:RIC II 272 / Sear 3166
表銘文
IMP TRAIANO AVG GER DAC PM TR P COS VI P P「インペラトル・トラヤヌス・アウグストゥス・ゲルマニクス・ダキクス、最高神祇官、護民官職、執政官6回目、国家の父」→ 数々の軍事的勝利と政治的称号が盛り込まれた、非常に長い帝政銘文。
図像(表)
月桂冠をかぶったトラヤヌス帝の肖像(右向き)。左肩にわずかな衣のドレープが見える。
裏銘文
S P Q R OPTIMO PRINCIPI「元老院とローマ市民より、最良の皇帝へ」→ トラヤヌスに贈られた特別称号「Optimus Princeps(最良の元首)」を記す敬意表現。
図像(裏)
フェリキタス(Felicitas:幸福と繁栄の女神)が左向きに立ち、右手にカドゥケウス(平和の杖)、左手にコルヌコピア(豊穣の角)を持つ姿。ローマ帝国の繁栄と幸運、そして皇帝によってもたらされた秩序ある繁栄を象徴している。
歴史的背景
この銀貨は、トラヤヌスが「最良の皇帝(Optimus Princeps)」として称えられていた晩年に発行された。表面の長文銘は、彼の対ゲルマン人・ダキア人戦争での軍事的成功を称え、裏面のフェリキタスはその戦勝が帝国にもたらした平和と繁栄を視覚的に表現してる。トラヤヌス時代はローマ帝国の領土が最大に達した時期であり、このコインはその全盛期の象徴である。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ハドリアヌス(Hadrianus,在位AD117-138)
発行年:紀元117年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.00 g
サイズ:19.0 mm
ダイ軸(Die Axis):7h
状態:VF+
文献番号:RIC II 140 (Hadrian, Rome)
表銘文
IMP CAESAR TRAIAN HADRIANVS AVG「皇帝カエサル・トラヤヌス・ハドリアヌス・アウグストゥス」
図像(表)
月桂冠を戴いたハドリアヌスの胸像、右向き。→ トラヤヌスの後継者としての正統性を示す肖像。
裏銘文
P M TR P COS II / VOT PVB「最高神祇官、護民官権、執政官2回 / 公的誓願」
図像(裏)
ピエタス(敬虔)が立ち、両手を上げて祈る姿。→ 神々への誓願と国家への忠誠を象徴。
歴史的背景
ハドリアヌスはトラヤヌスの後継者として即位し、拡張から防衛へと帝国の方針を転換した皇帝である。本コインの「VOT PVB」は国家的な誓願(ヴォタ)を意味し、皇帝と神々との契約関係、そして帝国の安定維持への誓いを示している。ピエタスの図像は、宗教的敬虔さと統治の正当性を強調するものであり、ハドリアヌスの内政重視の姿勢を象徴する。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ハドリアヌス(Hadrianus,在位AD117-138)
発行年:紀元117年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.52 g
サイズ:20.4 mm
ダイ軸(Die Axis):7h
状態:aEF
文献番号:RIC II 3(b) / RSC 523 / RC 3465
表銘文
IMP CAES TRAIAN HADRIANVS AVG 「インペラトル・カエサル・トラヤヌス・ハドリアヌス・アウグストゥス」 → トラヤヌスの後継者として帝位を継承した新皇帝ハドリアヌスを示す。
図像(表)
月桂冠を戴くハドリアヌス帝の右向き胸像。 皇帝の正統性と威厳を強調。
裏銘文
P M TR P COS DES II 「最高神祇官、護民官職権、執政官指名2回目」 → 即位直後の公式称号を示す。
図像(裏)
女神コンコルディアが玉座に座し、右手にパテラ(供物皿)、左手にコルヌコピア(豊穣の角)を持つ。 → 調和と繁栄を象徴し、新皇帝の治世が安定と秩序に基づくことを示す。
歴史的背景
ハドリアヌス(在位117–138)は「五賢帝」の一人。トラヤヌスの後継者として帝位を継承し、帝国の領土拡大よりも防衛を重視した。 ブリタニアに「ハドリアヌスの長城」を築き、属州を巡幸して帝国全土に秩序をもたらした。このデナリウスは即位直後に鋳造され、裏面のコンコルディア像は「安定と調和」を掲げた彼の統治理念を体現している。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:アントニヌス・ピウス(Antoninus Pius,在位AD138-161)
発行年:紀元151-152年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.35 g
サイズ:18 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:Extremely Fine
文献番号:RIC III 218 / BMCRE 757 / RSC 826
表銘文
IMP CAES T AEL HADR ANTONINVS AVG PIVS P P「皇帝カエサル・ティトゥス・アエリウス・ハドリアヌス・アントニヌス・アウグストゥス、敬虔なる者、祖国の父」
図像(表)
月桂冠を戴いたアントニヌス・ピウスの頭部、右向き。→ 安定した治世を象徴する穏やかな皇帝像。
裏銘文
TR POT XV COS IIII「護民官権15回、執政官4回」
図像(裏)
トランクィリタス(平穏)が立ち、舵に手を置き穀物の穂を持つ。→ 帝国の安定と繁栄、統治の均衡を象徴。
歴史的背景
アントニヌス・ピウスの治世は、ローマ帝国が最も安定した時代の一つとされる。本コインに描かれるトランクィリタスは「平穏」を意味し、戦乱の少ない統治と内政の充実を象徴する。ハドリアヌスから引き継いだ安定路線を維持し、次代のマルクス・アウレリウスへと繋がる黄金時代の中心に位置する皇帝である。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:アントニヌス・ピウス(Antoninus Pius,在位AD138-161)
発行年:紀元154-155年
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.86 g
サイズ:17 mm
ダイ軸(Die Axis):6 h
状態:GVF
文献番号:RIC III 239 / BMCRE 832 / RSC 292
表銘文
ANTONINVS AVG PIVS P P TR P XVIII「アントニヌス・アウグストゥス・ピウス、祖国の父、護民官権18回」
図像(表)
月桂冠を戴いたアントニヌス・ピウスの頭部、右向き。→ 安定した統治を体現する皇帝像。
裏銘文
COS IIII「執政官4回」
図像(裏)
アノナ(穀物供給の女神)が立ち、穀物の穂を持ち、船首上のモディウスに手を置く。→ ローマ市民への穀物供給と経済の安定を象徴。
歴史的背景
アントニヌス・ピウスの治世は内外ともに安定しており、帝国の繁栄が維持された。本コインに描かれるアノナは、ローマ市民にとって最も重要な穀物供給制度を象徴し、皇帝がその安定を保証する存在であることを示している。軍事的拡張ではなく、経済と民生の充実によって帝国を支えた統治の姿勢が表現された一枚である。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:アントニヌス・ピウス(Antoninus Pius,在位AD138-161)
発行年:紀元157-158年
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.71 g
サイズ:17.5 mm
ダイ軸(Die Axis):未確認
状態:GVF
文献番号:RIC III 274 / RSC 1038 / Sear 4131
表銘文
ANTONINVS AVG PIVS P P IMP II「アントニヌス・アウグストゥス・ピウス、国家の父、二度目のインペラトル」→ 皇帝としての正式称号を列挙。敬虔(ピウス)の異名で知られる。
図像(表)
右向き、月桂冠を戴くアントニヌス・ピウスの肖像。穏やかな表情と写実的な髭面が特徴で、安定した時代を象徴する。
裏銘文
TR POT XXI COS IIII「21回目の護民官職、4度目の執政官」→ 在位20年を超える安定した統治を示す称号群。
図像(裏)
アノーナ(Annona:穀物供給の女神)が左向きに立ち、右手に穀物の穂を持ち、左手に船の舵(rudder)を置いている。足元にはモディウス(穀物計量器)があり、食糧供給と海上輸送の安定を象徴している。
歴史的背景
アントニヌス・ピウスの治世(138–161年)は、ローマ帝国における最も平和で安定した時代の一つとされる。このコインは、帝国の「穀物供給の安定」と「豊かさ」を強調し、皇帝の善政によって市民生活が守られていることを表す。彼の治世は軍事的遠征が少なく、内政と経済に重点を置いた「黄金時代」の象徴とされる。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:アントニヌス・ピウス(Antoninus Pius,在位AD138-161)
発行年:紀元161年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.34 g
サイズ:19 mm
ダイ軸(Die Axis):12h
状態:GF
文献番号:RIC 431 / Cohen 155 / BMC 48 / MIR 24-4/10
表銘文
DIVVS ANTONINVS「神格化されたアントニヌス」
図像(表)
アントニヌス・ピウスの頭部、右向き。死後に神格化された皇帝を示す威厳ある肖像。
裏銘文
CONSECRATIO「神格化」
図像(裏)
花冠で飾られた祭壇の上に立つ鷲(ローマの神聖な鳥)。頭部は左を向く。→ 鷲は皇帝の魂を天へ運ぶ象徴であり、神格化儀式(アポテオーシス)を表現する。
歴史的背景
アントニヌス・ピウスは「五賢帝」の一人で、安定と平和に満ちた治世(AD 138–161)を築いた。彼の死後、元老院は神格化を決議し、マルクス・アウレリウスとルキウス・ウェルスの下で追悼貨幣が発行された。このデナリウスは、その神聖な記憶を永続させるために鋳造されたもので、ローマ皇帝の 「死後の神格化」という儀式的伝統 をよく示す。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:マルクス・アウレリウス(Marcus Aurelius,在位AD161-180)
発行年:紀元163年頃
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.39 g
サイズ:17 mm
ダイ軸(Die Axis):12h
状態:GVF
文献番号:RIC 82 / BMCRE 164 / RSC 47
表銘文
AVRELIVS CAESAR AVG PII FIL「アウレリウス、アウグストゥス(ピウス)の息子、カエサル」
図像(表)
若きマルクス・アウレリウスの右向き胸像。→ 「CAESAR」は副帝・皇太子の称号を意味し、彼がまだ父アントニヌス・ピウスの後継者として統治に参加していた時期の発行。「PII FIL(ピウスの息子)」は、養父ピウスとの連続性と正統な継承を示しており、皇帝家の徳と安定を強調している。
裏銘文
TR POT VII COS II「護民官権限7年目・執政官2回目」
図像(裏)
FIDES(フィデス)女神が右を向いて立ち、右手にパテラ(供物皿)、左手にコルヌコピア(豊穣の角)を持つ。→ フィデスは「信義・忠誠・誠実」を擬人化した女神で、この時期、マルクス・アウレリウスが示した国家と神々への忠実な奉仕を象徴する。将来の皇帝としての責任と信義の理念を体現する意図が見て取れる。
歴史的背景
AD 152年、マルクス・アウレリウスはすでに「副帝(Caesar)」として政務を担い始めていた。父アントニヌス・ピウスの統治は平和で繁栄に満ちた時代であり、このコインはその安定の中で育まれた「哲人皇帝」誕生前夜を象徴する。裏面のフィデス像は、ローマの信義と徳の理想を継承する若き皇太子の姿勢を示すもので、彼が後に『自省録』において説く倫理的・内面的統治の萌芽を感じさせる。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:マルクス・アウレリウス(Marcus Aurelius,在位AD161-180)
発行年:紀元152年頃
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.7 g
サイズ:17.2 mm
ダイ軸(Die Axis):6h
状態:F
文献番号:RIC III Antoninus Pius 461
表銘文
AVRELIVS CAESAR AVG PII FIL「アウレリウス、アウグストゥス(ピウス)の息子、カエサル」
図像(表)
若きマルクス・アウレリウスの右向き胸像。→ 「CAESAR」は副帝・皇太子の称号を意味し、彼がまだ父アントニヌス・ピウスの後継者として統治に参加していた時期の発行。「PII FIL(ピウスの息子)」は、養父ピウスとの連続性と正統な継承を示しており、皇帝家の徳と安定を強調している。
裏銘文
TR POT VII COS II「護民官権限7年目・執政官2回目」
図像(裏)
FIDES(フィデス)女神が右を向いて立ち、右手にパテラ(供物皿)、左手にコルヌコピア(豊穣の角)を持つ。→ フィデスは「信義・忠誠・誠実」を擬人化した女神で、この時期、マルクス・アウレリウスが示した国家と神々への忠実な奉仕を象徴する。将来の皇帝としての責任と信義の理念を体現する意図が見て取れる。
歴史的背景
AD 152年、マルクス・アウレリウスはすでに「副帝(Caesar)」として政務を担い始めていた。父アントニヌス・ピウスの統治は平和で繁栄に満ちた時代であり、このコインはその安定の中で育まれた「哲人皇帝」誕生前夜を象徴する。裏面のフィデス像は、ローマの信義と徳の理想を継承する若き皇太子の姿勢を示すもので、彼が後に『自省録』において説く倫理的・内面的統治の萌芽を感じさせる。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:ルキウス・ウェルス(Lucius Verus,在位AD161-169)
発行年:紀元161年
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.12 g
サイズ:18 mm
ダイ軸(Die Axis):6h
状態:GVF
文献番号:RIC 463 / RSC 144
表銘文
IMP L AVREL VERVS AVG「インペラトル、ルキウス・アウレリウス・ウェルス、アウグストゥス」
図像(表)
ルキウス・ウェルスの裸頭像、右向き。→ 共同皇帝として即位した初期の公式肖像。
裏銘文
PROV DEOR TR P COS II「神々の摂理により、護民官職権、第二回執政官」
図像(裏)
プロウィデンティア(摂理の女神)が左に立ち、右手に地球儀、左手に豊穣角を持つ。→ 皇帝の治世が神々の意志により導かれ、帝国の繁栄と安定が約束されることを象徴。
歴史的背景
ルキウス・ウェルスは、哲人皇帝マルクス・アウレリウスと共同で即位した異例の「双頭政権」の片翼。彼は東方遠征を指揮し、パルティア戦争(AD 161–166)でローマに勝利をもたらした。このデナリウスは即位直後に発行され、神々の加護(プロウィデンティア)を強調することで、皇帝権威の正統性を示す役割を担った。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:コモドゥス(Commodus,在位AD177-192)
発行年:紀元183年
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.9 g
サイズ:18 mm
ダイ軸(Die Axis):6h
状態:VF
文献番号:RIC III Commodus 192
表銘文
M COMM ANT P FEL AVG BRIT「マルクス・コモドゥス・アントニヌス、敬虔なる幸運のアウグストゥス、ブリタンニクス」
図像(表)
月桂冠を戴いたコモドゥスの胸像、右向き。
裏銘文
TR P VIII IMP VII COS V P P「護民官職権8回、インペラトル7回、執政官5回、祖国の父」
図像(裏)
Virtus(勇気の人格神)が左向きに座し、左手に槍を立て、右手に巻物を持つ。→ 軍事的勇気と国家統治の正統性を象徴。坐像とすることで「安定した権威」と「落ち着いた力強さ」を強調している。
歴史的背景
AD 183年はコモドゥスが 5度目の執政官(COS V) に就任し、軍事的勝利により インペラトル称号7回目(IMP VII) を受けた節目の年。このデナリウスは、若き皇帝の統治を支える勇気(Virtus)と安定した権威を示すプロパガンダとして発行された。表の堂々たる肖像と、裏のVirtus坐像は、彼が単なる軍人皇帝ではなく「国家秩序の保持者」であることを強調する。
種別:
皇帝:
発行年:
発行場所:
重量:
サイズ:
ダイ軸(Die Axis):
状態:
文献番号:
種別:
皇帝:
発行年:
発行場所:
重量:
サイズ:
ダイ軸(Die Axis):
状態:
文献番号:
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:セプティミウス・セウェルス (Septimius Severus,在位AD193-211)
発行年:紀元200年頃
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.41 g
サイズ:19 mm
ダイ軸(Die Axis):1h
状態:GVF
文献番号:RIC 168a / BMCRE 192 / RSC 599
表銘文
SEVERVS AVG PART MAX「セウェルス・アウグストゥス、パルティアに対する最大の勝利者」
図像(表)
月桂冠を戴いたセプティミウス・セウェルスの頭部、右向き。
裏銘文
RESTITVTORI VRBIS「都市の復興者へ」
図像(裏)
皇帝が左に立ち、右手でパテラを持って三脚祭壇に犠牲を注ぎ、左手に槍を持つ姿。→ 皇帝がローマの宗教的伝統を回復し、都市を再建する姿を象徴。
歴史的背景
セプティミウス・セウェルスは「五皇帝の年」の混乱を制して帝位に就いた。軍事的には東方でパルティアに勝利し「Parthicus Maximus(パルティアに対する最大の勝利者)」の称号を獲得。また内政面では、首都ローマの建築・宗教施設を修復し、都市を整備した。このデナリウスは、彼を「都市再建者」「伝統回復者」として描き、軍事的勝利と都市復興を結びつけたプロパガンダ貨幣。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:セプティミウス・セウェルス (Septimius Severus,在位AD193–211)
発行年:紀元200年頃
発行場所:ローマ造幣所
重量:2.34 g
サイズ:16 mm
ダイ軸(Die Axis):12h
状態:GF
文献番号:RIC IV (Severus) 該当番号未詳
表銘文
摩耗により一部判読困難。外周に「…SEV…AVG」と読める痕跡があり、標準的な銘文はL SEPT SEV PERT AVG IMP … 系列と考えられる。
図像(表)
月桂冠を戴たセプティミウス・セウェルスの胸像、右向き。→ 軍人皇帝としての威厳を示す肖像。
裏銘文
摩耗のため不明。
図像(裏)
女神の座像、左向き。右手を前に差し出している。→ サルス(Salus)、フォルトゥナ(Fortuna)、あるいは女神セクレリタス(Securitas)などが候補。
歴史的背景
セプティミウス・セウェルスは、軍の支持を得て内戦を制し、五賢帝時代の後に新たな王朝(セウェルス朝)を開いた。彼のデナリウスは軍事的勝利・都市の安定・皇帝の徳目を強調するタイプが多く、裏面に現れる女神像も帝国の安定と繁栄を象徴していると考えられる。
種別:デナリウス / 銀貨
皇帝:クロディウス・アルビヌス(Clodius Albinus,在位AD193–197)
発行年:紀元193-195年頃
発行場所:ローマ造幣所
重量:3.2 g
サイズ:18.2 mm
ダイ軸(Die Axis):12h
状態:aVF
文献番号:RIC IV 7 / BMC 99 / Cohen 48
表銘文
D CLOD SEPT ALBIN CAES「デキムス・クロディウス・セプティミウス・アルビヌス・カエサル」
図像(表)
クロディウス・アルビヌスの裸頭像、右向き。→ 知的で沈着な表情は、彼の哲学的性格と冷静な指揮官としての一面を反映している。
裏銘文
MINER PACIF COS II「平和をもたらすミネルウァ、2度執政官に就任」
図像(裏)
ミネルウァ(アテナ)が左向きに立ち、右手にオリーブの枝、左手を盾に添え、槍を左腕に立てかけている。→ 戦いを制して平和を築く「知恵と戦略の女神」としての姿で、アルビヌスが戦乱の中にも秩序を求める理想主義者であったことを象徴。
歴史的背景
クロディウス・アルビヌスは、五皇帝の年(AD 193)において有力な軍司令官の一人だった。当初セプティミウス・セウェルスにより副帝(カエサル)に指名され、西方属州の安定を託されたが、後に両者は対立し、AD 197年のリュグドゥヌムの戦いで敗北・戦死した。このデナリウスは、彼がまだセウェルスの盟友としてローマの秩序回復を誓っていた頃の発行である。
TKC Coin Collection