嫌いなもの
嫌いなもの
わたしは珈琲が嫌いだ
みなが好む苦みを、ついに理解できず
みなが讃える香りも、焦げた匂いにしか感じられず
ただ、それだけならいいのだが
歓迎の意で差し出されたその液体を
感謝の意で差し伸べられたその液体を
わたしは、泣く思いを封じこめ、無理矢理に流し込む
こうしてわたしは、大人になったのだ
わたしはさくらんぼが嫌いだ
赤く丸い輝きは、不快な眩しさに思え
種という生命の塊に、吐き気を覚え
ただ、それだけならいいのだが
彼らは王と言いたげに、デザートの頂に立つ
欲するチョコレートパフェの器に座り込む
わたしの、メニュー表を彷徨う指は、水を指し示す
こうしてわたしは、謙虚になったのだ
わたしは酒が嫌いだ
弾ける泡ののど越しを、ついに理解できず
風味や後味を、感じることができず
ただ、それだけならいいのだが
「大人」を描こうとする時
「迷う大人の夜」を文におさめようとする時
わたしは、知らずの間に、知らぬ飲酒を描写している
こうしてわたしは、嘘つきになったのだ
なあ友よ
わたしは、君の目に、どう映っているのかい?
それだけが、気がかりの人生なのだ