2026年9月30日に,『防衛学研究』第75号に,論文「現代国際法における戦争賠償の実現構造―法の沈黙への応答―」が掲載されました。
本論文では,戦争に関連する国際法違反について賠償義務が認められていても,それを実現する仕組みが十分に整っていないという問題を取り上げました。国連補償委員会や国際司法裁判所などによる賠償の処理を比較したうえで,包括的な賠償制度が設けられず,責任国の自発的な履行も期待できない場合に,既存の制度や法理がどこまで対応できるのかを検討しました。
具体的には,戦争賠償の実現に必要な機能を「違法性および賠償義務の確認」「損害および請求の具体化」「履行確保」に分け,国連決議や勧告的意見,損害登録制度,第三国による対抗措置などが果たしうる役割と限界を分析しました。これにより,単一の包括的な制度がなくても,複数の制度や法理を通じて賠償の実現を段階的に進める可能性を示しています。
本研究は,賠償義務の存在と実際の被害回復との隔たりに着目し,戦争賠償を実現するための法的な道筋を明らかにすることを目指すものです。同時に,財源や履行を確保する措置の適法性・実効性など,なお残されている課題を示すことで,今後の賠償制度の構築に向けた議論に貢献したいと考えています。
本論文を掲載した『防衛学研究』第75号は,オンデマンドで販売されているほか,日本防衛学会の会員用ホームページで会員限定で公開されています。論文は1年以内にJ-STAGEで公開される予定です。
ご入用の方には抜き刷りをお送りしますので,どうぞお気軽にご連絡ください。
書誌情報:
佐々木絃「現代国際法における戦争賠償の実現構造―法の沈黙への応答―」『防衛学研究』第75号(2026年9月)81–106頁。