研究内容

惑星システム研究室では天体衝突現象に注目して研究を行なっています.

惑星の活動はいろいろな要素が相互作用をして成り立っています. いくつもの歯車が噛み合って回っているようなものだと言えます. これを惑星システムと呼びます. 天体衝突が起こると惑星システムは激しく乱されてしまいます. 太陽系の初期は天体重爆撃期と呼ばれ, 天体衝突が現在の100倍以上の頻度で起きていました. 惑星システムの歯車は何度も壊され, その度に違う形で組み直されて現在の姿に進化してきたと考えられます. 天体衝突で引き起こされる物理•化学過程を丁寧に解明し, 初期の太陽系がどのような姿であったのかを復元することを目指します.

具体的な研究テーマ (内容とそれぞれのテーマにふさわしい図は準備中です...)

これまで天体衝突研究に携わってきた知識と経験を活かして惑星探査計画にも参画しています.

考えられる卒業研究テーマの例

ここでは研究室選びの参考のため当研究室で現在取り組んでいる研究テーマの例を挙げています. 必ずしもこれらのうちのどれかをやらなければいけないわけではなく, 新しいテーマを考案し, 取り組んでいただいてもらって構いません. 研究室で持っている装置群は使用することができます.


隕石模擬物質を用いた衝撃回収実験: 隕石に刻まれた天体衝突の痕跡を読む.

隕石に刻まれた天体衝突の痕跡を解読するための辞書を作成します. 我々が開発してきた独自の手法を使って隕石模擬物質に衝撃波を作用させます. 回収した試料を電子顕微鏡をはじめとする装置群で詳細に観察することで, どのような衝撃波条件で鉱物がどんなふうに変化するかを記載していきます. 鶴甲第2キャンパスから全国の共同研究者のもとに出張して装置をお借りして研究を進めます. 


高速度衝突の爆心地点物質の回収と観察: 極限状態の物質の変化を探る.

我々は粉体への高速度衝突実験を行っている最中, ある条件が揃うと衝突直下点のまさに高速度衝突の爆心地の物質を回収できることを見出しました. この試料は高速度衝突の最も高いエネルギー密度を達成しているはずです. こちらも回収した試料を電子顕微鏡をはじめとする装置群で詳細に観察し, 運動量やエネルギーがどのように分配されたのか実際の試料から明らかにします. 粉体試料を扱うため, 垂直撃ちが可能な宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科学研究所にて出張実験を行います. 超高速衝突実験施設が所有している縦型二段式水素ガス衝撃銃を利用させてもらいます.


高速度衝突による物質放出過程の観察: 惑星表層の攪拌過程と表層からの物質流出過程を解明する.

天体衝突は惑星表層を大規模に耕します. 全ての天体衝突は地面から傾いて起こります. これを斜め衝突と呼びます. 放出物の飛散も衝突角度によって変化することが予想されます. 高速度斜め衝突実験を行い, 物質放出の一部始終を観察し, どの角度にどの程度の速度で飛散するのか?を調べます. 80万年前に起こったオーストラリア•アジアテクタイト生成事件や, 宇宙空間を移動する岩石の起源解明にも繋がることでしょう.


連星小惑星Didymos–Dimorphosの表面予想

現在NASAESA(欧州宇宙機関)が協力して世界初の地球防衛実証実験Asteroid Impact &Deflection Assessment (AIDA)計画が実施されています. 連星小惑星Didymos–Dimorphosが標的です.2022年10月, NASAはDART探査機を小惑星Dimorphosに衝突させることに成功しました. 2024年にESAが打ち上げるHeraは, Didymos–DimorphosがDARTの衝突でどのように変化したのかを見に行きます. 2026年末には衝突後のDidymos–Dimorphosの姿が明らかになる見込みです. 黒澤はHera-JPの科学検討に参加しています. DART衝突を様々な角度から検討し, 事前に連星小惑星の表面がどのように変化したのかを予測します.