音楽・国語・幼小連携

ポイント


本事例では、高学年を対象とし、「ピーターと狼」の絵本を、オノマトペを活用しながら読み進めることで、想像した音を言葉にしたり、場面に合う音楽をつくったりしながら、言葉と音楽を関わらせた表現を工夫することをねらいとする。


この事例においては、幼小連携の活動を取り入れた。小学校高学年と幼稚園児の交流は、双方に互恵的な教育的効果をもたらす。すなわち児童には、低学年児童よりもさらに小さな子どもとの交流によって、相手への思いやりの心を育てることができ、一方、幼稚園児にとっては高学年児童との交流は小学校生活への憧れの心を育てることが期待できる。


絵本の文章は未完のものを使用する。グループごとに絵本の各場面で聴こえる音を想像し、オノマトペで表現することで、オリジナルの文章を完成させる(国語)。この活動に先立って、園児とともにサウンドスケープの活動に取り組み、聴こえた音の質を捉え、オノマトペにする練習をしておく(音楽)、とともに園児との関係性を構築する。


次に、それぞれの場面の雰囲気に合った音楽づくりを行う。さまざまな楽器を用いて、その場面で聴こえると想像した音や場面の雰囲気を音楽として表現する。そのうえで、「ピーターと狼」の原作であるプロコフィエフの《ピーターと狼》を鑑賞する。場面や登場人物の雰囲気をどのように音楽として表現しているかを知ることで、自分たちの表現を見つめ直し、表現を深める(音楽)。


最後に幼稚園の園児に読み聞かせを行う活動に取り組み、自分たちがつくった朗読と音楽表現とを披露する。


なお、本事例は幼小連携の活動を事例として入れているが、各学校の条件に合わせて、低学年児童との交流や、同学年内のグループ間の発表でももちろん国語と音楽の総合的な学びが期待される。


活動案:(全6時間)

第1時(音楽科・幼小連携)

 

【ねらい】

 幼稚園児とともにサウンドスケープに出かけ、オノマトペの表現に慣れる


【活動の流れ】*園児との協同活動

①園児と児童のグループを構成する。

②校庭や公園などに出かけ、周囲の音環境に耳をすませる。

③聴き取った周囲の音を園児とともに話し合い、オノマトペを使って書き留める。

第2時(国語科・幼小連携)


【ねらい】

 絵本の情景や場面ごとの音をオノマトペ(擬態語・擬音語)を用いて表現する


【活動の流れ】*園児との協同活動

①園児と一緒に絵本『ピーターと狼』を読む。

②場面ごとに聴こえる音をオノマトペで表していく。

第3時(国語科・音楽科)


【ねらい】

 絵本の場面にあった音楽をつくる


【活動の流れ】

①表現したオノマトペを使いながら絵本を朗読する。

②オノマトペに合う楽器を選ぶ。

③選んだ楽器をもとに、絵本の場面に合う音楽を即興的に鳴らす。

第4時(音楽科)


【ねらい】

 プロコフィエフ《ピーターと狼》を聴くことで、自分たちの音楽表現を深める手がかりを得る

  


【活動の流れ】

①《ピーターと狼》を場面ごとに聴き,音楽的に描写されている動物を考える。

②各場面で描かれている動物について,音色、旋律、リズムなどをもとに考え、プロコフィエフの工夫を見つけ出す。

第5時(国語科・音楽科)


【ねらい】

 自分たちの朗読と音楽の質を高める


【活動の流れ】

①園児に聴いてもらうことを前提に、朗読の速度や抑揚の付け方を工夫する。

②朗読に合うように、自分たちの音楽の表現を工夫する。

第6時(幼小連携)

 

【ねらい】

 幼稚園の子どもたちに聴かせることを通して、自らの学習を評価する


【活動の流れ】*園児との協同活動

①園児と児童のグループに別れ、児童がつくった『ピーターと狼』の読み聞かせを行う。

②園児との交流を通して、自分たちの作品をふりかえる。


( 樫下達也 ・ 多賀秀紀 )