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2023年12月18日(月)
場所:岡山大学理学部2号館2階 第1代数セミナー室
プログラム:
14:00~15:00 柳川浩二(関西大学)
15:15~15:45 牟田優治(岡山大学)
講演内容:
柳川浩二(関西大学)
タイトル:q-変形有理数の組合せ論
アブストラクト:(小木曽岳義氏、宮本賢伍氏、任鑫氏、和久井道久氏との共同研究に基づく)
正整数 n の q-類似 1+q+…+q^{n-1}は古典的であるが、近年 Morier-Genoud と Ovsienkは、
有理数の q-類似を導入した。Jones多項式や三角圏の研究に応用されているが、本講演では
より基本的な性質を考える。
既約分数 r/s (s >0) のq-類似を R_{r/s}(q)/S_{r/s}(q) と記す。 「分母」は
S_{r/s}(1)= s なる正整数係数の単峠な多項式で、r を s で割った余り(と s)で決まる。
今回紹介する結果と予想は以下の通り。
定理 1. r r' ≡ - 1 (mod s) ==> S_{r/s}(q)= S_{r'/s}(q)
定理 2. S_{r/s}(q)が回文的 <==> r^2≡ 1 (mod s)
予想. s が素数なら S_{r/s}(q)は Q上既約。
予想は、計算機で 739 までの素数で確認している他、
命題: s が素数で S_{r/s}(q) が可約なら、一つを除いて全ての因子は7次以上。
が示される。証明には、当該多項式に q=-1, i (虚数単位), ω (1の3乗根)を代入した値を考える。
この観測は、有理結び目の Jones 多項式に i や ±ω を代入した値に再解釈を与える。
牟田優治(岡山大学)
タイトル: Multi-corona graphs and local cohomology of their residue rings by the edge ideals
アブストラクト: コロナグラフの一般化としてマルチコロナグラフを定義し、
このグラフに付随するエッジイデアルについて議論する。
このエッジイデアルによる商環の局所コホモロジー群のヒルベルト級数を解析したことで深さと正則性の公式を得た。
また、一般にはマルチコロナグラフは非混合ではなく、Cohen-Macaulayではないが、
Sequentially Cohen-Macaulayであることが分かった。
今回の講演では主に上記の2結果について紹介する。
この研究はM.R.Pournaki氏と寺井直樹氏との共同研究に基づくものである。
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2023年6月13日(火)、14日(水)
場所:岡山大学環境理工棟(環境理工学部)1階106講義室
プログラム:
13日(火)16:00~17:30 高橋亮(名古屋大学)
14日(水)10:00~11:30 吉野雄二(岡山大学)
講演内容
13日(火)16:00~17:30 高橋亮(名古屋大学)
講演タイトル:鎖複体の局所コホモロジーの零化と導来圏のt構造の分類
アブストラクト:Faltingsの零化域定理 (Faltings' Annihilator Theorem)は正則環の準同型像または双対化複体をもつ環上の加群の局所コホモロジーの零化に関する定理であり、Faltings (1978)によって示された。その後この定理はいくつかの拡張がなされたが、川崎健 (2008) によってČesnavičius (2021)の意味でのCM-excellent環に拡張され、それまでの拡張はすべて包括された。一方、Divaani-AazarとZargar(2019) はFaltingsの定理を双対化複体をもつ環上の鎖複体に拡張した。この講演では、Faltingsの定理をCM-excellent環上の鎖複体に拡張する。その後、その定理を応用することでCM-excellent環の導来圏のt構造が分類できることを説明する。
14日(水)10:00~11:30 吉野雄二(岡山大学)
講演タイトル:Introduction to Naive Lifting Theory
アブストラクト:First I give some motivation and the definition of naive lifting of dg modules. Secondly I show how we can resolve dg algebras over its enveloping dg algebras, and show how such resolutions are relating to the naive lifting.
Reference: arXiv:2301.12267 "Semifree resolutions of DG algebras over the enveloping DG algebras", by Saeed Nasseh, Maiko Ono and Yuji Yoshino
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2023年4月24日(月)
場所:岡山大学環境理工棟(環境理工学部)1階103講義室
プログラム
13:50~15:20 橋本光靖(大阪公立大学):
Asymptotic behavior of the Frobenius maps of the ring of invariants
(不変式環のフロベニウス写像の漸近的挙動)
アブストラクト:
k は標数 p>0の完全体, G は k上の代数的な群スキーム, V は有限次元 G 加群, S = Sym V とする.
不変式環S^G の環論的性質を追求することは(少なくとも代数群に関しては)不変式論の重要課題である.
標数 p の可換環 A について, フロベニウス写像 F_A の繰り返し F_A^e の (e を大きくしていった) 漸近的
挙動によって決まる A の環論的性質・不変量には F正則性, F有理性, FFRT (finite F-representation type),
F-signature, Hilbert-Kunz重複度など重要なものが多いが, A = S^G についてもこれらについて様々な研究が
されてきた. 本講演では、以下を中心にこの話題についての以前の結果も含めて話をする.
1) Gがpseudo-reflection を持たない有限群でS^G がFFRT ではない例 (A. Singh氏との共同研究)
2) G が有限群スキームの場合に作用が small であるということの定義を(有限群の場合を一般化して)与え,
S^G のF-signature s(S^G) が G が線形簡約ならば 1/dim_k k[G] (ここに k[G] は G の座標環),
線形簡約でなければ 0 (つまり不変式環がF-regular にならない) ことを証明した (小林史弥君との共同研究).
これはGが被約な場合には Broer-Yasudaの定理とWatanabe-Yoshidaの定理を合わせたものに相当する.
15:50~17:20 早坂太(岡山大学):
直既約整閉加群に付随する行列式イデアルについて
アブストラクト:
Zariskiによって展開された2次元正則局所環の整閉イデアルの理論の一部は、Kodiyalamによって
整閉加群の理論に拡張され、整閉加群の直既約性に関する問題が提起された。
この問題を出発点に、2次元正則局所環上の直既約整閉加群に付随する行列式イデアルについて、
これまでに得られている結果を紹介する。特に、階数2および3の直既約整閉加群の
行列式イデアルとして現れる整閉イデアルの特徴付けを与える。
階数4(以上)の場合に得られている部分的結果についても話す予定である。
本講演の内容は、Vijay Kodiyalam氏との共同研究です。