本研究室では、高速・高効率な推進を可能とする生物模倣型ソフト水中ロボットの研究開発に取り組んでいます。
水中ロボットにはスクリュー式など高速推進を実現するものもありますが、スクリューがむき出しになることで生物の巻き込みや海底の砂の巻き上げといった環境面での悪影響が懸念されています。生物本来の遊泳を模倣することで、生態系への影響を最小限に留めるとともに、生物の優れた運動性能を実現することが期待されます。
これまで開発されてきた多くの生物模倣型水中ロボットは、モータやクランクを組み合わせた運動機構を備えており、機体の剛性のために、生物のような流体との滑らかな相互作用を実現できないという課題が存在しました。そのためソフトアクチュエータや可撓性材料(CFRPやPET)を使用し、柔らかい構造のロボットを実現することが生物模倣にとって重要です。
本研究はバイオミメティクスとソフトロボティクスを融合させることで、優れた運動性能を実現する生物模倣型ソフト水中ロボットの実現を目指しています。
誘電体であるエラストマー材料と伸縮性のある柔軟電極から構成されるソフトアクチュエータです。既存の圧電アクチュエータや静電型アクチュエータに比べ、優れた柔軟性を持ち、大きなひずみが得られるという特長があります。エラストマーに電圧を印加することで、マクスウェル応力が発生し、エラストマーが伸張します。
現在は、こちらのDEAを中心に生物模倣型ソフト水中ロボットの開発を行っています。
屈曲運動可能なアクチュエータをロボット中央部に配置することで、鰭を駆動させるマンタ型ロボットを開発しました。鰭前方の剛性の高いCFRPが後方の柔軟なシリコン部を従属的に駆動させることで、遊泳を実現しています。また、エラストマーで電極を挟むことにより、水中でのアクチュエータの駆動を可能としています。
DEAをチューブ形状にすることで、屈曲駆動を可能とするチューブ型駆動モジュールの開発を行いました。また、連結することで変位の拡大を図るとともに、水中ロボットの試作を行いました。このウナギ型ロボットは流体中において43.7[mm/s]の推進を実現しました。
圧電材料は、圧電効果および逆圧電効果により電気エネルギーと機械エネルギーを変換できる材料です。本研究では、既存の圧電材料よりも優れた特性を持つ圧電繊維複合材料、その中の一つであるMacro Fiber Composite(MFC)をアクチュエータとして使用しています。
MFCは圧電セラミックスの繊維層、エポキシ層、櫛状の電極が印刷されたポリイミド層から構成されており、電界を印加することで圧電セラミックスの繊維方向に伸縮します。このMFCを別の可撓性材料(CFRPやPET)に貼り合わせることで、ひずみ量を屈曲方向の力や変位として変換することができ、これにより柔軟な屈曲動作が可能となります。
川魚であるマスの投影図を元に切り出したカーボンプレートの両面に2枚の圧電素子を貼り付けて駆動させることにより、本体から尾びれにかけての屈曲運動により準アジ型推進を実現しました。圧電素子を2枚用いることにより、対称的に駆動させることで1枚の時より大きな推進力を得られること、非対称的に駆動させることで旋回運動を得ることに成功しています。
周辺流体を付加質量として考慮したモーダル解析および時刻歴応答解析により、遊泳形状を選定し、それを基にしたウミヘビ型ロボットを開発しました。これにより遊泳効率の高いウナギ型推進を実現しました。
魚類の筋骨格構造の剛性分布・三次元流線形状を模倣することで、駆動システムを内蔵するための体積を有し、かつ高効率な推進を可能とする立体マス型ロボットを開発しました。