※以下の説明内容は、教員個人の意見であって、共立女子大学国際学部の総意意見・公式見解ではありませんので、注意してください。
これらの1~2年生ゼミは、学生が主体的にゼミを選択する度合いが相対的に小さく、様々な学部の教育的事情から自動的に決まる側面が大きいです。シラバスを始め、初回授業のゼミでの教員からの説明をよく聞いてください。
基本的には、1年前期「基礎ゼミ」と1年後期「課題解決ワークショップ」では、必ずしも教員の専門分野である開発経済学に強い関心がある学生ばかりではないという前提に立ち、国際学部の人文社会諸学のどの分野であっても共通する社会科学的なものの見方(方法論)について演習形式で学習します。
2年「国際基礎演習Ⅰ」「国際基礎演習Ⅱ」では学生が選択できる側面は1年ゼミよりは強くなるものの、引き続き、開発経済学に強い関心がある学生ばかりではないという前提に立ちますが、より進んだ学習ということでトピックは開発経済学から選び、社会科学の各分野に等しく必要な論理的思考力や因果関係の分析力を演習形式で涵養します。
3年通期「国際専門演習」は、1・2年ゼミと違い、同一の指導教員のもとで卒研に向けて指導を受け、そのための学習を演習形式で積み上げていく性格が特徴です。したがって、岡部が担当する「国際専門演習」に参加する学生は、このゼミの共通領域である開発経済学に関心がある学生が集結しているということを大前提とします。4年「国際卒研演習」はこの持ち上がりです。
ゼミの詳細はやはり初回の教員の説明を聞くほか、シラバスを参照してください。ここでは、特に、2つの視点、「学際学部における専門性について」と「経済学の特徴について」を学生の皆さんに伝えたいと思います。
国際学部のような学部は「学際学部である」といいます。学際とは、法律学、政治学、経済学、歴史学、地理学、文学など特定の個々の学問(ディシプリンといいます)を学ぶのではなく、複数のディシプリンの科目を同時に学ぶことを特徴としている形態(英語ではディシプリン間を行き来することからinterdisciplinaryという)を指します。文字通り、国際学部は、3コースというゆるやかな制約こそあれ、学生は基本的に、人文学、歴史学、地理学、言語学、法律学、政治学、経済学、国際公共政策論などについて幅広く履修することができます。
しかし、学際性の強い学部にいることは様々な分野を「つまみ食いをしていればよい」ということではありません。まずはこの点を明確に意識してください。
そもそも、特定の1ディシプリンを学ぶ学部(例えば法学を学ぶ法学部、経済学を学ぶ経済学部、人文学を学ぶ文学部のように)と異なる、我らが国際学部のような国際系や、環境系、総合科学系など、学際学部の性質は、米国のリベラル・アーツ(liberal arts)に由来しているものが多いです。言い換えれば、教養学部のようなものだと考えて宜しいでしょう。
リベラル・アーツは更に米国から古代・中世ヨーロッパの時代にさかのぼり、自由7科と呼ばれる言語系3学(文法・論理・修辞)と数学系4学(算術・幾何・天文・音楽)にその端緒を見出すことができます。
リベラル・アーツとしての学際教育において必要なことは何でしょうか。それは、大学の間を通じて「つまみ食い」をしていることではありません。学際学部において「絞ること」は逆説的に重要です。
例えば、日本におけるリベラル・アーツ教育のけん引役である東京大学教養学部では、レイト・スペシャライゼーション(late specialization)を重要視しています。詳しくは東京大学の説明を参照してください。ここでは要点だけをまとめます。レイト・スペシャライゼーション(late specialization)は、その英語が示すように「遅い専門化」を意味しています。
これは実は、東京大学教養学部だけでなく、共立女子大学国際学部のカリキュラムとも基本的には同様の精神です。つまり、入学時は学科を定めることなく、国際学部国際学科という単一学科で幅広く学生を入学させたのち、その後は学科よりはゆるやかな共同体ではあるものの、ある程度の共通点を持った「コース」を制定し、学生は進級するにつれてこのコースのもとで集中的な教育を受けるのです。
つまり、1・2年生という高校卒業から間もない時期は、学生は学問の世界についてのイメージや正確な知識に不足しているため、いたずらに特定の分野だけに閉じこもることを避け、広い学識を身に着けることを奨励しているのに対し、その時期に自身に見合ったディシプリンや研究態度を特定していき、3・4年次にはその専門性を磨いていくことが望ましいのです。
したがって、3年生・4年生となった皆さんは、この「レイト・スペシャライゼーション(late specialization)」を意識し、自身の専門分野を決め、計画的・集中的な履修計画・学修計画を立ててください。そのための一つの指針は、自身の所属コースの専門科目を中心に履修計画を絞ることですし、あるいは、経済学や政治学といった分野に沿って科目群を選択・集中することでしょう。ただし、担当教員は経済学をバックグラウンドに持っているため、専門的に指導できるのは経済学の見地に立った内容となります。
もちろん、政治学や歴史を始めとした経済学以外の分野を学生が選択することを妨げるものではありませんが、担当教員の経済学以外の学識については、学部内の他の専門家の教員にかなうものではないことは知っておいてください。
以上から、他の特定の分野の学びを制限するものでは決してありませんが、いたずらに散漫な科目選択を続ける状態は3年生・4年生になってからでは「つまみ食い」状態であるとして、焦点の定まっていない学習態度と見なされてしまうので、ぜひ専門性を意識した効率的学修を目指してください。「あれも、これも」は1・2年生の時期で終えていて欲しいということでもあります。
岡部ゼミの担当教員・岡部は、国際学部グローバルスタディーズコースに所属しており、学生も同コースから中心的に集まってくることが想定されます。(他コース学生であっても入ゼミすることはできます。比率の問題です)
岡部は同コースの開発経済学・国際協力論を中心とした諸分野を担当しています。学部教育では、演習以外には、
専門基礎科目:
国際学入門Ⅲ〔他教員との輪講形式〕
国際協力論
専門科目:
マクロ経済学
開発経済学
経済学特論
社会開発論
を担当しています。
さて、色々ありますが担当教員の一番の専門は開発経済学です。開発経済学は、文字通り経済学(economics)の一部です。そして、これは経済学そのものの性質に由来する特徴なのですが、経済学は極めて体系的な性質を持っています。体系的というのは、システマティックである、ということで、言い換えると、積み上げ式の学問です。
これは、入門レベル→基礎レベル→中級レベル→上級レベルとして教わるべき内容がその学界の中である程度合意されている程に決まっているということです。このような特徴は、社会科学の中において経済学が最も目覚ましいといえます。
このような積み上げ式の性質は、理論経済学と応用経済学の関係としても理解できます。経済学には、すべての経済学の基礎となる理論を扱う理論経済学と、理論経済学をベースとして個々の社会経済課題を専門的に研究する諸分野を総称した応用経済学があります。
ここで、開発経済学は応用経済学に分類されます。ということは、開発経済学も応用経済学の性質を継ぎ、理論経済学を基礎とします。理論経済学は、ミクロ経済学・マクロ経済学・統計学(計量経済学)を指します。
本学部では、入門レベルの理論経済学は、
経済分析の基礎Ⅰ (1年次、専門基礎科目)
経済分析の基礎Ⅱ (1年次、専門基礎科目)
で学習します。
統計の基礎は、全学共通教育ですが、
情報の分析と活用A(1年次、全学共通教育科目)
情報の分析と活用B(1年次、全学共通教育科目)
です。以上4科目は出来る限り1年生のうちに取っておいてください。
経済理論の基礎~中級は、
ミクロ経済学Ⅰ(2年次、専門科目)
ミクロ経済学Ⅱ(2年次、専門科目)
マクロ経済学(2年次、専門科目)
経済学特論(計量経済学)(2年次、専門科目)
として提供されています。以上4科目は出来る限り2年生のうちに取っておいてください。開発経済学という形で、途上国の経済分析を学習したい者は、これらの基礎知識はマストになります。
このように、前提科目を強調する教員は、学部全体の中では珍しいかもしれません。しかし、経済学学習においては実は標準的なメッセージです。経済学学習には、ものごとの順序というものがあり、この性質は他分野と比べて濃厚な特徴でしょう。これをしっかり皆さんに伝えておくことは、学ぶ学生と教える教員の双方の要らぬ不幸を避けるために、たいへん有用なことなのです。