普段から愛用していた私のSUP DC SURF X の左フィンボックスが破損してしまった。以前にも壊れたためSURF BOARDの修理を良くする知人に修理してもらったものが、再度破損したものです。
上左は2022年5月、最初にFinboxを破損した写真。右は6月に知人に修理してもらったもの。Finbox周辺の底面にエポキシを流し込んでシェルに固定してある。
上が今回破損した写真。底面のShellとエポキシの接合面が弱くエポキシの硬化面ごとシェルから剥離した
写真のFin前縁が摩耗している様子からも分かりますが、私の乗り方が粗く、SUPで浜に乗り上げたりするのでFinに過度な力がかかりBOXごと破損したものです。
前回同様の修理をしてもまた飛ばしてしまう確率が高いため、今回はShell内部にストリンガーを貼り付けてストリンガーで強度を高めることにしました。ストリンガーはアイスキャンデーの棒を用います。
ボックスには前回の修理でエポキシが固着しているため、まずストリンガーを上手く抱き合わせられるように底面と両面を平面に研削しておきます。
ストリンガーは上面及び底面のシェルに2本ずつ貼り付け、それを垂直材で結び、その内部にFinboxを固定します。Boxは4本のストリンガーと垂直材で支えられて上下のShellに固定されるため極めて強固になります。
まずボックス下部分の発泡材を取り除き、上面のシェルを剥き出しにして、その面にストリンガーを貼り付ける。Finの取付位置がずれないようにShellの表面には位置のマーキングを行っておく。
底面を仰向けにして修理するので上部シェルをクロス補強してストリンガーを取り付けるのは簡単にできますが、問題は底面のシェルに旨くストリンガーを抱かせて十分な固定強度を出せるように接着できるかどうかが鍵になります。
Shellの上面と底面に取り付けるストリンガーと垂直材は高さと位置を合わせて互いに接合できるよう切り欠きを入れて接着剤で固定する
底面(作業写真では上面)に貼り付けるストリンガーは、なるべく既存のシェルにかかる様に配置して垂直材で連結します。このとき当然のことですがストリンガーがFinboxを挟み込むように取付けねばなりません。
ストリンガーの間隔をフィンボックスに合わせて垂直材で接合したら、シェル表面にカーボンクロスを抱かせてストリンガーを配置しエポキシでShellに接着します。
エポキシは90分硬化開始のEボンドを用います。接着用のためレジン品質が悪くて黄色い色をしていますが特に問題はありません。エポキシは低温では粘度が高く攪拌や塗布がやりにくいので、粘度を下げるため50~60 度に加熱します。作業が夏場なら30度以上の気温になるため特に加熱せずとも低粘度で作業ができますが、60度程度に加熱した方が遥かに流動性が良くなってカーボン繊維に浸透しやすくなります。。
エポキシは恒温プレートで加熱攪拌して接着部分に流し込む。カーボン繊維を挟んで上面Shellとストリンガーが完全に接着されるよう必要十分な量を攪拌して流し込む。
エポキシを適量注入し、Shellとクロス及びストリンガーを接着しますが、カーボンクロスはなるべくストリンガーの垂直材周りを抱き込むようにしておきます。この部分のカーボンクロスに浸透したエポキシがストリンガーの上下材を強固に接合する役目を担います。
ストリンガーを上面Shellに接着したら内部に発泡ウレタンを充填します。ウレタンフォームは注入後、堆積が2倍以上に膨張しますから注入したら開口部を蓋してなるべく内部の隅々までフォームが浸透するようにします。
建屋外壁の隙間埋めに使用しているウレタンフォーム。緑に着色されているが特に問題はない
上写真は注入後半日ほど置いた状態です。開口部は木の板を置いて重石してありましたが板を跳ね上げて外部にフォームが溢れています。溢れた部分は削り取り、表面はボックスを差し込めるサイズに開口します。この際、内部に隙間があるようなら、エポキシ注入の際その隙間よりエポキシが流れ出るので隙間が無いよう更にウレタンを注入します。
Shell開口部の周辺にはカーボンクロスを張るので、貼付け部のシェル表面は200番程のペーパーで表面をこすってエポキシ接着しやすくしておきます。
Fin底面の形状に合わせてルータービットでフォームの内部をくり抜きます。くり抜くサイズはなるべく正確にフィン底面が収まる大きさにしますが、ストリンガーの周辺はフォームを削り取ってエポキシが直接ストリンガーに接着するようにします。
フォームの開削部にエポキシを流し込みボックスで蓋をして接着するためフォームの表面を押し固めてなるべく凹凸や穴のない状態にする。
ボックスの接着強度を確保するのはストリンガーとの接着面及び底面Shellとの接着面であり、フォームの表面にどれだけ接着剤が付着しても接着強度は出ないためフォームの開削部はボックスとの隙間がなるべく生じないように整形します。
FinBoxを当ててみて、多少浮き上がる程度に削り込んでおきます。このほうが接着剤を注入した際に接着剤を細部にまで浸透させることができます。
穴の整形が終わったらストリンガーの周囲にカーボンクロスを当て、エポキシを流し込みます。繊維の内部にエポキシが浸透して固結すると強度と弾性が一段と高まるため、カーボンクロスを挟むとエポキシのみ注入するよりも遥かに強度が出ます。
ストリンガーとシェルでボックスを支えるからストリンガーとシェルが密着して接着されるようにクロスを差し込みここにエポキシを充填する。
エポキシはストリンガーを固定したときと同じ90分硬化開始のEボンドで高温プレートで60°前後に加熱撹拌してから適量を内部に塗布しクロスに十分な量浸透させたらボックス側の接合面にも塗布してボックスで蓋をします。
エポキシの注入量は多い目にして、ボックスを挿入すると浮き上がりますが表面を梱包用テープで覆った上からバイスで挟んでボックスをShell表面と水平になるまで押し込みます。余った接着剤はShellとフォームの隙間に浸透して強度の確保が期待できます。
フラットに沈んだら板を当ててボトム面が平面になるよう挟み込んで放置し硬化させる。
一日ほど置いてエポキシが完全に硬化したら表面を細目のディスクサンダーで少し研磨し余分に溢れ出た接着剤を削り落とし全体にShellの表面と同じレベルになるよう研磨します。
表面をサンディングしたらShellの接合面を補強するためカーボンクロスをボックスの周辺を覆うように切り出し接着する。接着剤か入り込まないようFinBoxの開口部と締付けネジ部にはテーピングして蓋をしておく
クロスの当たるボトム面に接着剤を塗布してクロスを張り付け、張ったクロスの上からも接着剤を塗り広げでクロスが完全に接着層に沈み込むようにします。
クロスがエポキシに馴染んだら、その上から梱包用テープで表面を覆います。
最後はその上から板を当てて表面が平らになるようバイスクリップで挟み込み硬化させます。
エポキシが固着したらテープを剥がし、低粘度のオイルスプレーを塗布して表面に残ったテープの糊を取り除く。
最後は表面を平滑に研磨すれば完成。飛び出した部分をデイスクサンダーで荒削りし、最後はプレーナーで平面に仕上げる。
多少気泡とかが残っていても無理に削り込まず手で触ってほぼ平面に仕上がっておれば研磨は終了します。
Shellの表面とは多少段差が生じますが厚みのある方が強度が確保できますし、ボードのライディングにはほとんど影響しません。
最後にFinBox開口部を覆っておいたマスキングテープを切り取ります。
以上でFinBoxの修理は完成です。強度重視で見栄えは悪いですがボックスの固定強度は極めて高く最早簡単にはボックスが破損することは無いと思えます。