AVアンプ:NEC AV-300PRO 修理
40年近く前のAVアンプの修理です。ビデオ入力6系統、ビデオ出力3系統、オーディオ入力6系統、オーディオ出力3系統の入出力を備えアナログテレビの時代には、ほぼ全入出力に機材を繋いで使用していたものです。
症状
テレビがデジタルに変わり、ビデオスイッチャーの機能を利用しなくなった後も、ハイパワーのサラウンドアンプとしてCDやMP4プレーヤーを接続して楽しんでいましたが、サラウンドのモードによってL出力が歪み始め、そのうちにL・Rとも正常に音声が出なくなりました。
対応策
NETに図面が上がってないか検索しましたが、流石にチャイナのサイトでもこんなレアなアナログアンプの回路図など見当たりません。幸い回路は単層のプリント基板で部品も単純なパーツが殆ですから、基板から回路図が起こせそうです。やむなく、手間がかかってもまずある程度は回路構成を調べてから修理にかかることにしました。
故障はAVスイッチャーではなく、音声のモード切り替えによって音声信号のみに発生しています。このことから故障箇所はAVスイッチャーによって入力が選択された後、音声信号がサラウンドモードに応じて加減算される辺りの回路にあると見当がつきます。そこでまず音声入力回路からたどってモード切り替え回路を探ります。
回路図作成のため音声回路の入力端子から音声信号の回路を追跡することとしました。ビデオ回路の音声入出力が背面の端子群中段にあるため、この部分の基板を外して両面の写真撮影をし、PC上にコピーして回路を起こして追いかけてゆきます。下がその部分の回路基板実装面です。
下がそのプリント面に信号系統を書き入れていった実体図です。上端より入った音声信号はLC7821アナログスイッチで選択された後,プリアンプM5218とアナログスイッチLC4966を経て最終的に1系統の音声信号のみ選択されて上部にあるサラウンド基板に引き継がれます。
プリントパターンと部品配置から起こした信号系統図は以下のようです。この基板部分ではサラウンド信号の選択は行われていないので、問題箇所はこの後段にあるサラウンド基板のようです。目視観察でも問題点は見つかりません。
この基板はアンプの中でも最も大きく、回路も複雑そうに見えますが、よく眺めているとアナログスイッチLC4699など多くが同じチップで構成されており、右側はアンプと見られる同種の回路構成ですから、時間さえかければ回路の把握はさほど困難ではなさそうです。
回路中には幾つかサラウンド系の専用ICが見られますが、これも入出力がハッキリしているので、回路を起す上では特に問題にはなりませんが、故障と関係する可能性があるので回路周りは少し詳しく調べました。サラウンド絡みの要素は以下のものです。
特にLA2770ドルビーサラウンドプロセッサーは電源の供給が特殊な形態をしており上に詳しく調べました。後に電源供給して電圧測定も行いましたが特に問題は見られません。
だいぶ手間がかかりましたがなんとかサラウンド基板の音声信号の流れを掴むことが出来ました。目視ではこの基板にも問題点は見つかりませんが、ここまでわかれば後は基板を組み込んで入力信号を送り込み音声信号のチェックをかけてゆけば不良箇所が分かります。
上がサラウンド基板の信号系統図です。未調査の細部もありますが信号の流れから回路動作の想像はつきます。
次はプリント基板を回路に戻し、100Vを通電して動作電圧のチェックを行います。ICの電源供給端子は決まっていますから、まず基板のICに正常に電源供給されているかチェックします。目視では問題なくとも、コネクタの接触不良やプリント配線の亀裂、ジャンパー線の接触不良等で正常な電源が供給されていないことも考えられます。
上がサラウンド基板上のICの供給電圧で特に問題は見られませんでした。備考欄にあるIC 16~20の異常はその後のチェックで分かったことです。次に音声入力端子より音声信号を送り込み各部の出力レベルをチェックしてゆきます。増幅回路はアンプ最終段ですから、このあたりではほぼ同レベルで入出力が生じるはずです。アナログスイッチ等の動作レベルは最高でも0.5V P-P程度ですから0.2V P-Pほどの正弦波を入力して各系統の出力をチェックしてゆきます。
チェックしてみるとL・Rの信号母線までは正常に出力がありますが、アナログスイッチを通ったIC21 の加算器入力がうまく現れません。ことにIC18をくぐった後のL・R信号が駄目です。
ICの電源電圧は正常でしたからサラウンドモードに対するLC4966のアナログポートをON・OFFするコントロール電圧を測ってみました。下図のようにモードに応じてコントロール電圧は正常に変化してポートをON・OFFしているようです。この過程でこれらのアナログスイッチICの表面温度が異状に高いのが分かりました。
素子温度のチェックは赤外線モニターがあれば楽にできるので、通電当初にやるべきなのですが、なかなか理想通りには進められないものです。コントロール信号が正常に入力されている以上IC18 LC4966 の破損はまず確実なため取り外してテスターを入れてみましたが、無電圧状態でも入出力ポートが導通している状態、明らかに破損しています。
IC18を取り外して再度通電して動作確認しましたが、他のICの温度は正常に戻りIC18以外の選択信号も各出力ポートへ正常に出力されます。どうやら破損したIC18よりブランチされた他のアナログスイッチに電圧が流れ込み異状に温度が上がった様子です。
問題は、はるか昔に生産されていたSANYO製と思しきICが今日に手に入るのかどうか、これは甚だ不安な点で実際ネットに当たってみてもテーターシートは見つかりますが互換品も現在は存在しません。電源はオペアンプ用の正負15Vですから40Vほどの電源耐圧が必要です。
現用品で検索していたらANALOG DEVICESのADG212AKZなる製品が電源電圧及びコントロール電圧とも互換性があることが分かりました。ただしピン配列が違うためピンの変換ボードを作って取り付けねばなりません。高密度実装の現今の回路では困難な作業ですが16ピンICの世界であれば穴開き基板上で簡単に互換配線出来るので助かります。
上が互換ボードを制作してIC18に替わって実装したものです。扱う周波数が音声帯域と低く配線が延長してもまず問題は生じません。ただICソケットの上に互換基板を乗せるので上に飛び出しますが基板上部には十分なスペースがあるため既存回路との干渉もありません。
この状態で基板を組み込み動作確認をしたところ完全に復旧したことが分かりました。あとは機械式ボリュームの摺動部を洗浄して接点復活剤を塗布し、ピンジャック類も洗浄して修理は完了しました。