私は日頃から中華製品のコストパフォーマンスに惹かれて、日常的に中華通販を利用します。大抵は中国メーカー名の入った商品を買うためか、さほど不快な目に合うことはありませんが、時に無銘でしかも馬鹿に安いと云ったいかにも怪しげで"中華品質"と揶揄されそうな商品に手を出すこともあります。
この手の品は規格外品か、商品設計そのものがお粗末で使用に耐えなかったりするゴミ商品のことも多いのですが、時にはまともな商品が投げ売りされていたり、少し手直ししてやれば十分実用になる商品であったりするため値段に惹かれてついつい手を出して買ってしまうこともあります。
品質不良の可能性を覚悟で手を出すので、少々のことでは驚きませんが時にはあまりにも酷い商品でどうにも開いた口が塞がらないケースもあります。
今回は中華通販で600円台で売られていたドリルビット研磨器で、同じ商品が他の店では1100円前後で売られていることから見て、いかにも怪しいと思いつつ改造できそうな気がして買い入れたものです。
唯のプラスティック製成形品の筐体に砥石の軸が組み込まれている様子から、多分回転させばすぐ軸受が駄目になって使い物にならなくなるのは目に見えていますが、砥石に小型のダイヤモンドデイスクを使っているところが気に入って、軸受を改造し直せば案外ものになるのではないかと思ったものです。
さて送られてきた品が、果たしてまともに使えるものかどうか。砥石の軸を持って回してみると中でガリガリひっかくような音。もちろんこの状態では使い物になりませんが、こんなことに驚いていたのでは怪しげな中華製品は買えません。
構造は甚だ簡単で直角に配置された2つの砥石の軸をプラ製かさ歯車で繋いで回すだけですが、ひっかき音は歯車の噛み合いが悪いと云ったものでもない。ネジを外して中を確認すると原因ははっきりしました。
非駆動軸側の軸の取付位置がズレているためプラ製の歯車がケースを擦っているのです。プラの筐体に開けられた軸穴がズレている以上この商品は使い物になりません。もちろんこんな不良であれば商品の検品の際すぐわかりますから、これは明らかに不良と分かったうえで箱詰めして販売している悪質なケースで本来なら返品交換もしくは返金の対象となるわけですが、チャイナ販売・発送の商品の場合面倒なのでそのままになるケースが多く、それを当て込んだ販売と思われます。
軸受はプラ筐体にメタルがはめ込んでありますが、一滴の油気もないので、軸のズレがなかったとしても、そのまま使っておれば軸と軸受の摩擦熱で軸受周りのプラが溶けて直に使い物にならなくなったでしょう。もっとも値段を考えれば耐久性などは考慮されていない商品なのでこの辺りは当然のことかもしれません。
しかし私の場合、購入当初から、この筐体にベアリングを組み込んでやろうと考えていたので、この程度の不具合は想定の内で、実際この程度のことで腹を立てたり驚いていたのでは、安価な中華商品は買えないのです。
軸径は5mmなので手元にある内径5mm外径16mmのミニチュアベアリング625ZZをプラ筐体に組み込んで軸受の補強を行います。ベアリングケースを作って嵌め込むのが手順でしょうがそこまでやるほどの品でもありません。
内輪が筐体と干渉しないように軸貫通部周囲の筐体を0.3mmほど研削しておいて軸にベアリングを通しベアリングの外輪を直接プラ筐体にエポキシ接着剤で貼り付けます。
非駆動側の軸受は軸先端の軸受との位置ズレがあるので、軸の傾き具合からズレ具合を見積もりその分ベアリングをずらして筐体に接着します。
よく見ると下部の軸受のプラ筐体センターより、埋め込まれた金属スリーブの位置が、確かに軸の傾きから見積もられる方向にズレて付けられています。
筐体の成形は正確だと見て軸受内縁と筐体との距離の最大・最小値が4.3mmと3.7mmであることから軸センターの0.3mmのズレがあると見て、軸センターをこのズレの分だけずらして、625ZZの外径16mm・厚み5mm分ケースを削り込みます。
16mmを研削できるビットがないため、面倒ですがロータリーテーブルに乗せて芯出ししてから偏心させてベアリング外径16mmを深さ5mmで削ります。
ベアリング内輪の底面に対する当たりを避けるため底面も軸心を中心に9.5mmの円内を0.3mm掘り下げておきます。削れたらベアリングを差し込みしっかり固定できれば良しです。
後は筐体に組み込んでみて周囲との干渉がなければベアリング外輪を筐体にエポキシ接着します。ベアリングを貼り付けたらかなり接着剤が余ったので、思い立って軸先端部分のスリーブ周辺にも流して補強しました。
エポキシで成形プラのベアリングを貼り付けたらかなり接着剤が余ったので、思い立って軸先端部分のスリーブ周辺にも流して補強しました。エポキシは成形プラの樹脂よりも熱耐性が高く強度もあるので多少なりとも補強になりそうです。
ただ気づくのが遅かったのでエポキシの硬化が進んでいて綺麗に流動してくれません。仕方がないので表面からセロテープで覆って指先で抑え込みなんとかスリーブ周りへ固着させました。
固まったら軸穴に詰まった樹脂をドリルで浚えます。軸受は2.0mmのビットで合うようです。
どうも、固まりかけたエポキシを無理やり貼り付けたため筐体との接着が今一つのようで、多分このままではエポキシが直に剥離しそうなので接着層の間隙に低濃度の瞬間接着剤を流して固めておきます。
固まったら軸受のメタルにグリス注油、プラ歯車の噛合部分には摩擦を減らす為にシリコンリブを吹き付け組立、手で回してみてケースとの干渉なしにスムーズに廻るようなら一応完成となります。
手っ取り早い動力として充電ドリルに繋いで回してみましたが、本体、ドリルとも満足な固定の出来ない状態ではいかにも使いづらく、このままではとても使用できるものではありませんから、やはり専用のモーターを接続してしっかり固定できる専用の筐体に収容して初めて使えるものになりそうです。
まずは、今回の怪しげなドリルビット研磨器の改造はこれでお終いとしておきます。