分科会③
読む営みを拡張する読書・マルチモーダルテクストの可能性
読む営みを拡張する読書・マルチモーダルテクストの可能性
読解と表現をつなぐマルチモーダルアプローチの試み
—単元「伝統工芸のよさを伝えよう」を中心として—
髙木麻里(守口市立守口小学校)
学習の中心として扱った「伝統工芸のよさを伝えよう」は、「世界にほこる和紙」の複合単元である。「世界にほこる和紙」で読み取った、和紙の良さを伝える筆者の書き方の工夫を使って、児童が実際に伝統工芸のよさを伝えるリーフレットを作る活動を行った。児童が興味を持ったものについて調べ、よいと思ったところを中心にまとめていく。その過程で重視したのは、リーフレットの中に使用する写真とその選択の意図である。リーフレットというメディアの特徴を理解し、必要な情報を選択して、適切な写真と組み合わせ、その伝統工芸品の「みりょく」が伝わる作品を仕上げることを目標とし、学習の最後には完成した作品を交流し、相互評価することを取り入れた。
児童がリーフレットを書くための事前学習として扱った「世界にほこる和紙」は、多くの人に和紙のよさを知ってもらい、使ってほしいという筆者の思いが、双括型で述べられた文章である。「初め」「中」「終わり」の構成で、「初め」と「終わり」の部分に、筆者の思いが表現を変えて繰り返されている。「中」の部分では、「やぶれにくく長持ちすること」と「気持ちを表現する方法であること」の二つの観点から和紙のよさについて述べられている。一読すれば、ほとんどの人が和紙に魅力を感じ、使ってみたいという気持ちにさせられる文章である。
この「世界にほこる和紙」の書きぶりをなぞりながら、読む人に「その伝統工芸品を使ってみたい」と思わせるリーフレットを目標とした。児童がどのように教材文を読み、写真と文章の繋がりを意識して、テクストを創作したのか。本実践報告では、リーフレットの創作に至るまでの学習の過程や、リーフレットに使用させた写真の選択の意図、また、児童の創作したリーフレットそのものや交流の記録から見えてきたものについての報告を行いたい。
読み深め、読み広げる並行・発展読書単元の実践
—「かもとりごんべえ」(小二)/「ヒロシマのうた」(小六)を題材に—
小山 梓(茨木市立中津小学校/現任校 茨木市立山手台小学校)
本発表は、子どもたちが複数の図書と関わりながら、物語の面白さや背景そして情報に触れられる機会を多く持つことができるように、図書を活用した授業展開を行った実践についてお話をする内容である。
具体的には『かもとりごんべえ』を題材にした小学2年の国語科、広島の原爆の様々な物語や詩、記録を題材にした小学6年の国語科の発展学習についての発表を行う。
小学2年『かもとりごんべえ』の授業では8種類の『かもとりごんべえ』を集めて、それぞれの構造を比較しながら起承転結の違いを確認し、同じタイトルの物語でも再話者によってそれぞれ異なる物語の展開があることをクラス全体での共有を行った。また授業以外でも公共図書館・学校図書館等を活用して一定期間たくさんの昔話の図書を収集し、学年の廊下にブックトラックに並べて昔話の様々な物語に触れられるような環境を整えた内容についての紹介となる。
小学6年「広島の原爆に関する読み広げ」は、基本学習となった教科書の『ヒロシマのうた』が原爆についての体験を元にしたリアルな状況が伝わる物語であり、また広島は修学旅行で訪れた地であることから、子どもたちが描かれた内容を具体的なイメージと関連がつけやすいということで発展学習の題材となった。
授業の展開としては、まず広島の原爆に関わる物語や語り伝えの図書を教員が集めて子どもたちが同じ出来事をそれぞれの立場、場所、表現方法を並列して接する機会を設けた。
次に子どもたちは各自それぞれ自分の読んだ図書の登場人物の生死や場所、あらすじ、感想を「紹介カード」に記入し、それを広島の地図上の内容の舞台になる地域に印をつけて、図書のつながりが視覚的に把握しやすくなるようにクラス全体で「広島の物語」の地図の作成を行った、ということが一連の内容となる。
発表では上記の事柄について、事前の準備や授業の流れ、子どもたちの反応等について具体例を交えながら話を行う。