日本華南学会について

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日本華南学会設立呼びかけ文

日本におけるアジア研究とりわけ中国研究は旺盛である。中国の各地域にかんする研究も進展している。東北地域、北京・天津を中心とする華北地域、上海を中心とする華東地域などについては、既に多彩な研究がある。それに比べ、華南地域は手薄であったといえる。重厚な実証研究はいくつかあるので、専門分野間・下位地域間・時代間をまとめる糸が弱かったという方が正確であろう。

華南とはどこか。この問いに明確に答えるのは難しい。

多くの人は、香港・マカオ・台湾・広東省および福建省を連想するであろう。また、ある人は江西省・湖南省・広西チワン族自治区・海南省・四川省・貴州省・雲南省を華南に含めるかもしれない。

わたくしたちの学会では、「華南」という地域を固定して考えないこととしたい。理由は二つある。

第一に、「華南」ということばがもたらすイメージは一人ひとりの人間の生活史・研究史・精神史にかかわる。わたくしたちは認識の統一よりも多様性を大切にしたい。

第二に、何を目的とするかによって、「方法としての華南」は異なってあたりまえである。環境に依存した農漁業や疫学の分野であれば、生態系と気候に基づく区分が採られるだろう。人の移動や貿易のネットワークを解明したいのであれば、大陸部東南アジアの北部は「華南」に含めてもよいであろう。

華南は中華圏域の南端であると同時に、東南アジア圏域の北端でもあり、アジア太平洋地域の十字路である。これは地理的な配置にのみ着目しているわけではない。歴史的に形成されたこの地域の「機能」が重要なのである。

華南を抜きにして中国は理解できず、華南を「方法」とした世界理解は有効である。専門分野の垣根をとりはらった華南研究者の結集をここに呼びかけたい。

(2011年9月18日)