第58回研究大会実施委員会委員長
第30期日本文化人類学会会長
真島 一郎
日本文化人類学会第58回研究大会は、2024年6月に北海道大学を会場として開催が予定されております。第58回大会では、大会開催事務局の北海道大学アイヌ・先住民研究センター並びに北海道大学文学研究院文化人類学研究室に所属する会員の方々に研究大会開催委員会を構成していただき、これを理事会の支援委員会がサポートする体制のもと、次回大会も充実した研究発表・研究交流の機会となるよう、鋭意努力いたしております。
本年2023年に県立広島大学で開催された第57回研究大会と同じく、第58回大会も、対面を基本とした開催を予定しています。また、第58回大会は、前回大会の開催方式を引き継いで、今後の研究大会のあり方をうらなう重要な取り組みを続けてまいります。
第一に、前回大会では、大会参加者の情報保障について初の試みに着手し、大会開催校並びに専門家のサポートを仰ぎながら態勢の整備に努めました。学会予算が逼迫状態にあることはかねてお伝えしてきたとおりですが、視聴覚にハンディキャップをもつ大会参加者へむけた情報保障体制の確立は、私たち学会員すべてにとっての課題であることにかわりありません。次回第58回大会でも、ダイバーシティ推進に可能なかぎり配慮する方針で臨みたく考えております。
第二に、学会では昨年度来、倫理委員会を中心に、先住民やマイノリティの権利が十全に保障されるような研究倫理のあり方を検討してまいりました。本年の第57回大会でも、特別シンポジウム「『アイヌ民族に関する研究倫理指針(案)』から考える、文化人類学の過去と未来にむけての展望中間報告」を開催し、会員の皆様との継続的な意見交換に努めてきたところです。次回第58回大会は、開催地が北海道であることの機会を活かし、従前の学術発表に加えた新たな試みとして、アイヌ文化に関する種々のセミナーやエクスカーションを開催校企画として実現する方向で検討しております。会員の皆様におかれましては、一連の開催校企画にふるってご参加のうえ、アイヌ文化をめぐる多様性や今日的な問題などを再考していただければと願っております。
第三に、第58回大会では、前回大会に引き続き、世代を越えた研究交流をいっそう活性化する場として、従来の「懇親会」よりも気軽に参加できる形式での「イブニング・セッション」の開催を予定しています。
他方、会員の皆様には、第58回研究大会の運営面との関わりで、心苦しいお願いをしなければなりません。第1回サーキュラーでもお伝えしたとおり、近年学術大会の開催に際しては、開催校の求める施設使用料、冷暖房費、清掃費等の規定額が上昇し、補助雇用の人件費や各種システム利用料も合わせて高騰しておりますため、次回第58回大会では、大会参加費の値上げや要旨登録料の導入等、大会実施委員会として苦渋の決断を余儀なくされました。このような状況下でも、若手研究者の大会参加を促進するため、学会に長く貢献されてきた通常会員の皆様に相対的なご負担をおかけすることを、なにとぞご理解くださいますようお願いします。学会の重要な活動基盤である研究大会の参加費用について、皆様に斯様なご負担を強いる結果となりましたことを、重ねて心よりお詫び申し上げます。
文化人類学をはじめとする人文社会系の大学・研究機関は、近年いっそう厳しい状況に置かれておりますが、そうであればこそ、本学会の研究大会が会員の皆様にとってこれまで以上に意義のある研究発表・研究交流の場となりますことを心から願っております。