音声通信とデータ通信の迅速性と正確度に関する考察
音声通信とデータ通信の迅速性と正確度に関する考察
伊勢赤十字病院 竹野祐輔
同上 説田守道
三重大学医学部附属病院 行光昌宏
三重県厚生連鈴鹿中央総合病院 向井慎治
済生会松阪総合病院 茂木健人
三重北医療センターいなべ総合病院 伊藤広樹
国立病院機構三重中央医療センター 鬼頭大輔
三重県立総合医療センター 寺西良太
松阪市民病院 谷口健太郎
背景
「災害対応に共通する失敗は情報伝達の失敗である」 ロブ・ラッセル
大規模災害時を想定した訓練において発生する情報の伝達の失敗をどうしたら減らせるか。
目的
(仮説)通信手段の効率的な利用により、情報の伝達速度の向上と、伝達精度を高めることができるのではないか。
災害時において迅速・精確に通信を行う通信手段の組み合わせを明らかにする。
方法
①音声通信のみ、②音声通信とデータ通信併用、③データ通信メインで送信連絡を音声通話 3通りの方法で情報を伝達し、所要時間と錯誤数を計測、比較した。
参加人数:のべ75人
参加対象:一般事務職員、DMAT、救護班要員
実施回数:15回 付与情報数:8〜15例
結果
1、伝達に要した時間と錯誤数から
(1)「③データ通信で送信した事実を音声通信で知らせる場合」が、最も所要時間短く、伝達内容の錯誤が少なかった。
(2)「①音声通信のみでの伝達の場合」が錯誤が最も多い。
2、被験者の行動より
「②音声通信とデータ通信が混在する場合」は、受信者がデータ通信による情報伝達を軽視する行動がしばしばみられた。
通信の方法別の所要時間・錯誤数
<各回実績>
通信の方法別の所要時間・錯誤数
<通信区分別平均>
考察
1、伝達に要した時間と錯誤数から
(1)情報を正確に伝えることのできるデータ通信の弱点である脆弱な能動性が、音声通話によって補完できたためか。
(2)音声通信は最も簡便ではあるが、伝達する内容がより複雑となり、項目が増加するに伴い伝達ミスが増加するのではないか。
2、被験者の行動より
受信者に音声通信に頼る心理的バイアスが働くため、データ通信による情報伝達が軽視され、結果的に情報伝達が遅延すると考えられる。
結論
データ通信で送信した事実を音声通信で知らせる方法が最も迅速かつ効率的。
提言
主たる情報の伝達手段をデータ送信とし、その事実を音声通話によって伝達する2手段の組み合わせを、通信の原則とする。
これも簡単に言うと、同じ情報を音声通信とデータ通信で行わせると、自由に音声通信ができるとむしろ伝達に時間がかかり、誤りが多かったという結果です。
情報をデータ通信で送り、データを送ったという情報のみを音声で通知する方法が最も効率が良かったのです。
おそらく皆さんの直感とは異なる結果ではないでしょうか。