発表者:黄 文蓮
概要: メタファーとイメージスキーマの関連性はどう繋がるのか、日中の「上下」に関するメタファーとイメージスキーマの研究はどういう方法・分析で結果を示すかを検討することを目的にレビューしました。 森山(2018)は日本語の「あがる・さがる」を対象に、lakoff&Johson(1980)の「概念メタファー」を理論的枠組みとして、「あがる・さがる」の意味項目を分類した。具体的な方法は、BCCWJコパースから例文を抽出して、Lakoff and Johnson、Taylorをもとに、鐘・井上の枠組みの再構築を行う。結果は「空間、出現、時間、数量、評価、完了、支配」7つの意味範疇を分類しました。「あがる・さがる」は非対称性があることを明らかにした。 Chang(2019)は日本語の中国語の“V上”(shang)を対象に、Langacker (1987)の「イメージスキーマ」を理論的枠組みとして、“V上”(shang)の語義を考察した。具体的な方法は、CCLコパースから例文を抽出して、例文の分析と合わせて、イメージスキーマによって意味づけを説明する。イメージスキーマ変容的な関係があって、“V上”(shang)の収束的意味と結果的意味は、イメージスキーマを用いた人の概念化において、注意の焦点が変化した結果として生じることを明らかにした。 パリハワダナet al.(2022)は、日本語の形式名詞「うち」を対象に、Lakoff&Johnson(1980)「メタファー、イメージスキーマ」とLangacker(2008)「プロトタイプ、意味ネットワーク」を理論的枠組みとして、『広辞苑』の意味項目を参照、BCCWJから例文を抽出して、例文の分析と合わせて、イメージスキーマによって意味づけを説明する。「うち」のメタファーを介した意味拡張、及びイメージ・スキーマ変換またはメトニミーを通したスキーマ的意味の精緻化について考察した。「うち」の各意味項目の相互関係を意味ネットワークとして提示した。発表者:秦 慕君
概要: 個人が自分の体験などに基づいて内面化された価値観・考え方と集団の制度や規範に合わないこと(アンマッチ)によって,「自分は排除されている」と感じる状況になると疎外感が生じる.先行研究によれば,疎外感は具体的な他者がいなくても起きうる.そして,本研究において,個人が疎外感を自分の個別性としてポジティブに受け入れることを個別性の自覚とする.また,江角・庄司(2012)によると,自己肯定感が他者との比較ではなく,自分の価値基準にした自分は自分であっても大丈夫と定義される.それゆえ,本研究は疎外感を自覚することがありのままの自分を受け入れるとする,つまり,自己肯定感の概念で捉えられると主張する. 以上のことを踏まえ,本研究は疎外感を持つ人に対して,疎外感を自分の個別性として自覚する(=自己肯定感が高まる)と,疎外感が低下するかを検証する. そのため,本研究では,記憶想起前後,個人の疎外感と自己肯定感を測るために,疎外感尺度と自己肯定感尺度を用いて測定する.記憶想起の段階では,学校から今までに自分が体験した集団と関係がある重要な出来事ついての自由記述形式の質問紙を使用する.最後,記憶想起前後の比較の分析を行う. 今回のゼミでは,3月末にRP提出に向けのドラフトを皆さんに共有し議論していただければと思います.RPを修正するために,指摘やアドバイスをいただきたいと考えています.発表者:笠野 純基
概要: 人は、限られた事例から経験したことのない事例を含めて多様な仮説を生成することで不確実な環境に対処することができる。発達心理学において、人の語彙獲得はある状況において可能な仮説をすべて考慮しているのではなく、限られた事例から意味(仮説)を推論すると考えられている。しかしながら仮説生成の機構については明らかになっていない。 本研究の目的は、再帰的結合(Recursive Combination)を仮説生成(Hypotheses Generation)の機構としたときに生成される仮説の多様さに与える効果を明らかにすることである。再帰的結合とは物体や概念などの物事(要素)を組み合わせる方法の一種であり、特徴として要素同士の組み合わせからなる複合体を別の要素と同等に扱い(要素A)、複合体(要素A)を他の要素(要素B)に対して組み合わせることができる。研究仮説は再帰的結合により多様な仮説を生成することができると仮定する。研究仮説の検証は、被験者実験を行い、不確実な環境を調査するために仮説の生成対象には直接的な推測が難しい他者の意図理解を仮説として扱う。被験者には2つの操作条件を施すためにa.再帰的結合とb.複合体(要素A)に対して他の要素(要素B)を単純に結合していく非再帰的結合(2水準)で群分けする。2群間で生成された他者の意図理解(仮説)の多様さを統計的検定により比較するために、多様さの1つの指標として重複のない生成された仮説の総数(流暢性)を1要因2水準の対応のないt検定で分析する。発表者:笹森 なおみ
概要: 道徳的な場面において不作為の意思決定後にネガティブな結果が引き起こされたとき,「行動すればよかった」という後悔の感情が喚起され,その後の意思決定に影響を与える.行為をした場合と行為をしなかった場合に同じ危害を与えるとき,人が行為をしない不作為の方を選んでしまうことは不作為バイアスという(Spranca et al., 1991).Jumison et al. (2020) は,不作為による危害を含んだ道徳シナリオを用いて不作為バイアスを再現し,作為よりも不作為による危害の方が後悔の感情が大きいことを報告した. Pletti et al. (2016)は道徳ジレンマ課題実験と予測モデリングにより,後悔が道徳判断を予測したことを報告した.ここで,道徳ジレンマ課題とは,トロッコ問題の思考実験 (Thomson, 1985) の構造を基にしたシナリオ課題であり,人間の道徳の認知機構についての研究で用いられている(Greene et al, 2001).また,Pletti et al. (2016)の結果は,道徳ジレンマ課題において被験者は最も後悔の感情負荷が低い選択をしている可能性を示唆した.しかしながら,不作為の意思決定に後悔の感情が与える影響について統一的な見解はない. 本研究では,道徳的意思決定前に予期される後悔が存在することを示し,特に不作為の後悔が道徳的意思決定に影響することを示すために,道徳ジレンマ課題中のSCRの測定と作為と不作為の後悔について検証を行う.発表者:石森 宥佑
概要: 企業の経済活動とその社会的影響への関心が高まる中、企業の CSR 声明とその活動が矛盾するような企業偽善と呼ばれる企業の非倫理的な活動が問題視される。本研究では、偽善的企業を抑止し偽善をしない誠実な企業が適応的となる市場の条件を協力行動の進化の文脈により明らかにする。見知らぬ他者への協力行動を説明する間接互恵性を進化させる有効な概念として、評判による他者へのラベリングがある。評判概念の導入が偽善的企業の抑止に寄与しうるのかを、進化ゲームモデルを構築しシミュレーション実験により分析した。各企業は声明(社会的に良い声明を出すかどうか)と活動(社会的に良い活動を実施するかどうか)および利益率についての戦略をもつ。消費者は起業の評判に対する感度をもち、企業の評判と製品価格をもとに購入する製品を選択し、その結果が両者の利得に反映される。企業と消費者の行動履歴が評判として蓄積し、高い利得を得ている主体の戦略が模倣により広がる場合に、どのような戦略をとる企業の頻度が増加するのかについてシミュレーションにより分析した。その結果、偽善的な企業が市場を占めると消費者の企業の評判への感度が高まり製品価格が上昇し、そこに誠実 な企業が侵入し感度が低下することにより、誠実企業が定着できることがわかった。本研究の結果は、評判概念を導入して感度が高まることで協力的(被偽善的)市場が成立するのではなく、評判への感度が高い消費者が多いことが企業の偽善的な振る舞いを助⻑してしまうことを意味する。誠実な企業が進化するためには、企業の評判を重視するのではなく評判と製品の品質のバランスを重視する消費者が増加することの必要性を示唆している。発表者:松井 一樹
概要: 本研究では、思考習慣としての制度が社会に定着し実効性を持つために、他者に関するどのような認知メカニズムが影響するか見出すことを目指す。政策が制度として効果を発揮する政策効果メカニズムを検討するため、コロナ禍の外出自粛要請を例として、SNSインフルエンサーなど他者行動の影響を考慮したEBPM(Evidence Based Policy Making)向けの行動意思決定モデルを構築した。本モデルでは、他者の意図を再帰的に深く予測する意図スタンス(Dennet 1987)にもとづく認知メカニズムの影響を検討した。シミュレーション結果が東京都と岩手県での人流データと近似することを確認し、両県の振る舞いの違いが他者に対する思考の深さの分布の差異を反映していることを示唆した。制度の定着について地域ごとに他者に関する思考の深さを考慮する必要性を主張する。発表者:成 太俊
概要: 経営学において,予期せぬ出来事に柔軟に対処するための有望な答えとして即興(行動)という概念が台頭してきた.しかし,即興の研究は基本的にメタファー的な枠組みや,個人レベルかチームレベルの片方の概念的な枠組みに依存する.また,個人やグループの成果に注目し,個人の即興に影響しうるチーム相互作用プロセス(=チーム行動的統合と結束)はみられていない.これらに踏まえ,この研究はチームレベルの相互作用プロセスが個人の即興に及ぼすクロスレベルの影響を,情報システム開発領域における38プロジェクトのチームリーダーとメンバー138人のデータを用いて(=比喩的な次元から離脱),階層線形モデリング(HLM)を用いて明らかにする.著者らはチームの行動的統合と結束が個人の即興と正の相関があると仮説を立てた: 仮説1:チームの行動統合レベルが高いほど,個々のメンバーが発揮する即興のレベルが高くなる 仮説2:チームの結束レベルが高いほど,個々のメンバーが発揮する即興のレベルが高くなる 仮説3:チームの結束を高めると,チームの行動統合と個人の即興の間の正の関係が高まる 仮説検証の結果,仮説 1 と仮説 2 は支持された:行動的統合(coefficient = .40; p < .001),収束(coefficient = .29; p < .01),仮説3は部分的に支持された(coefficient = .27; p < .10).従って,クロスレベル効果(チームレベル→個人レベル)の存在が明らかになった.要するに,個人の即興は行動統合とチーム収束の両方に促進されることと,結束はチーム行動的統合が個人の即興に及ぼす影響をポジティブにモデレートすることがわかった. この論文は,チーム環境において,チームの属性が個人の即興行動への影響を調査している.自分の研究,すなわちチーム文脈に依存しない個人の即興の経験がその後の共創活動のチーム側面への影響の調査と異なるが,背景ストーリーの展開や2章の即興概念の整理の部分,および即興の度合いを調べる質問紙の部分が良い参考になると考えています.そのため,ゼミ1部で皆さんに共有し議論を行いたいと思います.発表者:大友 和幸
概要: 本研究では、新規な複合語が新規性と共通性を両立するメカニズムを解明するために、商標登録されている複合語について形式・意味の面から語形成を調査した。形式においては、出現数の推移を調査し、既存の構成語同士の結合によって、今までにはなかった複合語を構成することを確認した。意味においては、各語の出現回数でジニ係数を計算し、その語がどれだけ限定的な意味で使用されるかの定量的な検出を試みた。また、共起語の出現回数の違いを調査し、個々の構成語にはなく、語が結合したときに出現する創発的意味を検出した。それと共に、LDAを使用した意味検出の手法を提案し、創発的意味の検出をトピックごとに分けたうえでの意味分析を試みた。発表者:周 豪特
概要: 人工知能やロボットなどが人間の質問や要求に答えるだけではなく,人間の思考を刺激できるような対話ができれば,より人々の興味を引き人間との共創的な関係に貢献できるだろう.本研究は,新しい概念を生み出す概念融合という思考を元にしたロボットと人間の対話をデザインし,対話を通じたロボットへの印象や思考の刺激について探求した.対話後のアンケート回答を主成分分析した結果,思考力を持つロボットとの対話を通じて得る思考への動機づけを表す成分が抽出された.そして,概念の融合を促す対話,および,概念の共通点を見出すことを促す対話は,この成分で高い値を示すことを見出した.すなわち,これらの対話は人間の思考を喚起する効果があることを示した.発表者:笹森 なおみ
概要: 6歳から7歳の子供達は,景品を獲得するために短く待つか別の景品を獲得するためにより長い期間待つかどうかを決定した.短く待つことを選んだ子供たちは2個の飴を獲得したが,もしより長く待っていれば4個の飴を獲得できたことを示された.我々は,子供たちが待てなかった選択を後悔したかどうかを測定した.次の日,子供たちは同様の選択に直面した.一日目に短く待つことを選んだことを後悔した子供たちは,前回の選択を後悔していない子供たちよりも,二日目において欲求充足を遅らせる傾向があった.研究2において,知的能力および子供たちの2個の飴より4個の飴に対する選好をコントロールしながらこの発見を再現した.このことは,待てないという選択についての後悔の経験が,子供たちが再び同様の選択に直面したときに欲求充足を遅らせる手助けをすること示唆する.発表者:黄 文蓮
概要: イメージスキーマが認知構造の一部であり、人間の認知プロセスに重要な役割を果たす(Lakoff,1987)。イメージスキーマは、人間が持つ概念や構造化された知識の一種で、経験的に得られた知識が認知的なスキーマとして凝縮されたものである。イメージスキーマは、言語現象に対する理解を深めるために役に立つ。例えば、同じ単語でも異なる文脈で使われる場合に、イメージスキーマを用いることで、単語の意味がどのように変化するかを説明することができると思う。 ゼミでは日中同型多義語「上がる・上shang」について、例文を用いながらその意味項目のイメージスキーマについて議論していただけると幸いです。発表者:秦 慕君
概要: 創造的なアイデアは,記憶の中にある概念を柔軟に組換えで生まれると考えられる.行動学・神経科学においては,より多くの研究はエピソード記憶と発散的思考の関連性があると示されている.しかし,自伝的記憶の創造的発想への潜在的貢献については,ほとんど知られていない.本研究では,この問題に新たな視点を提供するために,超優れた自伝的記憶(HSAM)を持つ稀な個体群において,発散的・収束的創造的な思考の測定方法を評価した.HSAM群は一連の創造性テストに加えて,代替的利用課題(Alternative Uses Task),Consequences Task,遠隔連想課題(Remote Associates Task)を含む記憶の課題も実施した.その結果, HSAM群は対照群に比べて,自伝的出来事の想起に優れていたが,創造性指標に関しては群間の差が認められなかった.これらの発見は,HSAM患者では創造的思考に関連するエピソードを構築する過程が増強されないことを示唆している.おそらく,彼らは自伝的出来事の強化と検索に強迫的かつ狭義に集中しているためであろうと指摘した. この論文は,自分の実験デザインと関わると思います.自伝的記憶と創造性テストの実験手法の設計をするのに役立てればと思って,皆さんにこの論文を共有し,議論できれば幸いです.発表者:周 豪特
概要: 認知科学において、人間のインタラクションや共創を解明するアプローチされている。言語は人間の思考を表す一つの能力で、知的の本質を一端に示すことはできる。インタラクションにおいて、言語の表現の一つとして対話を通じてが思考を解明している。しかし、インタラクションにおいて、人間が対話のパターン、行われる思考が様々であり、共創に至るプロセスを解明するには困難である。近年では、チューリング・テストのように、機械を知的ようにし、対話で「知的」とはなにかを確かめている。すなわち、一つの性質を機械に表し、人間とのインタラクションで、共創の本質を一端的に解明することは可能であろう。 一方、社会の面で、機械を知的ようにし、人間の思考、働きなどの活動の支援をし、共創の場に至るポイントを探究している。情報社会の発展と共に、検索エンジンや機械翻訳など様々な場面で「原理はよくわからないけどうまく使える」人工知能(AI)が活用され、人間の知的な活動の一部として不可欠な一部になっている。また、人間社会では知識創造社会になり、人間の知的な能力を求めている。そのため、これからの社会ではAIとの知的な活動(共創)が頻繁になるだろう。 人間の知的な活動には創発が生じる場合がある。創発とは、組み合わせて作り出されたものが、組み合わせる前の要素群の単純な総和にとどまらない特性が生じることである。認知言語学の理論として提案された概念融合という思考は、創発的な認知プロセスであ。概念融合という思考は、認知上の操作であり、2つの概念スペース(入力)から情報を取り出し融合したスペースを作ることである.人間は対話の中で相手が話した内容を推論し理解するが、その対話過程でも概念融合による創発が生じると考えられている。 上記の概念融合思考を人間と機械の対話で実現し、人間と機械の共創から人間と知的な相手のインタラクションという共創を解明する。機械は人間のように思考することは困難でおり、現状では、open domainのような対話ではほぼ人間が主導権を持っている。従って、インタラクションにおいて、機械からの人間の思考を喚起することを強化する必要があり、機械から人間の思考を喚起することで知的な相手になることは可能で、共創を解明することが期待できる。 そこで、本研究では、創発を含む概念融合の喚起による人間と機械の対話で共創を解明する。具体的には、機械を共創における知的な対象として扱い、対話する際の思考をコントロール可能にする。概念融合という創発が生まれる可能性がある思考を対話で実現し、思考を喚起する対話と対話の効果の関係を解明する。その次、概念融合思考において、創発がでる要因を推測する。ミスマッチがある概念の構造、及び融合した概念の精緻化と対話の産物の関係か解明することで、共創において創発がでる条件を探究し、示す。発表者:藤原 正幸
概要: 人間のコミュニケーションは,身体運動や記号言語による相互作用など,最も広く議論されているテーマの1つである.本研究では これらの相互作用に関わる 大域的な神経活動を脳波計測に基づく神経同期の観点から調べることで,記号や身体動作を用いた人間のコミュニケーションの基盤となる神経機構を明らかにすることを目的としている.特に行動の調整や神経活動の位相同期現象に注目し,二者の記号的・身体的コミュニケーションの成立過程を行動と生理の両面から実証的に明らかにするため,2つのコミュニケーション課題による脳波計測実験を実施し,神経同期を解析した.その結果,2つのコミュニケーション課題から共通あるいは相違する脳部位の活動が観察された.また近年提案されている次世代型の神経質量・場モデルによる予備的な数値実験を実施し,コミュニケーションの神経活動についての数理モデル化の可能性について論じ考察した.以上の実験と考察から,本研究では,記号的・身体的コミュニケーションの大域的な神経システムの提示とそれを検証するための新たなフレームワークを提案を行った.発表者:山本 寛樹
概要:発達心理学では,視線コミュニケーションに関わる研究において,乳幼児と保育者の間の自由遊びという場面設定が広く用いられてきた.特に近年は,ウェアラブル型の視線計測装置を用いた乳幼児-保育者の同時視線計測が実施されており,自由遊び中,乳幼児が滅多に保育者の顔を注視しないことが明らかになっている.しかし,乳幼児ー保育者の二者間の自由遊びは,実世界で乳幼児が直面する場面の1つに過ぎない.複数の子を同時に抱えながら保育をすることは,ヒトの特徴であるにもかかわらず,他の子の存在によって社会的相互作用がどのように変化するのかは明らかにされていない. 本研究では,乳児が保育者の顔を注視する行動に関連しうる要素として,同じ環境にいる子の人数に着目した.複数の子がいる状況では,保育者はそれぞれの子に注意を分配する必要があり,各個体に十分なケアをすることが難しくなる.このような状況において,乳幼児はケアを求めて,より頻繁に保育者の顔を注視するかもしれない.この仮説を検討するため,本研究では,大阪府のこども園にて,2歳児と保育者の自由遊び場面の観察を実施した.その場にいる2歳児の人数を操作しつつ,保育者に装着したウェアラブル型視線計測装置の記録から,相互作用中の保育者および2歳児の注視行動を分析した.本ゼミでは,現在すすめている分析の経過報告をするとともに,今後のコーディング・解析方針について議論したい.発表者:成 太俊
概要: 組み合わせもの同士をさらに組み合わせることを繰り返す再帰的結合,それによってより多様な・複雑な作製物が生成可能である.しかし,その再帰的結合は即興的な作製行動①にみられるだけでなく,非即興的な作製行動②にもみられる.それぞれの場合の違いは何だろうか?より具体的に説明すると,チームによるアイデア生成を促進することが示唆された即興的な作製と再帰的結合は相乗効果があるか?この問いを明らかにすることが研究目的である. 一方,自分の研究では,なぜ即興的な作製と再帰的結合の相互作用の効果をみるのかという部分が論文を書くための理論的な説明はできていないのが現状である.そのため,今回のゼミの目的は,即興的な作製の基礎理論であるパパートの構築主義とヒトのモノづくりによくみられる再帰的結合の関連性を理論的に論じることである. 上記の部分の理論整理が行き詰まっていて,自分のなかではうまく整理できてないです.今回は構築主義やそれの派生元のピアジェの構成主義を説明し,皆様との議論を通じてその研究上の難点を解決できたら嬉しいです.最後に時間が余ったら,実験で参加者にレゴブロックの組み合わせ方法(=制約条件の説明)を説明する動画を共有し,修正意見をいただければと思います.発表者:笠野 純基
概要: 人間がどのように行動のための選択肢を生成するかについてはほとんど知られていない。(自ら)生成した行動の選択肢は行動を起こすために選択肢を決定する(意思決定)ことが必要である。意志決定の際に、ドーパミンが意思決定プロセスを調節する役割を担っていると言われている。本研究の目的は、選択肢生成におけるドーパミンの役割を明らかにすることである。さらにモチベーション(または無気力)が選択肢などに関連するかどうかも合わせて調査する。研究仮説は、ドーパミンが選択肢生成の流暢性(fluency)を向上させ、その選択肢の独自性(uniquenss)を高めるという特定の役割を担っている、と設定する。研究方法は、被験者を対象に混合計画で行い、6つの実験課題から仮説を検証する。独立変数はパーキンソン病患者(ドーパミン作動性投薬のオン・オフ)と健常者における薬理学的操作(ドーパミン抑制剤のオン・オフ)、従属変数は6つの実験課題から得られる経路の数などの実験データとする。実験方法は、実験参加者には4分間という制限時間の中で、垂直に並んだ2つの固定点の間に”できる限り多くの異なる経路を描く”ように教示し、タッチスクリーン上に描かせる(選択肢生成課題)。ドーパミンの効果は生成された経路の独自性(uniquenss、一つ一つ(自己の中で)異なる選択肢)と流動性(fluency、選択肢の数)の両方から評価する。独自性を定量化するために、経路のペア間の類似性(similarity)の指標を作成した。実験結果は、ドーパミンの主な効果は、選択肢を作成する(producing)流暢さを向上させることであるが、ドーパミンは与えられた流暢さに対して独自性をも独立して向上させることがわかった。本研究の結論として、6つの治験から、ドーパミンが意志決定プロセスに関与する重要な神経伝達物質であり、選択肢の生成を独自性-流動性スペクトルに沿って調節していることが示唆された。また提案した選択肢生成課題の能力(performance)を調べるために、3つの対照実験として動作の実行、行動の計画、生成された選択肢の中から選択、を行い選択肢生成課題には影響しないことも示された。発表者:黒川 瞬
概要:協力行動を、自分の適応度を下げて相手の適応度を上げる行動であると定義する。このとき、協力行動は、自分の適応度を下げる行動であるため、その存在は説明を要する。相手(複数のこともありえる)が協力者であるか非協力者であるかという情報に基づいて、関係を続けるか関係を打ち切るかを決める場合、協力者が協力者と出会う確率が、非協力者が協力者と出会う確率よりも大きくなりえ、その結果、協力行動の進化が起こりえることが、Zhang et al. (2016)により指摘されていた。それではどのような解散ルールの時に、協力が最も進化しえるのだろうか?Křivan & Cressman (2020)はこの問題に取り組み、2者間で関わる場合は、協力が最も進化する解散ルールはホモの(つまり、協力者のみ、もしくは、非協力者のみによって構成されている)ペアは関係が続きヘテロの(つまり、協力者と非協力者が混ざっている)ペアは関係が続かない解散ルールであることを示した。また、3者間以上で関わる場合は、協力行動の進化を最も促進する解散ルールは、関係が続く場合の関係が続く回数に依存して異なるものの、関係が続く場合の関係が続く回数がある閾値よりも大きいときは、ホモのグループは関係が続きヘテロのグループは関係が続かない解散ルールであることを示した。関係が続く場合の関係が続く回数がある閾値よりも大きいという条件はどれだけ厳しいだろうか?本研究では進化ゲーム理論を用いた数理解析を行う。その結果、関係が続く場合の関係が続く回数の閾値はグループサイズが大きいときはとても大きく、現実的な状況下では、例えばヒトといったグループサイズが大きい動物では、協力が最も進化する解散ルールは、ホモの時は関係が続きヘテロの場合は関係が続かない解散ルールではないことを明らかにする。また、協力者と非協力者が共存する内部平衡点の位置の計算により、協力の効率が高い場合は、協力者が寛容である場合に協力の初期進化が最も起きやすく、協力の効率が低い場合は、協力者が非寛容である場合に協力の初期進化が最も起きやすいことも明らかにする。発表者:Qingxi Lian
概要: 先行研究 (Degen & Tanenhaus, 2015) では、「some」の意味に対する人々の解釈を説明するために、制約に基づくフレームワークが提案されました。 彼女らは、会話中の手がかりが人々の理解を総合的に決定すると信じていました。 彼らの観点から、理解のプロセスを明確にするためには、このプロセスをサポートまたは妨げる具体的な手がかりを見つけなければなりません.私の研究は視覚的文脈に焦点を当てており、言語の理解に影響を与える可能性のある視覚的設定のタイプを理解しようとしています.発表者:周 豪特
概要:共創とはなにか、どう扱うかという問題は自分の研究として重要な概念なので、普通にいえば、共創は産物で判断される過程である。例え、活動に参加主体はインタラクションに通じて、産物を生成し、産物に創発があることで、共創に至る。しかし、人間は百科的な知識を持ち、様々な身体経験から持ち出し、産物の生成に役立てる。なので、産物に対する入力を推測は困難であり、産物と関係(組み合わせる前の要素群の単純な総和にとどまらない特性)で、創発だと判断することは難しい。 概念融合は思考のオペレーションで、概念融合という思考の過程で、共創に一体どんな役割を果たしているかを研究したいです。今回はプロセスで、共創を定義することについて議論し、研究目的と検討します。また、研究に関して、作業的なもののDemoをシェアしながら、人間とAIの共創を魅力を感じましょう。発表者:黄 文蓮
概要: 空間表現における日中の「上・下」に関する研究はどういう方法・分析で結果を示すかを検討することを目的にレビューしました。 空間認知は、人間の思考活動において重要な役割を担っている。Levinson(2003)によれば、空間認知は人間の思考の核心に位置するものである。 「上・下」の対照研究について、近年で認知意味論的な分析方法は注目される(呂2009;Feng2018)。この分析方法に対して、認知意味論の立場だけで(例えばイメージ・スキーマ理論)十分ではないという批判がある(Xu,2015)。 Xu(2015)は、空間表現の分析において、文化・機能性などの角度から分析することも必要と主張する。なぜなら、言語は、現実世界に対する人々の主観的な認識の結果であるため、その認識過程には文化的・社会的要因や話し手の主観的意図が含まれるはずである。 5本の先行研究の分析方法と結果を中心に紹介します。自分の研究の全体像のイメージを皆様に伝えると幸いです。発表者:藤原 正幸
概要: 本研究は,人間の記号的・身体的コミュニケーションの統一的な神経基盤について明らかにすることを目指している. 本発表では,現在修正中の博論の内容を中心に,2つの生体計測実験に加えて,新たに加筆中の神経モデル,の3つの主な研究について紹介する. 2つの生体計測実験では,大域的な脳波同期解析を行うことで,共通(あるいは相違)して活動する脳部位や周波数の特性を検討した.これらの結果として,両者に共通して活動する脳部位として右中央頭頂部,相違する部位は前頭部にあること,低周波数(シータ・アルファ)帯と高周波数(ガンマ)帯に特徴があることなどが示唆された.加えて,大域的な脳波同期現象のメカニズム理解のため,次世代型の神経質量・場モデルを導入したことで,神経細胞集団から脳部位までの同期解析を行うことを可能にした. これらの生体計測実験やモデルより,統一的な神経基盤の検証可能性とそれを含む新奇なフレームワークについて提示する. 発表練習は別の機会に設けていただけるとのことなので,本発表では自分の研究を紹介し,特に(博論に新たに1章として加筆している)神経モデルの説明や他との接続,分かりにくい点などについて議論していただけると幸いです.発表者:秦 慕君
概要: 疎外感とは「自分が排除されている」という心理状態である.先行研究によれば,創造的な人間は個別性が強く,独立性が高いと検証された.そして,創造性のある人は疎外されやすいと明らかにした.これに従って,本研究では,個別性の強い人は疎外されやすく,この様な人は創造性が高いと推測する.そして,個別性を自覚する場として自伝的記憶の実験を通して,疎外感を持つことが人を創造的にさせることについて明らかにすることを目的とする.そのため,個別性の自覚が疎外感を持つ人にとって,個人の創造性に影響を与えるという仮説を設定し,自伝的記憶の実験を通して,仮説検証を行う. 今回のゼミでは,RPのドラフトを皆さんに共有し議論していただければと思います.RP執筆のために,ロジックの部分だけではなく,実験のデザインに関しても,指摘やアドバイスをいただきたいと考えています.発表者:笹森 なおみ
概要: 道徳的な場面において不作為の意思決定後にネガティブな結果が引き起こされたとき,「行動すればよかった」という後悔の感情が喚起され,その後の意思決定に影響を与える.人間の道徳に関する認知機構は,道徳ジレンマ課題を用いて研究されており,Greene (2015) が道徳の二重過程理論を提唱している.二重過程理論は道徳判断の認知機構に留まるため,現実の一連の意思決定や後悔を説明できない.また,道徳判断の解釈とその認知機構に関しても批判がある.本研究では,人間の道徳的意思決定において不作為の場合にそれを後悔する認知プロセスを解明することを目的とする.具体的には,以下の二つの仮説を検証する.一つ目は,道徳ジレンマ課題では不作為の後悔は作為の後悔より大きく,不作為バイアスを後悔にも拡張できるという仮説である.二つ目は,後悔を予期して引き起こされる情動反応は,意思決定を予測することができるという仮説である.道徳は,人間の社会生活の多様な場面での意思決定に関係するため,不作為から後悔を喚起しその後の意思決定に利用する認知機構を解明することは社会的にも意義がある. 今回のゼミでは修士の研究計画書のドラフトを皆さんに共有します.背景やロジックについて議論できればと思います。方法に関してはまだまとめられていないので,アドバイスを頂ければと思います.発表者:濱田 昇吾
概要: 今回のゼミ2部は、作成するシステムについての検討です。 本研究では創造的な研究を支援するためのレコメンデーションシステムについての検討を行う。 文章の距離を文書ベクトルを用いて表し、既存の関係の距離を引用ネットワークなどを用い表す。この二つの距離から論文のレコメンドを行うことを考えている。 今回のゼミでは、文書ベクトルについて紹介するとともに、どのようなネットワークを作成するか、また二つの距離を用いたレコメンド方法について検討したいと考えています。発表者:周 豪特
概要: 科学を学ぶとき、学生は頻繁に複雑で直感に反する考えを理解しなければならない。 この理解の過程は困難であり、理解を整理するために、どのように概念的なつながりを作り出すかを検討されている。 この研究は3つの交錯する理論的な枠組み(断片化する知識、意味構築(センスメイキング)、概念融合)を用いて、2人の物理学部の学生が電圧、電位、電位エネルギーに関する概念を理解する事例を分析する。 学生が意味構築の様々な段階を経て、知識の断片化を解消するために、どのように概念融合を構築し、効果的に適用したかという過程が示された。この事例に基づいて、概念融合は意味構築のプロセスの認知メカニズムとする機能が発揮することができると主張された。 この研究を批判と参照しながら、自分の研究との関係や研究方向と検討したいと思います。発表者:清水あおぐ
概要: 今回のゼミ発表では、「なぜ、現代は特異な時代であるのか」という問いに答えるために、コミュニケーションとメディアの関係について人類進化の観点から概観する。具体的には、旧来のマスメディアと現代のソーシャルメディアを対象とした研究をレビューし、メディアとコミュニケーションの文化進化について検討したい。今回の原稿が修士論文の第1章になるため、全体的な流れが妥当であるのかを検討していただけると幸いです。発表者:秦 慕君
概要: 今回のゼミ2部発表は研究の実験手法についての検討となっています. 疎外感とは「自分が排除されている」という心理状態である.先行研究によれば,創造的な人間は個別性が強く,独立性が高いと検証された.そして,創造性のある人は疎外されやすいと明らかにした.これに従って,本研究では,個別性の強い人は疎外されやすく,この様な人は創造性が高いと推測して,これを研究対象として捉えている.本研究の仮説は,疎外感を持つことが,個人の個別性を自覚すれば,創造的にさせるということである. 宮下(1995)が「疎外感の受容度」という視点から,疎外感と創造性の関わりについて考察した.この研究で用いた疎外感尺度とTCT創造性検査を紹介します.そして,個人の物語を語る場を作る方法として,「回想法」,「共想法」と「自伝的記憶」三つの研究法を紹介します. 今回のゼミでは,以上の内容を紹介しながら,仮説の妥当性と修正及び実験手法につて議論していただければと思います.発表者:松井 一樹
概要: 本研究では、思考習慣としての制度が社会に定着し実効性を持つために、他者に関するどのような認知バイアスが影響するか見出すことを目指す。 政策が制度として効果を発揮する政策効果メカニズムを検討するため、コロナ禍の外出自粛要請を例として、SNSインフルエンサーなど他者行動の影響を考慮したEBPM向けの行動意思決定モデルを構築した。本モデルでは、他者の意図を再帰的に深く予測する意図スタンス(Dennet 1987=1996)にもとづく認知バイアスの影響を検討した。 シミュレーション結果が東京都と岩手県での人流データと近似することを確認し、両県の振る舞いの違いが他者に対する思考の深さの分布の差異を反映していることを示した。 本研究の結果は、制度の実効性を把握するための政策に対する人々の行動予測について、地域ごとに他者に関する認知バイアスを考慮することの必要性を示唆する。発表者:笹森 なおみ
概要: 道徳ジレンマとは,トロッコ問題のような構造を持つ哲学の思考課題であり,多数の命を救う代わりに少数の命を犠牲にすることを提示する.Greene et al.(2001)が非人身的・人身的シナリオに対する道徳判断の系統的違いを神経科学の面から調査して以来,道徳判断に関する研究が活発になった.Greene(2015)の提唱する道徳の二重過程理論によると,人間が多数のために少数を犠牲にする功利主義的判断を受け入れないのは,結果に依存して幸福を最大化する思考を行おうとする理性の働きに対して道徳規範に反応する情動が干渉するためである.逆に功利主義的判断が受け入れられる判断では,理性の働きに対し情動反応がそれほど強くない場合とされている.発表者:黒川 瞬
概要: 社会的ジレンマにおけるOpting out(条件付き離脱とも呼ばれる)に関する理論研究と実験研究は、非協力者に対してOpting outを用いるときのこの行動が、協力のレベルに対して与える効果に集中して調べていた。この強調の背後にある直観は、相手がもっと非協力をしていたら個体はもっと損をする社会的ジレンマの共通の特性に基づいていた。しかしながら、この論文は、協力的な行動を増やすという点において、他のopting out メカニズムがよりよいことを、明確に示す。事実、opting out付きの繰り返し多人数公共財ゲームの安定なナッシュ均衡を解析することによって、われわれの結果は、十分なラウンド数に対してこれらのグループが一緒にとどまる時、最良のopting out ruleは、ラウンド間で自発的に一緒にとどまるグループのみが同質である(グループが全員協力者か、全員非協力者か)グループであるようなopting out ruleであるという強い議論を与える。この結果は、非協力者が完全に協力する個体に対して非寛容であり(例えば協力者に対するよそもの嫌いの行動を非協力者が示す)、それゆえに、グループに協力者がいる時はいつだって解散する時に生じる。非協力者による同じ考えを持った個体と一緒にいたいという強い選好が、不均一なすべてのグループが1ラウンドの後に解散するという結果をもたらす。私はKřivan & Cressman (2020)のモデルとほとんど同じモデルを、より解析的に取り扱う論文執筆に取り組んでおり、その論文を査読者からのコメントを踏まえて現在改訂中です。改訂する際に考えなければならない点は以下の点です。1つ目。Křivan & Cressman (2020)が存在しながら、私の論文が存在しないといけない理由。2つ目。私のモデル(Křivan & Cressman (2020)のモデルとも言えなくない)の前提に対して査読者から懐疑的な目が向けられている状況であるが、その正当化。これらの点に関して一緒に考えてくれたら受理に近づくと思うので助かります。発表者:笠野 純基
概要: 人間は日常生活において、他者の意図(広義には心)など直接観察できない現象の背後にある何かを理解することができる。また精神病理学的な文脈においては、根拠がないにもかかわらず確信をもち、事実や論理によって訂正することができない主観的な信念(妄想)の研究が行われてきている。しかし両者を関連付けた妄想(現実的/非現実的なことについて区別せずにあれこれ頭の中でシミュレーションすること)の認知機構についての研究は少ないように思われる。また人間は言語を操り、人同士でコミュニケーションを図り、一方では概念(意味)などを生み出すことに利用していると考えられている。先行研究では、シミュレーション研究によって要素同士を再帰的に結合させる再帰的結合操作は、統語操作の前駆体として物体動作が多様なものを生成するひとつの進化の仮説として示唆されている。 本研究は生物としてのヒトの認知機構として妄想を対象に実験的研究を行う。そのためにも妄想を狭義の概念として他者の意図に限定し、他者意図における仮説の生成を全て妄想と定義する。本研究の目的は、他者意図は観察不可能な内部状態が表出したイメージを諸要素とし、要素同士を再帰的に結合することで他者の意図について多様な仮説の生成にどのような影響を与えるかを明らかにすることである。実験参加者を複数の群に分けて、群間を比較する実験を行う。実験仮説は1.再帰的結合操作により他者意図に関する仮説の生成(妄想)を促し、2.主観的確信度に従って現実にありえなさそうと思う仮説を評価するときに身体的情動反応が強く現れると考える。独立変数として処理群は再帰的結合操作を行い、対照群は非再帰的結合操作を行う。従属変数として複数の人が書かれているイラストから、その中に書かれている人物の意図に関して可能な限り解釈できる内容を解釈文として提出させ内容を評価する。予測する実験の結果は、1.再帰的結合操作によって多様な仮説組み合わせにより生み出すことが可能になり、2.生み出した仮説を解釈する際に現実的ではないと主観的に感じる仮説(妄想)は非再帰的結合操作を行った群よりも多く生成されると思われる。発表者:大友 和幸
概要: 複合語の新語は新規性が無い既存の語を組み合わせることによって、 個々の要素にはない意味を生じさせ、新語の新規性を確保していると考えられる。それを検証するために、以下の2つの仮説を検証する。 【分析1】複合語の新語は、新規性が無い既存の語が組み合わさることによって、新語 の新規性を確保している。 【分析2】複合語が構成されることによって、個々の語には無い意味が加わり、既存の 語によって新しい意味が誕生する。 分析1においては、複合語全体とそれぞれの構成語について、出現回数を計測することで、複合語の登場前後の出現回数の違いを計測する。分析2は、複合語とその構成語について共起語を取得し、複合語全体としては存在するが、個々の語基にはない意味の分析を試みる。発表者:レン セイジ
概要: I'd like to have a discussion on my experiment design. The experiment is a 2 variable multi level one. And the implement is planned to conduct by jspsych and firebase (it is said JATOS is better?)Questions:1) Whether it is necessary to make the jar/cup different groups2) How do I deal with the Google policy if I want to have the audio play automatically3) What is the possible statistic analysis method発表者:笹森 なおみ
概要: 道徳ジレンマの研究は基本的に功利主義と義務論の区別によって形作られてきた.功利主義の原則によれば,行動の選択肢の道徳的地位はそれらの結果に依存する.また,義務論の原則は行動の選択肢の道徳的地位は道徳規範との整合性に依存すると述べている.功利主義的判断と義務論的判断の根底にあるプロセスを特定するために,研究者は一つの原則と他の原則を競わせる道徳ジレンマ(例:トロッコ問題)に対する反応を調査してきた.しかしながら,このパラダイムの反応の概念的意味は曖昧であり,なぜなら,功利主義と義務論の中心的な側面である結果や規範が操作されないためである.この欠点が如何に経験的知見の理論的な解釈を損なうかを示し,また従来パラダイムの曖昧さを解消する代替アプローチを説明する.このアプローチを発展させ,道徳ジレンマに対する反応として,結果に対する感受性(C),道徳規範に対する感受性(N),結果や規範に寄らない不作為と行為に対する一般的選好(I)を研究者が定量化できるようにする多項モデルを提示する.このモデルを用いて,道徳ジレンマ判断において性別,認知負荷,質問のフレーミング,サイコパスの影響を調査した8つの研究を紹介する.提案するCNIモデルで得られた知見は,道徳ジレンマ判断の決定要因によりいっそう微妙な洞察を与え,支配的な理論的前提を再評価することを求めている. この論文は,道徳ジレンマシナリオへの回答の不作為(inaction)の解釈について検討している点と,シナリオの規範操作としてprescriptive normとproscriptive normに分けている点が,自分の研究テーマ(不作為に関する道徳判断)に関連します.今回の発表で,私の行いたい研究のイメージや背景が皆さんに伝わればと思います.発表者:山本 寛樹
概要: 霊長類の目の外部形態には幅広い多様性があり,それらは体サイズや生息環境のような生態学的要因への適応を反映していると考えられている.しかし,霊長類の目の形態の進化に社会的要因が与える影響についてはあまり注目されていない.これを検討するため,本研究ではヒトを含む30種の現生霊長類について,社会的要因(大脳新皮質率と集団サイズ)およびその他の要因(生息環境と体重)と目の外部形態との関連を,系統関係を考慮しつつ分析した.霊長類の目の外部形態のパラメータは,集団サイズや大脳新皮質率と相関していた(研究1).さらなる行動解析によって,全スキャニングにおける,眼球のみによるスキャンの割合は,集団サイズや大脳新皮質率と相関していた(研究2).本結果は,眼球運動のみによるスキャンとその形態学的基盤が,より大きな社会集団への適応であるという見方を支持している.いくつかの霊長類種にみられる,攻撃の表出ではないコミュニカティブ視線信号は,目の形態に関連した特徴に基づいているのかもしれない.さらに,特にヒトに多く見られる,接触を伴わない社会的毛づくろいとしての視線は,この種の適応の極端なケースであるかもしれない.私たちはこのアイデアを「ゲイズ・グルーミング仮説」と呼ぶ.発表者:成 太俊
概要: 共同的に問題を解決するとき,互いに情報を共有しその情報の信頼性を重み付けすることが重要である.しかし,互いに共有する情報を正確に結合できるか,どのように正確に結合するかは不明である.著者らは,それぞれ異なるタイプの情報が伝達されうると提案する4つのモデルを挙げ,それらのモデルの予測と低レベル視覚的意思決定課題(伝統的なコントラスト検出課題)の実証データと統計的に比較した. その結果,各個人が知覚するものだけでなく,それらの割り当ての信頼度(自信)についても自由にコミュニケーションする機会が与えられれば,決定の全体的感度(ここでは正解率)を向上させることを示した。重要なことは,それは同程度の視覚感度の観察者ペアの場合のみであり,視覚感度が大きく異なる観察者ペアにとっては,二人の方が(視覚感度が)優れた一人参加者より悪かった.さらに,試行ごとの自信の伝達は集団的利益に必要であるが,決定結果のフィードバック(正解の知らせ)は必要ないことがわかった. この論文は,ペアの参加者がどういった状況で個人より有利かを調査してるし,モデルの予期と実験による実証データの比較もしてるし(将来的に同じことするかもと思い),一実験ではなく一連の実験を行い論文を書いてるし,どの面でも良い研究として興味深いので,皆さんに共有し議論を行いたいと思います.発表者:星住 弥里
概要: 近年の差別に関する動向としてブラック・ライブズ・マターのような運動が活発化し、差別的言動を排除する動きも活発化している。そして今後もこのような流れが継続するのではないかと考えている。しかし、多くの人は無意識の内に差別発言を行い、差別を助長・再生産してしまうと指摘されている。一方で、どのような語が差別語かという一貫した定義は存在せず、時代によって差別語とされる語は変化するとされている。修士論文では、過去には差別語で無かった語が差別語になる過程と社会との関連について研究したいと考えている。 修士論文では社会言語学の一分野である批判的談話分析(Critical Discourse Analysis: CDA)とコーパス言語学を融合させた、「コーパスに支援された談話分析(Corpus Assisted Discourse Studies: CADS)」の手法を用いて分析を行う予定である。本来のCDAでは分析対象とする文書をひとつひとつ質的に分析するが、そのような手法に対して質的な分析のみが行われており分析者の主観に依存しすぎていると批判も存在した。それに対してCADSでは、あくまでも軸足は質的な分析に置きつつ、コーパスを援用することでCDAに客観性を「補完」しようとする。従って、CADSでは記述統計的な量的な分析を入り口として、質的な深い分析を行うという二段構えの分析が行われる。現在の進捗としては、質的な分析に入るための入り口である量的な分析を行っている最中である。 今回のゼミでは、以下3つのことを目的としたいと考えています。 ①前回のゼミ内容を反映し、ある語が差別語となったと判断する基準を共有する ②①で作成した基準を基に現代日本語書き言葉均衡コーパス(Balanced Corpus of Contemporary Written Japanese: BCCWJ)における 「エイズ」および「HIV」の2語に対する分析を行い、各語がいつ差別語となったと判断したのかを共有する ③②を基に、各語が差別語となったと思われる時点付近において、当時の日本社会ではどのような出来事が起こっていたのかといった社会の潮流を日本経済新聞記事の分析から明らかにする。具体的には、「エイズ」もしくは「HIV」という語を含む1981/10/01~2013/12/31での日本経済新聞の記事に特徴的に出現する語を明らかすることで、その当時の社会の潮流を明らかにしようと試みている。その日本経済新記事の量的な分析の結果を、コンコーダンスラインという形で共有し、コーディングルール作成のヒントを頂ければと考えています。 特に、③については今後の分析の足掛かりとなるため、様々な視点から○○という語と△△という語は□□というグルーピングが可能ではないかといったご示唆を賜れればと思っています。発表者:秦 慕君
概要: 疎外感とは「自分が排除されている」という心理状態である.先行研究によれば,創造的な人間は個別性が強く,独立性が高いと検証された.そして,創造性のある人は疎外されやすいと明らかにした.これに従って,本研究では,個別性の強い人は疎外されやすく,この様な人は創造性が高いと推測して,これを研究対象として捉えている.本研究は,社会的排除・孤立の現象を減らし,人間の個別性の多様性を受け入れるような,包摂社会を構築することに支援し,何か貢献出来ればと思います. 今回のゼミでは,自分の体験から疎外感を研究するモチベーションを話します.そして,疎外感と創造性の研究に至った経緯を皆様に共有します.また,今までのサーベイの結果の報告を行います.最初に自己体験を軽くさせていただきたいと思います.その後,修士段階でやる研究を紹介して,研究対象について議論していただければと思います.発表者:清水 あおぐ
概要: 本研究では、Twitterにおける情報伝播を文化進化の観点から分析する。研究デザインとしてIterative Model(Grimmer et al,2022)を採用する。これは、あるデータセットに対して探索的に分析を行い仮説を発見し、別のデータセットで仮説が支持されるかを検証するというものである。探索的なデータ分析のデータセットとしてはTwitterにおけるウィル・スミスの炎上を採用した。本発表ではベイズ統計モデリングとネットワーク分析を組み合わせた文化進化モデリングによる探索的な分析の結果について発表する予定である。発表者:周 豪特
概要: 社会の発展は情報の処理を求めており、概念のフレムワーク、知識の表示と処理が注目される。知識の形式化によって、情報社会における人工知能(AI)は知識の処理の主体の一員になる。 AIと人間と共に、知識に対する処理することは共創の前提だと考える、しかし、知識は単なる処理ではなく、思考を含めることで、知識を発展させる。 AIも単なり処理ではなく、知識に対する思考があるようにとすると、思考できる前に、人間のような思考を真似すると考える。人間の思考を学び、真似するときは、人間の思考を喚起することが必要だろう。 AIが人間の想像する対話をさせることができれば、人間とAIと共に想像する会話の基礎になり、共創的な対話が可能になるだろう。 そこで、本研究はAIが人間の想像能力を喚起するシステムを作るために、AIに人間の概念融合思考を喚起する機能を持たせ、創造的な対話システムを開発し、チャットボットを作る。そして、チャットボットと人間との対話実験で、効果と検証する。発表者:笠野 純基
概要: 日常生活において人は直接観察できない他者の意図を理解することができる。妄想は科学的フィクションのような現実にはあり得そうにない物語を推論することができる。観察した要素から多様な仮説を生成するひとつの方法として、要素同士を再帰的に結合させることで複合的な要素をいくつも生成できると考えられている。これらのことから、相手の意図は観察可能な態度として表れる諸要素を素に、要素同士を再帰的に結合することで他者の意図推定に利用される(他者の意図について妄想する)のではないかと考えている。 本研究の研究目的は、再帰的結合が他者の意図推定にどのような影響を与えるのかを明らかにすることである。研究方法として実験室実験を行う。実験目的として、再帰的結合によって生成される他者の意図の数や多様さなどの違いを分析することである。実験計画は、被験者間で行い、被験者には複数人が行動している様子が写っている写真を見せ、行動している人の意図に関する文章をできるだけ多く書き出してもらう。従属変数には他者の意図に関する文章を取り、独立変数には大きく分けて再帰的結合をする群としない群とする。実験仮説は、再帰的結合をする方が再帰的結合を行わないよりも他者の意図に関する文章の数が多く、多様な仮説を生成するということである。発表者:山本 寛樹
概要: 2022年の7月6日から9月7日にかけて、出張でカナダオタワ市と米国インディアナ州に滞在した。主な用務はカナダで開催された国際学会での研究発表と、インディアナ大学認知発達ラボでの短期滞在である。本発表では、今回の海外出張について、ラボ・生活・研究・新型コロナウィルスという4つのトピックから報告を行う予定である。 発表者:畠山 剛臣(Postdoctoral researcher, Department of Evolutionary Biology and Environmental Studies,
University of Zurich, Switzerland)
発表者:石森 宥佑
発表者:大友 和幸
概要: 言語コミュニケーションにおいて、新しい語を作り新しい概念を伝えようとする新規性と、習慣的に使用され、話し手受け手で共通性がある。共通性が習慣化したパターンによって曖昧さを持たない形で伝える傾向であるのに対し、創造性は習慣化しておらず、今までには使用されなかった新規性がある形式が出現する傾向がある。そのため、共通性と新規性は、両方の性質を担保したまま新語の生成とコミュニケーションの両方を説明することができていない。本研究では、新語の複合名詞の語形成を分析することによって、新語によるコミュニケーションを可能にするメカニズムを解明したい。そのための分析として、以下の2つの仮説を検討する。発表者:黄 文蓮
発表者:レン セイジ
概要: “Some”as a quantifier which can be followed by both count and mass nouns has been widely studied in different area. In the area of experimental pragmatics, we focus on the actual use of the word. My study questions are: 1. What is the meaning of the quantifier “some” in use?2. Does implicature occur in the case of mass quantifier “some”?発表者:石森 宥佑
発表者:レン セイジ
概要: Aim for reading the papers: to find suitable linguistic stimuli for my research. To be more specific, what kind of expression is suitable for the utterance for participants to listen to. E.g. “You have some water.” “Some water is now available.” “You have some of the water.”... The seminar mainly based on paper (1), which from the perspective of linguistic and logic introduces mass and count quantifiers. Paper(2) is for extra information to explain concepts in paper (1) when necessary. The paper (1) in general discuss questions involving mass terms in English and quantificational mass NPs like most gold and little water. The author discussed mainly from the perspective of semantics and syntax, including topics like homogeneity and predication, nominalization, quantifications compared, etc.発表者:成 太俊
概要: 今回のゼミでは,CogSci2022にて行うポスター発表(オンラインの場合は5分のFlash talkになった)の発表練習を行います.内容は修士研究です. チーム創造性を高める重要性が高まっている.LEGO Serious Play(LSP)のなかのプレイ(=レゴブロックを用いた直感的な作製)がチーム内のコミュニケーション向上に有効で,チーム創造性に影響すると言われる.本研究はそのプレイがチーム創造性に影響する個人間の発話に影響するか,どのように影響するかを明らかすことを目的とする.結論として,プレイが個人間でのアイデアの抽象的なレベルに言及する発話を促進することがわかった.また,その発話が相手の発話を(積極的な)反応的に承認する発話や何気ない問いかけとお互いに促すことが示唆された. 元々は追加分析して新しい結果を追加する予定でしたが,時間の制限のため,メインな結果を発表します.発表時間が短いため,聴衆に理解してもらうよりも,どんなことがわかったかをアピールするつもりです.自分の発表の目的を達成するために,何が足りない・補うことあれば(あるように感じたとしても),聞かせてください.発表者:秦 慕君
概要: 疎外体験は,個人と他の人または集団との継続的な関係の中で発展させ,特定の環境での関係の質が低下することによってもたらされ,連続的・発展的プロセスとして概念化される.個人・中立性的な妨害と代替案の顕著性という2つの変数に基づいて,疎外体験の類型化を提案し,4つの行動症候群(孤立、再統合、服従、反抗)を含めている.これらの症候群では,個人の状況判断が少なくとも一時的な幻滅をもたらすが,個人的な妨害によって持続的な認知変化を誘発した.疎外体験の中心的かつ特徴的な特徴であると考えられる.最後に,提案された枠組みの研究の方向性と政策的意義について議論した. この論文は,自分の研究内容(個人・集団の物語性・法則性で感知した疎外感)と関わります.疎外感は個人/集団の法則性と/物語性でどのように生じるかと理解するのに役立てればと思って,皆さんにこの論文を共有し,議論できれば幸いです.発表者: 大友 和幸
概要: 複合語の新語は新規性が無い既存の語を再帰的に組み合わせることによって、個々の要素にはない意味を生じさせ、新語の新規性を確保していると考えられる。それを検証するために本研究では、以下の2つのことについて分析する。1. 複合語の新語は、新規性が無い既存の語が組み合わさることによって、新語の新規性を確保している。2. 複合語が構成されることによって、個々の語には無い意味が加わり、既存の語によって新しい意味が誕生する。分析1においては、ツイッターのツイートを取得する。そして、複合語全体とそれぞれの構成要素について、出現回数を月別に計測することで、複合語の登場前後の出現回数の違いを計測する。それとともに、分析2においては、複合語とその要素について、共起語を取得することにより、意味の分析を試みる。これにより、個々の構成要素にはない語の意味の評価を試みる。発表者:星住 弥里
概要: 近年の差別に関する動向としてブラック・ライブズ・マターのような運動が活発化し、差別的言動を排除する動きも活発化している。そして今後もこのような流れが継続するのではないかと考えている。しかし、多くの人は無意識の内に差別発言を行い、差別を助長・再生産してしまうと指摘されている。一方で、どのような語が差別語かという一貫した定義は存在せず、時代によって差別語とされる語は変化するとされている。修士課程では、過去には差別語で無かった語が差別語になる過程と社会との関連について研究したいと考えている。 そのためには、ある単語が差別語になったと判断する必要がある。そのために本研究では、二つの言葉の関連性を測る尺度であるJaccadd係数を使用しある単語と共に使用される語を通時的に分析することで、過去には差別語で無かった語が差別語になったと判断することを想定している。しかし、本研究では本来のJaccard係数の定義が想定するデータを用意することが難しいため、その考え方を少し改変して使用することとした。 今回のゼミでは、本来のJaccard係数の考え方を少し改変し、その考え方に沿った分析が終了した語の分析結果を共有いたします。ですが、改変した考え方ではある語と差別の共起の度合いが非常に低くなってしまうという問題に直面しています。その点について何かご示唆等を賜れましたら幸いです。発表者: 笹森 なおみ
概要: 人間の道徳判断はトロッコ問題のような構造を持つモラルジレンマ課題によって研究されてきた。モラルジレンマ課題は、5人を救うために1人を犠牲にすることを提示しするシナリオであり、道徳的に適切かどうか判断する課題である。特に功利主義と義務論が対立するシチュエーションでは、理性と情動の 2 つの神経回路によって道徳判断が下されるという、道徳判断における二重過程理論が提唱されている。しかしながら,モラルジレンマ課題のシナリオは作為を前提としたものが多く,不作為に対する道徳について十分な議論がなされていない.本研究では、従来の作為のシナリオに加えて不作為を含むシナリオを用いて、オンライン上で心理実験を行い、道徳判断と反応時間を分析した。 今回は学部の卒業研究を紹介します。現在の研究興味に直接関係するため、研究背景とこれまで行ってきたことについて知って頂き、研究対象について議論できればと思います。発表者:成 太俊
概要: Why do humans and animals expend extra energy to play? Although play as a creative source is a possible answer, how individual play affects team creativity remain unclear. Human play may involve freely manipulating objects to create or model things. Cheng & Hashimoto (2021) showed that “intuitive modeling,” playful behavior in the sense of not thinking things too seriously and not acting in a goal-oriented manner, promotes utterances about abstract concepts during collaboration, which may affect the team creativity. Agreement with partner’s utterances / Unintentional questions Why does the intuitive modeling have such an effect? Is it an outcome of play per se or brought from the interaction between play and other factors? To investigate this question, we examine the effects of two factors: “think with hands” (Roos & Victor, 1999; Papert, 1996), which involves manipulating objects for creating or modelling, and “recursive combination,” which is to combine combined things repeatedly and is related to creativity and diversification (Chomsky, 1991; Toya & Hashimoto, 2018). In our experiments with LEGO blocks, we examine the effects of three factors on team creativity: play, think with hands, and recursive combination. The experiment consists of an individual modelling phase, where the three factors are manipulated, and a collaborative modelling phase, where pairs of participants model a product together. The differences among the conditions in utterances data, the final products and their explanations (a.k.a., storytelling) in the collaborative phase are analyzed. This study contributes to understanding the relationship between play and team creativity.発表者:UMARIN, Siri-on
概要:The selected works highlights the stakeholders management as they believe good stakeholder management is crucial to the successful of the project, including R&D Project. With these selected papers, we acknowledge the main types of stakeholders in context of business and organizations and see the result from case study how the previous theoretical framework was adapted with the real situation. Along with the information provided, we would like to pinpoint if there is any specific position plays significant role to manage the stakeholders in organizational environment? And how can the details from these works contribute to our own research study?発表者:黄 文蓮
概要: 認知言語学では、言語使用者が身体的経験を通じて世界をどのように見ているのかを重視し、その見方が言語表現に表れると考える。そして上下のような空間的な体験は世界の認識とメタファーを含む言語表現に重要な役割を果たすとされる(Lakoff & Johnson 1980)。本研究では代表的な空間性を含む基本的な同型多義語のひとつである「上・下」を取り上げ、上下に対する日本語母語話者と中国語母語話者の認知の相違点を調査する。発表者:黒川 瞬
概要:長期にわたる協力と非協力の共存は、自然界と人間社会においてありふれた現象である。しかしながら、協力を促進するいくつかのルールがまとめられた(Nowak, 2006, Science 314, 1560–1563)けれども、囚人のジレンマゲームに基づく理論モデルはいずれも、長期にわたる協力と非協力の安定な共存に何が導くかを説明する具体的な理論モデルを与えていない。ここで、直接互恵性の概念に基づいて、囚人のジレンマゲームにおける協力と非協力の安定な共存がどうして可能なのかについて説明をする基本モデルを本論文は開発する。本論文の理論モデルの背後にある基本的な考えは、囚人のジレンマゲームにおけるすべてのプレーヤーは、相手として協力者を好むということであり、非協力者から身を引くことを許す戦略を考えることによって、協力進化を推進する直接互恵性の基本的な重要性を理解する一般的で具体的な方法が与えられることを、本論文の結果は示す。私はこの論文を、相互作用が二者間に限らない場合、協力するために必要な資源がある確率で不足している場合、相手が協力者か非協力者かを見極めるのに認識コストがかかる場合などに拡張した研究を近年行っている。例えば以下があげられる。1)Kurokawa, S. (2022). Evolution of trustfulness in the case where resources for cooperation are sometimes absent. Theoretical Population Biology. 145, 63-79.2)Kurokawa, S. (2021). For whom is it more beneficial to stop interactions with defectors: cooperators or defectors? Ecological Complexity. 48, 1009683)Kurokawa, S. (2021). Effect of the group size on the evolution of cooperation when an exit option is present. Journal of Theoretical Biology. 521, 1106784)Kurokawa, S. (2021). Disbandment rule sways the evolution of tolerance. Applied Mathematics and Computation. 392, 1256785)Kurokawa, S. (2019). The role of generosity on the evolution of cooperation. Ecological Complexity, 40, 100778.6)Kurokawa, S. (2019). Three-player repeated games with an opt-out option. Journal of Theoretical Biology, 480, 13–22.7)Kurokawa, S., Zheng, X., & Tao, Y. (2019). Cooperation evolves more when players keep the interaction with unknown players. Applied Mathematics and Computation, 350, 209–216.今回紹介する研究の内容を知ってもらうことで、今後、私の研究に対して理解・助言がしやすくなってもらえることを望む。発表者:成 太俊
概要: 本研究は,直感的な作製としての個人的遊びがチーム創造性に影響するメカニズムとは何かという問題に対して,直感的な作製・再帰的結合行動・手で考えるの3要因がそれぞれ個人間のインタラクションにおいての発話行為との関連性や各発話行為がチーム創造性との関連性を解明することを目的とする. 今回のゼミでは,上述の目的を達成するための実験を行うための書類(シナリオや手順書など)と注意事項(制約条件)の説明ビデオを皆さんに共有し,曖昧なところや不足な点を指摘していただいて,実験実施のための最終版の完成につながればと思います.今回のゼミ発表は,実験の流れ・概略を十分に説明したあと,皆さんと一緒に各書類をチェックしていただきたいです(7月~本実験を実施したいので). 元々は新しい実験の書類チェックのほかに,修士実験の追加分析の結果をも共有するつもりでしたが,結果を出すまで時間的に間に合わなかったです.7月にその結果を入れる発表練習も行うので,今回は書類チェックのみにさせていただきます.発表者:山本 寛樹
概要: 共同注意的相互作用や直示的コミュニケーションにおいて視線を信号として発信することは,協力や文化の学習などのヒトの社会活動の特徴に関わっている.視線信号仮説や関連する協力的視線仮説は,ヒトは一様な白色強膜(白目)を含む,ヒトのユニークな目の外部形態を進化させることで他個体への視線の視認性を高めてきたと仮定している.しかし,実験的証拠はいまだ欠如している.本研究は,ヒトとチンパンジーの参加者を対象に,コンピューターを用いた課題を用いて,ヒトやチンパンジーの画像の視線方向を弁別する能力をテストした.本研究では刺激画像の明るさや大きさを操作し,想定される距離や陰影に対する,視線方向を表す信号の頑健性を調査した.ヒト参加者もチンパンジー参加者も,チンパンジーよりヒトの視線方向をよく弁別し,これは視覚的にチャレンジングな条件で顕著だった.また,通常のチンパンジーの眼球とはコントラストの極性を反転させたとき,すなわち,チンパンジーがヒトのような白色強膜および暗色虹彩をもったとき,両種の参加者はチンパンジーの視線方向をよく弁別することができた.このため,一様に白色な強膜は,種を超えてさえ,視線方向の視認性を高めることがわかった.本研究は,視線信号仮説の前提を支持するだけでなく,批判的に更新するものである.発表者:清水 あおぐ
概要: 言語によって伝達される規範によって強制される罰によって、協調行動が維持される(Boyd, 2017, Henrich & Muthukrishna, 2021)。しかし、現代社会では、規範違反者への非難が集中する炎上が、社会問題になっている。本研究では、大規模なソーシャルメディアデータを用いて、オンライン環境における炎上現象を分析する。特に、第三者罰の心理的メカニズムが炎上を引き起こすとすれば、第三者罰研究の知見は、炎上現象のメカニズムの解明に役立つと考えられる。まず、どのような規範違反がオンライン炎上を引き起こしているのかについて探索的な調査を行う。第二に、第三者罰が信頼性をシグナルすることを踏まえ(Jordan et al., 2016)、観察機会がオンライン炎上における規律に影響を与えるかどうかを調査する。第三に、オンライン署名サイトを罰の観点から分析した研究が、公正さに内発的動機を持つユーザーが炎上することを示唆していることから(Rost et al.2016)、この効果が別のソーシャルメディアプラットフォームでも見られるかどうかを分析する。発表者:石森 宥佑
概要: 企業や組織の倫理的行動がどのように扱われてきたのか、どのように企業の倫理的行動が経済活動において有利であることを示すことができるのかを検討することを目的にレビューしました。明日は自分の研究の流れに乗せつつ7本の論文を紹介します。発表者:大友 和幸
概要: 本論文では、英語のN+Nの名詞複合語について、意味解析を行い、認知意味論 的原理に基づくN+N複合語構成要素の組み合わせ可能性の検討により、複合語の 構造における個々の意味カテゴリの位置パターンを明らかにした。 そのためにN+N複合語を構成する語同士の関係性について、コーパスベースの分 析を行い、複合語の構造規則に関するパターンについて調査を行った。 結果、25の異なる意味カテゴリによって考えうる3元構造(2028通り)のうち67通 り、2元構造は考えうる676通りのうち17通りの構造を示すことがわかった。 それとともに、3元構造については2つの異なる構造を割り当てることができる ものが存在した。このことから、複合語は音声によって異なる視点から認知処理 されることを示している。 私は、自分の研究において、この手法を日本語に応用し、複合語の抽出の手法に 役立てたい。発表者:笠野 純基
概要: 精神病理学や日常生活と、妄想的な情報処理が至るところに存在しているものの、その推論を正式に特徴付けるものが不足している。本稿は、妄想を持つ人に見られるような信念の更新を生成(情報の隠れた原因を推論)する計算メカニズムを伴う生成的枠組みを提案する。本枠組みはベイズ推論アルゴリズムを伴うディリクレ過程混合モデル(Dirichlet process mixture model)の特殊な形式を導入する。その特徴として一つのパラメータのみでモデルを調整することができる。特に曖昧な状況下では、この生成的枠組みが妄想的な観念のための種を提供できる。さらに、このような精緻(せいち;極めて詳しく細かい)すぎる説明の極端な生成により、新しい情報が統合されても、既存の信念の修正につながらないことをシミュレーションで示した。また、本アルゴリズムは階層的予測符号化(Hierarchical predictive coding)と完全に適合する。上記の特性により、提案したモデルは実験的な研究の基礎と妄想の根底にある常軌を逸した推論過程の特徴づけに向けた一歩を提供するものである。発表者:ZHOU, Haote
概要: 情報社会の発展と共に機械が色々な場面で働き、その代わりに人間社会は知的財産が重視され、人間の創造性や創発力を求めている。また、検索エンジンやAlphaGoのような人工知能(AI)が活用されており、人間の知的な活動の一部として不可欠な一部になっている。そのため、人間社会でAIとの創造活動が頻繁になるだろう。 人間の創造力は新しい概念を作れることで表す、新しい概念は常に創発と共に生じる。人間は概念融合という思考を通じて創発する。一方、AIの開発はAIが概念を扱ったり操作したりできることに向けて努力している。開発もAIが概念融合ができるようにしている。また、人間は概念融合ができそうなロボットについての印象が改善され、思考に刺激されることが指摘された。しかし、AIの開発を概念融合の創発が生じるように、人間のサポートにすることは少ない。 そこで、本研究は、概念融合の過程において創発が生じる要因を観察し、創発が生じる可能性が高い概念構造とアルゴリズムを提案し、検証する。 今回は、学振の申請書をきっかけに、博士後期の研究を完成度を高めようとします。この機会を通じて、研究全体的な論理、細かい概念の限定を議論できたら幸いです。発表者:秦 慕君
概要: 人間の行動を正確に理解するためには,他人が何を知っているか,何を信じているかを判断することが重要である.先行研究による誤信念課題の実験結果は,幼児は誤信念を推論することが難しいと証明した.しかし,なぜ難しいのかまだ明らかにされていない.著者は,幼児に用いられた誤信念課題に似ている,大人を対象として新しい実験を行った.実験結果,誤信念推論には「知識の呪い」というバイアスがあると示された.そして,大人の事件に対する信憑性の認識はこのバイアスの度合いを調節することがわかった.これらの知見は,大人の社会的認知と認知発達の両方の研究に示唆を与えるものである. この論文は,自分の研究内容(相互作用する個体脳と世界の法則性と物語性の理解 )と関わります.「法則性」と「物語性」の定義・動きを理解するのに役立てればと思って,皆さんにこの論文を共有し,議論できれば幸いです発表者:Siri-on, UMARIN
概要: An overall report of both topics, theirs research contents, difficulties, and ideas will be presented to seek for further suggestion and improvements.発表者:清水 あおぐ
概要:現代、公益性の高い行為者は、ソーシャルメディアに起因する影響力を恐れなければならない。いかなる論争を伴う行動も迅速に一時的にではあるが、潜在的に壊滅的に感情的で攻撃的な義憤、すなわち炎上の引き金となってしまうからである。炎上においてよくターゲットとされるのは、会社、政治家、セレブ、メディア、アカデミアなどその他大勢である。本稿では、社会・政治的なオンライン環境における攻撃を理解するため、社会規範理論を紹介する。社会規範理論の観点を裏付けるために公共問題に関連する主要なソーシャルメディア・プラットフォームを3年間にわたって分析し、1,612件のオンライン請願書に対する532,197件のコメントを記録した。研究結果は、オンライン炎上の文脈において、匿名の人物と比べて非匿名の人物のほうがより攻撃的になることが示唆されている。この効果は、選択的インセンティブがあり、攻撃が内在的に動機づけられている場合に強化される。発表者:レン セイジ
概要: Scalar implicature has been studied by psycholinguists in recent years. In my research, I'd like to construct a runnable computational cognitive model for scalar implicature processing based on the constraint-based framework proposed by J.Degen and M. Tanenhaus. By doing so, I hope to get an algorithm level understanding of this process. And this research can contribution to the field of AGI (general artificial intelligence) and possibly to the field of visual and language interaction. 今回の内容は研究内容の他、行動力と研究者像もあります。是非皆さんのご意見やコメントお願い致します。発表者:黄 文蓮
概要: 中国語の助詞「le」を説明するための広範な研究努力にもかかわらず、統一理論や十分な経験的証拠がないため、混乱が続いている。本研究では、文法的アスペクトを語彙的アスペクトから解放し、語彙的アスペクトに対応可能な用法構成主義的アプローチを採用することにより、「le」に関する統一的な説明をしている。文内「le」と文末「le」に関連するアスペクト構文について、「le」が2つの異なる家族的類似構造に関与していることを主張する。文内「le」構造はイベントの終わりまたは最後の境界を説明し、文末「le」構造はイベントの始まりまたは最初の境界を説明する。コーパス分析により、2つのアスペクト構造は自然言語使用において明確なパターンを持っており、提案された解釈と一致することが示された。誘発された応答データからの結果は、(中国語)母語話者は2つの構造のしるしについて家族類似性判定を行う際に、構造レベルの形式的及び意味的手がかりに注意を払うことが示された。本研究は、語彙的アスペクトとの関連で文法的アスペクトを研究するクロスリンガル研究や、アスペクト以外の文法的カテゴリーに対する用法構成論的アプローチに対して、理論的にも方法論的にも示唆を与えるものである。発表者:黒川 瞬
概要: 協力行動は、自分の適応度を下げる行動であるため、その存在は説明を要する。ペア構成次第でそのペアでの関係が続く確率が異なる場合、協力行動の進化が促進することは、先行研究(Zhang et al., 2016)により指摘されている。協力者2個体からなるペアと非協力者2個体からなるペアの関係は続き、協力者1個体と非協力者1個体からなるペアの関係は続かない時に、協力進化が最も促進することは明らかである。いま、協力は2者間での相互作用においてのみで行われるわけではなく、3者間以上の相互作用においても行われることに着目する。グループが3個体からなる場合、それぞれのグループ構成において、関係が続くときに、それとも、関係が続かないときに、協力が最も進化するだろうか?私は、数理モデルを用いた解析の結果、協力者ばかりのグループ、および、非協力者ばかりのグループは関係が続き、協力者と非協力者が混ざっているグループは関係が続かないときに、協力が最も進化することを明らかにした。発表者:LIAN Qingxi
概要: Implicatures serve as an important testing ground for examining the process of integrating semantic and pragmatic information. Recently, attention has shifted towards identifying contextual cues that modulate this processing cost. Specifically, it has been hypothesised that calculation rate and processing cost are a function of whether the Question Under Discussion (QUD) supports generating the implicature (Degen & Tanenhaus 2015, Degen 2013). In this paper,the authors studied two kinds of implicature in QUDs: SI (Scalar Implicature) and EXH (it-cleft exhaustivity).They found experiment data generally supporting the previous hypothesis. This is a work which is based on the context-based framework proposed by J. Degen and M.K. Tanenhaus. This paper is aimed to find a cue for language process. And the authors conducted a study on the cue — QUD (qustion uder discussion).My research plan happens to have the similar aim of this research, with exception of research focus. I'm planning to study visual context cues.発表者:山本 寛樹
概要: 近年,ウェアラブル機器の発展によって,自然な場面での乳児の注視行動を記録することが可能になっている.これまで乳児の注視行動を分析した複数の研究グループは,乳児が親の顔を滅多に注視せず,親子の視線コミュニケーションが稀であることを報告してきた. 一方,発達心理学において,視線コミュニケーションは乳児の社会的学習の基盤として永らく重視されてきた.発表者は,視線コミュニケーションがどのような状況で生じやすいのか明らかにするため,先行研究で扱われてこなかった日常場面において,母親に装着した視線計測装置から親子のアイコンタクトの記録・分析を行ってきた.本発表では,これまで発表者が行ってきた複数の研究を紹介し,親の顔に対する乳児の注視行動の生起に対人距離が関与している可能性を示す.発表者:成 太俊
概要: 物体操作,特に手で掴んだ物体を用いて力強く打撃する物体操作は道具使用に先行し,その物体操作の程度がヒトを含む霊長類の認知発達を評定する統一的な尺度である.本論文はチンパンジーのナッツ割り行動における錯誤訂正動作に着目し,新しく考案した表記法を用いて微細的順序的に分析することで,ナッツ割り行動が習得困難な原因や複雑な道具使用にける認知発達の解明につながることを目指す.結論として,ナッツ割りの習得の難しさは,各動作自体に存在しないが適切な順序で動作と物体を適切な組み合わせで策定することにあることがわかった.その策定に有効と考えられる効率的な錯誤対処戦略はチンパンジーが物体との長期的な相互作用とスキルが効率的なレベルに達成後に徐々に習得される可能性が示唆された.発表者:星 宏侑
概要: 鳥,魚,羊などの脊椎動物,アリやハチといった社会性昆虫,バクテリアに至るまで,生物界では様々な種をまたいで群れ行動を観察することができる.群れ行動は様々な機能を持つが,捕食者混乱効果(Predator confusion effect : PCE)が群れ行動の進化に十分影響を与えることがOlsonらの研究によって分かっている.一方で,感染症の蔓延や限られた資源をめぐる競争の勃発など,群れ行動を行うことで群れをなす個体が不利益を被る場合がある.群れ行動は生物界において広く観察されるため,それらの不利益を上回るベネフィットを群れ行動により享受していることが考えられるが,群れ行動のどの機能(あるいは複数の機能)がそれらの不利益をどのようにして補完しているのかについての知見は十分であるとは言えない. 本研究では,群れ行動によって不利益を被らせる個体,すなわち「内部脅威」が群れの中に存在する場合に,PCEが群れ行動の進化に与える影響がどの程度頑健であるかを調べる. PCEが与える群れ行動の進化への影響が「内部脅威」の存在によって弱くなった場合,PCEのみを考慮する群れ行動の進化シナリオは不十分であり,他の機能を考慮する必要があることが示唆されるだろう.発表者:藤原 正幸
概要: 人間のコミュニケーションの顕著な特徴のひとつは,記号表現の字義通りの意味だけでなくその暗黙の意味も理解し,形と意味の間に新たな関係を築くこと、つまり新しい記号を作り出すことが挙げられる. 本論文の目的は、神経活動の神経同期を分析することにより、記号コミュニケーションの処理にどの脳領域とどの脳部位間の結合が関与しているかを明らかにすることである. 記号コミュニケーションの関連領域としては,コードモデルを考慮する意味論と,推論モデルを採用する語用論などが挙げられる.前者は記号的なメッセージの暗黙の意味を相互に理解することには不十分で ある一方,記号的コミュニケーションは文脈や既存の知識から形と意味の間の新しいつながりを推論するため、後者の語用論が採用する推論的コミュニケーションに近い性質を持っている. 特に実験記号論のパラダイムを取ることで,相互作用による新しいコミュニケーションシステムの創発過程を研究することが可能である. この実験記号論にもとづき,先行研究は記号コミュニケーションシステムの確立にα抑制が関与することを示したが、この知見は局所的な神経活動に限定されたものであった. 記号の意味・コミュニケーションの神経科学的研究では,前頭部や側頭頭頂皮質などといった複数の部位が関連することが示唆されており,これらのの認知活動を理解するためには、局所的な活性化の観察に とどまらず、脳領域間の機能的結合とその神経ダイナミクスを観察することが重要である. そこで本論文では,先行研究で示された前頭部と頭頂部の活動およびその機能的結合が、記号的コミュニケーションに関与しているかどうかを主に検討した。 局所的な振幅と大域的な位相同期という2つの神経ダイナミクスに着目し分析した結果,低周波帯はメッセージの意味の記憶の符号化に、ガンマ帯は図形と意味の統合に関連する認知過程に関与していることが 示唆された.私たちが明らかにした神経メカニズムは、記号コミュニケーションシステムの形成や原始的な言語使用に関わる神経活動の理解に役立つと思われる.発表者:笠野 純基
概要: 現代において妄想という言葉は、精神的な病気などネガティブな意味合いで用いられることがある。著者の金沢は『妄想力』の中で「ヒトは妄想し、妄想を共有する生物」(金沢, 2006)として進化してきた(妄想論)を主張している。また妄想は現代社会においても、宗教や経済などを産み、妄想の世界に暮すようになった反面、日本特有の”引きこもり”など妄想によって不適応を起こしている側面もある。「妄想とは患者の教育的、文化的、社会的背景に一致しない誤った揺るぎない観念 (idea) ないし信念 (belief) と定義される[参考: 脳科学辞典]。」妄想状態に陥ると、ありもしない物語を語ったり、ものごとを関連付けたり、現実にない概念を生み出すこともある。妄想する力(妄想力)は複数の視点からものごとを見ることができる(マルチフレーム)能力を指し、たとえば妄想によって花びんに花を生ける、水を飲むなど複数の使用方法へと広げることができる。一方で、膨大な処理することが困難となりヒトは絶滅寸前まで追い込まれた。ヒトは妄想を共有することで、試行錯誤を繰り返して知識を蓄積し文明を産み出した。文明によって生き延びていくために、他者と妄想を共有するために、他者の心を見出し得た。発表者:秦 慕君
概要: 今回のゼミ2部発表は卒論紹介となる.本論文は日本語学習者と教師に向け,日本語の開始を表す「~始める」,「~出す」と「~てくる」を中心として研究した.それぞれの意味をよく知っているが,実際使用する場合,その使い分けがはっきりわからず,混同されやすいと考えられる。複合動詞「~出す」と「~始める」の起動の意味を中心とした先行研究を踏まえ,「~てくる」の研究が少ないが,「開始」を表す表現が「~出す」と「~始める」のみじゃなく,「~てくる」のいろいろな意味の中で,「開始」という意味も含めると考えた. そこで本研究では,「~出す」,「~始める」と「~てくる」の使い方について,例文を観察しながら,分析を行った.開始のアスペクトを表す「~出す」「~始める」「~てくる」の違いに注目して,この3つの使用方法から始めて,それらの使う場合を明らかにすることを試みた.発表者:松井 一樹
概要:エビデンスに基づく政策運営(Evidence-based policy making、以下EBPM)で、政策が効果に至るメカニズムが不明なまま事実ベースの評価だけでは正しい成果かわからず制度の定着につながらない。本研究では、認知階層理論(Camerer et al. 2004)にもとづき、SNS上で最もフォローされた意見を持つ他者との関係における認知バイアスをミクロのモデルに組み込み、EBPM向けのミクロ・メゾ・マクロループをベースにした社会シミュレーションモデルを提案する。本研究を通じて、制度の浸透、定着と他者との関係における認知バイアスの関係の解明していきたい。ホスト:秦 慕君
参加者:笠野 純基、笹森 なおみ、成 太俊
オブザーバ:山本 寛樹、黒川 俊
ホスト:大友 和幸
参加者:藤原 正幸、笠野 純基、笹森 なおみ、山本 寛樹、橋本 敬、星住 弥里、Lian Quanxi
オブザーバ:黒川 俊