発表者:外谷 弦太
概要:本発表では,知識の正当化に関わって歴史上形は違えど何度も対比されてきた二つの立場(経験主義vs合理主義,連合主義vs表象主義,(意味論的)外在主義vs内在主義,コネクショニズムvs心の計算理論)について,言語進化という現象を通してまとめてみたい. これらの対立は,人類が欲してやまない「真理」あるいは「意味」が世界の側に存在するものなのか,それとも自身の内における「意味」の再生産を通じて生ずるものなのかという点に帰着すると考えられる.人類が生物としてのヒトである間は,他の生物と同じく既成世界の性質を知ることが最重要だっただろう.しかし,ヒトは言語能力という再帰的演算システムを手に入れたことで,自身の内部で構成的に新たな意味を創造し,世界の側に具現化できる「人」へと進化した. 論理実証主義の目論見が失敗に終わったように,二つの立場はどちらも「既成世界の真理」を得るに適わないとわかっているが,「意味」を構成する能力を手に入れた人類はもはやそんなものに執着する必要はない.この発表の最後では「知識がよいものであるほどそれは存在論的な実在を正しく写像している」という信念を否定し,既成世界を侵食する「知識」という無象の有機的構成体と,そのリソースである人類の家畜化について考えたい.発表者:濱田 昇吾
概要:現在執筆中である3月末までに提出予定の研究計画提案書は,推敲が十分ではなく改善が必要があります.橋本研究室のみなさまの多様な視点からの意見とともに,考えを深めていきたいと考えております.研究計画の内容としましては,知識共創の主体の拡張についてです.現在,知識共創の主体は,人と人でありますが,人と機械での知識共創も可能なのではないかと仮説を立て,それを確かめることです.私の至らなさに由来しますが,先行研究調査が十分ではないため,至らぬ点が多々ありますがよろしくお願いいたします.発表者:覃 澍斌
概要:現在のグローバル化はだんだん深刻になっていて、海外への留学、移民、就職などの活動はますます増大し、誰もが普通に外国人に関わる時代になっていく。グローバル化時代につれて、国や全社会レベルだけではなく、地域や組織内などに対して、異文化コンフリクトも避けられない問題になる。組織内異文化コンフリクトを対処するため、ダイグロシアの応用を提唱する今回のゼミは3月末にRPの提出られるように、皆さんとディスカッションしてほしい。そして、今までに行ったゼミとほとんど違う内容なので、皆さんの意見と考えも聞いてほしい発表者:細間 萌
概要:以前のRPから要素を減らし、新奇な意味の複合語の生成・受容の二つに違和感を通して研究の目を向けることになった。生成・受容両方に違和感はいくらかの作用をもたらしうると考えられるが、この違和感という語がどのようなものを含んだ語であり、どんな定義がされるのかについてはあまり考えられていなかった。今回のゼミでは、物事の印象を表現する印象語が違和感の中身を具体的に説明するものとして使えるのではないか、また、違和感の代わりにより定量的な評価基準に調査を行ったときにはなりうるのではないか、などについて議論を行えればと思う。発表者:濱田 昇吾
概要: ダイグロシク話者の変種間の切り替えは、バイリンガルのように、さまざまな種類のバリエーションの典型的な確率分布を持つ。ダイグロシクの言語の制御と語彙アクセスに関与するメカニズムを調査するために、2つのスイッチング実験を行い、2つの変種または言語の熟練者が実験を参加する。ダイグロシクの言語変種間の切り替えはバイリンガルの言語間の切り替えと同じような切り替え抑制メカニズムだと証明した。発表者:覃 澍斌
概要: ダイグロシク話者の変種間の切り替えは、バイリンガルのように、さまざまな種類のバリエーションの典型的な確率分布を持つ。ダイグロシクの言語の制御と語彙アクセスに関与するメカニズムを調査するために、2つのスイッチング実験を行い、2つの変種または言語の熟練者が実験を参加する。ダイグロシクの言語変種間の切り替えはバイリンガルの言語間の切り替えと同じような切り替え抑制メカニズムだと証明した。発表者:外谷 弦太
概要:ヒトの言語は,表現の線形構造ではなく,階層構造(語の係り受け関係)で意味が定まる.例えば「最新情報学」という言葉は,「情報学」の最新のトピックを扱うものと,ニュースに関する学問という二通りの解釈がありうる.文章主体のやりとりを行うSNSでは,解釈規則が似た者同士で固まったり,異なる集団間で分断が生じやすくなると考えられる.「意味」「解釈規則」「社会構造」の三者関係とそのダイナミクスを調べるフレームワークとして,本研究では鍋料理を通して人間関係を構築するエージェントの社会シミュレーションを構築した.エージェントは単純パーセプトロンにより鍋の名前と評価を,強化学習により鍋の作り方を学習する.エージェントの味覚はそれまでに食べた鍋によって形成され,この味覚に基づく鍋の評価でその鍋を作ったエージェントに対する好意が上下する.本発表では,鍋の名前と作り方が共有される場合と,鍋の名前だけが共有される場合とで,構築されるネットワークの構造を比較した結果について報告する.発表者:野村 洋介
概要:批判的公開性が阻害される典型例として、内部告発に至るまでの内部不正があると考える。内部不正では、ある個人が正しいと考えることが内部で発言できないため批判的公開性が阻害されていると考える。そこで本研究では内部不正をモデル化しシミュレーションを行うことで、どのような制度が批判的公開性を高めるかを検討する。今回のゼミでは、主にモデルの説明と現在出ている結果について議論を行いたいと思います。できれば制度についてもディスカッションを行い、それらのアイディアを一つ一つ実装して試したいと考えています。皆さんのご協力をよろしくお願いいたします。発表者:成 太俊
概要:今回のゼミではTMでの議論に踏まえて,作成先行群が思考先行群よりも,解釈的発話数が有意に多い(p<.05)ことがわかったが,なぜ「コンセプトの解釈」(のみ)が有意差あって,「部品の解釈」が有意差ないかに関して自分の意見を皆さんと議論したいと思います.そして作成と承認・質問もそれぞれ有意差あるため,この(予想外)部分に関してもどう解釈するかと議論したいと思います. 詳しい実験データと結果は前回のTMあとのとき,共有して議論したので,今回は主に上記の分析結果は何を意味するのかと議論することができればと思います.発表者:周 豪特
概要: 文法とコミュニケーションのフォームを意味するペアは、多くの場合、その意味の一部として、統合マッピングに関する一連のヒントと制約を持っている。多くの場合、form-meaningというついは文法とコミュニケーションにおいて、その意味の一部として、統合マッピングに関する一連のヒントと制約を持っている。前回ブレンディングにおける専門用語紹介しましたが。今回、典型的なブレンディングの例、ブレンディング理論への挑戦、または、その効果(ヒントと制約)が単語、文法、文句、接地という範囲の中でもあって、その例を紹介しながら、ブレンディングを論証します。発表者:成 太俊
概要:今回のゼミでは,冬合宿の発表に踏まえて,まず実験群のネーミング問題をやり直して,「考えさせる群」を「思考先行型プレイ群」,「考えさせない群」を「作成先行型プレイ群」にした.そして,発話を分類するカテゴリーのネーミングももっとわかりやすく修正した.とコーディングの原則・基準を改訂し文章にした.被験者の発話が曖昧な場合,第三者が会話の分類をしてもできるように例や反例を挙げながら原則・基準を詳しく説明している.ただし,まだはっきりしてない部分があるかもしれないので,皆さんが批判的に読んでしていただければと思います.最後に,既有の実験データを分析した結果を報告する.両群の解釈発話数をt検定した結果,有意差はなかったが,作成先行型プレイ群の方が思考先行型プレイ群よりも,解釈発話数が多いという有意な傾向はあった(p= 0.088750425).そして,作成先行型プレイ群では,個人の創造性スコアが高いほど,作成に関する解釈発話数が少ないという負の相関(r= -0.70812901)があることがわかった.もう一つは,思考先行型プレイ群では,個人の創造性スコアが高いほど,部品に関する解釈発話数が少ない(r= -0.84097136)という結果が出た.これについてもみんなさんと良いディスカッションができればと思います.発表者:覃 澍斌
概要:今回のゼミは主に今までやっていた研究の再検討。この前の「ダイグロシアがコードスイッチングに与える影響」というテーマの中で、研究の中心はコードスイッチングである。しかし、自分にたいしてやりたい研究はコードスイッチングではなくて、ダイグロシアなので、休暇のうちに読んだ文献を読みなしたり、新しい文献をサーベイしたり、やりたい研究を考えたりした。今回のゼミのきっかけに是非皆さんともう一度議論したい。発表者:細間 萌
概要:今回のゼミでは今まで想定していた研究について発表した冬合宿の振り返りを行います。冬合宿以降、自分がどのように研究を進めていくか、まだ戸惑いも多くありますが自分が知りたいことはなにか・それはどうすればわかるようになるのか、たくさんのヒントをいただきました。本日はいただいた疑問やアドバイスを振り返りながら、今後について議論が出来ればと思っています。発表者:藤原 正幸
概要: 脳活動における振動(オシレーション)の発見は,脳波検査 (EEG)と同じくらい古いものであるが, 過去数十年間に強力なイメージングおよび計算技術が開発されて初めて,脳の生理学, 病理, および認知における脳のリズムの役割を理解することが可能になった. 多数の証拠が脳のリズム・神経同期と認知との関連を示しており,脳の振動と神経同期に関する実験的研究は,計算モデリングと非線形力学を通して,リズムの発生と神経同期のメカニズムを理解するための熱心な努力を伴っている.しかし, この企ての両者には, 共通の言語, 方法論, 概念がしばし欠落している.本論文では,振動理論の観点から神経同期について考察し,神経科学的文脈への振動子理論の適用性のさらなる証拠を提供する.最後に,同期現象に関連して物理学と神経科学で使用される用語を簡単に比較する.発表者:覃 澍斌
概要: ダイグロシクスピーカーの2変種の切り替えは、バイリンガルが彼らの言語間に行うように、さまざまな種類のバリエーションの典型的な確率分布を持つ。ダイグロシクの言語の制御と語彙アクセスに関与するメカニズムを調査するために、2つのスイッチング実験を行い、2つの変種または言語の熟練者が実験を参加する。ダイグロシクのスイッチングコストの全体的な規模は、バイリンガルの切り替えのスイッチングコストとほぼ同じと証明した。 この論文はを選んだ理由は「スイッチングコスト」のことに関して、どのように研究するかをわかりたいのためである。発表者:外谷 弦太
概要: ヒトの言語能力の生物進化に関して最新の知見に基づいた仮説を提唱している3編の論文を紹介する.言語能力と一口に言っても,「言語」が重要な役割を担う場面は多岐に渡り,その見方や研究の方向性は研究者間で一致しないことのほうが多い.鳥瞰すると,「言語」という形質を「思考の道具」と捉えるか,「コミュニケーションの道具」と捉えるかを分水嶺として,それぞれの流域でニッチが構築されているように見える.第1論文は,言語を「思考の道具」とする流れの本流をいく.この論文は,人間言語の生産的性質および普遍的性質を最も早くに指摘し,人間の思考を形式的に分析する手法をもたらしたN. Chomskyが提唱する,「併合(Merge)」と呼ばれる語彙項目の再帰的な結合能力の進化シナリオを説明している.対する第2論文は,言語を「コミュニケーションの道具」とする流れに属し,言語進化に関する最大の国際学会であるEVOLANGにおいて大きな影響力を有しているS. Kirbyによるものである.この論文は,言語構造の文化的形成とその生物進化への影響を論じ,言語能力の共進化仮説を提唱している.つづく第3論文は,二つの大きな流れを合流させる可能性があると筆者が考えるものを選んだ.ヒトの向社会的行動を説明するとして近年注目されている現象に「自己家畜化」がある.家畜化動物は人為選択による形質のほかに,自然選択圧の低下によって現れる特徴的な形質(家畜化形質と呼ばれる)を見せる.この論文は,言語能力の出現をはじめとするヒトの跳躍的な形質変化に対して,家畜化形質の出現を鍵とした説明を試みている.発表者:野村 洋介
概要:ハーバーマスは批判的公開性によって公共圏を回復できると考えた。この批判的公開性は自らの集団の利害に捉われず意見を言う自由である。しかしこの自由は内集団びいきのような人の形質を考慮した際に、実現することが困難であると考える。そこで、この人の形質を考慮した上で、公共圏が形成可能かをシミュレーション分析によって検討する。これまで行ったことは、内集団と外集団を用意し、内集団に対しては公開の利得が高く、外集団に対してはその逆となる利得表を作成した。そして、各エージェントが取りうる戦略を4種類に分類し、そのエージェントが社会学習を行う様子を観察した。発表者:細間 萌
概要:発表者は今まで複合語が生成されるときには意味の創発が起きることに注目をしてきた、中でも先日の1部においては、該当論文中にある記述、ある種複合語が違和感をもって受け入れられるという部分で自分の研究とのつながりがあると言った。今回のゼミでは発表者はその違和感を中心に、言語が普及する、廃れるという要因には複合語が形成されたときに新たに付与される意味がもたらす違和感が関わっているのではないかという仮説を立てた。今回はその仮説の検証のためどのようなことについて調査を行うかを検討したため、それらについての議論を行いたい。また、仮説自体がまだ調査不足からくる考察の甘さなどを感じているため、その点について議論をすることによって考えを深めたい。発表者:星 宏侑
概要: 分子生物学のセントラルドグマは,ゲノムと酵素との2種類の非対称性に基づいている.①ゲノムから酵素へは一方的に遺伝情報の流れがあるが,その逆の方向には情報の流れはないという,情報に関する対称性の破れと②酵素は触媒作用をもたらすがゲノムは触媒作用を持たないという,触媒に関する対称性の破れである.しかしながら,これらの対称性の破れを成しているゲノムと酵素の区別はどのように起きているかは分かっていない.本研究では,複製する触媒分子を含む原始細胞集団のモデルを用いたシミュレーションを行い,自発的に対称性が破れた結果としてゲノムと酵素の区別が起きることを示した.その結果, セントラルドグマにおける情報と触媒に関する2種類の対称性破れは,コンフリクトしている細胞レベルと分子レベルのマルチレベル選択によって自発的に引き起こされることが分かった.発表者:覃 澍斌
概要:前回の2部の後で、大体の研究方向は分かりました。日本語-中国語ダイグロシア社会で中国語母語話者は中国語で話すときたまに日本語からことばを借用し、すなわち、コードスイッチングを行います。しかし、中国にいる日本語ができる中国語母語話者は中国語で会話をするとき日本語のコードスイッチングはありません。この仮定を認証するために、少し調査を行いました。今回のゼミはその結果について皆さんと議論をしたいです。アドバイスや修正意見などがあれば是非教えてください。発表者:外谷 弦太
概要:発表者はこれまで、要素の結合操作の再帰的適用によって新たな構造を作り出すというヒトに特異な能力に着目し、進化シミュレーションを用いた分析を行ってきた。結果として、再帰的結合には多様な製作物やその製作手法を発見・発明することへの有効性があることがわかった。次なる問いは、「この能力がなぜヒトにおいて積極的に用いられ、多様な文化や構造物を作り出すに至ったか」である。人類に創造的行為の動機をもたらした可能性があるメカニズムの一つに、「自己家畜化」という現象が考えられる。自己家畜化とは、ヒトが物質的・社会的生態環境を構築し、その環境に自ら適応することで、家畜によく見られる形質(攻撃性・警戒心の減少、従順さの向上、体色の変化等)を呈するようになったとする仮説のことである。被捕食リスクや採餌コストを低下させる「家畜化」は、個体に自然淘汰以外の淘汰圧(性淘汰や人為淘汰など)に対する進化を許す。コシジロキンパラが家畜化されたジュウシマツでは、性淘汰によって歌の構造が複雑化するという現象が観察されており、歌の新奇性に反応して発現する遺伝子の存在が確認されている。計画では、このジュウシマツにおける新奇性判定の生理学的メカニズムを変形することにより、ヒトにおける新奇性判断のモデルを作成し、物理的ニッチ構築や社会的ニッチ構築を介した間接的人為淘汰をシミュレートすることで、自己家畜化現象の再現と、それによる再帰的結合能力の進化シナリオ構築を試みる。発表者:周 豪特
概要: ブレンディングは、人間の認知において常に広く普及している精神的な操作である。最近の研究によると、文法とコミュニケーションのフォームを意味するペアは、多くの場合、その意味の一部として、統合マッピングに関する一連のヒントと制約を持っている。本文は、フォームを意味するパターンが概念統合のパターンを促すいくつかの方法というトピックの紹介である。発表者:藤原 正幸
概要:発表者はこれまでに、記号コミュニケーション課題について、記号受信時に関する成功群と失敗群の神経活動をそれぞれ調べている。今回は主に2つの事項について検討した.1点目は前処理の改善であり、2019年現在で妥当だと思われる方法 を適用・IC拒否をやりなおすことで従来よりアーチファクトの改善が見られた。そして2点目は、改善されたであろうデータを用いて、成功群と失敗群間のERP、振幅と位相同期についてそれらの違いを検討した。その検定結果より得られた統計的に有意なクラスター・神経活動について報告し議論したい。発表者:細間 萌
概要: この論文では日本語の形態学的バリエーションについて漢語表現である「放題」(at will)という語が現代日本においてどのように使用され、歴史的には名詞であったものがいつ頃現在の形へと変化してきたのかを示す。それとともに、現在接尾辞のようにして使用されているこの語が著者の言う「複合語に特有の下位意味」だけを持った語に変化し、同様の意味を持った接尾辞的に使用される語と比較をしてより語彙的な表現が機能的な表現へと変化する新しい「文法化」への歴史的過程であると考察する。発表者:野村 洋介
概要:公共圏には三つの性質がある。それぞれ1) 公開性、2) 柔軟性、3) 対等性、である。これらを満たした時に公共圏が成立するとされるが、その状況は理想的すぎるといった批判がある。それはおそらく人が群れを作り、階層的な秩序で生きる性質を持っているためだと考える。そこで、本研究ではその生物学的な知見を前提としつつ、公共圏のような理想的な状況が実現できるかを検証する。 今回の発表では、公共圏の成立を阻む現象のモデル(利得表)について発表する。具体的には、1) は秘密、2) は社会規範、3) は社会的行為が阻害要素であると考えている。まだまだ未完成であるかもしれませんが、様々な批判を受けて利得表を改善していければと思います。発表者:橋本 敬
概要:他者意図推定の可能なシステム構成を提示することで、理論理論とシミュレーション理論という意図推定の二つの仮説の止揚、そして、言語の階層性と意図共有の統合という言語進化の重要課題にチャレンジしようとしています。提案仮説の基本枠組みは、 「意図推定=アブダクティブ推論=組み合せによる生成×身体による選択・意味づけ」 というものです。 今どのようなことを考えようとしているかを、バックグラウンドとともに共有し、今後一緒に議論して行けたらと思っています。発表者:李 アダム
概要:ほとんどの動物はコミュニケーションできるが,人間のコミュニケーションだけは記号が使われている.記号コミュニケーションの進化を考えるときに,ミラリングという神経活動が人間と動物の共通基盤として考えられるが,記号コミュニケーションシステムの形成におけるミラリングの役割についてはいまだに明らかになっていない.発表者:覃 澍斌
概要: 最近、少数言語を使用するの人数の傾向は、伝統的な言語習得および生存戦略の有効性に関する懸念を引き起こしている。この論文では、認知されたある言語生存シナリオの確立、すなわちダイグロシアのシナリオで、相互補足の社会的なドメイン側面への異なる言語の割り当てに取り組んでいる。この方法は、二つの言語がいずれを使用する可能のある社会の言語集団において、セルオートマトンで具現化された統計力学の分配関数の類似物の新奇な方法である。現代ウェールズの事例から詳しく説明する。この方法で出た結論は、ダイグロシアが絶滅の危機にある言語を保存する効果である。この論文はたくさんの物理的と数学的な概念と式があり、はっきり理解できない部分はまだ残っている。今回のゼミで、皆さんとそちらの式と試験の具体的に何を表したいのかを議論したい敬上,よろしくお願いいたします.発表者:甲斐 靖章
概要: 放し飼いをされたメスヒヒが他グループメンバーのコールを認識し,シグナリングをした個体と,その個体と遺伝的に関係がある個体を関連付けることができるかを検証した.検証をするために一連のプレイバック実験を行なった.実験で使用するシーケンスは被験者と近縁関係がある個体を伴うものと,非近縁者が伴うもの両方を用いた.シーケンスの違いにより反応時間や,その後の行動に違いが生じることから,メスヒヒは自分の近縁者の叫び声や悲鳴だけではなく,非近縁者のものからも関係性を認識することを主張する.ほのめかしは人間が社会関係を考慮することで進化してきたと考えています,人間だけではなく,霊長類の社会関係をみることはヒントになるのではないかと考えました.発表者:成 太俊
概要:本研究は複数人で問題解決を行う場合、プレイ(play→object play→LEGO Bricks based modelling)が個人間のインタラクション行為(、相互理解)に影響するプロセスを明らかにすることを通じて、プレイ(の何)がインタラクション行為と相互理解を促進するかを分析することが目的とする。今回の内容は、まえに指摘された「playful」や「playfulness」との定義(区別の仕方)をやめて、同じタイプのプレイ(object play)だがプレイ活動の実行の方が違う(実際この活動では二つの実行のし方が存在する)ということにしたいと考えている。具体的には、LEGO Serious Playメソッドのような直感でモデルと対話しないやり方;と考えながらモデルと対話するやり方、この二つやり方で比較実験を行い、実際(LEGOを使うObject play)プレイはどういうふうに個人間のインタラクション行為に影響するのかを明らかにしたいと思う。明日のゼミでは、全体的なロジックを議論するほか、実験設計についても議論できればと思います。できれば、来週に予備的に実験(予備実験とは言えないが)を実際やってみたいと思いますので…よろしくお願いします。発表者:野村 洋介
概要: この論文は、「公共財ゲーム」においてどのようにして道徳的行動が成り立ち、それが人々の間に広がっていくのかをシミュレーションによって分析したものである。シミュレーションでは、エージェントを倫理的観点から4種類に分類している。各エージェントはそれぞれの倫理的立場における行動を行い、近くにいる利得が高いエージェントの行動を模倣する。このシミュレーションによって、「公共財ゲーム」における協力的行動が広まる作用が明らかにされた。自分の研究は倫理や道徳がキーワードとなると考えています。そのような文脈で実際にどのようにモデル化が行われているかを皆さんと共有できればと思います。また、論文の中に動画がありますので、PCを持参していただきますようお願いいたします。発表者:覃 澍斌
概要:グローバル時代につれて、留学や仕事関係など海外へ移住する人はだんだん多くなる。留学生や移民などの移住者はたまり場で本来の社会と異なって、新しい言語社会を作り出せる。この人たちが職場や学校にいるとき当地の共通語(外国語)を使う。普段の生活に同じところからの人と自分の母語や母国語を話す。しかし、母語や母国語を話しているとき、当地の共通語から借用し、すなわちコードスイッチングを行い、特定な表現を表す。表現の概念が翻訳できないわけではないなので、なぜこのようなコードスイッチングを行うか。今回のゼミはこの点について議論してほしい。発表者:星 宏侑
概要:今回のゼミでは,2つの研究案について発表する予定である.1つ目の研究案は,群れの中に存在する見えざる脅威に対する被食者の防衛行動獲得についてである.生物が群れるメカニズムとしてHamiltonの「利己的な群れ理論」があり,被食者が捕食のリスクを減らすために安全な集団内部に入ろうとする利己的行動の結果,群れ行動へと創発するとされている.しかしながら,群れの内部に潜在的な脅威がいた場合は内部が安全であるとするこの利己的な群れは壊滅しかねないため,群れが群れとして成り立つための何らかの防衛行動が働いていると考えられる.この研究では,群れに内在している潜在的脅威に対して,その様な群れの集団的防衛行動獲得のメカニズムを明らかにすることを目的とする.2つ目の研究案は,ジバクアリや一部のシロアリに見られる自己犠牲的防衛行動の獲得についてである.命を投げ打ち集団を守るこの自己犠牲的利他行動は個体レベルの選択圧によって発現するとは考えにくく,群れと群れに対する脅威の相互作用の結果発現する行動であると考えられる.社会性動物の利他行動はHamiltonの包括適応度理論やMaynard Smithの血縁選択説によって説明できるが,極端な利他行動である自己犠牲行動も説明できるかをこの理論に基づいて明らかにしたい.これらの2つの研究の目的を達成するために,計算機による進化シミュレーションによる構成論的アプローチを用いることを予定している.発表者:周 豪特
概要:ブレンディングは認知理論で認知プロセスを解明することが可能になる。そして、ブレンディングがノベルティーなメタファーを説明しようとしている。一方、メタファーの研究は何年も続いている。メタファーから概念を認識するまで、様々な現象があり、指摘されたが、ブレンディングを用いてそれを解明する研究が少ない。そこで、本研究はブレンディングを用い、それを適切に説明できるかどうか、また説明できなかったら問題点を探せることは本研究の目指すことと考える。発表者:細間 萌
概要:複合語とは複数の語を語根とした新しい意味や新しい機能を持つ語のことである。本研究では、インターネットを介して日々発生している新語の中で、元となったいくつかの単語と表す意味が変化した単語が、どのようにして生まれ、広く利用されていくのか、というその流れを追っていきたい。そこで、インターネットの検索機能を利用した先行文献も参考にしながら、どのようにして発生から拡散して浸透するかという流れを調査する、あるいは仮想のモデルを用いて検証を行うことを想定している。発表者:李アダム
概要: 社会認知にミラーシステムが関与すると論じるために,人間の運動システムで他者の動作だけではなく,他者のやりとり(interaction)も表象しないといけない.今回で紹介したい論文では,その必要条件である複数の観察動作の表象可能性に対してfMRIを用いた実験で調べ,運動システムが複数の観察運動を表象できることを示した.実験結果に対してしっかり議論した論文であるため,ゼミでその議論の仕方を共有しながら,人間のコミュニケーションにおけるミラーシステムの役割に対する理解をより深めたい.発表者:外谷 弦太
概要:これまで、外谷は新学術領域研究「共創言語進化学」の俎上で研究を進めてきた。本領域の目標は、言語理論・生物進化・人類進化・個体発生の研究成果に整合するシナリオを作ること、およびコミュニケーションの未来と人類の存続のあり方を提言することである。本領域はその研究期間のうち半分にあたる二年半を終えており、残る二年半でこれら二つの目標を達成する必要がある。そのために、「各分野の研究成果を整合する」ための体系・道具立てが必要であり(でなければ共創言語進化「学」ともならない)、加えて人類の将来へ向けた提言と研究成果の結合が求められていると考える。本発表では、まず「共創言語進化学」内の諸研究のうちいくつかを紹介する。次に、自身の研究の振り返りと位置づけを確認したのち、これに基づく諸研究の包摂に向けた考察を行う。最後に、各分野の研究成果を整合するための枠組みを提示する。今回は主にこの枠組みについて議論を行い、科研費・公募研究への応募に向けた精緻化を行いたい。発表者:藤原 正幸
概要: 記号的な構造を作り出し操作する人間の能力は、他の動物よりはるかに優れている. しかし,乳児はいつ,どのようにして任意のラベルを記号表現として処理するようになるのか? 著者らは三つの実験(ラベル,ラベルまたは音,反転)において高密度EEGを用いて乳児の神経活動を記録した.結果,新奇な単語に対するEEG応答は,乳児が3重語構造(AAB etc.)に基づき,次に提示されるラベルについての期待の構築と偶然一致しなかったときの驚きを明らかにした.さらに重要なことに,乳児は反転した新奇な試行でも抽象的構造と次のラベルとの間の双方向マッピングを即座に推測した.これはあらゆる記号システムの基本操作である.発表者:星 宏侑
概要:群れを目的地まで誘導するタスクはshepherding problemと呼ばれ,様々な解決法が提案されている.2014年にStrömbomらによって提案された手法は現実世界の羊と牧羊犬の相互作用のデータから牧羊犬が群れの誘導に用いている行動をモデル化したものであり,たった一匹の牧羊犬が2つの行動を切り替えながら数百匹にも及ぶ羊の群れを誘導できることが特長である.Strömbomらによって提案されたこの手法を我々はHerding Algorithm(HA)と呼び,それについて大まかに分類すると3つの研究を行ってきた.まず,HAを用いるロボットと群れとの移動速度の差がHAの誘導性能に影響するかを調べるため,誘導対象の移動速度に対するHAのロバスト性を評価した.次に,HAが多次元空間上を動き回る群れについても誘導できることを示し,現実世界で応用可能である3次元空間上を動き回る群れについての誘導性能を調べた.加えて,2次元平面上を動く群れと3次元空間上を動く群れとに生じる誘導性能と,移動速度に対するロバスト性について比較・評価を行った.最後に,3次元空間上を動く群れの中でも魚群に焦点を当て,魚群に対するHAの誘導性能を調査した.発表者:甲斐 靖章
概要: なぜ人間はストレートに言わずにほのめかすことをするのか?スティーブンピンカーはこの疑問に対して,相手との関係性がわからない状況において関係交渉の機能を果たすからと進化生物学のアイデアを適用して主張しました.しかし,話し手と聞き手の関係を簡単に捉えすぎている点があると考えます.その点を考えていくと聞き手が話し手のほのめかしに応じないということになります.聞き手が応じなければほのめかしは進化しないことになります.そこでどうすれば聞き手がほのめかしに応じるのかの条件を探るために今後進化ゲームを行う予定です.そのためのモデル提案をする予定ですがまだ未完成であり詰められていない部分があるため,今回のゼミでは中間発表に向けて,そこを埋められるヒントを得られるようにしたいと考えています.発表者:成 太俊
概要:本研究は遊びがグループのアイデア創発を促進すると考え、その促進プロセスを実験で検証し、実験結果を分析することでその促進要因を検討することを目的とする。遊びがアイデア創発を促進するプロセスの仮説は、遊びが個人間のインタラクション行為を促進する、それによって個人間の相互理解を促進する、結果としてアイデア創発が促進されるとする。今回はこの仮説を検証するための実験デザインを詳しく説明したいと思います。主に実験を行うため、①遊びをどう定義するか、②個人間のインタラクション行為とは何か、③相互理解をどうはかるか、④アイデア創発が促進されるということは何かを説明します。発表者:野村 洋介
概要:本研究では、公共圏理論を情報の多様性という観点で捉える。情報の多様性が公共圏の形成、すなわち民主主義的妥当性にどのように結びつくかは明らかではない。また、構成員の多様性と集団のパフォーマンスに関して多様性の影響が正にも負にもなるとされている。その理由の一つとして自己カテゴリー化理論で示されている構成員の「私たち」と「彼ら」という認識が影響していると考えられている。そこで、本研究では自己カテゴリー化理論における各カテゴリーに対する参照の程度を情報の多様性と捉え、それが民主主義的妥当性に対してどのように影響を与えるの かを明らかする。そしてその情報の多様性がどのような場合に公共圏が形成しやすくなるのかについて提案を行うことを目的とする。 今回は中間発表の練習です。モデルが出来上がるか分かりません。よろしくお願いいたします。発表者:小林 重人
概要:本学において研究活動や学振申請書の執筆に関する知識は教員や先輩から綿々と受け継がれているが,博士後期課程の就職活動,特にアカデミックポジション獲得のために必要となる知識は,ほとんど受け継がれていないどころか,まったく形成されていないといっても過言ではない.今回のゼミは,公募書類の書き方だけでなく,リジェクトされた論文や民間の助成金申請書から何を学び活かしていくのかといったノウハウや博士号取得後に独立した研究者として活動するために必要となる知識について私自身のこれまでの経験と知識を皆さんに継承するものである.また,博士前期課程の学生向けにもエントリーシートの書き方など,これまでの執筆指導で培ったノウハウを余すことなく伝授する.発表者:覃 澍斌
概要: 1950年代まで、バイリンガリズムに関する心理学分野の文献はその社会学分野に対応のものよりもはるかに広かったため、前者の研究者は後者の研究者との接触を確立できなかったことが多い。1960年代以降、すばらしい社会学的(または社会学指向の)バイリンガル社会に関する文献がをだんだん発展してきた。本文の目的は、この2分野の伝統を、主要な構成要素間の相互作用によって相互に関連づける:バイリンガリズム(心理学者側)とダイグロシア(社会学者側)発表者:野村 洋介
概要:多くの国で自由民主主義の体制がとられている。個人の自由や基本的な人権を尊重し、その中で他者と協力するための仕組み作りに関して民主的な手続きをとる体制である。しかしファシズムのように、多数意見が必ず正しいとは限らない。そこで社会学では、民主的な手続きに、より妥当性を与えられる議論を行う場所として、公共圏の存在を重視している。この公共圏は参加者の主体性や非排他性が必要であると考えられているが、個人化やエコチェンバー現象により、現在では主体性や非排他性を満たすことが困難であると考える。そこで本研究ではそのような現状を踏まえ、エージェントシミュレーションを用いてどうすれば主体性や非排他性を満たす環境を作れるのかを調べる。発表者:藤原 正幸
概要:本発表ではまず初めに発表者の興味の対象とする問いや実施研究を説明し,それらを以って自身の展望を示す. それらは神経メカニズムからコミュニケーションまでを同期やネットワークという視点で捉え直す試みであるが,この中のひとつとして博士研究を位置付ける.そして,この展望の一部を担う研究対象としての人間の記号コミュニケーションについて,得られた脳波データを解析した結果や問題点などについて具体的に示し議論する.発表者:赤池 敬
概要: 進化的視点から動物の認知について比較研究をおこなうCognitive ethology において,「心的内容」や「心的表象」といった心理学的概念が動物の認知に関する進化的説明を可能にすることやその重要性について,Cognitive ethoogyにおける最近の研究の分析を通じて,主張するものである.発表者:甲斐 靖章
概要:人間はなぜ間接表現をするのか?間接表現をすることは明白さに欠けるので誤解が生じやすく,また認知コストがかかるように思える.しかし広く間接表現が使用されていることが観察されている.ポライトネス理論によると,人間には面子があり,お互いが面子を尊重しあうように言語行為を行う.その際に相手の面子をもっとも侵害しない戦略の一つとして間接表現の使用がある.しかしピンカーによるとポライトネス理論は,脅しや賄賂をほのめかすと言った,説明しきえれていない間接表現がある.そこでゲーム理論的な視点から考察することで,それらの間接表現は,相手の利害が一致するか確かではない状況において,コストを最小化して利益を最大にする最適な戦略であることを示した.ポライトネス理論とピンカーの研究から間接表現を使用する利点は示されたが,利点だけを考えるならば間接表現を常に使用することが最善の戦略となってしまう.そこで,間接表現を使用し,利益を得るためには何かしらの条件があるだろうと考えられる.また,社会言語学では聞き手だけではなく,聴衆者など周りにいる人が話し手の言語スタイルに影響を与えることが言われているが,そうした第三者の視点が欠けていると考える.そうしたことを踏まえた上で,ポライトネス理論に基づいた間接表現のモデルを提案する.発表者:外谷 弦太
概要:ヒト言語の一つの特徴は,一次元的に表現される系列の意味が,表現に現れない階層構造によって解釈されうるという点である.この階層構造は語彙項目の再帰的結合(併合)によって作り出されるとされている.この再帰的結合はヒトの物体操作にも観察され,そうした行動における階層構造は,日常的な言語的記述の階層よりもはるかに深いことから,言語に先行して行動が複雑化しているという指摘がなされている.この主張は,言語能力の進化に関する仮説として有力視されている「併合操作の運動制御起源説」を支持する.一方で,行動の階層構造は,蓋やドアの開・閉のようなペア行動とそこに埋め込まれる行動系列を反映した結果に過ぎず,再帰的な結合操作は統語演算にしか存在しないという主張もある.後者の主張は,再帰的結合操作が統語レベルにおける併合しか存在しないという点で,人類進化のある時点で突発的に併合操作が出現したとする,「併合操作の創発説」を支持する.二つの仮説のどちらが合理的かを考えるには,行動や認知の裏に情報処理・計算があると考え,どのような計算システムにより対象となる行動が実現されているか,そしてそれに必要な計算能力はどのようなものか検討する計算論的な視点が役に立つ.本発表では,階層構造を生成する再帰的結合操作が統語における併合操作に固有か否かを計算論的観点から論じる.発表者:成 太俊
概要: 創造力を引き出すため、様々な背景の参加者をグループにして集団的活動を行う場合が多い。しかし、いかに背景の違う人々の違いによって生じる問題を克服し、違う観点を持つ参加者の間に相互理解して創造力を促進するかが最初の問題である。この論文はツールキットに基づくシリアスプレイを概念上のアプローチとして、伝統的方法(特定なスキル必要か、単に口頭的議論か)よりも、上記の問題に有効であると議論する。そして、このアプローチを概念上と事例研究を分析して、なぜこの方法は有効なのかを説明した。発表者:赤池 敬
概要:現在,記号論と自身の研究テーマである再帰の関係を考えている.それは,事象を捉えることはそれを構成する各要素を組み合わせることであり,さらにその要素は記号的なものとして考えることができ,それゆえ言語と同じく記号の再帰的な組み合わせによって説明可能であるという仮説である.そして,それにはパースなどの記号論の知見を用いることできるのではないかというものである.まず,田中(2010)によれば,記号の本質は再帰であり,記号は自身に即して自身が決まるという性質を持っているという.また,パース(1931)は「人は記号である」と,ソシュール(1911)は「記号なしでは思考はありえない」と述べており,人間の認識が記号であることを指摘している.この汎記号主義のような指摘は,実世界には記号だけが存在するということを指摘しているものではなく,実世界は存在するが人間は記号を媒介することなしに実世界にある対象を捉えることはできないというものである.これらの知見を手がかりに,人間言語と対象の認知との記号論と再帰の接続性について考えたい.発表者:外谷 弦太
概要: 著者らは,人間の特異性としての知性の基盤が,道具の使用から言語に至るまで階層的に行動系列を生成する能力にあると考える.行動系列の階層性を定量的に分析するフレームワークがあれば,それを人類祖先の石器製作行動の系列に適用することで,人類進化において階層構造生成能力がどのように進化してきたのかを明らかにすることができる.研究では,隠れマルコフモデルを使った分析と文法圧縮法を使った分析の二つを試行しており,それぞれでオルドワン石器(約300万年前に製作開始)とアシューリアン石器(約170万年前に製作開始)とで異なる複雑さの状態遷移構造を検出した.著者らはこの結果をもって,提案手法が石器製作以外の行動の分析にも使用できると結論する.発表者:葉 竜妹
概要:言語相対論において、認知が言語を使う場合で言語の影響をうけると普遍的に考えられているが、言語を使わない(linguistic encodingをしない)場合で、言語の影響をうけるかどうかはまだ論争がある。本研究は、記憶タスクと口述タスクに構成された実験室実験を行うことにより、言語の使用を遮断される場合と言語の使用を遮断されない場合のデータを収集して比較し、言語を使わない場合で事象の知覚と記憶に影響するかどうかを明らかにすることを目的にする。今回の発表は実験結果をふくめて発表する。データの分析について結構困ります。それについて議論ができれば、幸いです。発表者:李 アダム
概要: 人間は社会的インタラクションを通じて他人の心的状態を理解できる.このような社会認知に関わる神経メカニズムを考える時に,ミラーシステムの役割についてよく研究されてきたが,ミラーシステムの活動と社会認知の関係性についていまだに曖昧である.今回のゼミでは,発達の観点でミラーシステム活動と社会認知能力の生涯にわたった変化および関係性について,脳波指標を使った研究論文を紹介したい.発表者:藤原 正幸
概要: 前脳領域と後脳領域は意味表現の記憶と検索に関与しているが, これらの領域が意味処理中にいかにして動的に相互作用するかは分かっていない.この論文では長距離のシータ帯のコヒーレンスがこれらの領域の結合を反映すると仮定するとともに, 局所的活動としてERP成分やガンマ帯のパワーも同様に観察し,語彙―意味処理の振動ダイナミクスを検討している.結果として,N400成分,ガンマパワーの減少,そして前頭ー後頭間のシータ帯のコヒーレンスが仮定に沿った形で観察されることを実証的に示しており,これらの神経活動が意味表現の記憶と検索に関わることを示唆している.発表者:赤池 敬
概要: Premack & Woodruffがおこなった心の理論の実験への批判的検討を行っている.心の理論に関する実験は,人工的な実験条件を用意し行われるため,条件が厳密になり,自然な条件でのチンパンジーの振る舞いとは異なる.そのため,自然状態のチンパンジーに心の理論が認められるのか議論できなくなってしまうというものである.発表者:甲斐 靖章
概要: 間接的発話は普遍的かそれほどだといってよいほど広く見れられる.話者や聞き手がどのように間接表現の解釈を行っているのかという研究は行われていた.しかしそもそもなぜ間接的発話を人々が行うのかについてはほとんど明らかにされていない.既存研究では,人々の会話は純粋な協力のもとに行われるという前提があった.動物のコミュニケーションは純粋な協力と対立の混合であるという進化生物学の視点を適応することで,間接的発話の三つの理論を提案する.発表者:覃 澍斌
概要:グローバル時代で、第二言語を習得する人はだんだん増えてきた。最初に新しい言語を勉強する時、この言語は母語を依存してアウトプットする。でも、時間を経つによって母語から剥離して、依存しなくなる。この剥離のメカニズムを明らかにしたい発表者:成 太俊
概要: 他者とのインタラクション行為(石井ら,2001)とそれによる相互理解(矢野ら,2002)が個人よりも新しいアイデアを生成するという。個体間のインタラクション行為やそれによる相互理解に影響する要因があれば、グループによるアイデア生成をより有効に行うことが期待できる。一方、Torrance(1972)は創造力をfluency、flexibilityとoriginalityに分けた。既有のグループによるアイデア発想支援技法、例えば最もよく知られているブレーンストーミング技法は、アイデアのoriginalityやflexibilityよりもfluencyを最大化していると指摘された(Bateson et al., 2013)。しかし、問題を有効に解決するため、fluencyだけではなく、アイデアのflexibilityやoriginalityも重視すべきである。本研究は創造力を促進すると言われるPlayがグループによるアイデア生成をより有効すると主張、そのプロセスを解明することで、Playがアイデア創発を促進する要因を分析する。発表者:李 アダム
概要:ミラリングとは身体動作の観察時と実行時の類似する神経活動を指し,それが人間及び動物共通のコミュニケーションの基盤となる認知機構のコアとして考えられている.しかし,人間の場合では身体動作に制限されない記号を用いたコミュニケーションが可能である.記号コミュニケーションシステムの形成にはミラリングがどのような役に立つのか?というのは自分の研究テーマである.オーガナイザー:Qin Shubin
参加者:細間萌、星宏侑、周 豪特
オーガナイザー:藤原 正幸
参加者:橋本 敬、外谷 弦太、甲斐 靖章、赤池 敬、Qin Shubin、周 豪特