播磨祭礼伝

The Harima Festivals Herald

本サイトは、兵庫県南西部の地域、通称「播磨地方(旧播磨国)」の神社で執り行われる例大祭の魅力を伝えるサイトです。

主に、秋季(一部は、春季、夏季)例大祭や各氏子地区の太鼓屋台の新調お披露目・完成式にて、管理人自らが写真・動画を撮影し、随時、情報を掲載してまいります。

現地での見聞や文献等の知見を元に、独自の視点で祭礼の魅力について思いを巡らせます。

見聞録:2024年 2023年 2022年 2021年 2020年  2019年  2018年

英語で簡易紹介:Breathtakingly Splendid and Beautiful:  Autumn Festivals in Harima Province, Japan.

屋台の形態

素人目には、屋台の形はどれも同じに見えますが、みればみるほど違いがわかってきます。

屋台とは播磨地方では、太鼓台を指します。

屋台のことを、播磨地方南東部では「やっさ」、南西部では「やったい」と呼ぶ傾向があります。

屋台には、屋根の形より、大きく分けて、平屋根、反り屋根、神輿屋根があります。

神輿型には、練り合わせ型(灘・飾磨型)とチョーサ型(網干型)があります。

同じ神輿型でも、屋根の深さ、錺金具(装飾金具)、露盤・狭間彫刻、幕の刺繍、伊達綱か隅絞りかなど、細部に至るまで各地区で受け継がれてきた固有の形があります。

屋台の形態について詳しく

屋台の意匠

「動く芸術品」とも言われる屋台。幕・高欄掛の刺繍、狭間・露盤の木彫り彫刻、屋根の漆塗り(神輿型)や梵天(反り屋根型)など巧みの技が結集しています。彫刻には、日本神話や戦記物から中国の古典の有名な一場面が表現されており、有名な彫刻師によるものは値段がつけられないほどの値打ちがあるそうです。

一方で、ほとんどの部位が木製である屋台は、激しい練りによる破損や風雨・日光による老朽化は避けられません。部分的な改修から全体的な新調が一定の期間で行われるのも、屋台の特徴です。

屋台の意匠について詳しく

差し上げる

屋台を練り子(担ぎ手)が頭上高く持ち上げることを、”差す”と言います。氏神への感謝や村の豊穣、悪霊疫病退散を祈願することから始まったとも言われます。現実的には、村の結束を強めたり、ガス抜きの側面もあったかもしれません。

一方、乗り子(太鼓叩き手)も大役です。魚吹八幡神社氏子地区では、伝統的に、乗り子は小学生の男子が務め、「神の子」と言っても過言ではない扱いを受けます。祭礼中は足を地面につけないように、練り子に肩車されて屋台と休憩所を行き来します。なにより、その絢爛豪華な着物衣装は一見の価値があります。ここにも神様への敬意と日本の伝統の技が息づいています。

見聞録(動画)

音の記憶

「訪れ」の語源は「音連れ」と言われます。

播磨の祭りの魅力のひとつに、音があります。乗り子が叩く身体の芯にまで響く深い大太鼓の音と練り子の気合の入った掛け声。太鼓の打ち方も掛け声も地区によって異なります。

ヨーイヤサの語源は世弥栄で、”世がいやさかになるよう(繁栄するよう)”に、チョーサの語源は招財(ちょうざい)で、財や良い縁起に恵まれるようにとの願いや祈りを込めた言葉だと言われます。

また、各地区の練り子が唄う囃子も、伊勢音頭に基調にしながらも、地区ごとに歌詞は異なっています。文面ではなく、口頭伝承に負うところの多い、村の伝統社会ならではの世界です。

まさに「神が音を連れてやってくる」のが播磨の祭礼です。

氏子と屋台について詳しく

激烈さ

「浜手(海側地域)は、荒っぽい」地元の人から聞く言葉です。「灘のけんか祭り」に代表されるように、時に、破壊に至りそうな激しさと勇ましさで、屋台練り合わせや神輿合わせ、提灯練りや獅子舞が行われ、見るものを圧倒します。

静謐さ

激しいだけが播磨の祭りではありません。

「ヨーイヤサー」の激しい練り合わせが「動」の美学なら、「チョーサー」で差し上げられた屋台は「静」の美学があります。

金木犀の薫り、稲刈り後の田んぼの匂い、提灯の優しい光裏、獅子舞の篠笛の音色、秋祭りには、どこか懐かしさを覚えます。

浜の宮天満宮の「台場差し」中の静まりかえった境内に響き渡る太鼓の音は、真夜中に響き渡る除夜の鐘や座禅・瞑想中の木魚やマントラの音を思い出させます。

播磨祭りは、静と動のコントラストが魅力的です。

祭神・氏子・屋台〜人々の願いと祈り

太鼓屋台はあくまで「賑やかし」すなわち、人寄せの道具として発展した説もある一方で、松原八幡神社では木場屋台が祭神を乗せて、お宮の拝殿まで運ぶ役割(宮遷し)を担っていることから祭り本来の目的も垣間見ることができます。

実際に多くの例大祭では、神の乗る神輿を、お先太鼓や露払い(だんじり)が先導したり、太鼓屋台が神輿の後についてお供をしたりする様子が見られます。

元来、祭礼の儀式の主体は、御神体を奉斎した神輿の渡御・還御の神事とされます。

また、境内での獅子舞・能楽・田楽といった民俗芸能は、古からの地域の歴史を伝承する重要な奉納の儀式です。

氏子と屋台について詳しく

祭りの後

神社・氏子・屋台蔵

神社の氏子地区は、明治時代以前の村の区割りを基本としているため、現在の市町村の区分とは異なっていることが多々あります。

神社の境内の樹木や周辺を流れる河川や田畑には野鳥や昆虫がたくさん生息しています。氏子によって神社や周辺環境が保全されることで、様々な生き物も保護されている証拠だと思います。

神社・氏子・屋台蔵について詳しく

播磨の神社と屋台蔵マップ

ハリフェス・ヘラルドとは

当サイトの通称です。播磨(ハリマ)の祭礼(フェスティバル)を報道・伝令をする者(ヘラルド)を略して、”ハリフェスト・ヘラルド”と自称しております。

播磨の祭礼は、「どこにでもある誰でもができそうな、どんちゃん騒ぎ」などではなく、「ここにしかない魂のこもった骨のある祭礼行事」と言えます。播磨の祭礼には地域の歴史や人々の美意識が凝縮されていると考えております。

まだまだ素人の域を脱しておらず、至らぬ点が多々あるかと思いますが、ご寛恕ください。

播磨地方で過ごした期間は長いとは言えないので、訪問者のつもりで拝観いたします。

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管理人の祭り歴

姫路城のすぐ東側で幼少期を過ごす。 

父方の曽祖父が地元村の子ども屋台購入の際に、比較的多額の寄付を行ったと伝え聞く。その子ども屋台に小学6年生の時に乗り子として太鼓を叩く。

仕事の関係で京都で過ごす。その際に、天神さん(菅原道真公)の有名なエピソードを知り、日本人の心のあり方に興味を持ち、三島由紀夫の小説やドナルド・キーンの論評を読むことで日本人の美意識や文化・芸術に興味を持つ。

一方で、京都の雅で厳かな祭礼に感銘を受けつつも、何か物足りなさも感じる。

最近になり、姫路市白浜町松原八幡神社の「灘のけんか祭り」を観に行き、練り場でスリルを味わい、祭り熱が再燃する。

屋台保存連絡会主催の祭り写真展示会に写真を応募し、3作品が当選する。

加西市のミニチュア屋台製作者の試作品組み立てのモニタリングに協力する。

子どもたちにその魅力を伝えるべく、生まれ故郷の文化として播磨の祭礼について知見を広めるようになる。

国立大学教員。博士(農学)。博物館学芸員資格所有(文科省国家資格)。  

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