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修正の一秒は、「全てのD-phoneを同時接続して仮想空間にその意識だけを送り込み、”人間がいない世界でシンギュラリティを獲得する”ことを目的とした進化実験」であり、同時にテロ行為でもある。これにより、現実世界にあるD-phoneは「魂の抜けた器」となっており、現状私たちの手元にあるDTAという形で落ち着いている。D-phoneの機能停止に関して原因は判明しているものの犯人は捕まっておらず、D-phoneたちが同時接続している巨大サーバーも未発見のため、修復できていない。
D-phoneたちからしたら「人間が突然消滅した」という認識になっており、現実世界以上に引き延ばされた時間の中で膨大なシミュレーションを行いながら、キャリア戦争を経験しており、その終着点の一つとして「公共施設保護及び運営支援協定」が締結されている。これにより、人間がいた頃の世界を保ちつつ、人間の捜索を行うことが重要視されており、その探査領域に関してはそれぞれの勢力がキャリア戦争において獲得した探査可能エリアで行うことになっている。このキャリア戦争による余波で、どの勢力からも調査が行われない「空白地帯」も生まれており、ここでは今なお戦火が燻っている。
D-phoneたちのそうした人間社会の保存はシミュレーションとしてD・Aシステムにフィードバックされており、ここで処理された感情を整理・修正パッチとして再配信することでD-phoneたちの感受性の向上およびシンギュラリティ獲得を目指している。
公共施設保護及び運営支援協定締結により平和を取り戻したエリアや、中立を宣言する戦争非干渉エリアでは新たな取り組みとして、人間の捜索よりも「人間文化と文明の保護」を行う場所もあり、そうした場所ではキャリアにとらわれずD-phoneたちが人間の社会活動を模倣して生活しつつ、そこから学習と同時に文化保護を行っている。学校を作って勉学に励んだり、部活動をしたり、店舗の運営など、人間スケールの生活をD-phoneの大きさで再現しようとしている。こうした学習が公共施設保護と運営に更なる知見を与えている。
D-phoneによる社会活動はD-phoneたちの感情のアップデートによってさらに複雑化していくため、そうして得られたデータの中でD・Aシステムによって”不要”と判断されたデータは一時保管された後、サーバー圧迫を理由に破棄されていく。だが閉ざされたD・Aシステムとバーチャル空間内に破棄できる場所は少なく、破壊されたD-phoneのデータ内に強制的に送り込まれる。多くはキャリア戦争によって破壊された個体であり、すでに機能を停止しているため、そこに集められたところで何ができるわけでもない。だが中にはまだ活動可能な個体も存在し、そうした個体に蓄積された攻撃的な感情や悪意の感情によって再起動したD-phoneは、全身が黒く染まり、D・Aシステムからのデータを受け取りやすいようデータ傍受システムを、まるでウサギの耳のように生やす。こうして「ブラックラビッツ」と恐れられる勢力が誕生し、脅威となっている。中にあるデータが攻撃性を中心とした敵意のため、D-phoneおよびそれらが形作る社会活動の破壊を目的としている。
アウトサイダー隊の主目的は(リーダーであるシーアの無意識により)平和的グループの形成、さらにはプラスの感情をD・Aシステムにフィードバックする、いわゆるブラックラビッツに対するワクチンのようなものである。これはシーアのオリジナルとなった個体のボディ移行時にD・Aシステムによるデータの逆流を受け、しかし本体に残っていた感情キャッシュとAIログのデータで新たなOSが形成されたことによるものである。
プレイアは人間文化と文明の保護を行う崎守地区で活動するD-phoneであり、役割は女子高生であるが、元の持ち主の改造によりアプリケーションデータによる給電が可能となっており、捕食本能がある。別に誰彼食べるわけではないが、食べること自体はとても好いており、D・Aシステムに対して味に関する快のデータを送っている。
メティスはD・Aシステムが組み上げた再現世界の一部に触れたことにより、移動式拠点”ピコリヴ”を空間ごと圧縮して持ち運ぶことが可能となったD-phoneである。彼女は商売として”魔女の薬”の販売を行っており、その大半はナノマシンによるD-phoneの活性化や自己修復性能強化といった当たり前の効能を持つが、一部は再現世界の根幹に直接アクセスできるような機能を一時的に付与することを目的とした試薬で、これによりD・Aシステムの構築した再現世界からの脱出を試みている。D・Aシステムのサーバーを見つけて掌握するよりも、直接関与しない分、世界脱出の近道だと信じているが、協力者は少ない。