2017年ドイツのボードゲームアワードで準優勝を果たした傑作デッキ構築型ボードゲーム。
レースゲームとデッキ構築ゲームが融合していて、レースに使う「デッキ」を自分で組み上げゴールを目指します。
ルールはいたってシンプル。プレーヤーがやることはゴールに近づくために前進することと、デッキを強化するためにカードを購入することとの2つだけです。そして最も早くゴールにたどり着いたプレーヤーの勝ちとなります。
エルドラド最大の魅力は、絶妙なゲームバランス。それはもう素晴らしいバランス感覚です。あらゆる要素が最適な比重で配置されていて、プレーヤーに無限の可能性を見せてくれます。決まりきったパターンでは決して終わらず、常に新しい可能性を与えてくれるのです。
運と実力のバランス、デッキ構築とレースのバランス、プレイヤー同士のバランス、これらすべてのゲームバランスが完璧で、エルドラドを面白くしています。
ボードゲーム界の巨匠クニツィア[1]が送るデッキ構築型レースゲーム。2017年ドイツゲーム大賞にもノミネートされた[2]ボードゲームの傑作です。デッキ構築ゲームとして有名なのはドミニオン[3]ですが、エルドラドの作者クニツィアはドミニオン系ゲームには心惹かれずにいました[4][5][6]。それが一転してデッキ構築要素を含むボードゲームを作ったのです。
エルドラドは南アメリカに伝わる黄金境の伝説がもとになっています。伝説によれば、鬱蒼と生い茂るジャングルの奥深くに、黄金の都市エルドラドが眠るとか。
プレーヤーはこのエルドラドを発見するためにチームを強化し、ジャングルを探検します[7]。このゲームの目標は、与えられたデッキを用いて自分のコマを目的地(エルドラド)に到達させること です。
目標は、カード10枚程度からなるデッキを用いて、自分のコマをゴール(エルドラド)に到達させることです。デッキのカードのうち4枚が手札となり、手札を利用することで前進か購入を行います。やることは前進と購入の2つだけ。シンプルでわかりやすいルールです。
指定されたコストを支払うことで、自分のコマを進めます。前進を続けることでゴールにたどりつけます。
コストはコマを進める対象のマスによって異なり、ナタ、オール、金の3種類のうちどれかが要求されます。手札を捨てることで進入できるマス、手札を除外することで進入できるマスもあります。コストが高いため進入が難しいマスも少なくなく、強いカードを購入することでデッキを強化する必要があります。
始めからデッキにあるカードは弱いですが、もっと強いカードを購入することでデッキが強化されていきます。少数の例外を除き1度買ったカードは何度でも使えるため、強いカードを購入すればそれだけ有利に働きます。ただし、購入にかまけて前進をおろそかにしていると、他プレーヤーが先にゴールしてしまいます。
ゲーム開始時、デッキのカードは8枚しかありません。毎ターン4枚ずつカードを使うので、2ターンもするとデッキが尽きてしまいます。そのときは過去に使ったカードをシャッフルしてもう一度使います。デッキのシャッフルは何度も行われ、同じカードを繰り返し使うことになります。強いカードも、弱いカードも繰り返し使うのです。購入で強いカードを買う意味はここにあります。
より詳しくはルールページ[7]を参照ください。
前進と購入を繰り返し、最初にゴールにたどり着いたプレーヤーが勝利となります。勝敗の基準はだれが最初にゴールに至るか。エルドラドはレースゲームでもあり、勝敗基準はとても単純です。
そしてここが実によくできていて感心しきりなのですが、序盤から前進を多く行ったプレーヤーと、序盤はたくさんのカードを購入して後半に強いデッキを完成させたプレーヤーとが、ほぼ同じタイミングでゴールします。ゴールまでの時間がかかればかかるほど、序盤に強いカードをたくさん購入したプレーヤーが有利になりますが、実際のゲームにおいて前進重視と購入重視のどちらが有利かはかなり微妙です。
次の1ターンを前進に充てるのか購入に充てるのか。わずか1ターンの判断が勝敗をわけます。それほど繊細なバランスに作られているゲームです。このゲームにおいて、「こうすれば勝てる」はありません。
前進重視でも購入重視でも、ほぼ同じタイミングでゴールする。
ほんのわずかな差が勝敗を分ける。
さて、エルドラドの魅力ってなんでしょう。
エルドラドの魅力、それは、絶妙なゲームバランス
。
それはもう素晴らしいバランス感覚です。あらゆる要素が最適な比重で配置されていて、プレーヤーに無限の可能性を見せてくれます。決まりきったパターンでは決して終わらず、常に新しい可能性を与えてくれるのです。
以下では、特に重要な3つのゲームバランスについて見ていきましょう。
レースゲームでありかつデッキ構築ゲームである仕様上、エルドラドの勝敗に最も強く寄与するのはプレイヤー自身の計画性・先読み能力です。ところが重要な局面でしばしば、運が勝敗を左右します。
運ゲーではないが、実力だけでは決まらないバランスが中毒性を生みます。
デッキ構築ばかりしていては、先に進んだ他のプレーヤーに追いつけなくなって勝てません。でも、進むことばかり考えていると、強いカードをそろえたプレーヤーに負けてしまいます。
進むのか、デッキを強化するのか、繊細なバランス取りが重要です。
実はこのゲーム、先頭を行くプレーヤーにはちょっとした障壁が用意されています。コースのところどころにバリケードが設置されており、プレーヤーはこれを処理しないと先に進めません。必然的に先頭のプレーヤーがバリケード処理に追われます。前半で出遅れてもあきらめるのはまだ早い。バリケードを他のプレーヤーに処理させて最終盤で追い越せれば、まさかの逆転勝ちです。
もちろん先頭プレーヤーにもメリットはあります。後続プレーヤーは前を行くプレーヤーを追い抜くときには遠回りを強いられますし、同着だったときは、バリケードをたくさん処理したほうのプレーヤーが勝利です。
同着か、1ターン差で抜かされるか、勝敗の差はこんな小さな違いから生まれます。