セミナー予定

講師 井上雅世氏(明治大学現象数理

題目   遺伝子発現制御ネットワークはどうして縺れているのか

日時 2月12日(金) 13:30-    webexによるオンライン開催です。

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要旨 

遺伝子発現制御ネットワークモデルを用い、環境変化に応じて適切に応答できる最適なネットワーク構造について考えた.生体内のように個々の遺伝子の発現エラーが大きい場合には、エラーを補償するために複雑に絡み合った構造が最適化されること.そのようなネットワークは遺伝子間に協同性をもち、ロバスト性などの機能面で有利になることを示す.さらに、Dynamic Time WarpingおよびDynamic Mode Decompositionの手法を用いたネットワークダイナミクスの定量的解析結果に基づき、協同性をもつネットワークが機能面で優れている理由についても紹介したい.

 入力に応じた正確な応答だけならば、入力から出力までを直列に繋ぐ単純なネットワーク構造で十分である.しかし生体内ネットワークでは、ノイズや変異へのロバスト性、未知の環境条件にも対応できる能力(adaptive response to an unforeseen challenge [E.Braun (2015)])など生物特有の性質が要求され、これらは単純なネットワークでは実現できない.複雑に絡み合った構造をもつ協同性ネットワークは、複数の迂回経路をもち、迂回路間での伝達情報の平均化が起きるためノイズや変異に対してロバストになること.遺伝子間の協同性が未知入力への応答を可能にしていることを示した.

 本研究は、金子邦彦氏(東京大学)との共同研究です.

[1] M.Inoue and K.Kaneko, ArXiv:2012.04227

[2] M.Inoue and K.Kaneko, Europhysics Letters, 124 (2018) 38002