交配親が決まったら、いよいよ交配の作業に入ります。交配作業自体はとても簡単で、めしべに交配したい品種の花粉をつけるだけで交配完了です。しかし、より精度よく交配を行うためには、除雄や袋掛けといった作業が必要になってきます。ここではその方法を紹介します。
みかんの花は、一つの花の中におしべとめしべが共存する両生花をつけるため、特に交配をしなければ、自らの花粉で受粉してしまいます。このようにおしべが残った状態で、他の品種の花粉を持ってきて交配したとしても、交配の成功率、つまり目的の品種と受粉する確率は低くなってしまいます。そこで、あらかじめ花からおしべを取り除き交配の精度を高める、除雄という作業がよく行われます。除雄の方法は人によって少しずつ違いますが、ここでは私がよく行っている方法を紹介します。除雄は何よりタイミングが大切です。花粉はやくと呼ばれる袋に包まれており、花が咲くころにこの袋から出てきてめしべにくっつきます。したがってこのやくの袋が破れる前に取り除いておく必要があるのですが、蕾が開き始めたころに破れることがあるため、蕾の段階で取り除かなければなりません。蕾を無理やりこじ開けておしべを取り除くと、めしべなどが傷ついてしまう可能性があるので、以下で説明するように、花弁ごと切り取ってしまうのがおすすめです。取り除くとおしべが出てくるので、そこに目的の花粉をつけて受粉完了です。
受粉が終わってもまだ油断はできません。アブやハチによって周囲にあるみかんの花から花粉が運ばれる可能性があるからです。これを防ぐためには、受粉が終わった花に袋かけをするのがおすすめです。交配をし袋掛けをしてから数日たつとめしべが落ちますので、ここまでくれば無事交配成功です。もう他の花粉によって受粉されることはないので袋を外して問題ありません。なお、交配に失敗した場合、下の膨らんだ部分ごと落下するので、そうなった場合は来年再チャレンジです。