カンキツはいわゆるミカン科に属する植物で特に食用に用いられているカンキツはミカン亜科に属しています。その中には比較的多くの属が存在するのですが、面白いことにその属間の独立性は比較的弱く、属間交雑が簡単に行えてしまいます。日本では特に佐賀大学でこの属間交雑の研究が盛んにおこなわれました。ところがこの属間交雑は開花期が一致さえすれば種子が簡単に得られるというもので、実際は開花期が合わないためそれほど単純にはいきません。
私が交配に使っているフィンガーライムも通常のカンキツより開花が遅いため交配が難しいのですが、calamondinやブラッドライムといった属間交雑をすでに経てできた在来品種は両者の開花期どちらでも開花するため交雑にとても使いやすい品種となっています。ここではそのような品種を活用して得られた個体をいくつか紹介します。
農研機構が育成したあすみとブラッドライムの交雑です。2023年春に交雑をしました。まだ接ぎ木をしていない若い苗の状態ですが、葉が小さくすでにフィンガーライムの血を感じさせる形質を表しています。ブラッドライム自身の花粉量は比較的多く種子獲得率も高いと思われましたが、交配したほとんどの果実が落果。最終的に数個の種しか獲得できませんでした。程度こそ弱いもののやはり遺伝的隔離があるように感じます。