2025.04.20
盤洲干潟をまもる会主催「春の干潟観察会とミニごみ拾い」に参加してきた。今回は代表槙原の参加が叶わず、事務局スタッフのみ。4月とはいえ、前日は各地で夏日が記録される暑さ。加えて木更津の空は重ための曇りで、風がゴーと鳴っている。暑さ、雨、強風、虫、それぞれに対する備えをリュックに詰め込んで集合場所に向かう。途中、道端のあちこちにナガミヒナゲシが咲いている。かわいらしいが触るとかぶれるらしい。要注意。
会の方に引率いただき、任意参加15名ほどのパーティで盤洲干潟入り口のゲートに向かう。今の時期なら千鳥が見られるけど、風が強いから隠れてしまうかも、と歩きながら会の方に話を伺う。この辺りは田んぼが多い。植えたばかりの苗が整然としている。ゲートに一番近い田んぼは今年休耕するらしく、そこに繋がる水路の端は丸めたビニールでふさがれていて、出口を失った雨水が溜まっている。この水路は水が緩やかで、昨年はメダカがたくさん住みついていたらしい。この日は網ですくってもメダカはおらず、代わりにザリガニが繁殖していた。
ゲートをくぐって後浜のヨシ原を見る。この日は満潮が7時20分、干潮が15時19分。私たちが到着した10時頃にはだいぶ潮が引いていて、潮だまりができていた。ここから前浜までは普通に歩いて15分ほど。この道をゆっくり観察しながら進む。高く伸びた竹藪が風に揺れて、ザザーッといい音をさせている。進んでいくと徐々に両脇がヨシ原になってきた。高さ2メートル近いヨシはほとんど枯れていて白茶けている。ただ、その下には青々とした新しいヨシが芽吹いている。その高さはまだ30センチほど。葦は地下茎に養分を蓄えて、そこから新しい芽を出して増えていく。1年で枯れて、この時期に新芽と交代する。あと1ヵ月もすれば一面茶色の景色は一面緑の景色に変わるそうだ。チゴガニがたくさんいるエリアに立ち寄って、今年も彼らのウェービングを堪能する。5月になるともっと活発になるらしい。会の方がゴマ粒より小さいチゴガニを見つけて手のひらに乗せてくれた。小さいが、しっかりとカニのかたちだ。このカニは子供時代をプランクトンとして過ごし、海中を漂い、稚ガニとなって海底に定着するらしい。どこを漂ってここに着いたのかな、と想像する。カニに集中している頭上で、スズメに似た鳥がチッチ、チッチと鳴きながら飛んでいる。セッカという鳥で、鳴くことで縄張りを主張しているらしい。「お邪魔してます」という気分になる。
前浜に到着。潮は一層引いていて、でこぼこした砂床が広がっている。普段の観察会ならここで砂を掘り返して底生生物を探したり、ウミニナの軌跡を追ったり、波打ち際の鳥を望遠鏡で見せてもらったりするが、この日はとにかく風が強い。やや前傾姿勢を取らないと上手く歩けないし、声を張らないと話ができない。あとで調べたところ風速20メートルに相当したと思われる。予定では前浜観察ののち各自持ってきた昼食を取り、ゴミ拾いをして解散となっていた。なんとかハマシギの群れと、横ではなく前後に歩くことができるマメコブシガニには会えたが、止む気配のない強風を考慮し、ここでプラン変更。観察を切り上げ、昼食をカットし、ゴミを拾いながら戻ることになった。じっくり前浜をきれいにしたかったが、来月大規模なクリーン作戦もあるそうなので、この日できなかった分はそちらでやろうと思う。
可燃担当、不燃担当に分かれ、それぞれ袋を持ってゴミを拾いながら来た道を戻る。行きとは違い、みんな下を向いてゴミを探しながら歩く。途中、こんもりとしたマキの木の茂みからケッキョ、ケッキョという鳴き声が聞こえてきた。声の主はウグイスだった。谷渡りと呼ばれる鳴き方で、危険を仲間に知らせる警報だそうだ。ふたたび「ごめんね、お邪魔してます」という気分になったが、私たちが過ぎた後、すぐに気持ちよさそうにホーホケキョと鳴いていた。(M.M)
2023.11~2024.5
この期間のTF1レポートは代表・槙原泰介の芸術祭出展作品に関連した干潟のツアーを開催したため、以下のページをご覧ください。
2023.11.12
干潟に打ちあがるものは様々だが、人の生活に関するゴミを多く見過ぎると、気持ちが沈んでくる。瓶が最も多い気がするが、ボールの数も多い。いや、ボールに目をやると、相当な種類の球技用のボールが拾える。心なしかボールは感情を持っていかれないような気がして、作品の素材にならないかと大小のボールを拾ってみる。ボールはその形状から転がり続け、フジツボや牡蛎も付着しない。一方、砂浜に綺麗な花を咲かせるのはアツバキミガヨラン。北米原産でユッカ属の耐寒性常緑低木、学名をユッカ・グロリオサと言う。明治時代に渡来し、その学名の意味「gloriosa (栄誉ある)」が「君が代は栄える」と解釈されたことに由来しているとのこと。繁殖力が強く、駆除しても根が残っているとどんどん生えてくるようで、干潟の観察者にとっては厄介がられているようだ。
2023.010.29
来年3月に開催される内房総アートフェスへの参加が決まる。助成に申請してここで何か環境とアートが関わる展覧会ができないかと考えていたのだけれど、土地の所有者も分からないし、どこに話を持って行ったらいいのかわからないまま、時が経っていた。この干潟がある木更津市を含んだ内房総5市でのアートフェスが開催されるという。プレゼンテーションの機会を経て、プランに概ねOKがでる。まだ変更の可能性はあるけど、とりあえず第一プランの実現に向けていろいろテスト。
ウラギクがちょうど咲く季節でした。河口、海岸近くの汽水域や内陸の塩分のある湿地に生える越年草で絶滅危惧種。
干潟の表面を石膏取りしてみる。はみ出た石膏も回収。
2023.08.31
確かこの日はスーパームーンの次の日…
月の軌道が地球に最接近するタイミングと満月のタイミングが近いと地球から月が大きく見え、スーパームーンと言われる。月の公転軌道は楕円であることから月と地球との距離は約36万kmから40万kmの間で変化するそう。夜の干潟に観月に訪れている人はゼロ。帰り道に入り口付近で獣(アライグマ…ハクビシン…?)に脅かされました。
2023.07.23
本日は先日に引き続き、一人のアーティストを案内。駅で待ち合わせ、港付近の大きな橋から市内を一望。干潟は見えないが、浅瀬が続く地形と自衛隊の敷地がよくわかる。上空は旅客機の航路、それから自衛隊の演習のために様々な輸送機が飛び、時に穏やかではない。今日も日差しが強いが、地方での滞在制作経験も多いYさんは軽装でフットワークが軽い。久しぶりに会ったYさんと干潟のフィールドワークへ。
Y:「骨…。」
M:「そういえば、この砂の模様を地質学用語でベッドフォームというらしいよ…」
Y:「なるほど、そこに住んでる蟹は気持ちよさそう。」
M:「それにしてもこの泡。」
Y:「生命の起源は泡とか言いますよね。」
M:「へー…何となく聞いたことある。」
Y:「この流木彫っちゃうとか、休憩できる場所にするとか。」
M:「それいいかも。このくらいの大木だとしばらく流れて無くならないかもね。」
M:「確かこのあたりにでかいタイヤがあった気がして、それもGPSで押さえてみたいんだよねぇ。」
M:「あった、あった。」
M:「ん、BRIDGESTONE…。いや、違う、こないだ見たタイヤとメーカーも大きさも違うわ。」
Y:「えー、ようやく見つかったのにって感じですね。」
M:「タイヤは結構たくさんあるみたいね。こないだは3つが縛ってあって明らかに何かに使ってそうな感じのものもあったよ。」
2023.07.22
先週末の気温上昇が気になっていたが、この日は1~2度下がった模様。炎天下には変わりない。なぜ本格的なリサーチを夏に始めてしまったのか。熱中症を避けるためには装備も重くなり、滞在時間も限られる。そんなことに今更気づくが、夏の状況も知っておくべきだろう。そして秋にもまた訪れればいい。草木の勢いも落ち着いて、異なる風景を感じられるだろう。
予定通りバスターミナルで I さん と合流し、散策。I さんは日差しにあまり強くないとのことだが、海外でも調査・研究目的のために厳しい野外環境の中を進むことは少なくないという。私、 M もいつも以上に日差しへの対策をして出向く。狙った干潮の時間は13時半。暑すぎるせいもあるのだろうか、この日も誰にも会わない。景観の背後に入ってくる大型ホテルの存在が残念なことを何度か共有し、特に壮大な発見はなく淡々と干潟エリアを見終わる。しかしこの日はここからだった・・
M:「だいたいご案内できました。今日は他に具体的な計画はないので、暑いですしそろそろ車にもどりますか…」
I:「そうですね、暑くなってきました…。あの池にはやっぱり近づけないのかしら。」
M:「そうですねぇ、やっぱり葦が高く茂っていて夏は無理な気がします。」
ほどほどに歩いた私たちは、来た道を引き返して安全に冷房の効く車に戻るより、少し遠回りになっても景色の異なる帰路を選ぼうとしていた。
M:「こっちから戻ったことはないですが、ホテル前の水路に辿り付けば防波堤を上がっていけるかもしれません。」
I:「…長靴に履き替えなくちゃいけないね。」
水路を進む。左はホテルの敷地。反対側の4m近くある防波堤に上がる階段がないか探すが、なかなか見つからない。元々干潟の一部だったと思われる水路には貝殻や瓶、ゴミも多く、歩きづらい。この水路を隔てて海側のホテルは埋立てによって2000年ころに開業している。河川に接続していないこの水路はあまり潮位も上がらないとみられ、干潟と比べて泥の臭いがきつい。使われなくなった漁船の残骸を縫って進む。水路側面の造りの違いからその歴史と工事目的の違いが感じ取れる。ようやく階段が見つかったころには、泥の臭いが鼻をついて離れなくなっている。アスファルト上を歩ける安心を感じながら車を目指す。ここで終わればまだよかった。後背湿地に沿って1 kmくらいは歩いただろうか。あと50mほどで車につく頃、ふと、Iさんが道路脇の茂みに小径を発見した。
I:「この径は行けるのかしら。」
M:「そうですね、いけそうですね。湿地全体が見れるかもしれませんね。」
2mほど竹藪を進むと風景が開けた。
M:「これはすごい、あそこが例の池ですね。」
ほどよい高さの葦の向こうに中低木が育っているのが見える。
M:「あれですね。池の周りだけ木が育っているんですね。」
I:「ここからなら池までたどり着けそうかしら…」
M:「足元がどんな感じかちょっと見てきますね。」
M:「う~ん、行ける気がしますね。」
Iさんが先頭で歩く。しかし湿地はそう甘くはなかった・・。
この日から、底なし沼という言葉には体感が加わった。
腰まで泥に浸かって助けも呼べない静けさの中、二人で飛行機を見上げたひと時を忘れない。
二人とも脱出するのに約1 時間。
2023.07.02
9:00頃の干潮をねらって訪問。入口に車が2台ほど。先月訪れたときと比べると散策路脇の草が増え、道を狭くしている。鶯をはじめとする鳥たちの囀りが美しい。この日は後背湿地も意識してみる。このサイトで干潟と言っている部分は地図上では海、岸から入口までの葦が茂っているエリアは後背湿地という陸で、干潟に加えてその面積が大きいこともここの特徴らしい。海上に出ても電波がしっかり届くので、Googleで現在地を表示してみる。やはり岸から1km以上は沖に歩いているだろうか。干潟では流木や漂流物を主に撮影。ファインダーに切り取られた矩形をしばらく眺めていると、水中で常に何かしらの生き物が動いていて面白い。ほどほど沖に行ったころ、杭と網で囲われているエリアを発見。このあたりで親しまれてきたすだて漁に使用するものなのか。網で明確に境界が作られており、その先には行けない。
1時間ほど散策し、岸に戻ろうかと顔をあげると遠方300mほどに2名の漁業関係者らしき人々を発見。同じような速度で浜に戻るタイミングだったが、接触はせず。別に悪いことをしている訳ではないのだが、今日はいいだろう。ここも湿地としてラムサール条約の登録を目標にしているとの記事を読んだことがある。ラムサール条約への登録によって水鳥をはじめとする動植物の生息地が保護されることは自然保護団体の最大の望みかもしれない。しかしそうなると漁師たちは干潟での漁業を規制されるのであろう。僕らはそのどちらの立場でもなく、密猟者でもない。
2023.06.18
この日は干潮をねらって訪問。すでに入口に車が止まっており、訪れている人がいる模様。想像していたよりずっと地面が固く、どこまでも歩いていける。目視でも干潟を1㎞くらいは歩いていけそうだ。潮に置いて行かれた流木、杭、錆びた船外機。生き物はアシハラガニ、アラムシロ、ウミニナ等を観察。帰りに入口ゲートで観察会に来たとみられる元気のよい小学生たちにご挨拶。その他数人と遭遇。干潟を訪れる人の目的は様々、すれ違い際の挨拶と同時におおよそ装備で判断される。山で人に会った時と近い。
2023.05.18
入口付近から最近草刈りがされた跡が見受けられる。この日は満潮だったか、途中で水深が深くなり、長靴無しでは海岸までは行けない。海岸まで500mくらいか。遠方にはパラグライダーが見え、その先に大型ホテル施設が見える。ホテル側からこの干潟に入ってくる経路もありそうだ。
2020.05
入口付近に廃棄物が多くある。途中、虫取り網を持った親子に追いついたり離れたりするように藪の間の道を歩く。海岸には多くの漂流物。帰り際に入口付近でウエットスーツを着脱している方に遭遇。話しかけることができず、何をされていた方々なのか不明のまま立ち去ってしまったが、水を採取していたことと、潜水する道具や専用機材を装備していた感じだった。干潟のガイドに掲載されている希少な生物の観察や保護の目的で赴いた方だったのだろうか。